読書『<英国紳士>の生態学』(講談社学術文庫)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『<英国紳士>の生態学』(講談社学術文庫)

著者の新井潤美さんは英文学・比較文学を専門とする東大大学院教授。本書は2001年に中公新書の一冊として刊行されたものが、約20年ぶりに復刊したものでした。文庫として復刊されたおかげで、原著が刊行されたときには目に留まらなかった本にも出会うことができる。ありがたいですね。

さて英国の「階級社会」を論じた本は古今いろいろと出ていますが、この本の面白さは、そのなかでも「ロウアー・ミドル・クラス」に的を絞ることで階級の全体が見えてくるところ。階級社会を生きる英国市民の生態が、愛情と可笑しみをもって描かれています。

ロウアー・ミドル・クラス。文字そのままを読むと、中流階級をさらに下級・中級・上級に分けた、その下級、というところでしょうか。英国のようなあからさまな階級意識ではなくても、あらゆる場面でロウアー・ミドル・クラス的な悲喜こもごもがあるのは、日本の社会も同じですね。思い当たること多々で、読んでいて決して他人ごとではないのでした。「身につまされる」という感じ。

この『<英国紳士>の生態学』を読むことによって、本や映画に登場する英国の背景が、もっと色鮮やかになります。シャーロック・ホームズ、ハリー・ポッター、オスカー・ワイルド、メアリー・ポピンズ、ウィニー・ザ・プー、ミスター・ビーン、『日の名残り』(カズオ・イシグロ)、『ハワーズ・エンド』(フォースター)…再度、読み返す(観返す)のが楽しみになってきました。