歴史資料館の愉しみ。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

歴史資料館の愉しみ。

福津市には「新原・奴山古墳群」があります。ここ津屋崎から宗像に向かう495号線沿いは、あちらこちらに古墳の丸っこい小山が点在する景色が広がるのどかなスポット。5世紀から6世紀にかけて営まれた古墳群は、現存するだけでも41基あるといわれており、宗像大社とともに世界遺産認定されたのちも、コツコツと調査が続いています。

そんな発掘調査の速報展が、ご近所のカメリアステージ歴史資料館で展示されています。カメリアステージは2階に図書館、1階に歴史資料館があるので、図書館にたびたび足を運ぶわたしとしては、そのついでに歴史資料館の展示を眺めることができるという、なんとも贅沢な場所です。

週末出かけたところ、「カメリアステージ歴史資料館 令和元年度発掘速報展」が開催中。「発掘速報展」ですよ!発掘現場との距離の近さを感じるタイトルにワクワク。新原・奴山30号墳の発掘調査の様子が展示されていました。車で津屋崎から宗像へ山越えする道路沿いにあり、通るたびに発掘調査の方々の姿が見えて気になっていたところでしたので、これは嬉しいです。

全長54mの前方後円墳ということで、そんなに大きかったのね!と感動しつつ、出土した遺物を拝見。部分のものが多く、今回出土したカケラと合わせて、全体の姿がわかるように参考品を並べて展示してあるのが親切でした。展示解説の配布資料にも図解で載っており、わかりやすいです。展示資料数は多くはありませんが、「発掘したて」の鮮度が感じられました。

個人的に一番のヒットは、黒曜石の矢じりでした。半透明っぽく見える美しい石で、黒曜石にもこんな色があるのね、と感心。この矢じりは古墳時代のものではなく、縄文から弥生時代のものが偶然混ざり込んだものと考えられるとのこと。また黒曜石の色の特長から、大分県姫島で産出されたものと似ており、古墳時代以前に人の交流があった可能性が示唆されていました(新原・奴山30号墳 配布資料より)。

それにしても、図書館のついでに古墳時代に思いをはせることのできる面白さ。今年度(令和2年度)も調査予定が組まれているということで、ワクワクが続きます。

読書『7つの階級 英国階級調査報告』(東洋経済新報社)後半。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『7つの階級 英国階級調査報告』(東洋経済新報社)後半。

