福津市の社会教育システム「郷育カレッジ」、2024年度カリキュラム編成も大詰め。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

福津市の社会教育システム「郷育カレッジ」、2024年度カリキュラム編成も大詰め。

福津市の社会教育の仕組み、郷育カレッジ。毎年、さまざまな分野で合計100本前後の講座を計画・実行しています。福津市内在住の市民はもちろん、福津市内事業所への通学・通勤者も参加することが出来る、福津民のための生涯教育システムです。

郷育カレッジの運営委員会では、毎年、年が明けると次年度のカリキュラム編成が本格化し、3月にはほぼ内容・依頼先が確定。4月末には新年度のパンフレット構成がほぼ出来上がり、ゴールデンウィーク明けには校了・印刷へと進み、7月の開講に向けて6月には市民の皆さんに全戸配布となります。

というわけで、この3月から4月にかけてが、2024年度のテーマとカリキュラム確定の、一番忙しい時期。限られた時間内で、つつがなく進めていくことが求められます。進行スケジュール的にはほぼ毎年同じとはいえ、郷育カレッジ運営の肝となる仕事が年度替わりに重なりますので、担当の市役所職員さんは毎年たいへんそう。ここに人事異動が重なったりすると、さらにたいへんなので、異動が無いことを祈る時期でもあります。

だからこそ、異動の無い市民委員の存在が重要であったりします。どんな組織の仕事でも、担当者が変わると本来の志がきちんと受け継がれずに変容してしまう危険性が伴います。そこがブレないように守っていくのが、市民委員の大切な役割の一つだと、年を重ねるほどに思います。

受講生の皆さんに楽しく学んでいただけるように、価値ある機会を提供できるように、しっかり務めて参りたいと思います。

Proliferation and Expansion

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Proliferation and Expansion

気がつけば、英会話レッスンに通うようになって、そろそろ10年かな、というところ。fluent speaker(すらすらとしゃべれる人)には程遠いものの、スタートした当初に比べたら格段に良くなっていることは間違いなく、ずっとサポートしてくださっている英会話教室Blue Planetのトラちゃんには、心より感謝なのです。

ここ数年は月1回のマンツーマンレッスンで、わたしがつけている「英語で3行日記」を添削してもらいながら、お互いの近況を1時間おしゃべりするのが、毎回のレッスン内容です。教科書無しのフリートーク。お互い家族が同世代であること、ご近所であることから共通の話題は多く、おしゃべりに夢中になって、毎回レッスン時間をちょっぴりオーバーしてしまいます。

本日のタイトル「Proliferation and Expansion」は、「英語で3行日記」を添削しながらトラちゃんが褒めてくれた表現でした。毎年初めに掲げる、花祭窯の「経営指針書」の説明をしていた時に出てきたものです。

2024年のテーマに掲げた「増殖と拡散」を、英語でどう伝えようかと思ったときに、辿り着いた単語が「Proliferation=増殖・普及」であり「Expansion=拡大・展開」でした。このように置き換えてみれば、日本語よりもむしろ自分の意図するところが伝わりやすい表現となり、自分でも「お!」と思っていましたので、そこを褒められて嬉しくなりました。ただ「Proliferation」はそれまでにあまり使ったことがなく、馴染みの無い単語でしたので、未だすらすらとは口から出てこないのですが(笑)。

ともあれ一つ褒められると、言葉磨きが楽しくなってくるものです。好い表現を探し出し、それらが自分の口から自然と出てくるように、これからもコツコツ続けていきたいと思います。

ギャラリー栂さんでの「肥前磁器 藤吉憲典作品展」では、アーティストトークイベントがあります。

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ギャラリー栂さんでの「肥前磁器 藤吉憲典作品展」では、アーティストトークイベントがあります。

会期初日まであと10日ほどとなりました、岡山和気町・ギャラリー栂さんでの「肥前磁器 藤吉憲典作品展」。ハガキのご案内状も発送完了し、あとは作品が揃うのを待ってリスト作成、荷造梱包して発送、の手順です。現在、藤吉憲典は本窯焼成中。この後、発送期限までに赤絵窯を2回焚くことができるかな、というところです。

