『Homes & Antiques』8月号への藤吉憲典のインタビュー記事原稿。その4。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

『Homes & Antiques』8月号への藤吉憲典のインタビュー記事原稿。その4。

特集コーナー「HEIRLOOMS OF THE FUTURE(未来の家宝)」での藤吉憲典のインタビュー記事です。日本国内でこの記事をご覧いただける機会はまずないと思われることと、インタビューで尋ねていただいた内容が、作家のキャリアを理解するうえでとても有用なものだったため、元となった日本語原稿を何回かに分けてご紹介していくシリーズです。


Q7. Animal Boxesシリーズが有名ですが、いつごろから箱を作り始めたのでしょうか。作りはじめたきっかけは何ですか。(Homes & Antiques)

A7. 箱は、ただ好きなんです。好きだったので、窯元勤めの頃から、時間を見つけて趣味で作っていました。商品としてではなく、ですね。幼少期からアニメや漫画の影響を強く受けて育った世代ですので、もともとプラモデルやフィギュアをつくるのは素材に関わらず好きでした。その延長での彫像と、肥前磁器の歴史のなかでもずっと作られてきている陶箱の組み合わせ。なにか強い意図があって箱シリーズを作ったわけではなく、自分の好きなもの、こんなものが合ったらカッコいいな、を形にしたら、このスタイルになった、というのが正直なところです。わたしがつくるものは、基本的に「自分が欲しいもの」なのだと思います。(藤吉憲典)


Q8. どのような経緯でアート作品として作るようになったかを、教えてください。(Homes & Antiques)

A8. 前述のように、もともとは趣味で作っていました。アート作品として発表しようと明確に決めたのは、作家として独立してから10年以上が経ってからです。それまで「食器」の作家として、用途のあるものにこだわっていましたが、あるとき、用途にこだわらず自由に自分が作りたいもの、良いと思うものを発表していこうという気持ちになりました。

それまでは勝手に自分の創作表現に制限をかけていて、それに気づいたというか。今考えると、食器作家として少しは認められるようになったと実感できる場面が何度かあり、自分のものづくりのスタンス・考え方に、自信が持てるようになってきたことが、影響していたのかもしれません。(藤吉憲典)


Q9. Animal Boxesシリーズを制作するうえで、一番楽しい工程はどんなものですか。また、特に困難なことはありますか。(Homes & Antiques)

A9. 実は、どの工程も楽しくて仕方がありません。作っていると、あっという間に時間が過ぎています。もちろん、それぞれの工程は、繊細さを必要とし、技術的にも決して簡単ではありませんが、その難しさがまたチャレンジングで楽しい。

一番難しいのは、完成したときの全体としてのまとまりです。形と文様・色彩との調和が一番の肝であり、そこに、分業ではなく作家として自分一人の手で作ることの意味・価値がもっとも現れると思っています。全体としての調和した美しさを形にするために、どのように組み合わせていくか。手を動かし始める前に、資料を集めたり調べたりしながら頭のなかで何度も何度もシミュレーションを繰り返すのですが、ここに一番エネルギーと時間を使っているかもしれません。(藤吉憲典)


「その5」に続きます。

『Homes & Antiques』8月号への藤吉憲典のインタビュー記事原稿。その3。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

『Homes & Antiques』8月号への藤吉憲典のインタビュー記事原稿。その3。

特集コーナー「HEIRLOOMS OF THE FUTURE(未来の家宝)」での藤吉憲典のインタビュー記事です。日本国内でこの記事をご覧いただける機会はまずないと思われることと、インタビューで尋ねていただいた内容が、作家のキャリアを理解するうえでとても有用なものだったため、元となった日本語原稿を何回かに分けてご紹介していくシリーズです。


Q4. 有田の磁器工房(窯元)で働くことになった経緯を教えてください。そこであなたはどのような仕事をし、どのように感じましたか。(Homes & Antiques)

A4. 父が病気のため、東京から佐賀に帰郷したことがきっかけでした。父は書道家であり、最初は彼の営む書道塾を継ぐように言われました。わたしは、書は幼少期から猛特訓を受けていましたので、もちろんそのような道もあったのだと思いますが、どうしても絵を描く仕事、デザインの仕事がしたくて、父に頭を下げて断りました。

