続・書画陶芸-書画と陶芸の大きな違い。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

続・書画陶芸-書画と陶芸の大きな違い。

「書画陶芸。」タイトルでブログを上げたのは2週間ほど前のこと。磁器作家・藤吉憲典、銀座黒田陶苑さんでの次回個展に向けて、書も画も陶芸も、鋭意創作制作を進めております。

書画の作品制作の様子を見ていてすぐに、「陶芸」との大きな違いを実感。頭ではわかっていたものの、実際にその進行状況を目の当たりにすると、違いの大きさに驚きます。それは、

書画は、書いたら(描いたら)それがそのまま結果となる。

ということ。あまりにもあたりまえのことではありますが。

磁器の絵付と異なり、墨も岩絵具も、書いたまま(描いたまま)の色がそのまま残ります。「焼成」工程がありませんので、変容する要素が無いということですね。描き終わったらそのままで出来上がり=作品完成となりますから、なんともシンプルです。窯が焚き上がるまでのもやもやとした時間が無い。シンプルということでいえば、材料も紙と絵具(墨)だけですし、「書く/描く」のみですから、これもまさにシンプルそのものです。

出来上がった書画作品をみて、作家の制作作業と成果物としての作品とが、まっすぐにつながっている感じがしました。それはそのまま、磁器制作の工程の複雑さと、窯での焼成という他力をコントロールする難しさと面白さを再確認することにつながりました。いくつもの制作工程を経た最後の最後に窯に委ねるのですから、陶芸・磁器制作における不確実要素の大きさをあらためて感じます。

書画陶芸。作家本人に聞いてみても、それぞれに異なった面白さがあるようです。食器からアート作品へとフィールドを広げたときに感じた、一方の仕事がもう一方の仕事を伸ばす刺激的存在になる感覚が、今回もあります。銀座黒田陶苑さんでの個展まで約3ヵ月。ここからどういうものが出来上がってくるか、とっても楽しみです。

小さくて美しくて精巧で可愛らしいものは、コレクションしたくなる。

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小さくて美しくて精巧で可愛らしいものは、コレクションしたくなる。

例えば、藤吉憲典のつくる小皿豆皿。この顔ぶれを見るたびに、この作家は小さいものをつくり出すのが得意だし、なにより好きなのだなぁと、つくづく思います。

小さくて美しくて精巧で可愛らしいもの。やきものの世界になじみ深いところでは、香合(こうごう)もそうですね。上の写真は、錦野薔薇文香合(藤吉憲典 作)。その他思いつくところでは、香水瓶、嗅ぎ煙草を持ち運ぶ鼻煙壷(びえんこ)など。ここに並べたものはいずれも「香り・匂い」にまつわるものであり、「持ち運ぶ」が用途に含まれるものだと気づきました。「蓋付き」なのはその用途故ですね。

香合も香水瓶も鼻煙壷も、コレクター心をくすぐるもので、国内外問わずあちらこちらの美術館・博物館にコレクションがあります。鼻煙壷は日本ではあまりなじみが無いかもしれません。わたしが初めてその存在を知ったのは、大阪市東洋陶磁美術館でのこと。大阪市東洋美術館が所蔵する沖正一郎コレクションに鼻煙壺1,139件があり、常設展示コーナーでその一部を拝見することが出来ます。常設の専用棚に並んだ姿は壮観です。コレクションのなかから100個、入れ替えながら展示している様子。とにかく見ていて飽きません。(大阪市東洋陶磁美術館は、現在改修のため長期休館中です。)

そんな小さくて美しくて精巧で可愛らしいものに「ボンボニエール」がある!と気づいたのが、つい先月のこと。先日のブログ「佐賀鍋島家のお宝を守る徴古館。」で発見した探し物というのは、このボンボニエールのことでした。ボンボニエールもまた、「持ち運ぶ」用途があり「蓋付き」であり、コレクションされています。

ボンボニエールとは、砂糖菓子「ボンボン」を入れる小さな箱。大きさは手のひらにおさまるほどのサイズです。欧州でお祝い事の記念品としてボンボニエールを配る慣習を、明治時代中期以降日本でも倣い、皇族や華族の間で取り入れていました。慶事の宴席への出席者に、金平糖などの砂糖菓子を入れた小箱を引き出物として配るこの伝統は、現代でも皇室で受け継がれているといいます。

