栗!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

栗!

花祭窯の創業地は佐賀県。自然の恵みがいっぱいの里山です。梅雨前には梅、夏にはカボス、秋には柿と栗の楽しみがあります。

梅やカボスは収穫期が比較的長いので、毎年その時期に訪れて収穫することができていましたが、柿と栗はなかなかタイミングが合わず、満足な収穫ができずにいました。収穫できなかった柿や栗は、落果して山の動物たちの胃袋へ入りますので、無駄にはなりません。木の周りには、イノシシ、タヌキ、アナグマなどと思しきたくさんの足あとが残っています。

自然がすごいなぁと思うのは、その土地に合うものを、きちんと育んでくれること。佐賀ではいろいろな木、食いしん坊なので主に果樹を植えましたが、すくすくと育つものと、そうでないものがはっきりしています。苗木を買うときはお店の人に「育てやすいものを」とお願いしていましたが、一般に言われる「育てやすさ」とは別の要因があることを感じます。

花祭窯の創業地に関しては、梅、栗、カボス、柿、キンカン、山椒などは、感心するほど自然にすくすくと育ってくれています。桜の木も大きくなりました。それらに対して、みかん、ブルーベリー、イチジクなどは、うまくいきませんでした。もっとちゃんと環境を整えてあげなければならなかったようです。合うもの合わないものがありますね。

さて今年は、タイミングよく栗の収穫期に訪問することができました。全部ではありませんが、これまでで最もたくさん収穫することができて、大喜び。食欲の秋スタートです^^

読書『舟を編む』(光文社文庫)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『舟を編む』(光文社文庫)三浦しおん

「本屋大賞」を受賞した時に、読みたいなぁと思いながらそのままになり、松田龍平主演で映画化されたときに、これは観たいと思いながら見逃しておりました。忘れかけていたつい先日、偶然図書館で文庫版を発見。

最初から最後まで、なんともやさしい空気が流れていました。もちろん切迫したシーンがあったり、気持ちが昂るシーンもあったりするのですが、全体を安心感が貫いているとでも言いましょうか。結末に対する期待は裏切られないはず!と、著者に対する信頼をもって読むことができました。

それにしても、「辞書編纂の仕事を小説にする」ことを、思いつくのがすごいな、と思いました。そのために、膨大な取材をしたのだろうな、ということも。小説やテレビドラマや映画などで「仕事」をきちんと描くとヒットするという定石を聞いたことがありますが、それにしても辞書編纂とは。でも、かつて誰もが一度は手に取ったことはあるという点では、「辞書」を中心に置くのは、マニアックなようでありながら、実は普遍性の高さも担保しているのかもしれません。

ともあれ、読後がさわやかな一冊でした。見そびれた映画も、DVDで観なければ。三浦しおんさんの著作は、映像化されているものも多いですが、実は本を読んだのはこれが初めてでした。これをスタートに、読み広げていこうと思います。

カメリア図書館選書ツアー2020。

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カメリア図書館選書ツアー2020。

選書ツアー。ふだんお世話になっている図書館に並べたい本を書店で探し、図書館で購入する本の候補リストをつくるツアーです。例年は博多駅そばにある紀伊國屋書店に出向き、膨大な数の本のなかから1時間ほどかけて選んでいきますが、今年はコロナ対策で、カメリア図書館内での催行となりました。

2019年の選書ツアーのレポートはこちら

図書館カウンターで選書ツアーの受付をすませたら、バックヤードへ。館内開催とのご案内でしたので、ネットを使って探したりするのかしらと想像していましたが、そこにはなんと、ミニミニ紀伊國屋書店さんができていました!これはまったくイメージしていませんでしたので、驚くやら嬉しいやら。

細長いバックヤードスペースに、本屋さんのようにジャンル別に本が並んでいたのです。紀伊國屋さんからスタッフの方がお見えで、選書の方法も博多の書店で行うときとまったく同じ方法でした。当然ほかにお客さんはいないのに、首からかける「選書中」のカードまでも完備。思いがけない演出に、思わずにんまりしました。

カメリア図書館内に現れたミニミニ紀伊國屋書店。限られたスペースですから、本の数は博多の書店の何万分の一にも満たない数だったのではないかと思います。ですが、全体の冊数が限られていたからこそ、そのなかからカメリア図書館に置くべき本を選ぼうと、ふだんは立ち寄らないジャンルの本へも注意が向いて、かえって自分自身の視野は広がったように思いました。

