読書『休館日の彼女たち』(筑摩書房)八木詠美 著

読書『休館日の彼女たち』(筑摩書房)八木詠美 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『休館日の彼女たち』(筑摩書房)八木詠美 著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚。おかげさまで「初めまして」の著者の方々に、出会うことが出来ます。今回も、おそらく「初めまして」。

タイトルに「館」とつくと、無条件に気になります。図書館、美術館、博物館…と、自分の好きなものを連想させるからですね。本書の「館」は美術館でした。そのうえ表紙の装画は、ルネ・マグリット。マグリットっぽいなぁ、と手に取りましたら、その通りでした。「困難な航海」というタイトルの画だそうです。

最初わたしは、どういうわけか、舞台はどこか海外の美術館…と思い込んで読んでいました。でも読み進めるうちに、いや、これふつうに日本が舞台だわ、と理解。「主人公が、美術館にいる古代ローマ彫刻・ヴィーナス像の、ラテン語でのお喋り相手になる」という設定から、勝手に「海外に留学し、卒業後もその地にとどまっている女性の物語」とイメージしてしまっていました。「ここにいる彫刻の像は、絶対夜中におしゃべりしたり動いたりしている!」というイメージを、海外の美術館・博物館で実際に感じたことがあるからかもしれません。

さて本書の著者もまた、「ここにいる彫刻の像は、絶対夜中におしゃべりしたり動いたりしている!」というイメージを抱いたことがあるからこそ、このストーリーが出来上がったのだろうと思います。そこに、主人公をはじめとした登場人物の「人と関わりながら生きるしんどさ」のようなものが合わさって、ストーリーが進みます。筑摩書房のサイトの紹介文のなかに「コミュニケーション不全」という単語が出てきて、なるほどテーマはそこか、と思いました。

設定はかなり突飛ですが、それに反して、とても静かな筆致で、独特の世界観が広がっています。わたしは個人的には、この世界観は嫌いではありません。八木詠美さんの著作も、ちょっと追っかけてみたいと思います。

『休館日の彼女たち』(筑摩書房)八木詠美 著

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。