企業秘密はありません。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

花祭窯に企業秘密はありません。

佐賀・花祭に工房を構えていた時は、有田の磁器の窯元に勤める後輩などがときどき「つくり方」のヒントを求めて足を運んでくることがありました。福岡・津屋崎に越してきてからは、そういう機会もずいぶん減ってしまいましたが、それでもたまに、やきものを仕事になさっている方がお見えになることがあります。福岡に来てからは、土ものをなさっている方が多いです。

器の触り方を拝見していると、なにも聞かずとも「この方はやきものの仕事をなさっているな」とわかることが多々あります。面白いことに、趣味でなさっている方と、プロとして仕事でなさっている方とでは、触り方が違ってくるのです。不思議ですね。

さてつい先日も、仕事でなさっているらしい方がお見えになったそうで(わたしは不在でした)、いろいろと「作っていて上手くいかないこと」を話していかれたそうです。そこでダンナ・藤吉憲典が経験上わかることを、具体的な技術含めてすべて説明したところ、とてもビックリなさったとか。

「そういうのって、話しちゃっていいんですか?」とおたずねになったそうですが、真剣にやきものに取り組んでいる方、真面目にもっといいものをつくりたいと思っている方に対して技術をお伝えすることに、ダメな理由はありません。

作陶の技術的なことだけでなく、それ以外のことについても同様です。一生懸命学ぶ気持ちを持っている人が「知らなかったからできなかった」ことを、自分たちが説明することで出来るようになるなら、そこで立ち止まる必要はないというのが、ダンナもわたしも共通の考え方です。

そして、わたしたち自身もまた、そういう先人の方々のご厚意でこれまでずいぶん助けられてきています。自分たちが真剣に向上したいと思って取り組んでいることを理解してくださる方は、たいていは親切に教えてくださいます。だから、わたしたちもそうありたいと思っています。

 

津屋崎陶片ミュージアム:H290619唐草の鶴首。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

津屋崎陶片ミュージアム:唐草の鶴首。

「つるくび」と呼ばれる、細首の瓶。その首から口部分の陶片です。用途は徳利のような注器でしょうか、一輪挿しでしょうか。

津屋崎陶片ミュージアム

津屋崎陶片ミュージアム

口の際までしっかり丁寧に蛸唐草が描かれており、おそらく下の部分にもきれいに蛸唐草が描かれていたのだろうな、と思われます。

このように器の外面全体にほとんど余白が無い状態にまで文様を描く描き方を「埋詰(うめつめ)」というのだそうです。(九州陶磁文化館 柴田コレクションⅥより)

埋詰の技法は比較的初期の古伊万里から続いているということで、その文様のつけ方で時代を見極めるのは難しいのですが、「柴田コレクションⅥ」に1700~1740年代の同様の「染付唐草詰文細首瓶」が載っていました。

唐草の描き方、線の太さがよく似ていて、もしかしたら同時代のものかしら、と。ところがこの図録に載っているものは、鶴首の途中で唐草が終わっています。

こんなふうに共通点・相違点を探しながら陶片の由来をイメージするのも、つくり手ではないわたしの陶片の楽しみ方のひとつです。

 

津屋崎陶片ミュージアム:H290616なまやけ。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

津屋崎陶片ミュージアム:なまやけ。

漢字で書くと「生焼け」。つまり、ちゃんと焼成できていなかったもの、ですね。

津屋崎陶片ミュージアム

見込に山水文を描いた皿でしょうか。あるいは浅めの小鉢。絵がずいぶんと簡略化されています。素朴と言えば素朴ですが。裏には文様がまったくなく、銘もついていません。量産品だったのかしらと思われます。

最初、土ものかな、と思いました。色合いとニュウ(ヒビ)の入り方が、萩っぽいなぁ、と。でも、絵付は伊万里っぽい。で、どうやら磁器の生焼けかな?と。

磁器を窯で焚くときに、酸化焼成と高温での還元焼成という方法があります。「生焼け」は酸化焼成で焼いた場合にでやすいのだそうです。他にも呉須の青色が鮮やかに明るい色に上がる、生地がやや黄味がかった色合いになる、などが酸化焼成した場合の特徴としてありますが、いずれも焼成温度が低かったり、時間が短かったりと、しっかり焼けていないときにあらわれやすい特徴なのだそうです。

ちなみに還元焼成をすると、より硬質な磁器に焼きあがります。花祭窯では、本窯焼成は必ず還元をかけています(^^)

 