実のところ、例年は「わたしが読みたい!」が先に立ち、「それに、皆にもおススメしたい」という「我」の強い選び方でした。でも今年は「この本は子どもたちに読んで欲しい」「これは息子世代におすすめしたい」と、他者への視点を優先的に取り入れることができたように思います。どんな環境で選ぶかによっても、こんなに選び方が変わってくるものなのですね。

それにしても、今年は開催は無理かなと思っていたところ、形を変えて継続してくださったカメリア図書館スタッフの方々の熱意と工夫に、頭が下がりました。今年に限らず、博多まで行くのは難しいけれど、図書館内で出来るのなら参加したい!という方もあると思います。館内の開催で、選者を小中学生に絞った選書ツアーがあってもいいかもしれませんね。

いつもと同じようにできなくても、新しい発想や可能性が広がるなぁと感じた選書ツアーでした。毎年2-3冊でも、自分の選んだ本が地元の図書館に並んでいくというのは、とても嬉しくありがたいことです。今回は、紀伊國屋さんからお土産に「紀伊國屋書店のブックカバー」(いつも紀伊國屋書店で本を買うとつけてくれる紙のやつ)が!「ブックカバーつけてもらう派」なので、とっても嬉しかったです^^

ごまかす=胡麻化す。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ごまかす=胡麻化す。

週末の朝はパンの仕込みからスタート、とはいってもホームベーカリーに材料を投入してスイッチを押すだけですが(笑)ここ数年、基本の材料として投入しているのが、胡麻(ゴマ)。黒ゴマでも白ゴマでも金ゴマでも、すりおろして大量に投入するマイブームが続いています。写真は、黒ゴマをすりおろしているところ。

「ごまかす」という言葉が好きになったのは、数年前から。「誤魔化す」といえば読んで字のごとく、誤りをうやむやにしたり、上辺をとりつくろったり、というニュアンスですから、好い印象のものではありません。が、ある日某料理研究家のひとことで「ごまかす」の解釈が大転換したのでした。

いわく「ごまかすって『誤魔化す』じゃなくて、『胡麻化す』なのよ。どんな料理も、胡麻をすりおろして入れるだけで、コクが出て美味しくなる。だから、胡麻を入れて美味しくしちゃうことを『胡麻化す』って言うのよ!」。というようなことをおっしゃったのです。

まあ、ビックリしましたが、大きく納得。たしかに胡麻を入れるほんの一手間で、コクが出たりまろやかになったり、料理の味が少しランクアップするのは、経験上よくわかります。それ以来、わたしのなかで「ごまかす=胡麻化す」になりました。ほんのちょっとの一手間を加えて、もっと美味しくすること。

おかげで今日も、黒ゴマパンが香ばしく美味しく焼きあがりました^^

ハンズオン=「触る」を考える。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ハンズオン=「触る」を考える。

接触のプロ・国立民族学博物館准教授の広瀬浩二郎先生による、学芸員技術研修会「ユニバーサル・ミュージアム」から1週間が経ちました。この1週間、日常のなかで意識的・無意識的に「さわる」の捉え方が変化している自分を感じています。

「ハンズオン」は、美術館・博物館的には「さわる展示」であり、教育普及活動における体験型の学習を指しています。美術館・博物館での展示といえば、基本的には「手を触れないでください」のスタンスがほとんど。そのなかで「触れるもの」を選び出し、触る体験を含む鑑賞教育を進めていこうという動きは、全国的に広がっています。

そもそもわたしが「さわる」ことへの関心を持ったのは、花祭窯のおかみとして仕事するようになった20年以上前からのこと。やきもの素人だったわたしが陶磁器の勉強からスタートするにあたり、骨董品も現代ものも、「実際に手に持ってみる、触ってみる」ことで得られる情報は、質量ともにとても大きなもの。「見ただけではわからない」ことのなんと多いこと。そのため、美術館・博物館だけでなく、手に取って見ることのできるギャラリーや骨董店に足を運んで学んでおりました。

おススメする立場になると、さらに「さわること」の意味の大きさを感じるようになります。「作家ものの和食器」の良さをお伝えするにあたり「実際に手に持った感じがどうか」はとても重要です。だからこそ、その場所を提供してくださるギャラリーさんには、ほんとうに感謝しています。

よく工芸品などにおいて「手づくりの良さ」といわれることがありますが、こと食器をつくる作家においては、単に「手でつくったから温かみがある」などというぼんやりしたものでは意味がありません。手や指にあたったときの感触、持った時の重さ、重心の位置による持ちやすさのバランスなど、制作工程において実際に手で扱っているからこそ気づき、修正できるきめ細やかさがモノに反映されてこその「手づくりの良さ」なのです。

