読書『ユダヤ人と近代美術』(光文社新書)

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

読書『ユダヤ人と近代美術』(光文社新書)圀府寺 司 著

ちょうどひと月前、アメリカの現代アート市場について、その道のプロである方にいろいろと教えていただいていた時のことです。アーティストだけでなくギャラリスト・ギャラリーオーナーも、コレクターも、美術館のキュレーターも、アメリカではアートに関わるあらゆる場面で ユダヤ系の方々が多く活躍しているという話になりました。

教えていただきながら、北米アート市場に進出したいと言いつつ、自分がそういうことをきちんと考えたことも無かったことに気づかされました。「人種のるつぼ」という多民族国家アメリカ合衆国を言い表す象徴的な言葉を聞いたことがあっても、その現状・背景をアートとのかかわりのうえで考えたことがありませんでした。

まずは少しでも知らなければと頼ったのが、本。「美術」「ユダヤ人」のキーワードで、ドンピシャのタイトルを見つけることができました。2016年1月初版のこの本。多大な時間と労力のかかっている研究成果が、このように一般人でも読みやすい本になっていたことに、感謝!の一冊です。

以下、備忘


  • 「教養」の概念は(中略)ドイツ古典主義の作家たちによって形成された理想的な人間の特性であり、その模範となったのが古代ギリシャの理想である。
  • それはロマン主義的な激情的美ではなく、理性的美を志向し、真善美の調和のとれた人間像を追求した。
  • 個人の真善美と内面の調和が社会も支えると考えられ、その意味で徹底した個人主義的理想であった。
  • 「教養」は個人主義的であると同時に、普遍性志向であり、ある種のコスモポリタン(世界市民)的な理想
  • 知性は最も奪われにくい財産でもあった。
  • この無形の財産の習得によって世界市民としての「市民権」と社会的評価と敬意を勝ち取れる。
  • 〔絵画の領域で〕他の生徒たちより優れていたことで、私は自分が受けていた屈辱に復讐することができた。
  • フィリップ・ファイトが「教養」や「世界市民」の理想のなかに見た普遍性は、古典文化に精通したひとにぎりのエリートたちだけの間でのものだったが、ピサロが絵の中で実現しようとした感覚世界、視覚世界はさらに大きな普遍性とはるかに広い受容者層をもちえるものだった
  • おそらく、啓蒙主義をいち早く実践し、最も早くユダヤ人に市民権を与えたフランスという国が保証し続けた「自由」こそが、芸術が育つために不可欠な土壌だった
  • 印象派以降、ピサロ以降に可能になってきた感覚的な美による大衆的感覚的普遍性
  • 一握りの裕福な家庭出身の知的エリートしかなれない世界市民ではなく、東欧の貧しいメシューゲにも手の届く新しい世界市民への道をシャガールはみつけることができたのである。
  • かつてユダヤ人を追放して衰えた国々のように、異邦人たちに安住の土地を与えられなくなった「芸術の都」はその地位を失っていく
  • これらの人々の主な亡命受入先がアメリカだったことを考えれば、アメリカが獲得した文化的な遺産の大きさも想像できる。
  • 芸術家や画商は、家柄や富、大きな元手がなくても、才能と努力で成功していける仕事である。
  • ロスコは自身の絵画を普遍的な根源的感情、宗教体験を伝えるものと考えていた。
  • 「原初の人間は芸術家であった」
  • 「人間の最初の手仕事は陶磁器ではなく神のイメージをつくることであった」
  • 陶磁器は文明の産物にすぎず、芸術的行為こそが人間にもともとそなわっていた本性なのである。
  • わたしの意図は空間environmentではなく場placeを創りだすことにある。
  • しかし私は、自分の作品が普遍的なものとして見られ、理解されるものであってほしいと望んでいます。
  • 普遍的な価値をもつと信じた美術を創り、それらを守り、それらに関わることで自分たちを支えた。

『ユダヤ人と近代美術』(光文社新書) 圀府寺 司 著より


海散歩。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

海散歩。

ロンドン個展に先立ち「ケンの創作の源になる日常風景写真を撮って!」というSladmore ContemporaryオーナーGerryのご要望にお応えして、ダンナの海散歩につきあうことに。