通常、どこで開催される個展でも、藤吉憲典はお客さまにご挨拶できる在廊日を作るようにしています。今回の個展では、オーナーの栂さんが在廊日にアーティストトークイベントを計画してくださいました。ギャラリースペースの都合上、少人数での開催ですが、案内状をお出しする前に席が埋まってしまったようで、急遽、席数を少しだけ増やしてご対応とのご連絡をいただきました。

お茶をいただきながら、作家が作品のことや日常の作陶生活についてお話する予定です。また少人数ですので、お客さまからのご質問にもお答えする時間が取れると思います。アート作品について、器について、技術的なことも含めてご質問のある方は、ぜひこの機会に。

「肥前磁器 藤吉憲典作品展」アーティストトークイベント参加ご希望の方は、下記ギャラリー栂さんへ、お電話にてご連絡くださいね。


肥前磁器 藤吉憲典作品展

2024.3.16(土)-3.29(金)※3/25(月)休廊
OPEN 11:00-17:00

ギャラリー栂
岡山県和気郡和気町清水288-1
TEL 0869-92-9817
https://www.gallerytoga.com/

5年ぶりにフルコースの懐石茶会は、料理係デビューとなりました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

5年ぶりにフルコースの懐石茶会は、料理係デビューとなりました。

3月3日雛祭りの日曜日、入門している茶道南方流の「初伝披露懐石茶会」が、5年ぶりにフルコースでの開催となりました。毎年3月に開催されていた初伝披露懐石は、2020年から昨年までの4年間、コロナ禍の影響で茶会自体が中止になったり、ご披露の内容を限定し参加者も限定しての開催になったりと、非常時対応となっていました。

振り返ってみると、2019年わたし自身の初伝披露懐石茶会が、コロナ禍前にフルコースで開催された最後の年となっていました。

フルコース。お炭手前からはじまり、お料理の給仕、濃茶点前、薄茶点前と、一人の亭主がすべてを取り仕切って行うお茶席です。一席で二時(ふたとき)=約4時間かかり、今どききちんとこのフルコースでのお茶席を行っている流派は、あまり無いのではないかと言われています。南方流に入門しているからこそ体験できる、貴重な学びの機会です。

懐石料理の献立は決められたものが受け継がれていて、この献立を継承していくのも、入門者の大切な勤めのひとつです。今年の懐石から、その料理係の末席に加わるよう和尚様からお声がけいただき、重責ではありますが、少しでもお役に立てるならと謹んでお受けしました。

前日から、先生・先輩方についてお手伝いしながら学びました。準備八割。お料理は、前日の仕込みで決まることがわかりました。ふたつのお茶室を使って、午前中に2席午後に2席。席入りの人数と裏方さん合わせて50名ほどになりました。当日は10時からの席入りに備えて、器に盛り付けるだけでも相当の時間がかかります。調理の段取り、味付け、盛り付け、提供のタイミングなど、細かい工夫と配慮がなされていることを知りました。

懐石茶会は基本的に年に一回ですので、毎年繰り返しお手伝いすることで、少しづつ覚えていくしかありません。茶会の亭主を支える大切な裏方仕事、足手まといにならないよう、頑張ります。

チューリップがあると、ぐっと春が近づいたような気がします。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

チューリップがあると、ぐっと春が近づいたような気がします。

昨日は息子の高校卒業式でした。その昔、わたし自身の高校卒業式も3月1日だったと思います。当時もそうでしたが、息子のクラスも、進路が決定した子もいれば、まだ進路も決定していない子も多数という状況。卒業と言われても、まだ受験が残っている子どもたちにしてみたら、なんとなくスッキリしないのではないかしらと思いつつ卒業式に列席しました。

卒業式は、とっても良かったです。式が退屈になるかどうかのカギを握る校長先生のお話も、PTA会長さんのお話も、ご自身の言葉で丁寧に卒業生に言葉を贈ってくださり、保護者としてありがたいなぁと思いました。ちょっと驚いたのは、号泣している生徒がけっこういたこと。その素直さが素晴らしいと思いましたし、想い入れのある3年間を送ることが出来たのだろうなと、うらやましい感じも致しました。