一番最初の窯元では、大量生産用の器の絵柄のデザインを手がけました。大量生産とはいっても、有田の絵付職人さんたちが手描きで画をつけるものです。なので、職人さんたちに、どのように絵をつけるかの指導までを含めて、デザイナーの仕事でした。とにかくどんなかたちであれ「絵」「デザイン」を続けることが出来たのが、とても嬉しかったです。その後、形のデザインまで含めた商品開発デザイナーへと進みました。(藤吉憲典)


Q5. ご自分の作品を作るようになる技術は、そのような窯元の仕事のなかで学んだのでしょうか。(Homes & Antiques)

A5. 足かけ約8年、全部で四つの肥前磁器の窯元を経験しました。それぞれの窯で、商品開発のプロダクトデザイナーとして仕事をするなかで、わたしの基礎が作られていきました。前述したように、「どのように絵をつけるか」「どのように形を作るか」、実際に手を動かす現場の職人さんへの指導も含めてわたしの仕事でしたので、自然と技術も身に付いていきました。窯元は同じ有田でもそれぞれにつくるものに特徴・違いがあり、四つの窯元を経験することで、技術的な幅も広がったと思います。(藤吉憲典)


Q6. 独立して自分の作品を作り始めようと思ったきっかけはなんでしょうか。最初に制作した作品はどのようなものでしたか。またどのようにして作品の市場(販売先)を見つけましたか。本格的に軌道に乗ったのはいつ頃からですか。(Homes & Antiques)

A6. ご存じのように、肥前磁器はすべての工程が細かい分業で行われています。磁器作家を名乗っている人も、実際には形は別の職人が作り、作家は絵をつけるだけの人が多かった。この、分業があたりまえの業界で、全部を自分一人でやってみたいと思ったのがきっかけです。それともうひとつには、非常に現実的な話なのですが、有田の窯元の徒弟的な労働環境のなかで仕事をしていくのが、肌に合わなかったというのも正直なところです。

最初に作ったものは、何だったか忘れました。でも、食器です。独立するときは「食器作家として成功する」ことを目指していました。自分の作った器で、一人でも多くの人が、ご飯を食べる時間が楽しくなるといいな、食卓が豊かになるといいな、という気持ちでした。雑誌に載っている器専門の有名ギャラリーのなかで、自分の作風に合いそうなところ、尊敬する作家さんの器を扱っているところを探し、電話でアポを取って器を持って行って見てもらっていました。

わたしは芸術系の大学を出ているわけでもなく、窯元勤めはしましたが、弟子として有名師匠に仕えたわけでもありませんでしたので、磁器作家としてなんの後ろ盾も持っていませんでした。誰の紹介もなく、突然電話して「器を見てください」と。なので、最初は門前払いされることも少なくなかったです。それでも、作ったモノ自体を見て評価してくださるギャラリーさんと少しづつ出会うことができ、仕事を続けることが出来ました。ようやく何とかこの道で食べていくことが出来るかな、と思えたのは、10年経った頃だったと思います。(藤吉憲典)


「その4」に続きます。

 

『Homes & Antiques』8月号への藤吉憲典のインタビュー記事原稿。その2。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

『Homes & Antiques』8月号への藤吉憲典のインタビュー記事原稿。その2。

特集テーマは「HEIRLOOMS OF THE FUTURE」。日本語にすると、「未来の遺産」あるいは「未来の家宝」です。日本国内でこの記事をご覧いただける機会はまずないと思われることと、元のインタビューのボリュームがかなりたくさんであったこと、そしてなにより、インタビューで尋ねていただいた内容が、作家のキャリアを理解するうえでとても有用なものでしたので、掲載記事の元となった日本語原稿を何回かに分けてご紹介していきたいと思います。


Q1. 佐賀県有田町で育ちましたか。有田が日本の磁器の歴史の中で特別な場所であることは、子どもの頃に知っていましたか。有田で育つというのは、どういうことなのでしょう、またどんな場所でしたか。磁器産業の町ならではの特徴はあったのでしょうか。(Homes & Antiques)

