読書『打ちのめされた心は』フランソワーズ・サガン著、河野万里子訳

読書『打ちのめされた心は』フランソワーズ・サガン著、河野万里子訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『打ちのめされた心は』フランソワーズ・サガン著、河野万里子訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚で見つけました。サガンといえば『悲しみよこんにちは』と連想はするものの、実はちゃんと読んだことはありませんでした。もう亡くなっているはずなのに新著?と思い、前書きをめくってみたところ「未完の原稿を発見」なるものであることが判明。

手に取った理由は、この機会にサガンを読んでみようと思ったのともう一つ、訳者の河野万里子さんのお名前に惹かれて。以前『オズの魔法使い』を読んだときの訳者さんが河野万里子さんで、とても良い印象があったのです。オズの魔法使いはアメリカ文学で、サガンはフランス。あれ?と思ってググってみたところ、英→日と仏→日どちらの翻訳もなさっているのでした。

さて『打ちのめされた心は』読後の印象は、「フランスっぽい」でした。わたしにとっての「フランスっぽさ」のイメージは、たとえば少し前に見た映画『フレンチ・ディスパッチ』がまさにそうです。皮肉の効き方や不条理な感じ、おしゃれそうでいて俗っぽいところ、素直にはハッピーエンドにならないところなど。『打ちのめされた心は』は、フレンチ・ディスパッチより、ちょっと上流にある舞台での物語というところでしょうか。

「未完の書」です。原稿の推敲されていないところをご子息が「外科手術」して整えての発刊、との説明が載っていました。未完ですから、物語は途中で終わってしまいます。正直なところ「え!ここでお終い!?」という感じです。が、訳者あとがきに書いてあったように、自分だったらこの後をどう展開させ結末に持っていくか、妄想を膨らませる楽しみがあるという意味では、これはサガンからの贈り物といえるかもしれません。いかに「サガンっぽく」エス・プリの効いた結末にもっていけるかが、試されますね(笑)。

あとがきには「これぞサガン」と称える調子の書評がならんでいました。わたしのイメージするフランスっぽさと、フランソワーズ・サガンのサガンっぽさは近いのかもしれないなぁと思った読書でした。それにしても、訳書の印象は、元の言語が何であれ、翻訳家の方の使う日本語力によるものですね。とても気持ち良く読むことが出来ました。ググってわかったことがもうひとつ、河野万里子さんの訳といえば『星の王子様』(サンテグジュペリ)が有名なのだそうです。我が家にある『星の王子様』を確認してみようと思います。

フランソワーズ・サガン『打ちのめされた心は』

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。