読書『リバー』(集英社)奥田英朗 著

読書『リバー』(集英社)奥田英朗 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『リバー』(集英社)奥田英朗 著

奥田英朗著の新刊が届きました。前情報をまったく入れずに臨みましたので、読みはじめてまず思ったのは「今回はシリアス系なのね」ということ。「伊良部先生」が登場するようなコメディ系ではなく刑事ものでした。

全648ページの長編です。これまでに読んだ刑事もの(というか犯罪もの)、『罪の轍』『オリンピックの身代金』『最悪』『無理』『邪魔』などに描かれた、これでもかというほどの「社会の底辺」と「救いの無さ」は感じなかったものの、現代的な乾いた雰囲気になってきているのが、逆に空恐ろしさを感じました。そう、まさに現代的な怖さ、です。

奥田英朗著作の刑事ものに共通する点のひとつに、犯罪を犯す側の精神的な病理をにおわせるところがあります。これまでに読んだものにも登場していましたし、今回ははっきりと多重人格者として描かれる登場人物がありました。著者自身の、犯罪を犯すに至る人間心理への強い関心が、登場人物に重なって表れていることを感じます。そういえば、コメディ系の小説に登場する「伊良部先生」は精神科の医学博士ですから、やはり関心の高い分野なのでしょうね。

『リバー』(集英社)奥田英朗 著

2022年9月刊行でしたので最新刊かな、と思ったら、2023年5月に最新刊がありました!こちらも読まねば、です^^

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。