A1. 有田の隣町で育ちました。幼少期から絵ばかり描いている子どもでした。画家になりたくて、当時佐賀で唯一デザイン科のあった佐賀県立有田工業高等学校のデザイン科に進学し、それが有田との接点のスタートです。わたしはデザイン科でしたが、高校には窯業科があり、同級生には窯元の子や、両親が窯元で職人として働いている子がいました。毎年5月には有田で陶器市があり、学校がそこでのアルバイトを奨励していました。そのように、日常にあたりまえに窯業があるのが有田でした。

当時の意識としては、歴史ある伝統工芸というよりも、そこに住む市民の生活の糧としての磁器産業だったと思います。実のところ、高校時代のわたし自身は、朝から晩までアトリエで絵を描く学校生活をしていて、まったく窯業には興味はありませんでした。(藤吉憲典)


Q2. 1988年に肥前磁器を「発見」したとレジュメに書かれています。どのような経緯で肥前磁器と出会ったのでしょうか。またどんなところに魅力を感じたのでしょうか。(Homes & Antiques)

A2. 高校卒業後、グラフィックデザイナーとして東京で就職をしました。数年後、父親が大病をしたため、佐賀に帰りました。どうしてもデザインの仕事をしたかったのですが、当時佐賀ではそのような仕事はほとんどありませんでした。あきらめかけていたところに、高校時代の恩師から「やきものもデザインだぞ」と言われ、初めて肥前磁器を正面から見ることになりました。そうして有田の窯元に製品開発デザイナーとして就職したとき、これまで平面(グラフィック)で培ってきたデザインが、そのままではまったく通用しないことを思い知らされ、それがわたしにとっての、肥前磁器の発見でした。

また当時の開発室の上司が、肥前磁器のマニアであり、窯元のデザイナーとして彼と対等に話をするためには、肥前磁器の歴史やモノを深く学び理解することが必要でした。彼に追いつきたくて、美術館や骨董屋に幾度となく足を運び、関連する本や資料をたくさん読みあさりました。同じデザインでも、それまでのグラフィックデザイナーとしてのセンスや技術ではまったく追いつかない奥深さに、難しさと同時に大きな魅力を感じました。(藤吉憲典)


Q3. その発見は、あなたにどのような影響を与えましたか。(Homes & Antiques)

A3. グラフィックデザイナーとして少しづつ自信をつけ始めていたところから、「やきもの」ではゼロからのスタートと覚悟を決めての学び直しとなりました。すべてが新鮮でした。意匠と造形を組み合わせて完成品を導いていく。この複雑な作業の修得に、新しい世界を見つけた気がしました。(藤吉憲典)


「その3」へと続きます。

英国の雑誌『Homes & Antiques』8月号への、藤吉憲典のインタビュー記事原稿。その1。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

英国の雑誌『Homes & Antiques』8月号への、藤吉憲典のインタビュー記事原稿。その1。

「ロンドンから、5月5日締め切りの仕事が飛び込んでまいりました」と書いたのは、4月もそろそろお仕舞いかという頃のことでした。

その後、最終原稿確認を終わらせ、無事発刊されたようです。

Homes&Antiques 2023 Aug

特集テーマは「HEIRLOOMS OF THE FUTURE」。日本語にすると、「未来の遺産」あるいは「未来の家宝」とでも訳されるところで、常日頃から「数百年後も遺る家宝になるものをつくる!」と言っている藤吉憲典にとっては、まさに我が意を得たりのテーマでした。

記事自体は、かなりの分量があったインタビューを、UKのライターさんが上手に素敵にまとめてくださいました。それでも見開き3ページに及ぶ内容。こんなにスペースを割いていただいたのは、日本国内の雑誌でもあまり無いことでしたので、とてもありがたい機会となりました。