卒業式後には、各クラスでの最後のホームルーム。ホームルームでは生徒一人一人が「一言挨拶」をしたのですが、ここでまた驚かされました。それぞれの生徒が、クラスの仲間に対して、先生に対して、そして保護者に対して、きちんと言葉にしてお礼を言うのです。いやぁ、今どきの若者はなんてすごいんだろうと、時代の流れを感じました。おかげさまで、とてもさわやかな気持ちになりました。

その後部活の集まりがあるという息子を残して、わたしは一足先に帰宅。夕方遅く、息子が花束を抱えて帰ってきました。

チューリップ

チューリップ、いいですね。玄関でいいよ、というので、さっそく玄関に生けました。ほかにもなんやかんやと卒業祝いのプレゼントをいただいたようでした。我が息子はまだ進路が決定していないのですが、卒業は卒業。進路未定での卒業式と言われてもなんとなくスッキリしないのではないかしらと考えたのは、まったくの杞憂でした。

この春ご卒業の皆さま、誠におめでとうございます。

続・読書『新しいアートのかたち NFTアートは何を変えるか』(平凡社新書)施井泰平著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

続・読書『新しいアートのかたち NFTアートは何を変えるか』(平凡社新書)施井泰平著

つい先日読書記録をアップしたばかりですが

ちょっと、時間をとってしっかり自分の考えを整理したい部分が結構ありましたので、あらためてまとめ直し、というか、以下、備忘メモ。


  • アートの歴史を振り返ってみれば、最も時代を象徴するアート作品は、いつもその時代の「長者」が買うような作品群でした。
  • (ラスコーやアルタミラの時代から最新のNFTアートの時代まで、変わらないアートの本質とは)未来に向けて価値を問う、つまり「時を隔てて唯一性のある普遍的な価値を問うこと」
  • 時を隔てて唯一性のある普遍的な価値を問う「意志」を持ってつくったもの
  • NFTという生まれたばかりの技術がすぐにアートと結びついたのは、アートが必要としてきた「価値継承の環境」をつくる上で、それがひじょうに優れた道具であったから
  • 作品の真正性や由来(制作者やつくられた年など)、その後の流通や利用を示すための「証明書」「公式記録」「鑑定書」のようなものとして信頼のできる情報
  • 批評家や美術館学芸員、キュレーターのように、作品が持つ社会的な文脈を言葉で解説してくれる人
  • 「この作品を買った」「このアーティストが素晴らしい」と宣伝を買って出てくれるような「コレクター/インフルエンサー」
  • コレクションをつくる上で重要なのは、ある種のテーマ設定や一貫性のようなもの
  • 厳しい著作権の管理は、既存の現代アート業界ではむしろ当たり前
  • クローン文化財は、それ自体がある種の「作品性」を帯びるものとなる可能性がある
  • アートの民主化
  • 世界中のどんな場所にいても、普遍的な永続する価値を世界に問うことができるようになる
  • これからもアートのメインストリームにおいては、権威に基づいた希少性が価値に直結するであろうことに変わりはありません。
  • アーティストを発見して育て、プロデュースするというギャラリーが持っている基本的な役割
  • 作品の情報アーカイブという役割は徐々にブロックチェーンに移っていくとしても、キュレーションや批評といった職業の重要性は変わらず、むしろ高まっていくかもしれません。
  • これまで、ギャラリーが果たしてきた「物語づくり」の役割を誰が担うのか。
  • 「美しいもの」をつくる
  • アーカイブの重要性
  • 時代を超えた普遍性の感覚
  • 「所有できるもの」の時代へ
  • アカデミーのような文化的、社会的な価値をつくっていく機能
  • ミュージアムの価値は、「歴史」にある過去から未来への長い時間軸のなかでモノや情報を伝えていく「通事性のメディア」(テレビ・ラジオ・新聞など多くの「共時性のメディア」に対して)
  • 時代を先導していく「切り込み隊長」としてのキュレーター
  • 所有がもつダイナミズムによって、時代を隔てた価値を問うアートの生態系が維持されている

