こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『民王』(文春文庫)池井戸潤 著
こちらも「池井戸潤といえば企業小説」の枠から外れた感じの作品です。文春文庫のサイトでは「痛快政治エンタメ!」と評されています。まぁ、設定がハチャメチャ。SFチックで、これまでに読んできた池井戸作品とは、だいぶ前提が異なります。それでどうだったかと問われれば、馬鹿馬鹿しさのなかにちりばめられた現実味が面白かったです。
首相となった政治家の父と、就職活動中の大学生である(漢字をろくに読めない)息子が入れ替わってしまうことから起こるドタバタ劇。しかもその入れ替わりが、どうやらテロの仕業らしいというのがまた笑えます。首相としてふるまわねばならない息子と、就職活動に赴く首相。どうしたって可笑しなことが起こる舞台設定です。
馬鹿馬鹿しくて笑えるストーリーのなかに社会批判(政治批判)を込めた本を、そういえば久しぶりに読んだように思います。シビアなストーリーでの政治批判的な小説は、ある意味簡単かもしれませんし、その手の本はたくさんあります。けれども本書では、現実離れした馬鹿馬鹿しさがあるからこそ、身近に感じました。
しかめ面をして堅苦しく論じるだけが政治批判の在り方ではないことを、思い出させてもらいました。政治に対する無力感を感じる昨今だからこそ、どうにか一矢を報いたい。そんな印象を受けました。政治参加に興味のない人たちに、おススメしたい一冊です。