なにしろ皇室伝来のものですから、市中に出回り難いものでしょう、その数は決して多くないようです。徴古館にあるボンボニエール146点は、出どころも確かなまとまったコレクションとして、かなり貴重であることが伺えます。興味深かったのは、その材質が、銀か木かの二択であること。このなかに磁器が無かったのは残念なことでした。ただ、皇室に由来している物に限らなければ、ノリタケ、ロイヤルコペンハーゲンなどが、磁器製のボンボニエールをたくさん手掛けています。

ということで、磁器作家・藤吉憲典が次なるコレクションアイテムとして取り組むのは、ボンボニエール。同じようなサイズ・意匠でも、香合というと用途や使う人が限られてしまいがちですが、お菓子入れでしたら誰でもが楽しく使えます。どんなものが出来てくるのか、どうぞお楽しみに。

書画陶芸。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

書画陶芸。

「書画陶芸」とネットで検索したところ、出てきたのは、細川護熙氏のお名前。現代のお殿様の趣味というか、たしなみというか、いわゆる「文人趣味」のイメージですね。

もうずいぶん前ですが、その細川護熙氏が政治家を引退なさってから、初めての陶芸作品の個展をなさったのを拝見する機会がありました。氏が陶芸を本格的にはじめてから、まだそれほど時間が経っていなかった頃だったのだと思います。いくつも並んだお抹茶碗は、どれも手に持ったらとても重たくて使いにくいだろうと思える姿(失礼!)ながら、全体から醸し出される雰囲気の良さに感嘆。なるほど「良いもの」に囲まれて育ち、ふだんからそのような環境で生活している人には、そういうものが自然と身に付くのかもしれないな、と思わされた出来事でした。

さて「書画陶芸」。今年7月に開催される銀座黒田陶苑さんでの藤吉憲典の個展では、文字通り「書」と「画」と「陶芸」を御覧に入れる予定です。そもそも仕事として発表していなかっただけで、書も画も長年のキャリアを持つ藤吉憲典。その腕前に、「作品として出さないのですか?」という声はずっと頂いておりました。

実は、コロナ禍に入る前の2019年のロンドンSladmore Contemporaryでの個展や、

2019年から2020年にかけて黒田陶苑さんが主催した上海での陶芸展では、ファンサービスとして個展会場でスケッチや書画を描いて(書いて)差し上げる、ということをいたしました。その場でさらっと描いたのでしたが、これが大好評。

そのたしかな感触を得た後、コロナ禍下の2年間は作家が自分自身と向き合う時間となり、「自分にできる、自分がやりたい表現方法を全て出す」今回の意思決定につながりました。もちろん、書画についても、プロとしての質を担保した作品をご覧いただきます。

その最初の機会となるのが、銀座の黒田陶苑さん。黒田陶苑さんは、北大路魯山人の鑑定人としても有名です。北大路魯山人といえば、もちろん陶芸作品を多数残していますが、書画も残している、まさに文人的な作家。そんな所縁ある場所で、藤吉憲典の新たなチャレンジをさせていただけることとなり、とてもありがたくワクワクしています。

銀座黒田陶苑さんと北大路魯山人のつながりは、黒田さんの社史にまとめられています。https://kurodatouen.com/history

銀座の黒田陶苑さんでの個展は2020年の予定がコロナで延期になりましたので、久しぶりとなります。ご来場の皆さまに、これまで以上に大いに楽しんでいただけますように。わたしも今年あたりは会場入りしたいところです。

芸術家の妄想力。イメージが具現化するということ。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

芸術家の妄想力。イメージが具現化するということ。

磁器作家として独立したときから(正確にはその前から)、ダンナ・藤吉憲典は風呂敷を広げることが得意です。「こんな陶芸家になる」のイメージを具体的に言葉にできるのは、作家・アーティストとして必要な要素のひとつかもしれません。アーティストに限らず、自ら事業を起こす人は、そういう具体的な成功イメージをはっきりと持っている方が少なくないと感じます。ダンナの場合、成功イメージを説明する形容方法が特異で面白いのが、伴走者としては愉快なところ。

そんな「こんな陶芸家になる」の形容のひとつに、「学校の教科書に載る」というのがあったのです。独立してやっと自分の作品を作り始めたぐらいの時代から、ずっとそんなことを言っており、息子が小学校に上がる頃には「お父さんそのうち教科書に載るから」と、具体的な根拠はまったく無いのに言っていました。

が、そんなイメージが具現化するお話をいただきました。詳細の情報公開は一年先2023年4月以降になりますので、現段階ではここに書けないのがちょっぴりもどかしいのですが、こんなことってあるのだなぁ…というのが正直な感想です。