『新しいアートのかたち NFTアートは何を変えるか』(平凡社新書)施井泰平著より


NFT以前に大事なことが、たくさんでした。思えばわたしには、コレクターがコレクションを形成していくうえでなにを重視しているのか、という、ある種の「かたまり/まとまり」の価値に対する考察が欠けていたように思います。花祭窯おかみ=キュレーターの果たすべき役割を、ちゃんと自分のなかで整理し直そうと思います。

令和5年度福津市立図書館協議会に参加しました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

令和5年度福津市立図書館協議会に参加しました。

市立図書館の運営について、年に数回、有識者・図書に関わる地域の諸団体・市民が集まり、よりよい図書館運営のための意見交換をするための協議会。図書館好きが高じてというか、無くなってしまったら困るので、できるだけ関わりたいという非常に個人的な動機と立場から、委員になっています。市立図書館、特にご近所のカメリアステージ図書館が健全に社会教育施設として育ってくれることは、自分自身にとって大切なことなのです。

今年度2回目にして最終回の協議会は、令和5年度の1月末時点までの図書館事業報告と利用実績・状況報告、そして4月からの来年度に向けての事業計画案の発表でした。

今回特に議論が活発になったテーマは、電子図書館の活用について、小中学校との連携についての2点でした。どちらも課題と目指すべき方向性がはっきりしており、図書館資源をより有効活用していくために、具体的な提案がいくつも出てきたのはとても良いことでした。図書館が掲げている基本理念、理念に基づき目指すべき姿に向かって、具体的に何をどうすべきかが話し合われなければ、ただの報告会になってしまいます。

会議がはじまる前に、「この手の会議の傍聴ってあるんですか?」という雑談をしていました。というのも、毎回会議の初めに「今回の傍聴は○名」という報告があるのですが、わたしが参加したことのある会議で、傍聴者を見かけたことがなかったのです。市の職員さんによると、コロナ前までは市議会議員が傍聴することが結構あったということで、なるほどと思っていたところ、今回の会議には1名の傍聴者がありました。これもまた、良かったです。せっかく開かれている会議なのですから、ぜひ関心のある皆さんには積極的に足を運んでいただきたいと思いました。

図書館を運営する館長さんはじめ、司書さん、スタッフの皆さんには、「やるべきこと」ばかりが増えて行くのでたいへんだろうなと思いつつ、頑張って欲しいと切に願うのです。そのために一市民としてできることがあれば、できる限りサポートして参ります。

読書『新しいアートのかたち NFTアートは何を変えるか』(平凡社新書)施井泰平著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『新しいアートのかたち NFTアートは何を変えるか』(平凡社新書)施井泰平著

「NFTアート」とはなんぞや?からの、集中読書です。最初に読んだ『シリコンバレーのエンジニアはWeb3の未来に何を見るのか』が、技術に対する理解がまったく無いわたしにぴったりの良書でしたので、気分良く次の本に進むことができています。

本書『新しいアートのかたち』は、そのものずばり「NFTアート」に迫った本でした。出版年月が2022年9月ということで、1年半ほど前の本です。著者の施井泰平氏は、自らが現代アーティスト目指したという経歴からこの分野に取り組んでおられるということで、従来からのアート市場との比較で、アート関係者にわかりやすく伝えようとしてくださっていました。

わたし個人的には、特に「第2章そもそもアートとはなにか」で展開された内容が、頭の中の整理になりました。従来(あるいは現在も続いている)アートにおけるキュレーターの役割、ギャラリー、美術館、オークション会社などが果たしてきた役割と課題。これらを整理整頓することで、自分の考えに足りなかった部分が見えてきました。

そしてそこに「NFT」という技術がどのような役割を果たしうるのか、ということが第3章以降につながります。技術がどう生かされる可能性があるか、またその課題に関しては、後半に入っている3本の「特別対談」が、いくつもの疑問に答える形となっていました。対談形式での問答が読者の理解を促す、とてもうまい構成だったと思います。