津屋崎陶片ミュージアム:H290615蓋ものいろいろ。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

津屋崎陶片ミュージアム:蓋ものいろいろ。

江戸中期~後期の蓋ものの、蓋。

家庭の料理で「蓋もの」を使って出す機会がどんどん減ってきている昨今です。が、こういうものを見ると、やっぱり蓋ものいいな、かわいいな、と思うわけです。

津屋崎陶片ミュージアム

写真向かって右側は、瓢箪(ひょうたん)の実と蔓(つる)、葉っぱがいい感じに描かれています。蓋ものに限らず古伊万里によく見る文様の題材です。ひっくり返して内側を見ると、口縁部は墨弾きで○×。見込は瓢箪の蔓を描いているようです。全体にやわらかい筆遣いで、なんとなくユーモアも感じる文様の組み合わせが魅力的ですね。文様がきちんと丁寧に描かれていることから、江戸中期のものではないかと推測。

津屋崎陶片ミュージアム

一方左側は、間取に獣面の組み合わせでしょうか。間取の窓のなかに描かれているのは山水(さんすい)文が簡略化されたもののようにもみえます。つくり手・藤吉憲典の解釈は、龍の文様にいろいろと装飾がついたものではないかと。年代別文様事典を見ていると「唐花」とされている文様にも似ているようです。

こちらはひっくり返すと口縁部の縁地文に雷文様と呼ばれる卍の変形のような地文、見込には松竹梅。地文も松竹梅もかなり崩れてしまっていますが(^^;)外側の文様と内側の文様とで、ずいぶんと雰囲気が異なる器です。

表も裏も、職人さんによって、文様から文様へと意味を考えずに描き継がれているうちに、原形をとどめず訳が分からなくなっている状態、というのが一番正しい解釈かも知れません。たくさん描きこんであって面白くはありますが、雑な絵付だとやっぱり少し残念です。こちらは「雷文様」と粗雑な絵付から、江戸後期かなぁ、と推測。

津屋崎陶片ミュージアム

こういう、仕事ぶりまでもイメージできる楽しさがまた、陶片の面白さです。

梅仕事。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

今年もシーズン到来の

梅仕事。

ど素人からスタートした梅仕事も20年も続けると「自分なりの作り方」が身についてくるから不思議です。

定番は梅干しと梅シロップ。以前は梅酒も漬けていたのですが、どうしても砂糖を少なめにしてしまうわたし。家人に不人気でなかなか減らなかったので、作らなくなってしまいました(笑)

ともあれ、梅干しと梅シロップは我が家の必需品。プラス梅味噌、醤油梅(カリカリ梅)、梅肉エキスなどなど、その時の気の向くままに作っています。梅干しと梅シロップの仕込みには、もう本を開くことはなくなりましたが、それ以外になにか作ろうというときに開く本が、これ。

(画像をクリックするとAmazonの本の紹介画面になります)

梅仕事をする際のわたしの教科書は、もう10年以上この「梅ぢから」一冊です。土用干しを簡略化した「ビン干し」梅干しのつくり方が載っているなど、もしかしたら邪道なのかもしれませんが、「きっちり作らなければならない」というプレッシャーから解放してくれるところが、大好きなのです。

ともあれ、そんな梅仕事を続けることができるのも、毎年しっかり実をつけてくれる梅の木のおかげ。その木を育んでくれている花祭の山に感謝です。

 

花祭窯は20周年を迎えました。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

6月9日ロックの日は創業日。

花祭窯は20周年を迎えました。

ありがとうございます。

ずっと、周年祭というのをしたことはなかったのですが、17年目のときに、ふとここまで続けてこれたことの感謝を表したいと思い、開窯記念にお茶をお出しするということをはじめました。

20年続いたというよりは、20年あきらめずに今に至っている、というのが実感です。

それでも20年続けてくることができたのは、いろんな方がいろんな形でサポートしてくださったおかげであることを痛切に感じています。ダンナもわたしも、ほんとうに感謝の気持ちでいっぱいです。

まだまだ道半ば。「花祭窯を応援してきてよかった」と思っていただけるように、全力で取り組んで参ります。

これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

 

もうすぐ津屋崎祇園山笠シーズン。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

もうすぐ津屋崎祇園山笠シーズン。

花祭窯のある津屋崎には、山笠があります。先日、今年の最初の会合があり、いよいよ今年もスタートするのだなぁ、という感じです。山笠シーズンは、地域における文化の継承についてあらためて考えさせられる季節でもあります。

津屋崎の山笠については、これまでも何度も書いてきていますね(^^;)

山笠シーズンが近づいてきました。

今日は、山笠Tシャツについて。津屋崎には「岡流れ」「北流れ」「新町流れ」の三つの山があり、近頃はそれぞれにTシャツを作っています。

上の写真でダンナがきているのは、「新町流れ」の山笠Tシャツ。新町は黄色がメインカラーですが、黄色いTシャツは好き嫌いがあるかもしれない、ということで字を黄色にしています。

