九州陶磁文化館「特別企画展 柴澤コレクション」。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

九州陶磁文化館「特別企画展 柴澤コレクション」

佐賀県立九州陶磁文化館(以下、九陶)は、肥前磁器に携わるすべての人の宝物です。特に常設展示室を持つ「柴田夫妻コレクション」は、師匠を持たない肥前磁器作家・藤吉憲典にとって「師」ともいえる存在。その九陶で「特別企画展 柴澤コレクション」が開催されるとあり、情報を追っていました。SNSにアップされるコレクション画像の顔ぶれに「これは…見たい!!」と思いつつ、わたしは足を運ぶことができなかったので、ダンナ・藤吉憲典に託しました。

素晴らしい展示だったようです。見終わったその場から、ダンナから興奮気味の電話がかかってきました。曰く「すごかった。自分はまだまだ、もっともっと勉強しないと…!」。作り手にこう思わせるコレクションを公開してくださった、コレクターの故・柴澤一仁さん、九陶の皆さんに心より感謝です。

興奮冷めやらぬダンナ、九陶の方に「柴田コレクションみたいに、ぜひ常設室を作って展示してください!」とお願いしてきたようです。柴田コレクションはコレクションルームがあって、定期的に展示替えをしながら、いつでも見ることができるようになっていて、それは学びたい者にとって、とてもありがたいことなのです。九陶のなかに「柴田コレクション」と並んで「柴澤コレクション」の常設展示室ができたら、こんなにありがたいことはありません。

お土産に買ってきたもらった図録を眺めるほどに、「現物を見たい!」の思いが募りました。作品に添えられている解説も、学芸員さんたちの熱意が伝わってくるもので、とても嬉しく読んでいます。また一冊「手元に常に置いておく本」が増えました。ただ、総目録の写真が小さいのが残念でした。一覧性が高いので資料としての使い勝手はとても良いのですが。願わくば、柴田コレクションの時のように、コレクション一つ一つを大きな写真で見ることのできる図録を、時代別の分冊でもよいので作って欲しいと思いました。

佐賀県立九州陶磁文化館 特別企画展 柴澤コレクション

「特別企画展 柴澤コレクション」は、今週末2020年12月13日までです。会期残りわずかですが、肥前磁器の作り手は、必ず見に行くべき展覧会だと思います。

津屋崎の冬の風物詩。

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津屋崎の冬の風物詩。

ソデイカです。アカイカとも呼ばれます。地元の人たちは、愛をこめて「バカイカ(バカでかいイカ)」とも呼びます。今年は11月から朝晩空気の冷え込む日がありましたので、「そろそろ来るんじゃないかなぁ」と、ダンナがそわそわしておりました。

今朝ゲットした、今年初のソデイカは、久しぶりの大物。どれくらい大きいかというと

ソデイカ

これぐらいです。

津屋崎の冬を大いに楽しんでおります^^

読書『「賛否両論」おせちの本 完全版』(KADOKAWA)

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読書『「賛否両論」おせちの本 完全版』(KADOKAWA)賛否両論 笠原将弘 著

このところ、My図書館・カメリアステージ図書館の「新刊棚」と「特集棚」に誘惑されることが増えてきました。先日は、特集棚。「さあ、借りよう!」と貸出カウンターに並んだその時に、カウンター横にある小さな特集コーナーが目に入ってくるレイアウトになっています。ここで「あ、これも」と、ついで買いならぬ「ついで借り」でまた1冊追加。まるでスーパーのレジ横にあるお菓子コーナーです。

さて、タイトルを見て「賛否両論あるおせちって、どんなものだろう?」と思いましたが、「賛否両論」は著者のお店のお名前でした(笑)。マスター(店主)の笠原さんは、テレビや雑誌にもよく登場なさる料理人さんだそうですね。

