読書『ミス・サンシャイン』(文藝春秋)吉田修一著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ミス・サンシャイン』(文藝春秋)吉田修一著

映画『国宝』が大ヒット中ですね。「絶対映画館で観るべき!」というお友だちが続出するなか、いつものカメリアステージ図書館で目に留まったのが、吉田修一さんの既刊本である本書でした。『国宝』はさすがに誰か借りてるよな、と思っていたところに視界に飛び込んできたので、借りることに。2022年の発刊ですので、約3年前ですね。新聞かなにかの書評で目にして「これは読んでみたいかも」と思ったのを覚えていますが、そのままになっていました。

吉田修一さんの著書は、映画化されているものも多いですね。わたしはこれまで『悪人』を読んだだけだったと思います。妻夫木聡&深津絵里という、個人的にはかなり魅力的に感じる配役で映画化されていましたが、観ていません。長崎県出身の吉田修一さんが描く『悪人』の舞台は福岡・佐賀・長崎だったので、「ああ、あの辺のことだな」とわかる場所が何カ所も登場し、本を読みながらそれらの場所の現実的な景色が鮮やかに頭に浮かんでいたので、そのイメージを壊したくなかったのかもしれません。

さて『ミス・サンシャイン』。発刊当初に書評を読んで興味を持った理由の一つが、著者が「長崎=原爆」にどういうアプローチをするのか、というところでした。わたしは10代~高校卒業までを長崎県内で育ったのですが、本書にも何度も出てくるように、長崎県では8月9日を語り継ぐための「平和学習」にとても力を入れています。公立学校では8月9日は「登校日」になっていて、毎年平和学習が続けられます。今もそうなのかな?少なくともわたしが育った時代はそうでした。吉田修一さんは1968年生まれとなっていましたので、がっつり同世代。そんな方が、どんなふうに小説に載せるのか興味がありました。

文藝春秋の公式サイトでは、「僕が恋したのは、美しい80代の女性でした」というフレーズで、本書が紹介されています。たしかにそのような物語なのですが、そのサイトに女優の吉永小百合さんによる推薦コメントが掲載されているところが、注目です。吉永小百合さんは、テレビドラマで体内被曝をした役を演じてから、ずっと反戦・反核の運動をなさっている人。推薦コメントには、そのような文言は一切含まれていませんが、「作家の故郷への思いを 私は今、しっかりと受け止めたいです」とおっしゃっていて、そのことが何を指しているのかは、著者と同じような平和教育を受けてきた者には、明らかでした。

長崎の原爆を現代から見る小説としては、カズオ・イシグロ著『遠い山なみの光』が、わたしのなかには印象的に残っています。こちらは今年、映画が公開されるということで話題にもなっていますね。広瀬すずさんが主演。今年初めに見た映画『ゆきてかへらぬ』の広瀬すずさんがとても良かったのと、もちろんカズオ・イシグロさんの原作も興味深く読みましたので、これは観に行かねばと思っています。

『ミス・サンシャイン』(文藝春秋)吉田修一著

カメリアステージ図書館イベント「発掘調査のあゆみ方」に参加してまいりました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

カメリアステージ図書館イベント「発掘調査のあゆみ方」に参加してまいりました。

イベントの正式タイトルは

「発掘調査のあゆみ方~発掘調査最前線 整理作業編~」

講師は福津市教育委員会文化財課・史跡整備係の崎野祐太朗氏。会場となったカメリアステージ図書館の多目的室は、定員10名程度のこじんまりとした空間です。カメリアステージ図書館は2階にあるのですが、その1階が歴史資料館になっていて、この手の勉強会が企画されるのにはうってつけの環境です。まぁまぁマニアックなテーマだけに、参加者少ないかしら…と心配しながら出かけたところ、なんのなんの、募集人数越えの参加で知った顔もちらほら。ともあれ文化財発掘調査に関心を持つ同志!?が、地域に一定数居ることがわかって、嬉しいかぎりです。