ただ、日本国内でこの記事をご覧いただける機会はまずないと思われることと、元のインタビューのボリュームがかなりたくさんであったこと、そしてなにより、インタビューで尋ねていただいた内容が、作家のキャリアを理解するうえでとても有用なものでしたので、日本語のもと原稿をこちらでご紹介していきたいと思います。

さっそく明日から、一日一問(あるいは2-3問)でインタビューをご紹介予定です。どうぞご期待ください。

津屋崎祇園山笠2023。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

津屋崎祇園山笠2023。

4年ぶりの津屋崎祇園山笠が、無事終了いたしました。中学生だった子どもたちは高校生になり、という年月。久しぶりにいろいろな人と顔を合わせることが出来て、やっぱりお祭りは良いなぁ、とつくづく思った二日間でした。

まず7月15日(土)は夕方から「裸参り」。前夜祭とでもいいましょうか。氏神様の波折神社を出発して約7キkmの道のりを、提灯をもって走ります。これがなかなか見ごたえあり…とはいっても、わたし自身はごりょんさん仕事でほとんど見ることが出来ないのですが。毎回あとから人に話を聞いたり、写真で楽しむ感じです。そして今年は、津屋崎のユーチューバー・Toru君が全ルート動画を撮ってくれました!

Toru君の動画チャンネル「ツヤツヤ津屋崎」にさっそくアップされています。聞けば、裸参りを追っかけ、21時過ぎに戻ってきてから、夜中までかかって編集したとか。裸参りでは2時間半近く走ってくるのですが、約20分にまとめられていますので、ぜひご覧になってみてくださいね。

そして7月16日(日)は、本番の「追い山」。こちらもわたし自身は全体を見ることはできませんが、「お宮出し」と呼ばれるスタートの様子を生で見ることが出来たので、良かったです。今年は岡流が一番、北流が二番、我が新町流は三番山でした。下の写真は、新町流れがお宮を出発してすぐのところ。「見送り」と呼ばれる後ろからのショットです。

津屋崎祇園山笠2023

快晴に恵まれ、熱中症に気を配りながらも、怪我人を出すことなく無事に終了したことが、なによりの喜びでした。追い山の様子も、じきにToru君がYouTube「ツヤツヤ津屋崎」にアップしてくれることでしょう。またこちらでもご紹介いたしますね。

上半期が過ぎたので、不定期の税理士相談。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

上半期が過ぎたので、不定期の税理士相談。

事業規模が小さいので、これまで顧問税理士さんなどをお願いしたことが無いまま、今に至っています。ただ昨年あたりから、インボイス制度やら電子帳簿やら、外部環境から求められる変更がいろいろとあるなかで、個別に相談したい内容も増えてきました。これまでも、経理仕事に困ったときには、その都度商工会の税理士相談を活用したりしており、それはそれでたいへん助かっていました。が、やはり一般的な知識としてのアドバイスは頂くことが出来ても、「うちの場合」に当てはめてきっちりと解説していただきたいというのは無理があり。そろそろ「うちの事業の傾向を理解したうえでアドバイスしてもらえる機会」があるといいなぁ、と真剣に思ったのが今年初めのことでした。

幸い、以前花祭窯で開いていた自営業者の勉強会に参加してくださっていた友人でもある税理士さんが、不定期で相談に乗ってくださることになりました。誠実なお人柄をよくわかっておりましたので、引き受けてくださったことは、ほんとうにありがたく。なぜ不定期か。それは、その税理士さんがとてもお忙しいから。「現状、顧問先は増やせないのですが、単発のご相談でよければ」とおっしゃってくださいました。まだ規模の小さい花祭窯としては、たまに見ていただいて課題解決できれば十分な状況でもあり、ちょうどマッチしたのでした。

というわけで、2023年も上半期が終わった7月上旬にお時間をいただいて相談&お勉強。あらかじめ、現在の経理事務における課題やわからなくて困っていることなどをメールでお知らせしておくと、当日十分な資料をもってきてくださいました。さらにすごいなぁと思うのは、こちらがまだ課題だと認識していない(見えていない)部分についても、先取りして「藤吉さんにこの情報があると役立つんじゃないかと思いまして」と、ご用意してきてくださること。これはやはりプロだなぁ、と思いました。「あ!そう言われたらそうです!どうしてわかったんですか!」という場面が何度もありました。

