花祭窯の残暑の庭:百日紅(サルスベリ)が咲きました!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

花祭窯の残暑の庭:百日紅(サルスベリ)が咲きました!

我が家のサルスベリは、毎年ゆっくりめ。どれくらいゆっくりかというと、ご近所のサルスベリよりも、約一か月遅れで咲きはじめる感じです。毎年のことなのでわかってはいるものの、ご近所で色とりどりに咲いているのを見ては、今年もちゃんと咲いてくれるかなと少々ドキドキします。

で、今年もちゃんと咲いてくれました。青空に映えますね~♪

花祭窯のサルスベリ

待ちかねたので、喜びもひとしお。つぼみがついている枝がいくつもありますので、これからが楽しみです。盛夏から晩夏は、花祭窯の小さな庭に花の少ない時期なので、濃い緑のなかに貴重な色彩なのです。

花祭窯の露草

庭で見つけたほかの色彩は、↑こちらの露草の紫色と、↓トンボの赤。

花祭窯の庭 トンボ

気がつけば、朝からうるさいほどだったセミの声も聞こえなくなり、外には蜻蛉が群舞する季節になりました。残暑はまだまだ厳しくて、暑さがいつまで続くのかと気になりますが、こうして着実に秋が近づいている風景を見ると、励まされますね。

読書『休館日の彼女たち』(筑摩書房)八木詠美 著

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読書『休館日の彼女たち』(筑摩書房)八木詠美 著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚。おかげさまで「初めまして」の著者の方々に、出会うことが出来ます。今回も、おそらく「初めまして」。

タイトルに「館」とつくと、無条件に気になります。図書館、美術館、博物館…と、自分の好きなものを連想させるからですね。本書の「館」は美術館でした。そのうえ表紙の装画は、ルネ・マグリット。マグリットっぽいなぁ、と手に取りましたら、その通りでした。「困難な航海」というタイトルの画だそうです。

最初わたしは、どういうわけか、舞台はどこか海外の美術館…と思い込んで読んでいました。でも読み進めるうちに、いや、これふつうに日本が舞台だわ、と理解。「主人公が、美術館にいる古代ローマ彫刻・ヴィーナス像の、ラテン語でのお喋り相手になる」という設定から、勝手に「海外に留学し、卒業後もその地にとどまっている女性の物語」とイメージしてしまっていました。「ここにいる彫刻の像は、絶対夜中におしゃべりしたり動いたりしている!」というイメージを、海外の美術館・博物館で実際に感じたことがあるからかもしれません。

さて本書の著者もまた、「ここにいる彫刻の像は、絶対夜中におしゃべりしたり動いたりしている!」というイメージを抱いたことがあるからこそ、このストーリーが出来上がったのだろうと思います。そこに、主人公をはじめとした登場人物の「人と関わりながら生きるしんどさ」のようなものが合わさって、ストーリーが進みます。筑摩書房のサイトの紹介文のなかに「コミュニケーション不全」という単語が出てきて、なるほどテーマはそこか、と思いました。

設定はかなり突飛ですが、それに反して、とても静かな筆致で、独特の世界観が広がっています。わたしは個人的には、この世界観は嫌いではありません。八木詠美さんの著作も、ちょっと追っかけてみたいと思います。

『休館日の彼女たち』(筑摩書房)八木詠美 著

郷育カレッジ2023「福津の仕事人 建築のひみつ」を受講してまいりました。

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郷育カレッジ2023「福津の仕事人 建築のひみつ」を受講してまいりました。

本日の郷育カレッジは、福津市商工会青年部が担当してくださる「福津の仕事人」シリーズから、大工さんと建築士さんによる「建築のひみつ」の講座でした。人気シリーズで受講希望者が多く、抽選でした。わたしは昨年は抽選に外れていたので、今年は受講出来てラッキーでした。