強風の後だからいろいろ浜に上がっているんじゃないかな!という希望を持って、バケツも持って、そしてわたしはカメラを持って。

我が家から1分足らずで津屋崎浜に続く砂浜に届きますが、今日の散歩先は、ちょっと外海側に出た恋の浦へ。

津屋崎の海(恋の浦側)

立派な貝殻や陶片が上がっているのではないかという大きな期待に対して、思ったほどの収穫が無かった海散歩。とはいえ、小さいけれどピカピカの宝貝や、うちあがった活きサザエなど、面白いものもいろいろ。 むしろ予想通りに行かないからこそ、面白い。

たとえ目に見える収穫物が無くても、海風に吹かれて砂浜や岩場を歩くのは、それだけでも楽しい非日常的体験…ダンナの場合は日常ですが(笑)。日常でありながら、決して毎日同じではなく、予測も簡単ではないからこそ、毎日ワクワクと海に行くのだなぁ、とあらためて。

2019年藤吉憲典個展予定など。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

2019年藤吉憲典個展予定など。

今朝、桃居(とうきょ)さんから個展案内状用の作品送付予定などについてのご連絡をいただき、いよいよ!と気分が盛り上がってまいりました。と同時に、そういえば今年の予定をこのブログでご紹介しそびれていたことに今頃気がつき…(汗)。

2019年も素晴らしい機会をいただいております。
主催してくださる皆さまに、心より感謝申し上げます。ありがとうございます!

2019年3月現在の予定は次の通りです。


5月31日(金)~6月4日(火)
桃居(東京・西麻布)藤吉憲典陶展

桃居さんでの8回目(あしかけ15年!)になる個展です。ずっと温かく見守り続けてくださっているオーナーの広瀬さん、ほんとうにありがとうございます。

桃居さんでの個展は、毎回「最新の藤吉憲典」をご覧いただくチャレンジの場です。今年は明確に「蓋もの」というテーマをもって取り組みます。重箱、香合、筆箱、飾り箱…あらためて取り組んでみると、「蓋もの」って意外といろいろあることに気づきます。どうぞお楽しみに。

10月下旬
未在味在空間(上海)藤吉憲典個展

昨年に引き続き、上海の未在味在空間(Mizai-Ajizai Gallery)さんでの個展です。初めての個展はわたしたちにとってもチャレンジでしたが、思いのほかたくさんのお客さまがいらしてくださり、とてもありがたい機会でした。今回も引き続き関わってくださる方々に心より感謝しています。

今回も前回同様、食の器からオブジェまで、ジャンルにとらわれない「藤吉憲典作品」を、自由な発想で楽しんでいただけたらと思っています。会場では呈茶も予定しています。

12月4日(水)~12月24日(木)
Sladmore Contemporary(ロンドン)
KENSUKE FUJIYOSHI EXHIBITION

大好きなロンドンでの個展です。前回人気だった動物シリーズ、箱シリーズ。その最新作をお持ちいたします。壁面を飾ることのできる半立体の作品も、増えるのではないかと思います。

今回はクリスマスシーズン。コレクター心に響くものはもちろん、ギフトにも喜んでいただけるようなものも、ご覧いただけるといいなと思っています。どうぞご期待ください♪


もうひとつ、12月中旬に上海での企画展に参加予定です。こちらも詳細が決定次第、あらためてご案内いたします。

それぞれ会期が近づいてまいりましたら、その都度ご案内をいたします。あらたに個展案内状をご希望の方は、花祭窯・蕎麦猪口倶楽部のページからお申込みくださいませ。ご案内状の送付は無料ですが、枚数の都合上、開催地に近いご住所の方からお送りしております。

スタート地点に立ちましたね。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

スタート地点に立ちましたね。

たびたびこのブログにも書いていますが、博多の円覚寺で受け継がれている茶道南方流に入門しています。昨日はその懐石茶会の日でした。毎年春の恒例行事で、わたしも入門の翌年から参加しています。

今年はまったく景色が異なりました。というのも、今回はなんと亭主として参加したのです。入門から六年。こんな日が来るとは、一晩明けた今も、なんだか不思議な感じです。

この懐石茶会は正式には「初伝披露懐石」と呼ぶそうです。一定のお稽古を積んだ段階で先生から声がかかり、日頃の成果を披露する「稽古懐石」。お稽古の一環だから大丈夫ですよ、と先生方はおっしゃってくださったものの、特に年が明けてからの二か月間は、試験を控えた学生時分に戻ったような緊張感でした。

