山歩き、海歩き。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

山歩き、海歩き。

筋力をつけたいなと思い、部活動では陸上長距離をしていた息子に相談。体重もどちらかといえば増やしたいと申し添えたところ、筋力を増やすためのウォーキングを提案してくれました。要は、ただ歩くのではなく、負荷をかければよいということ。

まずは、山。近所の花見スポットである大峰山は、ハイキングコースとして人気です。約1時間で歩いてこれるということで、チャレンジすることに。実際に歩いてみると、花祭窯からスタートして、帰ってくるまでちょうど1時間。久しぶりに高低差のあるコースで、途中でバテるのではないかと心配しましたが、気持ちよく歩くことができました。

翌日は、海。高低差こそないものの、やわらかい砂浜を歩くのは、けっこう脚力のいるもの。潮が引いてすぐの砂浜は比較的固く歩きやすいのですが、目的は「筋力をつける」なので、砂浜に足を沈ませつつ歩みを進めます。津屋崎浜から宮地浜へと進み、福間海岸の手前で折り返して帰ってきたら、ちょうど1時間でした。

山を歩いていると、自然と視線が上や遠くに向きます。鳥や木の実や草花が気になりますが、足を進めながら眺めることができ、視界も広がります。それに対して、海を歩いていると、貝殻やら陶片やらが気になり、うっかりすると視線が足元に向かいがちになります。今は姿勢良く歩くのが目的!と自らに言い聞かせつつ、海原の向こうを意識しながらのウォーキング。

ともあれ「歩こう」と思ったときに、海と山のメニューが選べる贅沢環境。思い立ったが吉日、三日坊主にならないよう、さっそくウォーキングシューズも購入。三日坊主になったら、また一から始める、を繰り返そうと思います。写真は海ウォーキングのご褒美、海に沈もうとしている夕日。ありがたいです。

着々個展準備中。

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着々個展準備中。

町田のももふくさんでの「藤吉憲典展」が一週間後に迫ってまいりました。

町田ももふく 藤吉憲典展2020
藤吉憲典展(磁)2020.11.21(土)‐11.27(金)12時-18時
ももふく 町田市原町田2-10-14#101 TEL042-727-7607

個展が開催されるまでの、作家側の準備は、どれくらいかかるのでしょうか?とご質問をいただくことが、ときどきあります。会期の長さ・スペース・ギャラリーオーナーさんのお考え、作家のスケジュールなど、いろいろな要素があるので、一概には言えません。というのが、お返事なのですが、それでは答えにならないので「例えば」でお話しすることが多いです。

例えば、今回のももふくさんの個展。1年以上前にお話をいただいてからずっと、「2020年の年末ごろにももふくさん」と頭に入っていますので、広く考えると、そこから準備が始まっています。ギャラリーさんにより、オーナーさんのお考え、その先にいらっしゃるお客さまの期待などが異なります。作家・藤吉憲典のやりたいことを押し出しつつも、その場に来てくださる皆さんに楽しく喜んでいただけるように、という気持ちが一番。ですので、同じ「和食器」という範疇であっても、個展開催場所によって、並ぶものの顔ぶれは少しづつ変わってきます。

いろいろなものを作りながら、「これは、ももふくさんに良さそう」というものを少しづつ増やしていき、開催2か月前頃には案内状用の候補となる器をお送りします。そのころに一度「ももふくさんでの個展用」の器をざっと並べてみると、「足りないもの」が見えてきますので、そこで作り手はギアを一段アップ。オープンまでの2か月で、充実を図っていきます。

約一カ月前には、案内状が出来上がってきます。その案内状を見ると、オーナーさんの期待が伝わってきます。少しでも多く期待に応えることができるよう、ラストスパート。あとは、時間との勝負になってまいります。ひとつでも数多くご覧いただきたいと思う気持ちと、ひとつひとつにしっかり手間と時間をかけて丁寧に作っていく姿勢と。

会期1週間前ともなると、ある程度目途がついているものの、ギリギリまで窯を入れるのは、「ひとつでも多く、よいものを」という気持ちの表れなのでしょうね。作家が「これでOK」を出したら、あとは出品リストの制作と梱包・発送の実務で、わたしの仕事です。個展の準備は、何年、何回繰り返しても緊張感がありますが、充実感のある仕事です。