本書中にはおせちの定番献立プラスアルファのつくり方と、おいしそうな写真が載っています。おせちの本はずっと使っているものがありますが、たまに別の本を見てみるのもいいですね。何年も固定化されていたメニューを見直す機会になりますし、同じメニューでも「もっと作りやすい方法」「もっとおいしくなる方法」を発見する機会になります。

献立もさることながら、本書の中でいちばん「お!」と思ったのは、お重への盛り込み方法と、皿盛り方法の例が、とてもわかりやすく載っていたこと。わたしは、おせちの中身は出来合いを買ってきて、盛り付けを自分流に整えるだけでも、立派なお正月準備だと思うのです。あちらこちらの名店から取り寄せたお料理を、お気に入りのお重や大皿に盛りなおす。お正月はゆっくり休みたい、でもおせち気分も味わいたいという方に、おすすめの方法です。一番上の写真は、そんなおせちの盛り付けに重宝する、藤吉憲典のつくる小皿豆皿の数々。

花祭窯の十一月の庭。

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花祭窯の十一月の庭。

ツワブキ

11月の庭で目を楽しませてくれたのは、ツワブキとサザンカです。

サザンカ

今年は梅雨の長雨に猛暑で、花にも野菜にも虫がたくさんついたと、ガーデナーのお友だちが教えてくれました。我が家のサザンカも例に違わず、8月下旬から9月にかけてチャドクガ(茶毒蛾)がついてしまいました。お茶の木によくつくことからこの名前がついているそうですが、椿やサザンカの害虫としても有名ですね。

チャドクガの駆除はしたものの、刺された時のことを考えると、ついつい「サザンカは毛虫がつくからなぁ…」と近寄りがたくなってしまうのも正直なところ。でも、季節が移って、こうして華やかな色を見ると、うちの庭にサザンカがあってよかった!と思うのですから、我ながら勝手なものです。

ツワブキの黄色も、サザンカのピンク色も、力を感じる鮮やかさ。日のあたる縁側でぼーっと眺める休日です。

御料理古川さん。

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御料理古川さん。

博多住吉にある懐石料理屋さん「御料理古川」さんにおじゃましてまいりました。

2018年7月のオープン。店主の古川さんが大阪の「味吉兆ぶんぶ庵」で修業をなさっていたころからのお付き合いです。修業中の当時から、藤吉憲典が大阪で個展をするたびに、独立したときのための器をお買い求めくださっていました。郷里の福岡県でお店をお持ちになるということで、オープンに向けての器をご用命いただいたのは、もう3年以上前になります。

ずっと気になりながら、やっと訪問。オープンから2年で福岡佐賀版のミシュランに載り、『家庭画報』をはじめとした雑誌掲載も多く、あっという間に「予約の取りにくいお店」になっていました。何度か問い合わせて予定が合わないことがありましたが、順調に発展なさっているご様子を嬉しく拝見していました。

カウンター6席に4名個室が二つ。訪問した平日のランチタイムは、100%女性客でした。カウンター・個室ともに皆さん常連さんのくつろいだ雰囲気で、とても楽しそうでした。お料理は、味がおいしいのはもちろん、どれもスッと体に染みわたりました。最後のお菓子とお抹茶まで、気持ちよく完食。食べ終わって気がつけば、実はお腹一杯になっていた、という感じでした。

お食事後、カウンター席のお客様は、それぞれ次のご予約を入れておられました。古川さんのお席が空いている日に合わせて、次の会食日を決める。お店がとても愛されていることがわかりました。お料理のおいしさ、接客の良さはもちろんのこと、店主古川さんと奥さまの明るく飾らないお人柄あってのことと、伝わってきました。

友人との久しぶりのランチに使わせていただきましたが、とてもよかったです。大満足でした。次は夜のお食事におじゃましたいと思います。

干支の置きもの-丑-

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干支の置きもの-丑-

ここ数年、「そろそろ干支に取り掛かって欲しいなぁ」という年末が続いておりましたが、今年は早めに仕上がりました。町田ももふくさんでの個展を控え、ぜひ間に合わせようと、昨年よりひと月以上早く丑(牛)が出来上がり。