2時間の相談会は、課題がすっきりとクリアになり、久しぶりにそれぞれの家族の近況などもおしゃべりできて、とても嬉しい時間となりました。次回は年末あたり、確定申告に向けての相談になるかな、と。相談先のある安心感がありがたい今日この頃です。

読書:「奥田英朗をより深読みするには」その1。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書:「奥田英朗をより深読みするには」その1。

お友だちから頂いた「奥田英朗をより深読みするには」リスト。

  1. 『最悪』『無理』『邪魔』
  2. 『延長戦に入りました』『泳いで帰れ』『用もないのに』
  3. 『イン・ザ・プール』『空中ブランコ』『町長選挙』

3冊づつの3ジャンル。この順番で読むと面白みが増すとの教えに従い、その第一弾『最悪』『無理』『邪魔』を読み終わりました。

いずれもひたすら「社会の底辺」と「救いの無さ」が、これでもかと描かれています。そもそも、奥田英朗著作の最初に読んだ『罪の轍』が、わたしが著者追っかけするきっかけとなったのですが、その最初のイメージも「社会の底辺」と「救いの無さ」でした。

そんな二つのキーワードは決して小説上の他人ごとではなく、自分自身の生きている場所が、常に隣り合わせであることを思いながらの読書となりました。特に『最悪』に登場する川崎の町工場の社長が陥る窮地は、零細の自営業者なら容易に実感をもってイメージできるものであり、もし自分がこんなふうに追い詰められたらどのように変貌してしまうだろうかと思うと、かなり怖いものを感じました。

いずれの三冊も、一気読みです。ここから「奥田英朗をより深読みするには」その2、に入ります。

読書『長谷園「かまどさん」で毎日レシピ』(河出書房新社)サルボ恭子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『長谷園「かまどさん」で毎日レシピ』(河出書房新社)サルボ恭子著

久しぶりに料理本。

本書タイトルにある「かまどさん」というのは、伊賀焼の窯元・長谷園さんが作っている土鍋だそうです。わたしは商品名ずばりのかまどさんは使っていませんが、毎日のご飯は土鍋で炊いています。水炊きやちゃんこ鍋などのいわゆる「鍋料理」以外に土鍋を使うようになってから、たぶん20年ほど。現在は、ご飯用と煮込み用2種類の土鍋を、ふだんの料理で使っています。

わたしが使っている土鍋は、ネットショップで買ったこともあれば、近所のホームセンターで買ったこともあり、いわばどこででも売っているようなもの。「○○焼」あるいは「○○窯」などのブランドには、まったくこだわっておりません。もちろん購入時にどこが作っているものか、どんな作りになっているか、商品のチェックはしますが、「変なものじゃないといいな」というくらいのもの。特別なものは使っていなくても、土鍋で炊いたご飯の美味しさ手軽さを知ってからは、もう電気炊飯器には戻れませんし、煮込み料理での使い勝手の良さも、土鍋が手放せない理由になっています。

ということで、本書のタイトルは「かまどさん」ですが、広く土鍋料理ということで手に取りました。

基本の白ご飯、お粥、玄米の炊き方にはじまり、各種炊き込みご飯の作り方、煮込み料理をはじめとした土鍋で作るおかずのレシピなど、土鍋の活用法がたくさんで、ワクワクしました。わたしの土鍋歴はそこそこ長いと思っていましたが、ぜんぜん使いこなせていませんでした。メインの料理レシピのほか、ちょっとした工夫も載っていて役立ちます。わたしは特に「ご飯を炊きながらゆで卵を同時につくる」の提案に感心しました。近年読んだ料理本のなかで、かなり好感度高い本となりました。

著者のサルボ恭子さんは、料理研究家だそうで、わたしは本書で初めてお名前を知りました。こうして道具の作り手さんと組んだ料理本を出すあたり、とても戦略的ですね。わたしなどは、自分が持っている土鍋を活用する方法として本書がとっても役立ちましたが、「この道具でこれを作れますよ」という提案だからこそ、実際に生かせると感じる方もいらっしゃるのだろうと思います。と思って巻末の著者紹介を読んでいたら、どうやら「ストウブ」によるレシピ本も売れている様子。