マイク・サヴィジ著、舩山むつみ訳。

前半(第1部、第2部)に続き、後半(第3部、第4部)もたくさんになりました。以下、『7つの階級 英国階級調査報告』(東洋経済新報社)より、備忘。


  • 競争によって平等であるはずの能力主義の教育制度は、かえって人生のチャンスを不公平なものにし、子どもたちに不平等な未来をもたらしている
  • イギリス社会では上向きだけではなく、下向きの社会流動性も大きくない
  • 伝統的な職業に就くためには、恵まれた環境に育った人たちが親から受け継ぐ傾向の強い、文化資本、社会関係資本という不明瞭で獲得しがたい資源が今でも重要
  • 社会のヒエラルキーの頂点で、その優位性が相互強化されている実態
  • 「文化的ホームレス」
  • 機会平等は、全体の平等があって初めて実現できる
  • 優位性の頂上がますます上昇している
  • 大学進学率の伸長は機会平等に寄与しない
  • 大学によってもたらす資源には大きな違いがある
  • 多くの学生にとって高等教育は階級移動を実現する手段となっている。
  • 能力主義による学生の選抜が広がり大学進学者の数は増えたが、それによって機会の平等が確保されたわけでも階級間の格差が解消されたわけでもない。
  • 階級と地理は無縁ではない。
  • ロンドンに人々の関心が集中しているのは、首都圏以外の地域の魅力が失われつつあることの表れでもある。
  • 社会的衰退の姿は、(中略)コミュニティ全体の弱体化の結果でもある。
  • 場所や所在地は、美的、社会的、文化的な洗練を表すものとなっている
  • 経済資本だけでなく、社会関係資本と文化資本も地理的な格差を暗示している
  • 新しいエリートには卓越した地理感覚があり、都市の価値を発見し特徴づけしている。
  • そのような資源(リソース)がロンドンとその周辺にどれほど集中しているのかという、際立った状況
  • 都市と農村の強力な分断は、(中略)都市の中心部が文化資本(特に新興文化資本)と社会関係資本を集める場として機能するという観点から説明できる
  • ロンドン出身者が、地方出身者よりも有利であることを示すデータはない。しかし、インタビュー回答者の証言からは、それが明らかだった。
  • 能力主義の階段を上がるには、「生まれつき」与えられた恵まれた場所からスタートする方が楽なのである。
  • 英国階級調査では、プレカリアートは「行方不明の人たち」である。
  • 英国階級調査自体が社会の最下層の人々を蔑む効果を持つ策略に加担してしまっていた。
  • ステレオタイプに分類されることの意味を理解している。そしてこれには差別と道徳上の問題があることを認識している。
  • しかし、これら(文化的活動)は大人になってからも続けている活動ではない。子ども時代の(中略)思い出なのだ。
  • 社会には分類と序列化の文化がはびこり、それによってエリート主義と負の烙印が作り出され、増殖するのに利用される
  • 階級が多くの人々を「締め出している」
  • 実際には、(中略)階級の存在をあまりにも強力に証明する新しいスノビズムが働いている
  • 階級の概念そのものが、自我、人格に対して根本的な脅威を引き起こすという感覚
  • 普通の人々とは
  • 階級構造がいかに人間関係と強く結びついているか
  • 人々の階級意識は、多くの場合、自分が誰であるかではなく、自分は誰ではないという理解によって認識されている
  • 人々が階級という概念を嫌うのは、まさに日常に階級格差が深く刻み込まれているからであり、身の回りに不平等が増殖しているのを知っているからだ。
  • 能力主義的な政治の限界
  • 資本主義的な、新自由主義の市場システムそのものに疑いの目を向けなければならない。

『7つの階級 英国階級調査報告』(東洋経済新報社)より


階級という言葉・概念を用いるか否かの違いだけであり、日本の現状にも当てはまる実態を垣間見る気がしました。読む前に予想していたよりも、ずっと重い問題提起の本でした。自分の住んでいる国、地域、そして自分自身を省みて、深く考えることを求められる本でした。読んでよかったです。

「工芸の英訳ガイドライン」見っけ!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

「工芸の英訳ガイドライン」見っけ!

何の世界でも同じだと思うのですが、仕事上、英語で話したり書いたりする際に悩ましいのが、業界の専門用語や、日本語に特有のニュアンス。どんな言葉を使えば伝わるのやら頭を抱えることがしばしばあります。

そんな先日、まったく偶然に発見したのが、一般社団法人ザ・クリエイション・オブ・ジャパンなる団体さんが出しておられる「工芸の英訳ガイドライン」。まさに「こんなのが欲しかった!」を見つけました。

サイトで情報を確認したところ、このガイドラインは2018年にできたようです。手掛けられたのがどのような団体さんなのかはよく知らないままに、まずは中身チェック。国内外の美術館博物館関係者の方々が実際にどのような判断(理由)でどのような用語を用いているのかが載っていました。

現場の最前線に立つ学芸員さんはじめ、美術館顧問、美術出版関係者、学術的研究者の方など、日本語ネイティブ、英語ネイティブ両方の複数の意見、実際どうしているかが載っているのがすごいと思いました。とても参考になったので、即ダウンロード。

「これが正しい」というよりは「こう書くことで、より正確に伝わる」という視点で書かれた英訳ガイドライン。英訳する際に、なぜそのように表記すべきなのか理由がわかるというのは、とてもありがたいものです。

