読書『7つの階級 英国階級調査報告』(東洋経済新報社)前半。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『7つの階級 英国階級調査報告』(東洋経済新報社)前半。

マイク・サヴィジ著、舩山むつみ訳。そういえば今月のはじめに読んでいたのが、階級社会英国のなかでも「ロウアー・ミドル・クラス」に注目した『英国紳士の生態学』(講談社学術文庫)でした。

本書『7つの階級 英国階級調査報告』は2019年12月発行の学術的研究報告。英国社会に興味があるので読んだ、というのが一番の動機でした。が、その報告内容は世界的に広がりつつある「貧富の格差」や「人々の意識」を読み解くのにも役に立つであろう、という書評も腑に落ちるものでした。

以下、備忘。たくさんになりそうなので、前半(第1部、第2部)と後半(第3部、第4部)に分けて。今回はその前半。


  • 経済資本(資産と所得)、文化資本(思考、興味、文化活動)、社会関係資本(社会的ネットワーク、友人関係、参加する集団)。
  • 人々がどのような知識や専門的技能を持っているか、持つことができたかは、その人が属する階級そのものと深く関係している
  • 「『経済的に不自由のない階級』というとき、私たちは『文化的で教養のある階級』のことを考えている」(T・H・C・スティーブンソンの記述より)
  • 階級は歴史的に構築される
  • 文化資本の継承
  • 文化資本の継承は不明瞭だ。その上、能力主義の実績と努力の名のもとに隠されている。
  • 教育資源
  • 社会関係資本とは、人々の社会的ネットワークの範囲と性質であり、人生におけるチャンスに影響を及ぼすものだ。
  • 資本がどのように蓄積され、継承されていくのか
  • 人々の主観的な階級理解は、経済資本だけでなく、文化資本や社会関係資本にも影響を受けている。
  • 文化活動は(中略)多種多様だが、どれもが社会的に同等に評価されているわけではない。その活動の正当性が社会に認められると、資産となったり、他の活動に対する優位性が生じたりするのだ。
  • 文化を抽象的に鑑賞する能力
  • このような(「高尚な」)文化に精通している人々は、学校の授業を容易に理解し、抽象的な思考能力も養われるため(中略)それがキャリアの成功の基盤となる可能性もある。
  • 文化資本は単にその人の経済的豊かさを表すものではなく、(中略)、多くの文化資本を持つ者とそうでない者との間には大きな違いがある
  • 文化資本の力
  • 彼にとっての文化は、より広い意味を持った社会的な通貨であり
  • (社会がグローバル化し)芸術のヒエラルキーは姿を変え始めている
  • 文化的思考の相違は、根本的な社会的区分をはっきり表している
  • 文化的な催しに出向くことで、積極的に携わっている感覚を味わうことができ、その自覚が文化的な自信や誇りを増幅させている。
  • 識別する能力
  • 文化的活動に携わって得た自信によって文化資本を蓄積している
  • 「高尚」な文化資本と「新興」の文化資本
  • 新興文化資本の本質は(中略)様々な選択肢からクールなアーティストや作品を巧みに選び出す技量を証明することであり
  • それが自分の好みだと公言するには、その理由を説明できなければならない。
  • 鑑識眼
  • 「ものの見方」
  • スノッブな人々の高尚で学術的な美学をきっぱりと拒絶する人もいた。そこに社会的な差別の匂いを嗅ぎ取るからだ。
  • 文化的スノビズム
  • 文化活動には個人の熱意だけでなく、社会関係がついてまわる。
  • 社会関係資本には極めて排他的な特徴があり、恵まれた環境にある人の方がより大きな利益を得られる構造になっている。
  • 誰もが何らかのクラブや広範な社会的ネットワークに参加していれば、社会構造は全体として強化していくという
  • 非常に幅広く、弱いつながりで結ばれている(中略)そのような知人を必要に応じて、情報や支援を得るために動員することができる
  • 社会構造の全体で弱い紐帯のネットワーク
  • 誰が誰を知っているか
  • 「橋渡し型社会関係資本」
  • 非常に裕福な人々は、それ以外の人々に比べて際立った社会的紐帯を持っている
  • 社会関係資本は人々の所得や学歴だけでなく、生い立ちや経歴など、その他さまざまな背景とも関連するため、経年的に蓄積する。
  • 経済資本は高年齢層に蓄積されるが、文化資本では、高尚な文化資本は中高年上中流層に蓄積し、新興文化資本は若年専門職層に多く蓄積している(中略)社会関係資本は比較的、年齢の影響を受けない。

『7つの階級 英国階級調査報告』(東洋経済新報社)より。


思った以上に、大量の文章になってしまいました。学術的内容にしては読みやすい文章でした。日本語に訳する際に、平易な表現を心がけてくださったのかもしれません。

『英国紳士の生態学』(講談社学術文庫)を読んだときには、「ロウアー・ミドル・クラス」の行動原理の切なさに「身につまされる」思いがしましたが、今回は「文化的スノービズム」なる言葉に、ハッとさせられました。

後半につづきます^^