図書館で借りてきた本でしたが、これは手元に欲しい一冊です。

商業個展の展覧会を作る仕事。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

商業個展の展覧会を作る仕事。

2023年7月19日(水)から開催の博多阪急さんでの藤吉憲典個展に向けて、準備のやりとりがそろそろ賑やかになってきています。

今回の博多阪急さんでの個展は、展示計画をこちらで主導する形になるのが、通常の藤吉憲典の個展と異なります。ふだんは作品を送るだけでギャラリーさんに任せっぱなしの仕事を、博多阪急の担当者さんと、設営業者さんとやりとりをしながら、一緒に進めています。

会場となる博多阪急3階にある「特別室」は、ふだん藤吉が個展でお世話になっているギャラリーさんと比べると広めになります。加えて、入口から本会場へのアプローチとなる通路も展示スペースとして活用できるので、より会場全体を楽しんでいただくために「何をどこにどう展示するか」は、頭のひねりどころです。

展示のためにどのような什器を用いるのか、どのような配置が効果的か、阪急さんでの多種多彩なイベントを手掛けておられる設営業者さんが、これまでの知見からさりげなくアドバイスをくださるので、たいへん助かっています。おかげさまで、選ぶ・決める場面でもほとんど迷うことなく、スムーズに進んでいるのが現在のところ。

今回の個展がふだんのギャラリーでの個展と大きく異なるのは、キャプションボードや動画を活用すること。作家の略歴だけでなく、肥前磁器の歴史年表、工房のある津屋崎と肥前磁器のかかわりなど、作品の背景となる文字情報を展示することで、これまで肥前磁器に馴染みの無かった方々にも、より深く展示作品を楽しんでいただける空間にしたいと思っています。まさに博物館学芸員(キュレーター)の仕事のひとつ「展示活用」。そしてその点は、2021年に福岡アジア美術館で開催した藤吉憲典個展での経験を、そのまま生かすことが出来ています。

そのうえで、商業個展は物販が主目的となるのが、美術館の展覧会とは大きな違いです。観ていただいて、「いいね」と言っていただいても、売上につながらなければ、成功とは言えません。そのシビアさがあるからこそ、たいへんだけれども面白くもあります。

イベント告知から会場設営、そして会期中の対応まで、博多阪急さんでの個展は、いわばチームで進めている感じがあります。わたし的には、これまでにあまりなかったケースなので、とても楽しく学びの多い仕事となっています。

ぜひご来場くださいませ。

藤吉憲典個展 博多阪急

藤吉憲典個展 陶芸彫刻書画

会期:7月19日(水)~7月25日(火)
時間:10時~20時(最終日のみ17時閉場)
場所:博多阪急3F特別室(フロアマップは下記URLでご覧いただくことが出来ます)
https://www.hankyu-dept.co.jp/hakata/floor/3f.html

津屋崎祇園山笠が迫って参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

津屋崎祇園山笠が迫って参りました。

4年ぶりの通常開催となる津屋崎祇園山笠。7月に入ってからは、毎週末なんらかの山笠行事があり、先週末は飾りつけの日でした。北部九州は大雨に見舞われ、予定通り準備できるのだろうかと心配していましたが、雨のなか山の飾りつけは無事終了。夕方からのお宮入りの頃にはタイミングよく雨が上がり、予定通りの行事が滞りなく進んだようで、一安心です。

今年はごりょんさん仕事は、本番16日と前日15日の裸参りの応援だけですので、それほど忙しくありません。家で仕事をしながら、外を長法被姿で歩く人の気配や楽しそうな話し声、山を担ぐ「おいっさ」の声が聞えてくるので、景色をイメージして楽しんでいます。

津屋崎千軒なごみと、有形登録文化財「藍の家」では、山笠の展示も開催中。期間中、津屋崎方面お越しの方は、ぜひ山笠楽しんでご覧くださいね!

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