今回は「整理作業編」ということで、現場での発掘作業が終わった後から調査報告書作成・発行に至るまでの流れのお話でした。「現場編」は昨年開催したとのことで、わたしとしたことが参加しておりませんでした…痛恨です。が、昨年の現場編の資料も「ご自由にお取りください」と用意してあり、その準備の良さに感嘆。ありがたくいただいてまいりました。

以下、備忘。



  • 遺跡の報告が一番重要=「文化財調査報告書」を作るために発掘調査をしているようなもの。
  • 遺跡は「国民共有の財産」である。
  • 「似たようなもの」はあっても、二つとして同じものは無い。
  • 現場での発掘作業(記録作業)→室内での整理作業(成果検討)→報告書刊行(文化財の公開)
  • 文化財調査報告書を刊行するまでが発掘調査!!
  • 位置と環境=遺跡の上に大地無し→大地があって、遺跡がある→だからこそ、位置・環境・背景を語ることが大切。
  • 「客観的事実に基づいて述べる」ことが大事!
  • 調査報告書の発行を経て、ようやく展示公開することができる。
  • 人類の代表として記録保存。
  • 発掘調査のあゆみ方とは、人類史を守り伝えるためのあゆみ方。

「発掘調査のあゆみ方~発掘調査最前線 整理作業編~」福津市教育委員会文化財課・史跡整備係の崎野祐太朗氏より


最近の発掘調査で、福津市内で縄文時代の遺跡が見つかっていたり、「奈良三彩」の破片が見つかっていたり、という成果があったと聞き、テンションが上がりました。今回の講座でお話しくださった文化財課の職員さんは、わたしは「初めまして」の若い職員さんでしたが、熱く語る姿に仕事への誇りと愛情が感じられ、福津市の文化財課の前途が明るいことを確信しました。「人類の代表として記録保存」「発掘調査のあゆみ方とは、人類史を守り伝えるためのあゆみ方」というフレーズに、グッときました。

実は一時期、趣味が高じて福津市の「発掘作業員」に登録していたことがあるワタクシ。その時に携わった発掘調査は、江戸時代の塩田跡でした。時代的には新しくて、古墳時代を掘り慣れているベテランの皆様は「こんな最近のもの…」とおっしゃっていましたが(笑)、それでも十分にロマンを感じたものです。今回のお話を聞いて、また発掘に行きたいなぁという気持ちが沸きあがってきました。いえ、行きたい気持ちはずっとあったのです。そこに時間を割くことができるかどうか。真剣に考えている自分が可笑しいです。

素晴らしいイベントを企画してくださった図書館の皆様と、講座を担当してくださった文化財課職員さんに心より感謝です^^

「EC経営者・担当者向け1Dayセミナー」に参加してまいりました―その2。

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「EC経営者・担当者向け1Dayセミナー」に参加してまいりました―その2。

イベントのフルタイトルは

EC経営者・担当者向け1Dayセミナー makeshop day FUKUOKA 8th anniversary by GMO

ECビジネスのサービスを提供するGMOメイクショップ株式会社福岡支社さんのイベントでした。GMOメイクショップさんのユーザーでなくても参加OKということで、申し込みいたしました。登壇企業さんは、登場順に、長崎・波佐見の有限会社マルヒロさん、福岡・八女の株式会社うなぎの寝床さん、Jリーグのアビスパ福岡株式会社さん、福岡ローカルメディアの株式会社KBC UNIEさんの四社。前半2社についてのレポートは「その1」でご覧くださいね。上の写真は、会場となったアクロス福岡の「アクロス山登山」登り口。