7月に入ると週末ごとに山笠の準備があるため、津屋崎千軒界隈には各流れのTシャツを着た人たちが、ウロウロしだします。

2017年の津屋崎祇園山笠は、7月15日(土)が前夜の裸参り、7月16日(日)が追い山当日です。

 

 

生涯学習の研修に参加してきました。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

生涯学習の研修に参加してきました。

花祭窯のある福津市には「郷育カレッジ」という市民のための生涯学習の仕組みがあり、そこで微力ながらボランティアでお手伝いをしているのですが、

福津市には「郷育カレッジ」があります。

ボランティアとはいえ運営に携わる以上、現在の社会のなかでの生涯学習の課題や目指すべき方向について理解している必要がありますよね、ということで研修会が開催されました。

講師は福岡教育大学の井上豊久教授(2017年6月現在)。子どもとメディア、生活体験学習、家庭教育、ボランティア、市民活動などを中心に研究なさっています。

やさしい語り口ながら熱いマシンガントークで、井上先生が実際に関わっている国内外での取り組みの現状や課題をお聞かせいただくことができました。日本国内での大きなトレンドと、地域としての取り組みのあるべき姿、さらに自身の取り組みである「郷育」に落とし込んだ時に、具体的になにがどう求められるのか。

特に印象に残ったキーワードとしては…
新しい「公」、防災とコミュニティ、もっと小さい単位のコミュニティ、自己決定学習、中間支援、祖父母性、「拠点」の重要性 などなどなど。

実践的に生かしていけることを実感する研修でした。学ぶ機会をいただき、心より感謝です。

 

藤吉憲典陶展、無事終了いたしました。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

西麻布・桃居さんでの「藤吉憲典 陶展」無事会期を終了いたしました。

7回目となりました桃居さんでの個展。初日からたくさんのお客さまがお越しくださり、初日~2日目と在廊していたダンナ・藤吉憲典も、たくさんの方とお話しすることができたと喜んでおりました。

ご来場くださいました皆さまに、心よりお礼申し上げます。
ありがとうございました。

今回実はつくり手は「かなり偏ったマニアックな品揃え」となってしまったことを少し心配しておりましたが、会期終了後に桃居のオーナー広瀬さんから、良い展示であったという声が各方面から届いたと嬉しいご連絡をいただき、ホッとしたのでした。

次回はまた1年置いて2019年に桃居さんでの個展機会をいただいております。

今回も在廊中に、桃居オーナーの広瀬さんと、つくり手藤吉憲典はたくさん話をしたようです。次回個展はまた少し思いきった内容になるかもしれません。精進してまいりますので、どうぞご期待くださいませ。

 

久しぶりの九州国立博物館。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

久しぶりの九州国立博物館。

九州国立博物館に足を運んだのは…約2年ぶり。久しぶりに足を運んで感じたことがいろいろと。そのひとつめは

写真禁止。

日本の美術館・博物館では、いまだにこれが一般的だとは思いますが、ロンドンの美術館内で写真を撮りまくってきた身としては、「ああ、そうだった」と少々がっかりしました。もちろん特別展では、他館からお借りしているものへの配慮として当然だと思いますが、せめて平常展の「文化交流展」だけでも写真OKだと良いのになぁ、と。

たしかに自分自身写真禁止の習慣が身についていたので、ロンドンでも毎回監視員の方に「写真OK?」を確認していたのでした。返事はすべて「もちろん、ノーフラッシュでね」というものでした。

模写禁止。

鉛筆以外の筆記用具を使ってはいけないというのは、学芸員の研修でもきっちり習ってきているところなのですが、鉛筆を使っての模写ならOKにしたらよいのになぁ、というのが、ふたつ目のがっかり。

これまた特別展では来場者が多すぎてジャマになる、ということも考えられますが、せめて平常展の「文化交流展」だけでも模写OKだと良いのになぁ、と。

 

いずれも「全面的に禁止」にせざるを得ない状況や事情があるのだろうとは思います。でも、写真OK・模写OKになったら、もっと美術品や文化財など博物館内にあるモノと、鑑賞者との距離がぐっと縮まるのになぁ、とわたしには思えてなりませんでした。

 

ところで

九州文化博物館の誇る平常展「文化交流展」。少し前に大きな展示替えが行われてから初めての訪問でしたが、新しい展示内容も、ワクワクするものがたくさんありました。個人的には、息子が大好きだった「銅鼓」の部屋が無くなってしまっていたのがとても残念でしたが、また新しい「お気に入りの部屋」を見つけるのが楽しみでもあります。

特別展だけでなく、九州文化博物館は平常展「文化交流展」もおすすめです!