大きな変化への第一歩。

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大きな変化への第一歩。

花祭窯の創業地に行って参りました。集落の入り口に入ったところで、思いがけず目の前いっぱいにコスモス畑が広がりました。

いわゆる「限界集落」と呼ばれる条件を備えた場所です。20数年前の当時も、林業も農業も皆さん兼業で、農繁期になると外に出た兄弟やお子さんたちが週末ごとに手伝いに来る景色がありました。年々過疎化が進み、担い手がどんどん少なくなっていました。

それでも1-2年前までは、お米と大豆の二毛作を続けていたと思います。今年の梅雨時期に訪れたときは、棚田状の農地が水田になっていなかったので、「今年は大豆だけなのかな」と、単純に考えておりました。

11月、いつもならそろそろ収穫期の大豆畑が見えるものと思い込んでいたところに、このコスモス畑。もちろん「わぁ!きれい!」ではあったのですが、同時に「ついに農業の担い手がいなくなったのだろうか」と、現実的な想いがこみ上げてきました。そして「いったい誰が、このコスモス畑を主導したのだろう?」と。

林業も農業も協働で補い合ってきたムラのこれまでの在り方を振り返ったとき、米や大豆の生産をやめるという決断と、そのあとをコスモス畑にするという発想を実現することは、困難な道のりだったのではないかと想像できます。新しい考え方を受け入れるのには、とても時間のかかるコミュニティでしたから。でも、目の前にあったのは、荒れた農地が取り残された景色ではなく、可愛らしいコスモス畑。

思えば工房を移転してもうすぐ10年。創業地に足を運ぶたびに、ご近所さんから「どんどん人が減ってね…」と聞かされていました。そして今回、大きな転換期にあることを突然目の当たりにしたのでした。ここに至る経緯がわからないだけに、ほんとうに驚きましたが、写真をとりながら、少しづつ気持ちを整理することができました。前向きな変化があることを感じたコスモス畑でした。

何年経っても、創業地はわたしたち花祭窯の原点であり、そこに立てば初心の志がありありと蘇ってくる場所です。これからも足を運び、村の変化も見守っていきたいと思います。

Dogs, Cats and Other Best Friends – A Selection of Animal Sculpture

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

Dogs, Cats and Other Best Friends – A Selection of Animal Sculpture

ロンドンの老舗ギャラリーSladmore Gallery の展覧会「Dogs, Cats and Other Best Friends – A Selection of Animal Sculpture」の詳細がオープンになりました。少し前にこのブログでも告知いたしましたが、近現代のアーティストの素晴らしい彫刻作品に並んで、藤吉憲典も数点作品参加いたします。

欧州ではコロナ感染の再拡大で、外出規制などが少しづつ強化されてきていて、英国もまたその例に漏れません。「クリスマスを楽しむために」を合言葉に、今自粛することを決めたという話も聞こえてきます。そんななか、昔から人々にとってかけがえのない生活のパートナーであり友人である動物たちをテーマにした彫刻の展覧会は、心温まる素敵な展示になること間違いありません。

顔ぶれは、犬、猫、羊、馬、牛、ウサギ、ラクダなど。Sladmore Galleryの所蔵する近現代を代表する彫刻家の作品に加え、Sladmore Contemporaryの所属アーティストがつくる動物彫刻の最新作を一堂に見ることができる、貴重な機会です。この展覧会に足を運べないのはとても残念ですが、イメージするだけでワクワクします。

期間中は、状況によりアポイントメントによるオープンになることも予想されます。お出かけ前に、必ずギャラリーにご確認くださいませ。


Dogs, Cats and Other Best Friends – A Selection of Animal Sculpture

16 November – 22 December 2020
The Sladmore Gallery
57 Jermyn Street, St James’s,
London, SW1Y 6LX

干支の置きもの-丑-

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

干支の置きもの-丑-

ここ数年、「そろそろ干支に取り掛かって欲しいなぁ」という年末が続いておりましたが、今年は早めに仕上がりました。町田ももふくさんでの個展を控え、ぜひ間に合わせようと、昨年よりひと月以上早く丑(牛)が出来上がり。

そもそもは、ご近所さんへの年末年始の挨拶回り用に、非売品でつくりはじめたのが「干支の盃」でした。盃が十二支を一周したので、次に作りはじめたのが「干支の箸置き」でした。このころから「販売して欲しい」というお声をいただくようになり、次第に箸置きというよりは「置きもの」に変化してきて今に至っています。

干支丑 青磁の牛 藤吉憲典

写真は、本窯からあがったばかりの牛の皆さん。つくりが素晴らしくできたので、まずは青磁のみで仕上げています。たしかに青磁で仕上げると、造形の美しさが際立ちます。が、欲張りなわたしとしては、白磁バージョンも見て観たいなぁ、と。ひそかに白い牛の登場を心待ちにしているところです。

