京都東寺

読書『水曜の朝、午前三時』(河出書房新社)蓮見圭一著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『水曜の朝、午前三時』(河出書房新社)蓮見圭一著

9月の三連休は読書三昧!3冊目。先日読んだ『美しき人生』の読後感がなんとも言えない余韻を残したので、遡って読書。いつものカメリアステージ図書館で検索したら、ありました!読みたいタイミングで、読みたい本が見つかる贅沢。助かりますね。

河出書房新社さんのサイトでは、紹介文に “叶わなかった恋を描く、究極の大人のラブストーリー” とあります。が、わたし個人的には、ラブストーリーの切なさにもまして、戦後復興の象徴となる大阪万博を迎えた当時の時代の難しさや、今もなお存在する差別の根の深さを感じさせる、社会的な要素を強く感じました。

大阪万博は1970年。わたしはその1年前に生まれています。そういえば同世代の友人知人には、万博の「博」から「博子」という名前がついた、という人も数人。本書を通して、自分が生まれた頃の日本の社会風俗や価値観を垣間見ることが出来ました。そして、それはかすかに残る幼少期の記憶を想起させるものでもあり、そんな意味でも少し苦しくなるものでした。

戦後、それまでの価値観をがらりと入れ替えさせられ、自己否定しながらなんとか自尊心を守って生きて行かねばならなかった人たち。そんな親に育てられた子どもたち。わたしにとっては、自分の親たちが生きてきた時代を考えさせられるものでもあり、小説としての面白さは、先に読んだ『美しき人生』よりもさらに深い余韻を残すものでした。

『水曜の朝、午前三時』(河出書房新社)蓮見圭一著

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。