花祭窯のギャラリーにお越しになるお客さまとお話していると、ほんとうによい器を探しておられる方は、必ず自分の手にとって、丁寧にご覧になります。ワレモノを扱っているわけですが、こちらが注意を促す必要もなく、さわるマナー(なぜ触るのか=作法、どう触るのか=技法)が身についておられる方がほとんどです。一方、せっかくご来店なさっても、絶対に触ろうとしない方がいらっしゃるのも事実。そういう方々が花祭窯で器をお買い上げになることは、まずありません。

学芸員技術研修会「ユニバーサル・ミュージアム」のなかで広瀬先生のおっしゃった「拒触症」の言葉に、強烈なものを感じました。「見ればわかる」という思い込みや、視覚偏重が進む世の中への危機感を内包した言葉です。いろいろなものが画面越しに済ませられる時代になってきたからこそ、触ること・体感することの価値はより大きくなるように思います。

わたし自身、「触覚」をもっと磨いていきたいと、あらためて思う今日この頃です。

読書『「ない仕事」の作り方』(文春文庫)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『「ない仕事」の作り方』(文春文庫)みうらじゅん

台風避難のお伴に、本。わたしが避難グッズとともに持ち込んだのは、台風の緊張を少しでも解きほぐそうと、避難所に隣接する図書館で「みうらじゅん」を借りてきました。読みはじめてすぐに「あ、これ読んだことあった!」と気が付きましたが、何度読んでも面白いものは面白いので、良いのです。

笑い声を押し殺しながら読みましたが、この本は本人による「みうらじゅんの仕事術」であり、ジャンルとしては「実用書」「ビジネス本」に入れてしかるべき内容です。誰にでもできることではないことをやり続けている凄さが、ひしひしと伝わってきます。

個人的に引っかかった、みうらじゅんのキーワードは、次の通り。


  • 一人電通
  • 自分を洗脳する
  • ブームとは「誤解」
  • 本質を突く
  • 母親に向けて仕事をする
  • 言い続けること
  • まだないことを描く
  • 自分なくしの旅
  • 「空」に気づく
  • 子供の趣味と大人の仕事

以上『「ない仕事」の作り方』(文春文庫)より


でも、実は巻末のみうらじゅんと糸井重里との対談の中に出て来た、糸井さんがみうらじゅんに対して言った言葉というのが一番引っかかりました。いわく「かまぼこ板に『みうらじゅん』って書いて商売しろ」。自分の表札で仕事をするということを説いたこの一言に、さすが糸井さんは「ことば」を職業にする人なのだなぁ、と思いました。

台風への備えメモ、避難所編。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

台風への備えメモ、避難所編。

昨日は花祭窯の仕事場としての台風への備えについて書きました。本日は、今回初めてお世話になった避難所のことを少し。

台風9号から10号まで数日の猶予しかなかったのは、台風への警戒心を保ちつつ準備するうえで、わたしたちにとっては、プラスに働きました。9号で怖くて眠ることができませんでしたので、10号のニュースを見て、避難所にお世話になることを躊躇なく決定。そうすると、避難までに何をすべきかがより明確になってきました。

避難するからには、留守の間にご近所に迷惑が掛からぬよう、早めに出来る限りの対策をしようと動くことになります。また、ご近所の方々や、地区の長の方にも「避難します」とお伝えしておくことによって、いろいろとご助言いただくことができました。

さて、初めての避難所。これは福津市のカメリアホールでのケースです。同じ福津市内でも、避難場所により異なったようですので、あくまでも一例であることをご了承くださいね。

コロナ対策もあり、まずは家族ごとに健康確認シートの記入と体温チェック。ここで熱があったら家族共に「避難所は使えません」となるのかしら?と疑問を持ちつつ、無事チェック通過。当初「今回は自主避難(勧告や指示ではない)なので、市からは何も出ませんから、必要なものはご自身でご用意してください」といわれていましたが、実際には「ペットボトル水500㏄・使い捨ての簡易毛布・レトルトお粥」が、必要な人には1つづつ用意してありました。ありがたいですね。

カメリアホールは和室や会議室がありますが、建物奥の方から順に入っていきました。避難所開設の17時時点では、それほど込み合っている感じではありませんでしたが、最終的には「避難勧告」が出たため、1階ロビーのフロアまで使っての対応となっていました。ロビーなど広いところでは、キャンプ用のテントを使ってプライベートスペースを確保しておられるご家族も。