干支のシリーズは、毎回そのお正月までに作った分の売りきりで、リピート制作はありません。2021年干支の丑の初お目見えは、ももふくさんの個展です。


ももふく
藤吉憲典展(磁)
2020.11.21(土)‐11.27(金)
12時-18時
町田市原町田2-10-14#101
TEL042-727-7607

立冬も晴れの好日。

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立冬も晴れの好日。

暦の上では冬に入りました。この週末は衣類を入れ替えたり、冬布団を出して干したり、ストーブを点検したり、居間のラグがくたびれていたので暖かそうなものに買い替えたり。このところ風のないカラリとした晴天が続いたので、季節の家事も快適に進みます。今年の秋は穏やかな日が多くて、久しぶりに、秋ってこんなふうだったなぁ、としみじみ感じました。

朝晩の冷え込みで、紅葉も進んでいますね。週末のSNSには、友人たちが登山をしていたり、紅葉狩りに出かけていたりと、美しい季節の風景が全国各地から届き、こちらまで嬉しくなりました。外に出て、季節を楽しみ、春から続いた閉塞感を少しでも吹き飛ばして、心も体もリフレッシュ!にぴったりの季節。

とはいえ、個人的には特段お出かけの予定も作らず、淡々と日々の家事・仕事をしています。そのなかで見つける「晩秋らしさ」もまた、ちょっとしたリフレッシュのタネ。ツワブキの黄色い花が咲いていたり、ダンナが山からムカゴを採ってきたり、ご近所さんから柿をいただいたり、朝市の魚市場に並ぶヤズ(ブリの幼名)に脂がのってきたり、早朝見上げる空の月が冴え冴えと美しかったり。

気持ちが安定する晴れの日は、行楽日和であるだけでなく、日々の仕事や家事にも最適なのだと実感する今日この頃です。

読書『ミザリー』(文藝春秋)

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読書『ミザリー』(文藝春秋)スティーブン・キング

スティーブン・キングによる文章指南の本『書くことについて』を読んだのは、2019年10月のことでした。約一年前。そのうえで『ミザリー』を読みなおさねばと思いつつ、読むのにエネルギーが必要なことがわかっているので、時期を選んでいるうちに、時間が経ちました。スティーブン・キングの本はホラーがメイン。そのなかでは本書は、サイコサスペンスに近いと思います。ホラーは苦手なので、わたしは『ミザリー』と『書くことについて』以外は読んでいません。

さて『ミザリー』。わたしのなかで、ミザリーといえば、キャシー・ベイツ。彼女がアニー・ウィルクスを演じた映画『ミザリー』が公開されたのは、検索してみたところ1990年でした。30年前。実は自分が中学生ぐらいのころかと勝手に思い込んでいたのですが、そこまで古くはありませんでした。

その数年後にテレビで見たのが最初だったと思います。テレビの小さい画面にもかかわらず、インパクトの大きさは凄まじく、映画館で観なくてよかった映画のひとつです(笑)。実のところつい最近まで、キャシー・ベイツがどんな映画に出て、どんな役を演じても(とても優しくていい人の役であっても)、『ミザリー』での印象が勝ってしまって、怖かったものです。

『書くことについて』で、スティーブン・キングの創作背景を垣間見ることができたので、少しは客観的に読むことができるかと期待しつつ読書スタート。期待を裏切り、気が付けばすっぽりと小説世界に入り込んでいました。主人公が追いつめられていく心理戦の恐怖は、大まかなストーリーや結末が分かって読んでいても、まったく軽減されず…。

ただ今回、小説を読むことによってアニーの新たな側面を発見し、アニー像を少し上書き修正することができたのは、わたしにとって新鮮なことでした。それは、彼女の小説・創造世界に対する知的な洞察力とでもいいましょうか。ストーリー展開に対して「あんまりリアリスティックじゃないけれど、でもフェアだわ」と評するセリフがあり、この一言でアニーを見る目が約30年ぶりに少し変わりました。

それにしても、読み終えるのに消耗しました。個人的には、他の方に積極的におススメする本ではありません。

菊の見頃。

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菊の見頃。

シュウメイギク

花祭窯の庭では、シュウメイギクが見頃です。菊と言えば、九月九日重陽の節句=菊の節句ですが、日本国内で「菊シーズン」というと、今頃のイメージ。11月3日の文化の日前後で菊の展示会やお祭りをするところが多いですね。菊を「市の花」としている大阪枚方市の「ひらかた菊フェスティバル」(名前を変えつつ続いている菊祭^^)も、例年この時期で、今年は10月28日(水)から11月16日(月)となっています。