以下、備忘。


↓アビスパ福岡株式会社「2,100回の地域イベントで実証!短期施策と長期施策で実現するLTV経営」より

  • LTV経営=Life Time Value経営。
  • 持続可能性。
  • 社会問題が集まるクラブを目指す。
  • ヨーロッパのチームでは、サステナブルな事業にスポンサーがつくのがスタンダード。
  • 日本初の「サステナビリティなパートナーシップ」を掲げるチームになろう!
  • 社会連携活動を仕組み化する。
  • サッカークラブが動くとメディアが動く、を利用する。
  • アビスパを知らない、サッカーに興味ない、人たちへのアプローチ。
  • 「アビスパは、地域(福岡)のために、何かしてくれているのか?」の声。
  • 入り口としての、チーム名を冠したボランティア活動。
  • 地域イベント・社会イベントで「タッチポイント」を増やす→仲間意識の醸成→長期的なファンの育成。
  • コミュニティを支える三要素「地域愛と強いリーダーシップ」「『参加者』から『当事者』へ」「社会性と経済性の両立」。

以上。

EC経営者・担当者向け1Dayセミナー makeshop day FUKUOKA by GMOより


このあとにもう一つ、株式会社KBC UNIE「テレビ・ラジオで取り上げられる裏技露出戦略」のお話がありました。こちらも興味深いものでしたが、なにしろタイトルが「裏技」で「ここだけの話」的な雰囲気がありますので、ブログにアップするのはやめておきます(オープンな講演でお話しなさったことですので、もちろん違法な話とかそういうものではありません(笑)。

アビスパ福岡さんのお話は、事業者としてのみならず、一市民としても、とても興味深いものでした。花祭窯はもともと佐賀でスタートしましたので、サッカーチームといえば「サガン鳥栖」なのですが、アビスパ福岡のホームゲームも、これまでに3回ほど足を運んで観たことがあります。サガン鳥栖もずっと経営難=資金繰りで苦しんできていて(おそらく現在進行形)、そういうものを打開する策の一つとして、市民向けに佐賀県内のあちらこちらで選手が活動しているのを見かけていました。アビスパもまた同じ課題を抱えていたのですね。

ところで、当日は100名を超える参加申し込みがあったということで、会場となったアクロス福岡円形ホールは、たくさんの人が出入りしていました。席が文字通り円形になっているので、どこからでも演者とスクリーンがよく見えて、ストレスなくお話を聞くことができました。アクロスにはよく足を運びながら、円形ホールでのセミナー参加は初めてだったのですが、いいホールですね。

GMOメイクショップ株式会社福岡支社さん、ありがとうございました!

「EC経営者・担当者向け1Dayセミナー」に参加してまいりました―その1。

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「EC経営者・担当者向け1Dayセミナー」に参加してまいりました―その1。

イベントのフルタイトルは

EC経営者・担当者向け1Dayセミナー makeshop day FUKUOKA 8th anniversary by GMO

ということで、ECビジネスのサービスを提供するGMOメイクショップ株式会社福岡支社さんのイベントでした。今回が8回目ということでしたが、わたしはこれまでこのようなイベントがあることを知らず、初参加。というのも、GMOメイクショップさんのサービスを利用していないもので…ですが、顧客でなくても一般参加できるということで、ありがたく参加を申し込みました。

登壇企業さんは、登場順に、長崎・波佐見の有限会社マルヒロさん、福岡・八女の株式会社うなぎの寝床さん、Jリーグのアビスパ福岡株式会社さん、福岡ローカルメディアの株式会社KBC UNIEさんの四社。いずれもテーマが興味深く、お話をお聞きするのを楽しみにしていましたが、期待以上に面白い内容でした。