アート市場の将来に起こり得る変化、すでに始まっている変化について、少しでも興味のある方は、読んでみることをお勧めいたします。

『新しいアートのかたち NFTアートは何を変えるか』(平凡社新書)施井泰平著

「デザイン開発ワークショップ」3日目。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

「デザイン開発ワークショップ」3日目。

福岡県商工部新事業支援課さんからご案内をいただき、年初1月からスタートした「デザイン開発ワークショップ」。昨日はその3回目でした。ミーティングルームのある西日本工業大学地域連携センターは、JR西小倉駅から歩いて3分ほど。少し早めに到着したので、小倉城のお堀沿いに歩いたりして、ちょっぴりお出かけ気分を楽しむことが出来ました。

さてワークショップはいよいよ後半に入り、参加企業三社三様にワークショップの成果が具体化しつつあることを実感する回となりました。試作品を持ってきたり、クラウドファウンディングの成果と課題を報告したり。そのそれぞれに、皆でなんやかんやとアドバイスを入れていきます。アドバイスというほどのものでなくても、「自分はどう思う・自分だったらどうする」と自由に発言することが、大きなヒントにつながっていくのを、過去二回のワークショップで体感しましたので、発言は遠慮無しです。

それにしても、1月の初回の混沌とした状態から考えると、三社とも大きな変化を遂げています。1回目を終わった時点では「2時間×4日=8時間のワークショップで各社の課題を解決に導くというのは、なかなかハードルが高い」と思っていましたが、なんのその。最終回までになんとかひとつでも形にするという強い気持ちを、ワークショップに参加する事務局・アドバイザー・受講者皆が持っていることが、それぞれの前進につながっていることを実感します。

そんなわけで、ワークショップは残すところあと1回。来月開催の最終回に向けて、やるべきことをどんどん進めて参ります。

↓過去2回のデザイン開発ワークショップ報告はこちら↓

読書『ああ、ウィリアム!』(早川書房)エリザベス・ストラウト著/小川高義訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ああ、ウィリアム!』(早川書房)エリザベス・ストラウト著/小川高義訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚。パッと目についた背表紙のインパクトに、手が伸びました。「『ああ、ウィリアム!』って!」って、感じです。「早川書房」の文字が目に入るに至り、これは面白いに違いないと、借りて参りました。わたしが早川書房さんの存在を意識し始めたのは、カズオ・イシグロ著書が最初でしたが、その後、面白い翻訳書だと思ったら早川書房、というパターンが続々。海外からの本をこうして読むことができるのは、出版社さんと訳者さんのおかげです。

さて『ああ、ウィリアム!』。面白かったです。上の写真は、本とは全く関係なく、読了後に浮かんだイメージ。ストーリーは、大きな事件が起こるではなく、結婚・離婚・親子や家族の問題を中心に進みます。背景には、アメリカならではの州による格差や、帰還兵の問題などがじっと潜んでいて、ついにはロードムービー的な展開に至るわけですが、「ああ、○○!」という場面が随所に出てきて、タイトルとシンクロ。「○○」には、ウィリアムはじめ登場人物の名前が入るのですが。小説の面白さは登場人物のセリフと心理描写に尽き、なんとも切なくて愛おしくなるお話でした。

主人公はルーシーという女性なのですが、著者のエリザベス・ストラウトさんは、自らの著書に前作との関連性を持たせて本を書くという特徴があるということで、ルーシーが登場する物語が本書の前に数冊あるということがわかりました。そのことは、本書内随所に出てくる記述からもなんとなく伺うことが出来たのですが、読了後、巻末の訳者あとがきを読むことによって、理解できました。

こうなると本書以前の「ルーシー」のことが気になって参ります。さっそく図書館で検索したところ、ありました。ちょっと遡って読んでみようと思います。

『ああ、ウィリアム!』(早川書房)エリザベス・ストラウト著/小川高義訳