菊は、陶磁器に描かれる文様のなかでも、古くから人気のあるもの。カタチにおいても「菊型」の鉢やお皿は人気です。日本でいう「松竹梅」にあたるものとして、中国では「四君子」と呼ばれる草花が、高貴でおめでたいものとして愛されていますが、その四君子の顔ぶれが、竹・梅・蘭・菊。

日本では皇室の紋章に使われていることもあり、やはり文様としては高貴な印象。江戸の昔から桜についで人気のある文様であることは、肥前磁器の古い器に残る文様の顔ぶれを眺めると一目瞭然です。とにかく多種多様。

野菊

近所の産直市場で見つけ、思わず手に取った菊は、野菊の風情。豪華絢爛な鑑賞用の菊も良いですが、身近に飾るものとしては、こういうものが可愛らしくて好きです。野菊は強いのも魅力。切り花にして生けたときに、けっこう長く咲いてくれるのはありがたいことです。まだしばらく、菊シーズンを楽しめそうです。

ストーブ出動。

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ストーブ出動。

この秋は、朝晩の冷え込みが、ここ数年よりも早く訪れているように思います。写真は秋の大峰山から見下ろした玄界灘。寒風を思わせる白波です。

干し柿、紅葉と、季節の景色もどんどん冬に向かっています。そんななか、早々とストーブを出してまいりました。最近の若い方には「石油ストーブ」を知らないという方もおられると聞きますが、純日本家屋の我が家には必須の暖房器具。

石油ストーブのなにが嬉しいかというと、「暖かい」に加えて、火のうえを活用できること。常にヤカンでお湯を沸かすので、いつでもアツアツのお湯がポットいっぱい。紅茶もコーヒーもすぐに淹れることができるのは、ささやかな幸せ。そして台所を預かるものとしては「煮込み系料理」が簡単にできる嬉しさ。鍋に材料を投入して、ストーブの上に置いておけばある程度完成するのですから、強い味方です。煮る時間がかかる豆類の下茹でが放っといてできるのも、ありがたく。

この秋初点火した昨晩は、ストーブの上で焼き芋を作りました。水で濡らしたキッチンペーパーでお芋を包み、そのうえからアルミホイルで包めば、鍋要らず。火が通りやすいよう小さめのお芋を選び、ときどき菜箸で転がしながら、甘い香りがしてきたらできあがり。

昔は焚火で焼き芋でしたが、今どきはストーブで焼き芋。そのうち石油ストーブも無くなって、焼き芋もお鍋でつくるものがあたりまえになるのでしょうね。わざわざつくるのではなく、「火があるついでに作る」のが焼き芋の楽しさだと感じていましたが、そんな焼き芋文化も少しづつ変わっていくのだなぁ、と思いつつ。

読書『花のれん』(新潮文庫)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『花のれん』(新潮文庫)山崎豊子著

山崎豊子作品、冊数の少ないものから読み進めています。デビュー作『暖簾』に続き『女の紋章』(これは上下巻ありましたが)、そして今回の『花のれん』。いずれも著者の「大阪船場商人の世界」への執心が感じられる作品でした。アプローチは異なれど、登場人物の姿を通じて「いかに商売をするのか=いかに生きるのか」を見せつけられました。自営業者であるわたしとしては、楽しみながらも考えさせられるところ少なからず。

さて『花のれん』。文庫裏の紹介文に「大阪商人のド根性に徹した女興行師の生涯」と書かれていますが、その主人公のなりふり構わず頑張る姿が、なんとも愛おしかったです。ダメ亭主を亡くした後の本領発揮ぶり、商売人ぶり。人によっては「えげつない」と感じるのかもしれませんが、わたしは読みながらついつい応援していました。それは主人公がどれほど必死に考え、自ら動いているかが、伝わってきたからにほかなりません。思わず、わたしももっと足を動かさないと…と反省。

山崎豊子作品を読みはじめてまだ三作目ですが、面白いなぁと思うのは、著者の登場人物に対する「えこひいき」とでも言えそうな描き方をしばしば感じること。えこひいきされるのは主人公とは限らず、書中で悪役としてふるまっている登場人物であっても、著者の愛情がひしひしと伝わってくることがありました。

そろそろ、大作に手を伸ばそうと思います(^^)