さて、わたしたち家族の入った部屋では、「密」にならないよう人数制限はしてありましたが、パーテーションなどは用意されず、任意にスペースを確保する仕組みでした。幸い、同室した皆さんがお互いに気づかい「お宅は何名ですか?じゃあ、もう少しこちらにズレますね」など、声を掛け合い程好い距離をとりながら、それぞれに落ち着くことができました。ちなみに、福津市内の別の避難所では、区切り線や会議机などでスペースをあらかじめ区切っていたところもあったようです。

一人暮らしの方もあれば、三世代で避難していらしたご家族もあり、車椅子の方も、持病を抱えた方も、赤ちゃんも。以前、子どもの騒ぎ声や赤ちゃんの泣き声を心配して避難を躊躇するお母さんが少なくないという話を聞いたことがありましたので、赤ちゃんや子どもたちが避難してきている様子を見てホッとしました。こういうときはお互いさまですから、遠慮してはいけないと思うのです。小さいお子さんのいる友人家族が「避難荷物の半分はぬいぐるみ」と笑っていましたが、少しでも不安を和らげるために、とても大切なことだと思います。

2階建ての建物でしたので、各階の所々にはスタッフさん(市の職員か、指定管理者の職員かは、不明)がおられましたが、過ごし方については、基本的には避難しているそれぞれの自主性に任せられている感じがしました。わたしたちがお世話になったエリアでは特に不快なできごともなく。それどころか、お互いを気遣う様子があちらこちらで見られ、安心できました。ご近所さんや、友人たちの顔も見ることができて、家で家族だけでドキドキしているよりも、心強く感じました。

幸い、一泊のあいだに停電は朝方のほんの数秒だけで、断水もありませんでしたので、物理的に困ることもそれほどなく終えた避難でした。事前準備ができていれば、一泊二日の避難は、比較的心身に無理なくできることがわかりました。今回のケースでひとつだけあげるとしたら、コロナ対策で「寝ている間もずっとマスク」がしんどかったです。

今回ほんの一泊、それも準備時間を持つことができての避難でしたが、実際に経験したことで、これが長く続いていくと相当にたいへんだろうということは、これまで以上にイメージできるようになったと思います。

巷に避難準備のための情報はたくさん出ていますので、必須情報はそちらにお任せするとして、個人的に「不安軽減にこれも大事!」と思ったベスト3(順不同)は以下の通り。

  • 美味しい(好きな)食べものを用意しておく。
  • 本やカードゲームなどを用意しておく。
  • 近所の知人、友人と連絡を取り合い、避難することを伝えておく。

末筆になりましたが、今回の台風で被災された方々、またこれまでの豪雨や地震等で、いまだ避難所生活を余儀なくされている方々が、一日も早く安心して生活できる日常を取り戻せることを、心より願っております。

花祭窯的、台風への備えメモ。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

花祭窯的、台風への備えメモ。

先週から今週にかけて、9号10号と立て続けでした。特に10号は特別警報級であると、早め早めの情報提供がありましたので、わたしたちも初めて本格的な備えをいたしました。

おかげさまで、工房の窓ガラスひとつ割れるでもなく、無事でした。今回は二日間かけて準備をしましたが、一度実際に取り組んだことで、多少要領がつかめたように思います。次回以降備えが必要なときは、よりスムーズにできるよう、以下備忘。

花祭窯的台風対策メモ。


<作業場>

  • 外溝の確認。水がちゃんと流れるようになっているか。
  • 窓の養生、目張り、木材・段ボール等で外側からの保護。
  • 仕掛品の生地は窯のなかへ。
  • 土間スペースの通路確保。
  • 材料等にシートをかぶせる。
  • 機械類コンセント抜く、電源を落とす。

<展示場>

  • 箱があるものはすべて箱に入れる。
  • 展示棚の下段にすべて移動。
  • 雨戸の確認。
  • 窓の養生、木材・段ボール等で外側からの保護。
  • 建具は全て閉める。

※養生テープ(5巻入り×2)、発泡スチロール板、大きめの段ボール


今回「窯は構造的にとても頑丈」であるということを再認識。制作途中のものはとても壊れやすいのですが、窯のなかに入れておけば安心です。

台風の場合は、予測に基づいて早めに行動できるので、比較的落ち着いて対応できますね。情報を発信し、注意を呼び掛けてくださる各所の方々のおかげです。ほんとうにありがとうございます。

