宮崎行き車窓から

読書『わたしを離さないで』(早川書房)

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

読書『わたしを離さないで』(早川書房)

写真は、本とは関係ありませんが、宮崎行きの電車から撮った景色。

さてカズオ・イシグロ作品、2冊目です。本の内容について、まったく事前情報を入れずに読みはじめました。前回読んだ『遠い山なみの光』もそうでしたが、読みはじめてすぐに引き込まれ夢中に。景色や登場人物の表情があまりにもはっきりとイメージできて、動画を見ているような読書時間でした。移動時間や就寝前を使って2日で読了しました。

読書『遠い山なみの光』(早川書房)

『遠い山なみの光』と同様、主人公の淡々とした語り口でストーリーは進むのですが、読みはじめてすぐに「そうなのかな」と匂わせてじきに明らかになる重々しいテーマに、なんともやりきれない読後感が残っています。

それにしても、『遠い山なみの光』とはまったく異なった雰囲気を感じました。あとの解説を読んで、そのなかにカズオ・イシグロ氏がブッカー賞を受賞した後のインタビューでの受け答えの一部が引用されていたのですが、そこに、その理由がありました。いわく、賞をとったりすると、そのとき賞賛された書き方を捨て去ることが難しくなり、そのことが作家としての危機をもたらす、というようなことでした。つまり、意図的に新しい書き方、新しい表現方法にチャレンジしを変えているのですね。

高く評価され成功を収めた方法を捨てるのが難しく、そこから抜け出せずにダメになってしまうことがあるというのは、陶芸作家やアーティストにもよく言われることで、実際にそういう人たちを見てきてもいるため、とても響きました。

ところで『わたしを離さないで』は、映画になっていたのですね。日本ではドラマにまでなっていたのを知りませんでした。小説の世界観がどのように映像になっているのか、映画は見てみたい気がします。

スタートしたばかりのカズオ・イシグロ作品追っかけ。ますます楽しみになってきました(^^)

 

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。