お炭手前からはじまり、お料理の給仕、濃茶手前、薄茶点前。利休さんのいう「二時(ふたとき)を過ぎず」すなわち「ふたとき=四時間を越えてはならない」のとおり、ちょうど四時間ほどでおさまる席になります。

お手伝いで参加していたときは、亭主を務める皆さんの集中力のすごさにただただ感嘆していました。いざ自分で務めてみると、やはり四時間集中し続けるのはたいへんなことでした。今振り返ってみると、お料理の給仕が済んだころ=時間にして二時間ほど経った頃には、緊張はしているのに集中が切れてしまっていたように感じます。

お客さまをもてなす大切な濃茶手前・薄茶手前はその後にあるのですから、まったくもって修業が足りていないことを痛感しました。後座(濃茶・薄茶)の手前をなんとかやり通したものの、席に入って見守ってくださった先生がどれほどハラハラなさったか、申し訳ないかぎりです。

片付けまですべて終わり、師匠である和尚様にお礼のご挨拶に伺ったときにかけていただいたのが、タイトルのことばです。そうです。やっと、スタート地点。亭主を務めることによって、自分に足りないものを強烈に自覚することもできました。ここからまた、お稽古を積んで参ります。

お稽古を付けてくださった先生方、茶会開催の段取りを進めてくださった本部の方々、前日から当日にかけての準備と運営をサポートしてくださったすべての皆さまに、心より感謝申し上げます。そして、わたしの遅々たる茶道精進を見守ってくれる家族にも。

2019年3月10日は、わたしにとって大切な節目のひとつとなりました。

単発講座「肥前磁器面白雑学」@朝日カルチャー福岡教室

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

単発講座「肥前磁器面白雑学」@朝日カルチャー福岡教室

肥前磁器面白雑学―窯元おかみが語るエピソードあれこれ―

ご縁があって「肥前磁器(ひぜんじき)」に関する講座を「窯元おかみ」の視点でお話しすることになりました。朝日カルチャーセンター福岡教室での、入会不要の単発講座です。興味のある方はぜひお気軽にご参加くださいませ。

肥前磁器の歴史や技術的なことについては、その道の専門家が多数いらっしゃいますので、「花祭窯のおかみ視点」というのが、わたしがお話しする意味になると思います。窯の創業以来今まで、お客さまから現場でたくさんのご質問をいただいてきました。そんなご質問=皆さんの興味にお応えするような内容をお話しできればと思っています。


肥前磁器面白雑学―窯元おかみが語るエピソードあれこれ―

日時:2019年4月10日(水)13時半~15時
場所:朝日カルチャーセンター福岡教室
受講料:朝日カルチャーセンター会員2,268円、非会員2,808円
講師:花祭窯(はなまつりがま)内儀(おかみ) 藤吉有里

お申込み・お問合せは
TEL 092-431-7751(朝日カルチャーセンター福岡教室)へ


朝日カルチャーさんの申込ページが出来上がりましたら、あらためてご案内いたします(^^)

春はそわそわ。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

春はそわそわ。

3月に入り、なんとなく「変化」の兆しを見たり聞いたりする機会が増えてきました。梅が散り、早咲きの桜がちらほらとお目見え。お天気も晴れたり雨が降ったりくるくると変わります。春ですね。

年度末から年度初めに向かう季節なので、学校や会社など、4月からを新年度とする枠組みのなかで動いている人たちに変化が現れるのはあたりまえですね。そして、そういう人々の人口構成に占める割合が多いからこそ、そうでない人にとってもなんとなく「変化」や「進化」の時期になるんだろうな、という気がします。

このところ我が家に公私さまざま嬉しいお客さまが立て続けにいらっしゃるのも、春だからかしら、と思ったり。季節に後押しされて新しい一歩を踏み出すことができるなら、その波に乗るのもひとつの方法ですね♪

さて写真は、この季節人気の「桜」の蕎麦猪口。ご近所、宮地嶽神社では、寒緋桜が満開です(^^)