さて「建築のひみつ」。前半は、株式会社住幸房(すまいこうぼう)の代表であり大工さんである池尾拓さんによる、大工さんの仕事の説明と、家が出来るまでのお話でした。日本の伝統的工法を守り受け継ぐことを使命にしておられる池尾さん。木を中心とした家づくりのお話は、わたし個人的にとても興味深い分野でしたので、ありがたかったです。実際に家を建てる様子を撮った動画映像は非常に面白く、どれほどの「手間」がかかっているのかを、ビジュアル的に感じることが出来ました。

後半は、建築設計を手掛ける相良友也建築工房の1級建築士である相良友也さんによる、建築模型作りのワークショップ。これがまた、とても面白かったです。実際に相良さんが設計した家の模型を、ペーパークラフトで作りました。実際に立っている家の模型を作るという経験は、なかなかできるものではないと思います。現地の写真で外観や中の様子を見ることが出来、そのイメージをもって手を動かすという作業。用意していただいたペーパークラフトは、カッターと糊を使った作業で作りましたが、不器用なわたしでも時間内に作り上げることが出来るよう、工夫されていました。

夏休み期間中とあって、受講生のほとんどは小学生。皆とても嬉しそうに話を聞き、ワークショップに取り組んでいました。今回の受講生の顔ぶれは子ども中心でしたが、これは大人の皆さんにとってもかなり興味深い内容なはずなので、ぜひ大人向けにも開催できたらいいな、と感じました。大満足の講座でした♪

読書『クワトロ・フォルマッジ』(光文社)青柳碧人著

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読書『クワトロ・フォルマッジ』(光文社)青柳碧人著

お盆休みはとっくに終わっておりますが、いつものカメリアステージ図書館から借りてきた「お盆読書」記録4冊目です。

美味しそうなタイトルと表紙です。そしてたしかに「クワトロフォルマッジ」は関係があるというか、そこにかこつけてはあるのですが、ストーリーの重要な位置を占めるものというよりは、アクセサリー的な要素に思えます。ジャンルは、ミステリーなのかもしれませんが、ミステリーっぽくありません。個人経営の小さなピッツエリアを舞台として、殺人事件が起こるのですが、殺人事件が起こっているという緊迫感はほとんどありません。

それぞれにちょっとクセがある登場人物の描写が面白く、そこが読みどころと感じました。ふつうに「ありそう」な設定と、「その辺にいそう」な人物たちでストーリーはスタートしますが、読み進めるうちに状況のおかしさというかズレが大きくなっていき、「いやいや、そんなわけないやん!」と、心のなかで突っ込む回数が増えていきます。

登場人物それぞれのセリフや行動を読んでいるうちに、わたしのなかで勝手に脳内キャスティングがはじまりました。この役は誰がやったらハマるだろうな、と、俳優さんの顔がすんなりと浮かんでくる面白さがありました。あの役は西島秀樹さん、この役は田口浩正さん、あの子は永野芽衣ちゃん…など、勝手にイメージが膨らみました。

サクッと読み終えることのできる娯楽小説でした。いろいろ考えずに読めます。青柳碧人さんの著書を読むのはたぶん初めてだったと思うのですが、この軽さは嫌いではありません。

『クワトロ・フォルマッジ』(光文社)青柳碧人著

ちなみに2023お盆読書記録、他の3冊は以下の通り。いずれも「あたり!」でした。

津屋崎千軒民俗館「藍の家」で、展示「戦時下のくらし」を見て参りました。

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津屋崎千軒民俗館「藍の家」で、展示「戦時下のくらし」を見て参りました。

藍の家(あいのいえ)は、花祭窯のご近所さんです。国登録有形文化財。建物自体の価値・見応えもさることながら、館内で開催される展示やイベントにも工夫を凝らしておられます。なかでも、季節ごとに定期的に開催されているものは、年々資料も増え、どんどん重厚な展示になっていると感じます。

そんな、季節の定期開催の展示のひとつが、夏季に開催されている戦争関連の展示です。現館長さんになられてからの取り組みで、その展示企画への共感・反響が大きく、年々資料が増えているもののひとつだと思います。展示最終日の先日、閉館前に滑り込みで拝見してまいりました。