以下、備忘。


↓有限会社マルヒロ「倒産危機からのV字回復ストーリー」より

  • 江戸時代~:伊万里港から出荷=伊万里焼。明治時代~:有田駅から出荷=有田焼。明治時代に鉄道が敷設されてから、そこから出荷されるものを「有田焼」と呼ぶようになった。
  • 吉兆の産地偽装問題(2007年)の余波→波佐見でつくったものは有田焼を名乗れなくなった→「波佐見焼とはなにか」を歴史から問い直す。
  • 江戸時代の「くらわんか茶碗」=安価な大量生産品・安心して使えるもの・武骨で加飾の少ないもの=「あくまでも雑器」。
  • 有田焼の「薄くて、伝統的な文様」に対して、「厚くて丈夫で、色々なもの」。
  • 有田焼の鍋島藩御用窯に対して、大村藩の藩財政収入、の位置付け→多売で稼ぐもの。
  • 「日常雑器」ではあるけれど、100均よりは高い(マグカップで1500円~)、の位置付け。
  • 買えるもの(価格)、納得して買ってもらえるもの(価格)。
  • コラボ戦略は、生き残り戦略。波佐見焼だからこそできることを考える。やきものに興味のない人たちへのアプローチ。
  • 波佐見に来てもらうための、施設公園オープン。

以上。

↓株式会社うなぎの寝床「年間2万本販売のヒット商品「MONPE」の秘密」より

  • 作っている場所に、売っている場所がない→うなぎの寝床オープン。
  • 久留米絣をいかに売り出すか→入り口としての「もんぺ」。
  • BtoB→仲間を広げる。
  • モンペの型紙を売る→箪笥の肥やしとなっている着物リメイク需要。
  • 機能的要素・文化的要素・視覚的要素。
  • 文化的要素=公共性の高い情報。
  • 商品を売ってもらうために、商品の背景にある文化への理解を促進してもらう取組。

以上。

EC経営者・担当者向け1Dayセミナー makeshop day FUKUOKA by GMOより


マルヒロさんのお話については、V字回復のきっかけとなった中川政七商店さんのお話を6月初めに聞いてきたばかりでしたので、図らずも、コンサルした側・コンサルを受けた側双方のお話を伺うことができたのは、ラッキーでした。また、わたしがこれまで語ってきた「肥前磁器」は、あくまでも有田から見たものであり、波佐見のことをある程度は知っていてもきちんと理解していなかったことに、今更ながら気づかされました。そういう意味でも、貴重でありがたい機会でした。このような機会をEC系の勉強会でいただくとは、思いがけませんでした。

「うなぎの寝床」さんは、たしか2013年ごろだったと思いますが、八女のお店に伺ってお話を聞いたことがありました。経営に携わる方々が強い個性を持ちながら、自分たちの個性を最前面に押し出すことなく、あくまでも地域への還元や伝統文化の公共性を第一に考えていらっしゃっていることが会話の端々から伝わってきて、すごいなぁと思ったことを覚えています。今考えると、訪問したのはうなぎの寝床さんが活動を始めてすぐの頃ですので、それから現在の展開にいたるスピード、すごいですね。これは体験せねばと、会場横にあるうなぎの寝床さんのショップで、MONPE買って帰りました。

思いのほか長文になりましたので、後半2社の続きは「その2」で^^

読書『ちょっとイイ家』(エクスナレッジ)増田奏 著

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読書『ちょっとイイ家』(エクスナレッジ)増田奏 著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。「建築家」とか「建築士」とか呼ばれる人、その仕事をしている方々への尊敬があります。自分には思いもよらない職業なので、単純に「すごいな」と思うのです。ありがたいことに、お友だちに建築を仕事とするすごい人たちがいるので、そういう人たちとおしゃべりをする機会があります。そしてそのたびにやっぱりすごいな、と思います。

というわけで「一般向けの建築系の本」を見かけると、ついつい手に取ってしまいます。建築家である著者が紹介する、別の建築家の方々がつくった家。出版元のエクスナレッジさんのサイトには「令和に活躍する建築家が建てた家を覗き見しよう!」という紹介文が載っています。今まさに活躍している建築家の方々が建てた家が、20数軒掲載されています。

本書内のイラストも、著者自ら描かれたものだそうです。設計図面を描くのは仕事のうちだとは思いますが、絵心も必要な職業なのですね。イラストというよりは、図面っぽさを感じる挿絵の数々が、ワクワクを誘います。ビジュアルでイメージが沸くことは沸いたのですが、正直な感想を言えば、建築素人のわたしにはちょっと難しかったかな、というところ。エクスナレッジの公式サイトでの紹介に「堅苦しい実務書が苦手なあなたに。読み物としてもお薦めです。」とありますので、ある程度知識のある方だと、本書の魅力がより理解できるのだと思います。