お客さまがいらっしゃると、

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

お客さまがいらっしゃると、

きれいになる♪

ここ数日、立て続けにちょっぴりあらたまったお客さま。おかげさまで、ふだん後回しになっていた仕事場の掃除やお片付けが少しばかり進みました。写真は珍しく「足の踏み場がある」ダンナの仕事場。普段はあまりにも雑然としているので「開かずの間」です。

ふだんからギャラリースペースは、いつお客さまがいらしても最低限大丈夫なようにしておかねばと気にかけています。それでも気がついたら棚が乱れていたり、ほこりが目についたり、お花を生けなおすタイミングだったり、ということが少なからず。

「この日、お客さまがいらっしゃる」は、「整理整頓清掃」への最大の動機付け。今日も、おかげさまですっきりです。

3月といえばお雛さま。

おはようございます。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

3月といえばお雛さま。

もう長年我が家の3月を彩り続けているお雛さま。檜扇を持たないお雛さまも、毎年恒例のご愛敬。今年も出て来てくれました。個人的な話ですが、実家にはお雛さまがありませんでした。お雛さまに限らず、季節の行事に関わる飾り物がまったく無かったような。

節句を楽しむようになったのは、ダンナと花祭窯を創業してこの仕事をスタートしてからです。やきものの文様には四季折々の自然や行事にまつわるものがたくさんあり、それらを扱うことによって、自然と意識が向くようになってきました。

創業当時読んでいた本の顔ぶれは、やきものの文様、やきものの歴史に関する本などと並んで、日本の年中行事に関するもの、お祝いの文化に関するものなどが多々。大人になってから(というか結婚してから)、季節行事の愉しみを知ることになった、というところです。

ともあれ、3月になった=お雛さまを飾ろう!と気軽にできるありがたさ。季節の行事にまつわるもの・ことが生活のなかにあるのは、単純に楽しく、気分も華やぎます。

ところで、お内裏さまとお雛さまの並び方。どちらが右か左かの決まりは、地方によって異なるようですね。我が家では、その時の気分で(^^)

確定申告完了。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

確定申告完了。

2018年度の申告が無事完了。毎年のことながら、ほっとします。

国税庁のサイトからの申告も簡単になってきたここ数年。毎年「今年は自分で全部やろうかな」と頭をよぎるものの、決算書作成と確定申告のシミュレーションまで自分でやってみたうえで、最終チェックを市役所が用意してくれる税務申告会場で税理士さんにお願いする、という方法をとっています。

「ここまでできるんだったら、自分でやってしまったらいいのに」とおっしゃる方も多いです。が、少々時間をとってでも申告会場に足を運ぶその理由は、税理士さんに申告書を作成していただく間に交わす会話で学ぶことがいろいろとあるから。

控除について思い違いしていた部分に気づいたり、税制の変更部分を知らされたり、経費の考え方をあらためて教えていただいたり。毎年、何かしら「そっか!」があります。だからといって、自分で作成した申告書と税理士さんに作っていただいたものが大きく異なることは無く、申告額という意味では損も得もありません。

面白いのは、申告会場で出会うほとんどの税理士さんが「わたしはこう考えています」「わたしは顧問先にはこう指導しています」という言い方をなさること。つまり税務申告の場面において「必ずこうである」という部分がもちろんある一方で、解釈にゆだねられる部分もあるということなのですね。

うちは小さな個人事業なので、これまで税理士さんについていただいたことが一度もありません。ですから年に一度、専門家である税理士さん から多少なりとも税務申告とそのための会計(決算)についての見解をいただくことができるのは、貴重な勉強の機会でもあるのです。

なにはともあれ、今年も一安心です(^^)

国宝より家宝。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

国宝より家宝。

創業以来ずっと続く、花祭窯の志(ビジョン)です。

藤吉憲典曰く「評論家に評価されガラスケースの向こうに飾られるものではなく、実際に使う人が身近に置いて大切な人に受け継いでいきたいと思えるものを作りたい」と。器しかりアートしかり、です。

先日、お客さまからとても嬉しいお便りをいただきました。「以前母から贈られた器をずっと使っています。このたび家族が増えるので、同じものを注文しました」と。

つくり手冥利につきるとは、まさにこのようなことだと思います。このようにおっしゃってくださるお客さまの声が聞こえてくると、ダンナともども最高のご褒美をいただいた気持ちになります。

ありがとうございます(^^)