今年は特に「証言」を多数集め、資料としておられました。「証言で考える戦時の暮らし」。自分たちが暮らしている福津で、どのようなことが実際に起こっていたのか、その地に暮らしている(暮らしていた)方々の生の証言だからこそ見えてくるものが、とてもたくさんありました。

一学芸員としてなるほどと感心したのは、展示物となる資料は遺物にこだわらなくても、証言自体をテキストに起こし展示することによって、立派に展示資料となるということ。証言者の顔写真を添えることで、より力のある展示となっていました。「伝えたい」という展示側の強い気持ちが形になっていました。

また展示されていた遺物のなかで、やきものの仕事関係者として目を引いたものは、磁器製のフォークとナイフ。金属類がすべて供出に回されたあと、磁器制作の技術がその代替として活躍したことがわかります。手に取ることが出来ましたので、触って見たところ、フォークの先はしっかり尖り、ナイフの刃もシャープでした。実際の使用感はわかりませんが、このようなものを作っていたのですね。

それにしてもすごいなぁ、えらいなぁと思うのは、市の所有物でありながら、運営を担っているのは「藍の家保存会」というボランティア団体であること。市からの予算がとても小さいなかで、さまざまな工夫で社会教育施設としての役割を担っておられます。文化・教育関連の予算がないがしろにされているのは、そもそも国の方針がそうなので、福津市だけの課題では無いかもしれませんが。ともあれ、現館長さんはじめ、藍の家のスタッフの皆さんには、頭が下がります。

今年の展示は終了いたしましたが、また来年の夏に向けて、資料収集が進むことと思います。日本では、夏は戦争と平和を考える季節。ぜひ来年の夏は、藍の家でいかがでしょうか。特に、教職など子どもたちの教育に関わる立場にある方々には、ぜひ足を運んでいただきたい内容です。自分たちの住んでいる場所の名前が出てくる資料は、反戦映画など「他所での昔の出来事」ととらえられがちなものよりも、切実さを伴って伝えることが出来ると思います。また来年、次は会期の早いうちにご紹介できればと思います。

象形文字の楽しさが、ジワジワ来ている今日この頃。

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象形文字の楽しさが、ジワジワ来ている今日この頃。

作品発表が本格スタートした、藤吉憲典の「書画作品」。このところ肩書も「Ceramicist(陶芸家) / Porcelain Sculptor(磁器彫刻家) / Ink Drawing Artist(書画家)」となっています。まとめて「Artist」としても良いのかもしれませんが、長々としても「何をしている人か」わかりやすい方が良いかな、というのが今のところの考えです。書画家の訳は、当初「Ink Painting Artist」としていたのですが、paint は「塗る」がメインであり、むしろ「描く」を強調するdrawの方が良いのではないかというアドバイスがあり、変更しています。

さてそんなわけで、藤吉憲典の公式サイトにも書画作品を掲載せねばと、現在プチリニューアル作業に入っているところです。作家のサイトは日英両言語で制作していますので、あらためて、作品タイトルを含め「英語でどう紹介するか」を考える機会になります。例えば、書画作品の「馬」。

藤吉憲典画 馬

Horse pictograph(藤吉憲典作)

漢字の「馬」を崩して、馬の画に描き直しているものです。日本人の目には、詳しい説明をしなくても「なるほど!」と理解してもらいやすいと思います。作品タイトルを作りながら、海外の方にもわかりやすいように、と辿り着いたのが「象形文字」であることを、タイトルに含めること。最初「hieroglyph」と思ったのですが、これは古代エジプトの象形文字を指し、文字に神秘的・呪術的な意味や力を持つとされていることが判明。日本語や中国語の漢字の象形文字は「pictograph/pictogram」と訳する方が、ニュアンス的に近いようです。ピクトグラフ(またはピクトグラム)すなわち「絵文字」。そういえば、ピクトグラムは先般のオリンピックで話題になりましたね。

絵から漢字になったものを、また画としてデザインし直す。この「馬」をはじめ「兎」「象」「鳥」など、象形文字シリーズが生まれています。書道を習得していく際に、さまざまな書体を学んできた藤吉憲典らしい作品群だと言えるでしょう。「Animal Boxes」として愛されている陶箱シリーズと同様、動物や自然界のものが題材になる象形文字シリーズを、どうぞお楽しみに!

