こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『枯れてこそ美しく』(集英社)戸田奈津子・村瀬実恵子共著
映画字幕翻訳のパイオニア・戸田奈津子さんと、米国における日本美術研究の第一人者・村瀬実恵子さんとの対談集。コロナ禍下、東京とニューヨークをZoomでつないで実現した対談ということです。
1936年生まれの戸田さんと、1924年生まれの村瀬さん。お二人の年齢からでしょう、タイトルには「枯れて」の文字が入っていますが、どうしてどうしてお二人ともエネルギーにあふれています。読み終わったときには、この「枯れて」には何か別の意味が含まれていたのではないか、その意図を探さねば、という思いに駆られました。
わたしは本書を読むまで村瀬実恵子さんをまったく存じ上げなかったのですが、アメリカの美術界では知らないひとはいないというお方だそうです。元コロンビア大学教授でメトロポリタン美術館東洋部日本美術特別顧問。50年前から、アメリカでは当時ほとんど知られていなかった日本美術の芸術性、美しさを伝えてきた第一人者(集英社サイトより)とのことです。
そんな「最前線」を突っ走ってこられたお二人のやりとりは、機知に富み、人生を生き抜く力、責任と覚悟がビシビシと伝わってくるものでした。テーマは「おしゃれ」「キャリア」「運命の出会い」「仕事の意味」「美」「楽しみ」「人との付き合い」「終活」と続きます。ストレートなお二人の言葉は厳しさも含んではいるものの、どの談のトークも面白く。読んでいて励まされ、わたしももっと頑張ろう、頑張れる!と思わされました。
最終章「終活」のところでの、日本についての村瀬さんの見解が、とても重く痛かったです。いわく「そういうことに人々が関心を持つのは、国としても、個人としても理想像がないからでしょうね。小さく、小さく、小さくなっていくのね。日本という国はもう、そんなに遠くない将来になくなるのかもしれませんね。どういう形で消滅するかは興味もあるし、ちょっと長生きして見届けたい気持ちもあります。」(『枯れてこそ美しく』より)と。
日本に生きる私たちは、そんな現状をどうやって打開して行ったらよいのでしょう。巻末最後の最後で、大きなテーマを突き付けられました。