同じ日本語に対して数種類の「伝わる英訳」が上げられている場合、それを推薦している方の所属と、その方がおっしゃっている理由を見ることで、自分が使うべき訳を決めることができます。どこの国で、どういう機関・施設で、どのような仕事をなさっている方が使っているのか。自分が伝えたい相手に近いところで仕事をしている方の訳を優先的に選ぶことができるのは、画期的なことです。

これまでは、やきもの関連の英訳の際、陶磁器を扱う美術館博物館の図録や美術展の図録を引っ張り出して、そのなかにある英文から表現方法を探し出して参考にする方法を取っていました。分厚い図録を繰って必要な表現を探すのは一苦労でしたが、これからはこの「工芸英訳ガイドライン」にかなり助けてもらえそうです。

嬉しい^^

The beauty of Japanese porcelain ; The works by Kensuke Fujiyoshi (001)

Good morning! This is Yuri. I am a wife/manager of Ceramic Artist Kensuke Fujiyoshi. Kensuke is an artist of fine porcelain.

A set of stacked boxes,
peony and scrolling vine design,
under glaze blue

We started showing the beauty of Japanese fine porcelain through the artworks of ceramic artist Kensuke Fujiyoshi. All of his works are based on the traditional techniques of Hizen jiki. Hizen jiki which is known as Old Imari is one of the traditional Japanese crafts kogei which has been handed down over 400 years, since Edo period (1615-1868).


A set of stacked boxes, peony and scrolling vine design, under glaze blue (2019)
Kensuke Fujiyoshi
H. 10 (3 each), W. 7, D. 7 (cm)

染付牡丹唐草文三段重箱 藤吉憲典
染付牡丹唐草文三段重箱 藤吉憲典

We think that the real value of the Japanese crafts include their beauty and their usefulness. What would you like to put in the Box? I’d like to put some Japanese seasonal sweets in it.

We can use facebook messenger. Please feel free to ask me in English if you have any question about the work.

専門家に知恵を借りる。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

専門家に知恵を借りる。

写真は藤吉憲典作の歌舞伎陶板「助六」。本文とはあまり関係ありません(笑)

昨日は商工会で専門家相談のサービスを利用してきました。専門家派遣など中小企業を応援する仕組みは、県が主導しているもの、国が主導しているものなど、いろいろあります。これまでもジェトロ、福岡アジアビジネスセンター、中小機構、九州経済産業局などにお世話になること多々。せっかく用意されている機会ですから、必要に応じて出来るだけ有意義に使わせてもらいましょう。

さて専門家相談。今回は地元の福津市商工会を通じて、国(中小企業庁)がお金を出している「ミラサポ」の専門家派遣事業から、紹介していただきました。

専門家派遣の事業は、失礼ながら、担当者により当たり外れがあるのも事実のようです。幸い、わたしは今まで人に恵まれていましたが、聞くところによると「全く噛み合わない」ということもあるそうです。1回にお願いできる相談時間は1時間。時間を無駄にすることなく、出来るだけ成果をあげたいものです。

ということで、毎回そうなのですが、相談にあたり課題の現状・知りたい内容・目指す到達点などをできるだけ細かく具体的に提示しました。当初、福岡県商工会連合会の専門家派遣をあたってみたところ、その具体的な内容を見て「この内容に対応できる人がいない」ということになり、商工会の経営指導員さんがミラサポにつないでくださったのでした。

相談内容をご覧になったうえで対応していただけるということは、確実に課題解決につながるということ。今回はZoomを使ったオンライン相談でしたが、すべての質問内容に、具体的な解決法を提示していただくことができました。時間も所定の1時間もかからず、残りの時間は同じ相談分野で思いつく質問を投げかけてみましたが、すべてきちんと返答をいただくことができました。

おかげさまで、とっても充実した専門家相談となりました。こちらが求めることをきちんと揃えて事前に提示しておくことが大切だなぁ、とつくづく感じました。相談環境を用意し、良い方をコーディネートして下さった関係機関の皆さんに、心より感謝です。