そもそもは、ご近所さんへの年末年始の挨拶回り用に、非売品でつくりはじめたのが「干支の盃」でした。盃が十二支を一周したので、次に作りはじめたのが「干支の箸置き」でした。このころから「販売して欲しい」というお声をいただくようになり、次第に箸置きというよりは「置きもの」に変化してきて今に至っています。

干支丑 青磁の牛 藤吉憲典

写真は、本窯からあがったばかりの牛の皆さん。つくりが素晴らしくできたので、まずは青磁のみで仕上げています。たしかに青磁で仕上げると、造形の美しさが際立ちます。が、欲張りなわたしとしては、白磁バージョンも見て観たいなぁ、と。ひそかに白い牛の登場を心待ちにしているところです。

干支のシリーズは、毎回そのお正月までに作った分の売りきりで、リピート制作はありません。2021年干支の丑の初お目見えは、ももふくさんの個展です。


ももふく
藤吉憲典展(磁)
2020.11.21(土)‐11.27(金)
12時-18時
町田市原町田2-10-14#101
TEL042-727-7607

立冬も晴れの好日。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

立冬も晴れの好日。

暦の上では冬に入りました。この週末は衣類を入れ替えたり、冬布団を出して干したり、ストーブを点検したり、居間のラグがくたびれていたので暖かそうなものに買い替えたり。このところ風のないカラリとした晴天が続いたので、季節の家事も快適に進みます。今年の秋は穏やかな日が多くて、久しぶりに、秋ってこんなふうだったなぁ、としみじみ感じました。

朝晩の冷え込みで、紅葉も進んでいますね。週末のSNSには、友人たちが登山をしていたり、紅葉狩りに出かけていたりと、美しい季節の風景が全国各地から届き、こちらまで嬉しくなりました。外に出て、季節を楽しみ、春から続いた閉塞感を少しでも吹き飛ばして、心も体もリフレッシュ!にぴったりの季節。

とはいえ、個人的には特段お出かけの予定も作らず、淡々と日々の家事・仕事をしています。そのなかで見つける「晩秋らしさ」もまた、ちょっとしたリフレッシュのタネ。ツワブキの黄色い花が咲いていたり、ダンナが山からムカゴを採ってきたり、ご近所さんから柿をいただいたり、朝市の魚市場に並ぶヤズ(ブリの幼名)に脂がのってきたり、早朝見上げる空の月が冴え冴えと美しかったり。

気持ちが安定する晴れの日は、行楽日和であるだけでなく、日々の仕事や家事にも最適なのだと実感する今日この頃です。

菊の見頃。

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菊の見頃。

シュウメイギク

花祭窯の庭では、シュウメイギクが見頃です。菊と言えば、九月九日重陽の節句=菊の節句ですが、日本国内で「菊シーズン」というと、今頃のイメージ。11月3日の文化の日前後で菊の展示会やお祭りをするところが多いですね。菊を「市の花」としている大阪枚方市の「ひらかた菊フェスティバル」(名前を変えつつ続いている菊祭^^)も、例年この時期で、今年は10月28日(水)から11月16日(月)となっています。

菊は、陶磁器に描かれる文様のなかでも、古くから人気のあるもの。カタチにおいても「菊型」の鉢やお皿は人気です。日本でいう「松竹梅」にあたるものとして、中国では「四君子」と呼ばれる草花が、高貴でおめでたいものとして愛されていますが、その四君子の顔ぶれが、竹・梅・蘭・菊。

日本では皇室の紋章に使われていることもあり、やはり文様としては高貴な印象。江戸の昔から桜についで人気のある文様であることは、肥前磁器の古い器に残る文様の顔ぶれを眺めると一目瞭然です。とにかく多種多様。