読書『アンダークラス』(小学館)相場英雄 著

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読書『アンダークラス』(小学館)相場英雄 著

お盆読書記録が続きます。お友だちが読んで感想をSNSにアップしていた本から興味を持った一冊。いつものカメリアステージ図書館にありました。気になったときにすぐに探すことが出来て、たいていは見つかり、すぐに予約出来るありがたさ。図書館で予約しましたが、数人待ちでした。予約待ちは、ふだんわたしが読もうとしている本には珍しく、注目度の高さが伺えました。

ひとつの殺人事件を解決するまでを通して、「下級国民」へと突き進む日本の現実を描き出しています。派遣労働・外国人技能実習生・超格差社会の問題を、外資系IT(流通)企業を通して浮き彫りにしています。ストーリーに登場する外資系企業は、読めばどこがモデルになっているかすぐにわかるでしょう。本書はフィクションですが、そのフィクションの背景にある現実を突きつけられ、うすら寒い思いがしました。

「これから、日本人が景気の良いアジアに出て、仕送りする日がくるね」というセリフが出てきます。すぐそこまで来ている現実でしょう。コロナ禍が明けて、海外からの観光客が増えてきた博多駅周辺を見ていると、そのひとつの傾向が見てとれます。コロナ禍前から多かった韓国・台湾・中国からの旅行者と同じくらい、欧米諸国からの旅行者の数が増えているのです。これは、日本の人気が高まったからではなく、相対的に「日本への旅行が安上がり」だからだと、旅行業に携わる友人が教えてくれました。

発行元の小学館のサイトを読んだところ、本書は『日本経済の末路を予言した「震える牛」シリーズ』の最新刊と位置付けられるということで、著者・相場英雄氏が社会的なテーマでこれまでにも著しているようです。相場英雄さんの著作を読んだのは今回が初めてでしたので、ちょっと遡って読んでみたいと思います。

『アンダークラス』(小学館)相場英雄 著

映画『バービー』を観て参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

映画『バービー』を観て参りました。

2023年の映画6本目は『バービー』。上の写真は、映画の公式サイトトップページの一角。マーゴット・ロビー主演と聞いて、これは観に行かねば!と決めていた作品でした。映画『アムステルダム』でその美しさに惚れ惚れし、その後『バビロン』があったものの、あまりの上映時間の長さにパスしてしまったので、今回は必ず見たいと思っていました。

さて『バービー』、映画館から帰ってきてからダンナに「どんな映画?」と問われ、はて、と考えました。ちょっと一言で説明するのは難しい映画です。公式サイトでは「ドリームファンタジー」となっていますが、わたしはむしろ「ブラックユーモアコメディ」と受け取りました。かなりの社会批判が込められた映画で、コメディ仕立てに仕上げたもの。考えさせられるキーワードが次々飛び出す一方で、吹き出しそうになり笑いをかみ殺す場面も多々ありました。

そして、やはりマーゴット・ロビーはとっても美しかったです。「完璧」なバービー人形の世界観を地でいく美しさ。眼福の2時間でした。あと、音楽もかなり良かったです。ただ、絶対に映画館のスクリーンサイズで見るべき映画かと問われると、そこは少々「?」かもしれません。それを思うと、むしろ『バビロン』こそ映画館で観ておくべきだったのかもしれません。