藤吉憲典が作家として独立した理由の一つに、肥前磁器(古伊万里、有田、鍋島などの総称)の技法・文化が、このままでは文献のなかに眠ってしまうという危機感がありました。また作陶理念には「肥前陶磁の伝統技術・文化の継承を、生きた個性で形にする」と挙げています。まさにそこに共感・理解してくださった結果としてのお話でした。ありがたく、嬉しい限りです。

まずは一年先の情報公開を楽しみに。そして次に具現化するのは、どんなイメージか。こういうところにも、アーティストの伴走者としての仕事の面白さがあります。

藤吉憲典のLinkedInページが出来ました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

藤吉憲典のLinkedInページが出来ました。

Ceramic Artist Kensuke Fujiyoshi LinkedInページhttps://www.linkedin.com/company/ceramic-artist-kensuke-fujiyoshi/

そもそもLinkedIn(リンクトイン)に登録をしたのは、遡ること5年ほど前のこと。藤吉の個展でロンドン滞在中にご紹介いただいた、日本と英国を結ぶ仕事をなさっている方からのご招待でした。そのときは単純にクラウド名刺管理ツールのひとつで、海外ビジネスでの利用者が多い、くらいの認識。それから何年も経つうちに、次第にSNSとしての位置づけが強くなってきた感じで、最近は越境ECを手掛けるコンサルの方々も話題にすることが増えてきました。

そんなこんなで、せっかくアカウントは持っているのだから、そろそろ活用してみようかな、と思い始めたところです。SNSの活用も、アカウントを増やしたところで、生かせなければリスク要素を抱えることにもなるので、痛し痒しではあります。が、使ってみなければ自分たちの仕事に合うかどうかを推し量ることもできません。今年は3年ぶりにロンドン個展がありますので、11月の会期オープンに向かって試していくことに。

まだ日本語ページを作り始めたばかりで、事業の基本情報をやっと掲載したところです。多言語でのページ作成ができるようになっているので、これからまずは英語ページを作成して、その後コンテンツを増やしてまいります。今のところなんとなくですが、LinkedInとアーティストは相性が良さそうに感じています。

増やしたり減らしたりしながらのSNS運営。一人でできることは限られているので、反応を見ながら要らないものは思い切って止める意思決定も必要だなと思いつつ。そのうえで、並行して取り組むべき柱が何本もあるならば、そろそろサポーターの手を借りることも考えようと思いつつ。

とりあえずLinkedIn、お試し中。アカウントをお持ちの方は、ぜひフォローしていただけると嬉しいです^^

Ceramic Artist Kensuke Fujiyoshi LinkedInページ

2022年藤吉憲典展覧会予定など。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2022年藤吉憲典展覧会予定など。

少し遅くなりましたが、今年の藤吉憲典の展覧会日程がほぼ確定いたしましたので、ご紹介いたします。


2022年6月初旬 開窯25周年 花祭窯(福岡・津屋崎)

まるっと四半世紀です。これまで支えてきてくださった皆さまへの感謝を込めて、ささやかでもなにかできればと思っています。決まり次第、SNSなどでご案内いたします。

2022年7月16日(土)~7月21日(木)黒田陶苑(東京・銀座)藤吉憲典陶展

現在、黒田陶苑さんは店舗ビル建て替えのため銀座6丁目銀緑館2Fの仮店舗で営業中です。個展会場もこちらになります。今回の個展テーマは「書画陶芸」。藤吉憲典の新たな挑戦をぜひご覧ください。

2022年11月19日(土)~11月25日(金)百福(東京・南青山)藤吉憲典展

町田で長年営業してこられた百福さんが、昨年青山に移転なさってから藤吉憲典としては初めての個展となります。地下鉄で外苑前、青山1丁目両駅から徒歩5分とアクセス抜群です。どうぞお楽しみに。

2022年11月末~12月クリスマス Sladmore Gallery(UK・ロンドン)Animal Boxes of KENSUKE FUJIYOSHI 展

コロナ禍で延びたため3年ぶりとなります。Sladmoreでは、これまでのBruton PlaceのギャラリーからJermyn Streetのギャラリーへと場所を移しての開催となります。イメージ的には、隠れ家的エリアからちょっぴり大通りに出る感じです。


百福さん、Sladomore Gallery、銀座黒田陶苑さん、いずれも長年お付き合いのあるギャラリーさんでありながら、「新しい場所」での個展となります。ちょうどそれぞれのギャラリーさんの転換期に重なったということなのかもしれません。偶然の面白さにワクワクするとともに、そこに立ち会わせていただけることをとてもありがたく感じています。