また今回初めて、地域の避難所にお世話になりました。非常持ち出し袋や食料など、用意していたものを使いましたが、実際に避難してみてわかることも多いですね。福岡市のホームページにある、防災関係のハンドブックがとても充実しているという情報をゲット。あらためて、準備を見直してみようと思います。

福岡市ホームページより、防災関係の主なハンドブック。https://www.city.fukuoka.lg.jp/bousai/bousaihandbook.html

学芸員技術研修会2020「ユニバーサル・ミュージアム」

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

学芸員技術研修会2020「ユニバーサル・ミュージアム」

今年度は開催が無理なのかもしれないな、と思っていた矢先、「学芸員技術研修会」の案内が届きました。研修を主催する事務局・先生方に心より感謝いたします。

今だから尚更お話を聞きたいと思い申し込んだのは、国立民族学博物館准教授の広瀬浩二郎先生による「ユニバーサル・ミュージアム」。ユニバーサル・ミュージアムとは「誰もが楽しめる博物館」のこと。「ハンズオン(さわる展示)」による博物館教育を積極的に取り入れる館が、ここ数年増えています。わたしもまた鑑賞法の一方法として「さわることによる鑑賞」について学びたいと思っていた研修会でした。

蓋を開けてみれば、単に鑑賞法として以上に「アートの意味」「触ることの意味」を深く考えさせられる研修となりました。接触、さわることが避けられるようになった今年、自称「濃厚接触のプロ」である全盲の広瀬先生のお話を聞くことができたのは、これ以上ないありがたいタイミングであったと思います。

「世界をつなぐユニバーサル・ミュージアム-“触”の大博覧会から2025大阪万博へ-」と題された広瀬浩二郎先生のお話より、以下備忘。


  • 触文化、見常者、触常者、拒触症、濃厚接触
  • 触覚とは、手だけではなく全身の感覚。身体感覚を総動員して体感すること。
  • 見てわかること、さわってわかること。
  • 気配=気配り
  • なぜハンズオン(さわる展示)?あらためてミュージアムにおける「触る」の意味、「さわるマナー」の意義を考える。
  • なぜさわるのか=作法、どうさわるのか=技法
  • さわろうとしない人たち=「見る場所」として刷り込まれている。「見ればわかる」という思い込み。
  • 見ただけでは(画面越しでは)伝えられない情報って何だ!?
  • 点字力=したたかな創造力、しなやかな発想力。点字には「さわる」の要素がすべて集約されている。
  • さわる展示の多様性=視覚優位・視覚偏重の価値観・人間観に対する異議申し立て。
  • 目が見える人も「触常者」になれる。
  • 今「万博」をやる意義=国や地域による違いではなく、個人の世界観の違いに注目する展覧会にできる(かも)。

さわることが奪われた今だからこそ、その意味、価値を深く考えるチャンスにしなければ、という広瀬先生の強い想いの伝わるお話でした。今回は時節柄座学による講座でしたが、来年度以降、ワークショップも含めた「ユニバーサル・ミュージアム」に必ず参加したいと思います。

素人による禅語コラム。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

素人による禅語コラム。

素人とはわたしのことです(笑)

お友だちが経営する株式会社Natu Riseさん(旧社名おつうじ屋さん)が発行するニュースレターに、コラム「日日是好日」の提供をスタートして、既に17号。おかげさまで1年半以上が経っています。好きなことを書きながらも、読者の方々の意識が「ストレス解消」や「心地よさ」に向かうきっかけとなるテーマ提供ができたらいいな、と思っています。

そのコラムのなかで、少し前から「日常の禅語」と題し、自分の経験談からつながる禅語のご紹介をしています。わたしはもちろん禅僧ではありませんし、仏教を体系的に学んだわけでもありません。学術的には、佛教大学で修了した博物館学芸員資格取得課程の科目のなかで、仏教美術に関わるものを少し学んだくらいでした。

禅的なものの影響を一番受けているのは、茶道のお稽古を通してのこと。南方流の茶道は禅茶であり、「ありふれた日常のことが重要である」と「禅茶一味」を説いています。その「ありふれた日常」に自分が感じる禅のエッセンスを、飾らず率直に書いています。読者のお一人でも、このコラムで肩の荷を少しおろしてもらえたら嬉しいな、と。

本屋さんに行けば、一般向けの禅や禅語に関する本は、とってもたくさん出ています。わたしは素人だからこそ、もっと気楽で身近なものを、理論ではなく日々の体験からご提供できたらいいな、と思っています。

ふじゆりのおかみコラムは、株式会社NatuRiseさんのサイト内でご覧になれます。

興味がありましたら、ぜひご覧になってみてくださいね♪