前回の映画ブログで「今年上半期は、最寄りの映画館で「これ観たい!」と思える映画が少なく」と書いておりましたが、下半期はこの『バービー』を皮切りに、観たい候補が続きます。まずは今月下旬公開の映画『エリザベート1878』。楽しみです♪

そして、8月15日は盆踊り本番でした。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

そして、8月15日は盆踊り本番でした。

盆踊りの練習をしました!と書いたのは、つい数日前のことでした。

で、当日。初盆を迎えた方々の法要がひと段落した夜8時から、盆踊りスタートです。小さな櫓(やぐら)を見上げれば、三味線、笛、太鼓の面々が勢ぞろい。今年も生唄生演奏の、とっても贅沢な盆踊りでした。

初めは「今年はちょっと少ないかな」と思えた踊り手の数も、演奏が始まるとそろそろと増えだしました。例年顔を見るベテランさんを探しては、その後ろから踊ります。久しぶりに顔を合わせる知人友人も多数。お盆で帰省中の方々の顔を見るけることも出来ました。素晴らしいと思ったのは、初めてご参加と思われる親子連れが何組もたくさんいたこと。子どもが見様見真似で踊る姿はなんとも可愛らしく、嬉しくなります。踊りの輪の少し脇には、車いすで踊っているおばあちゃんもあり、まさに世代を超えたお祭りです。

数日前に練習はしていましたが、そのときは録音の音楽でしたので、やはり生演奏での盆踊りは格別です。唄のテンポが唄い手さんのペースで、早くなったりゆっくりになったり、変わるのもご愛敬。津屋崎の盆踊りの曲はとても長く、エンドレスに思えるかのような繰り返しで踊り続けます。軽いトランス状態(笑)。でも、あの世から帰ってきていた方々をお見送りするための踊りですから、そういうものかもしれませんね。

今回もうひとつ素晴らしいな、と思ったのは、唄のメンバーに高校生ぐらいと見える若いメンバーが何人かいたこと。ベテランから若手へ、受け継ぎながら続いているのですね。ああ、こうやって受けつがれていくのね、と、こちらも嬉しくなりました。盆踊りの踊り自体が難しく、なかなか指導者が育成できずに困っているという話も聞きましたが、なんとなく、大丈夫のような気がしました。

津屋崎に越してきて12年、この地にお墓を持っているわけでもありませんが、まるでジモティのように盆踊りに参加しています。

また来年♪

読書『絵師金蔵赤色浄土』(祥伝社)藤原緋沙子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『絵師金蔵赤色浄土』(祥伝社)藤原緋沙子

お盆休みをガッツリとっているわけではないのですが、なんとなくお休みモードでゆっくりしていることもあり、読書が進んでいます。

いつものカメリアステージ図書館新刊棚で、真っ赤な表紙に白抜き文字の「絵金」が目に入り、あれ?これは四国の…と、ぼんやりと記憶が反応。年初めにチェックした、2023年絶対見逃せない美術展のなかに絵金さんの展覧会があり、「これは観たい!」と思ってリストアップしていたのでした。

展覧会「幕末土佐の天才絵師 絵金(あべのハルカス美術館)」。足を運べないまま、すでに会期は終了していますが、それだけに、本書に出会えたことはラッキー!でした。幕末動乱期の四国。地方の藩においてもあらゆる身分の人たちが時代に翻弄され、そのなかで「絵師」という身分がどのように扱われたのかが伺える小説でした。

当時のいわゆる正統派である「狩野派」のお墨付きを得た主人公・金蔵が、次第に歌舞伎や人形浄瑠璃といった市井の風俗に惹かれ、それらを題材とした作品を描かずにいられなくなっていく様子には、絵描きという人種の持つ衝動の激しさを感じました。

本書を読み終えて、あらためて、絵金さんの展覧会を観たかったなぁ、と。ならば、高知県香南市にある絵金蔵に行くのが良いかもしれませんね。現地で見るのが一番ですから、ちょっと真剣に検討したいと思います。

『絵師金蔵赤色浄土』(祥伝社)藤原緋沙子