野菊

近所の産直市場で見つけ、思わず手に取った菊は、野菊の風情。豪華絢爛な鑑賞用の菊も良いですが、身近に飾るものとしては、こういうものが可愛らしくて好きです。野菊は強いのも魅力。切り花にして生けたときに、けっこう長く咲いてくれるのはありがたいことです。まだしばらく、菊シーズンを楽しめそうです。

ストーブ出動。

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ストーブ出動。

この秋は、朝晩の冷え込みが、ここ数年よりも早く訪れているように思います。写真は秋の大峰山から見下ろした玄界灘。寒風を思わせる白波です。

干し柿、紅葉と、季節の景色もどんどん冬に向かっています。そんななか、早々とストーブを出してまいりました。最近の若い方には「石油ストーブ」を知らないという方もおられると聞きますが、純日本家屋の我が家には必須の暖房器具。

石油ストーブのなにが嬉しいかというと、「暖かい」に加えて、火のうえを活用できること。常にヤカンでお湯を沸かすので、いつでもアツアツのお湯がポットいっぱい。紅茶もコーヒーもすぐに淹れることができるのは、ささやかな幸せ。そして台所を預かるものとしては「煮込み系料理」が簡単にできる嬉しさ。鍋に材料を投入して、ストーブの上に置いておけばある程度完成するのですから、強い味方です。煮る時間がかかる豆類の下茹でが放っといてできるのも、ありがたく。

この秋初点火した昨晩は、ストーブの上で焼き芋を作りました。水で濡らしたキッチンペーパーでお芋を包み、そのうえからアルミホイルで包めば、鍋要らず。火が通りやすいよう小さめのお芋を選び、ときどき菜箸で転がしながら、甘い香りがしてきたらできあがり。

昔は焚火で焼き芋でしたが、今どきはストーブで焼き芋。そのうち石油ストーブも無くなって、焼き芋もお鍋でつくるものがあたりまえになるのでしょうね。わざわざつくるのではなく、「火があるついでに作る」のが焼き芋の楽しさだと感じていましたが、そんな焼き芋文化も少しづつ変わっていくのだなぁ、と思いつつ。

読書『「文」とは何か 新しい日本語文法のはなし』(光文社新書)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『「文」とは何か 新しい日本語文法のはなし』(光文社新書)橋本陽介著

先月参加してきた、カメリアステージ図書館の選書ツアーで選んだ本の一冊。三回目の参加となった今回の選書は、過去二回に比べて、ようやく「自分が読みたい本」よりも「図書館に来る人にお勧めしたい本」を選べるようになったのが、自分のなかで少しは進歩したかな、と思えたのでした。

「はじめに」で「国語の授業はなぜつまらないのか」と問題提起する著者が、「文法はエンタメだ」と書きあげた本書。文法に関する考察は機知に富み面白いながらも、読む側としては普段使わない頭を使い、途中でくじけそうになりながら、やっと読み終えた、というのが正直なところです(笑)

それでも読了後には、「日本語文法」という枠を出て、言語について思いをはせる自分がいました。個人的に特に興味深かったのは、次の三つのポイントです。


  • 知の枠組みはすべて西洋由来
  • 文法とは計算システムである/人間言語の特徴は、無限に「文」を生み出せる点にある
  • 言語は思考を決定しないが表現と解釈を縛る

『「文」とは何か 新しい日本語文法のはなし』(光文社新書)より


英会話を習っていると、「日本語にはうまく訳せない英語」「英語ではぴったりくる単語が無い日本語」に出くわします。そのたびに言語の背景にある文化の違いを思います。しかも不思議なもので、習えば習うほどに「翻訳するのが難しい」ものに出会う頻度が増える印象があります。「言語は思考を決定しないが表現と解釈を縛る」のですね。

日本語文法を解説する手順をとりながら、広く「言語」について考えさせる本でした。書中、いろいろな角度から文法を解いてあり、それぞれの角度(視点)を深めるための「読書案内」がついています。「ことば」に興味のある人、言葉を教えることを仕事にしている方に、ぜひ手に取って欲しい一冊です。