そしてこれも三軒の共通点なのですが、いずれも展示スペースがこれまでよりもかなり広くなりそうです。それぞれの展覧会に何をどれだけ持っていくか、今まで以上に準備をしっかりしていきたいと思います。

詳細ご案内、DMなどはそれぞれ会期が近づきましたら、あらためてご案内いたします!今年はそれぞれの会場で皆さまにお会いできると嬉しいなぁ、と思いつつ。

春の桜に秋の菊-菊の器のご予約ご相談は今。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

春の桜に秋の菊-菊の器のご予約ご相談は今。

桜の文様の器-福岡は桜の開花宣言。と、桜の器をご紹介したのは昨日のことでした。ところが、今からのご注文では桜の季節に間に合いません。では、今予約を入れるとちょうど良いのは?ということで、春の桜と並び人気の秋の菊の器ご紹介です。

肥前磁器は中国大陸からの磁器文化にたくさん学んでおり、その影響を大きく受けています。中国では菊は皇帝の花であり、もっとも縁起が良いとされる重陽の節句(九月九日)の花。やきものにもたくさんの文様が描かれ、菊を模った形の器もたくさんあります。

染付菊花文飯碗 藤吉憲典

↑飯碗↓中鉢に同じ文様。古典的な菊文様のひとつですが、気品と迫力を感じるモダンなデザインです。

染付間取芙蓉手中鉢、染付菊花文中鉢、 藤吉憲典

↓見込の文様は葡萄ですが、器の形が菊型。型押しした後に陽刻で花弁を削り出すことにより、形の美しさが際立ちます。

藤吉憲典 染付葡萄文菊型皿

↓こちらは生地が仕上がったところ。ここから素焼き、染付の絵付、釉薬をかけて本窯焼成で、上のように出来上がります。

藤吉憲典 菊型小皿

↓蕎麦猪口にも菊は多様に描かれています。こちらは花束のような「熨斗菊」文様。

染付熨斗菊文蕎麦猪口 藤吉憲典

↓赤絵(上絵)の菊も華やかです。

染錦間取春秋文徳利(柿右衛門調) 藤吉憲典

↓花の真ん中にだけ上絵の黄色を入れた贅沢な文様。ほんの少し色を挿しただけで、パッと鮮やかさが増します。

染錦菊花文中鉢 藤吉憲典

↓こちらも蕎麦猪口の菊。波との組み合わせで描かれた、縁起の良い「波菊文」。

染付波菊文蕎麦猪口 藤吉憲典

花祭窯のオンラインショップ蕎麦猪口倶楽部では、在庫切れの蕎麦猪口・小皿豆皿の予約注文を受け付けることも可能です。ご予約をいただいてから制作に入るので、3か月から4か月後のお届けとなります。季節の器のご用命は、制作期間を見込んでご連絡いただくと、ご希望の季節に間に合うよう制作できます。気になるものがございましたら、ぜひ早めにご相談くださいませ。

桜の文様の器-福岡は桜の開花宣言。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

桜の文様の器-福岡は桜の開花宣言。

年々早くなっているような気がする桜の開花宣言ですが、気象庁のサイトを確認してみたところ、今年は平年に比べると早いものの、昨年よりはゆっくりだったようです。そういえば息子の小学校入学式の日は、春の嵐で桜の花びらが散っていたのが印象的でしたが、その9年後の中学校卒業式の日もまた、春の嵐で桜が散っていました。

肥前磁器には桜の器がたくさんあります。文様として描かれているのはもちろん、花弁をかたどった器もあり、秋の菊と並ぶ人気文様です。その種類は蕎麦猪口だけでも数百種と言われていて、「器でお花見」ができるほど。そのいくつかをご紹介いたしますね。

桜の蕎麦猪口 藤吉憲典

藤吉憲典の蕎麦猪口のなかでもロングセラーの桜散し文。2種類の上絵の紫色が品良く人気です。

藤吉憲典 桜箸置き

桜の花びら型の箸置きは、裏返すと染付の花びらが散っている贅沢。

藤吉憲典 錦桜散し文蕎麦猪口、錦桜散し文箸置き

箸置きと名前はついていますが、このように豆皿としても使えます。コーヒーに合わせてキューブ型のお砂糖を載せても可愛い。

藤吉憲典 染付桜散し文チロリ

染付の桜が散った手つきの酒器(チロリ)は、お花見の宴にぴったりです。

藤吉憲典 染付波桜文片口

網桜文の片口。どうしても酒の器が多いのは、ご愛敬。

ちなみに、花祭窯のオンラインショップ蕎麦猪口倶楽部では、在庫切れのものの予約注文を受け付けることも可能です。ご予約をいただいてから制作に入るので、3か月から4か月後のお届けとなります。季節の器のご用命は、制作期間を見込んでご連絡いただくと、ご希望の季節に間に合うよう制作できます。気になるものがございましたら、ぜひ早めにご相談くださいませ。

続・『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)で、彫刻の歴史をざっと学び直し(その1)。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

続・『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)で、彫刻の歴史をざっと学び直し(その1)。

↓うっかり前置きが長くなってしまいました↓

以下、『いちばん親切な西洋美術史』より、彫刻部分を抜粋&まとめ。「その1」では、エジプト・メソポタミア文明からエーゲ・ギリシャ文明まで。


エジプト・メソポタミア文明(紀元前40世紀~紀元前4世紀)

  • エジプト=来世思考。副葬品。
  • メソポタミア=シュメール文明。楔(くさび)形文字。人類最古の文字文明。
  • 有翼人面牝牛像:新アッシリア時代。首都カルフの城門を守る石像。
  • ネフェルティティ(人間=肖像=写実性)とツタンカーメン(神像=定型的神々しさ)。

エーゲ文明・ギリシャ(紀元前30世紀~紀元前1世紀)

  • エーゲ美術=キクラデス美術(初期青銅器時代)、クレタ美術(中期青銅器時代)、ミュケナイ美術(後期青銅器美術)。
  • キクラデス美術:極端に抽象化された石偶(大理石)。
  • ギリシャ美術=西洋美術の基礎。巨大神殿建築。西洋建築の基準となる建築様式・装飾・構成。
  • 彫刻文化:直立不動(アルカイック期)→自然な立ち姿をとる「コントラポスト」(クラシック期)へ。
  • 絵画:陶器製の食器の表面が主要な画面となる。
  • 陶画家(陶芸家であり絵付師)の活躍:陶器画=黒像式→赤像色。
  • アルカイック:アルカイック期。アテナ神に捧げることを目的に制作。アルカイック・スマイルは生命感の表現。
  • コントラポスト:クラシック期。「対置」の意味。より開放的に。まだ一定の方向からのみ見られることを想定。
  • ヘレニズム美術=古代ギリシャ彫刻の完成形。
  • 「神々」だけでなく「王や個人」のための美術が生まれる。美術が大衆化された時代。
  • 激しい動きが特徴で。多方向から見られることを意識した表現。空間的な広がり。
  • ミロのヴィーナス、ラオコーン、サモトラケのニケ。

『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)より


書き出しはじめたら、思いのほか分量が多くなりそうなことがわかりました。「その2」へ続きます。

『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)で、彫刻の歴史をざっと学び直し。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)で、彫刻の歴史をざっと学び直し。

ダンナ・藤吉憲典のロンドン個展が決まると、とたんにわたしも「アート探求脳」になるような気がします。つい先日、藤吉憲典の作品(Animal Boxesシリーズ)に新展開、の記事を上げたところでしたが、この前後から「美術史本・美術関連本の読み直し」が続いています。上の写真は、福岡市美術館に昨年設置された「ウィンド・スカルプチャー」。

アート作品を送り出す立場として、「これまでの美術史の文脈からこの作品を説明」しようとするクセが、少しづつ身についてきたのかもしれません。これは美術に携わる者として、求められる視点のひとつ。喜ばしい傾向です。新しい作品が出来上がるたびに、ぼんやりと自分のなかで「どういう解釈で説明できるか/どういう解釈を使うと伝わりやすいか」の要素をピックアップしはじめているのがわかります。

そして、文章にしようとしたときに、自分自身の知識・理解・語彙が足りないと思ったら、これまでに読んできた本の数々に助けを求めます。実際のところ、足りないことばかり(笑)。いまのところ出番が多いのが『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)と、『英語でアート』(マール社)の2冊です。ざっくりと流れを確認するのに最適の『いちばん親切な西洋美術史』と、英語学習の本でありながらアートの専門書に匹敵する知識がちりばめられている『英語でアート』は、最強の味方です。

思いがけず長くなってしまいましたので、主題の「『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)で、彫刻の歴史をざっと学び直し。」は、次の回に。