本著の著者・増田奏氏は『住まいの解剖図鑑』なる本でベストセラーを出しておられるということで、このタイトルなら、もしかしたら分かりやすいかも、という気がします。『住まいの解剖図鑑』もさかのぼって拝見したいと思います。

『ちょっとイイ家』(エクスナレッジ)増田奏 著

読書『そこに工場があるかぎり』(集英社文庫)小川洋子著

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読書『そこに工場があるかぎり』(集英社文庫)小川洋子著

本屋さんぶらぶら、で見つけた、わたしにとっては「!!!」な掘り出しもの。なにせ、あの小川洋子さんによる、ビジネス書(!?)ですから、その取り合わせにびっくりです。集英社のサイトによると「おとなの工場見学エッセイ」なるジャンル。そんなジャンルが存在したのね!?という疑問はさておき、5月20日に出たばかりの文庫本です。ただ、わたしが知らなかっただけで、本書以前にも『科学の扉をノックする』なる「科学入門エッセイ」(ベストセラー!)もあるらしく、小川洋子さん=フィクション小説というのは古い認識であったことを思い知らされました(笑)。

これはその取り合わせの妙を味わいたいと、購入即決。表紙がまた可愛いです。気になる内容=工場見学の顔触れは下記の通り。聞いたことのある社名もあれば、初めて聞く社名もあり。

細穴の奥は深い         (エストロラボ<細穴屋>)
お菓子と秘密。その魅惑的な世界 (グリコピア神戸)
丘の上でボートを作る      (桑野造船)
手の体温を伝える        (五十畑工業)
瞬間の想像力          (山口硝子製作所)
身を削り奉仕する        (北星鉛筆)

どのストーリーも素敵です。一般的なビジネス書の取材もののイメージとは、やはり異なりました。ルポではなく、エッセイということですね。「なぜその工場を取材することになったのか(取材したいと思ったのか)」のきっかけや、工場の現場やそこで働く人への目線、取材事実に対する著者自身の感想。「おとなの工場見学」のワクワク感が、伝わってきます。わたしがいちばん最近行った工場見学は、すでに10年以上前のビール工場になりますが、その時の気持ちを思い出しました。読む前には、自分のなかのベストワンを選んでここで紹介しよう、と思っていましたが、どのストーリーも素敵で、選びきれません。

比較的薄い文庫本ですし、工場ごとに章立てしてありますので、隙間時間にサクッと読むことができます。温かい気持ちになる一冊です。

『そこに工場があるかぎり』(集英社文庫)小川洋子著

大阪万博視察・その3-大屋根リング、スタッフの皆さん、その他雑感。

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大阪万博視察・その3-大屋根リング、スタッフの皆さん、その他雑感。

開場2時間前にゲート前に到着したおかげで、もちろん2時間待ちはしたものの、9時5分には会場内に入っていました。全体的に西ゲートのほうが空いているという情報は得ていたのですが、バスだと時間が読めないかもという不安があって、最初のパビリオン予約時間(9時半)に確実に間に合わせるべく、地下鉄を使いました。朝早かったこともあって、梅田からの御堂筋線も、本町からの中央線も座ることができたというラッキー。

入場までの待ち時間は、思いのほか早く過ぎました。というのも、折り畳み椅子に座って朝ご飯を食べたりしていたので(笑)。またセキュリティスタッフの方々が、随時必要な情報やタイムスケジュール、これまでの入場のときに起きたトラブルや、どうしたらスムーズにいくかなどの経験談を、マイクを通して伝えてくれたのが大きかったです。ユーモアを交えながらの説明に、皆笑顔で聞いていました。こういう時は、命令口調ではないほうが受け入れられやすいですね。おかげで、混雑にありがちなとげとげしい雰囲気は一切無く。これは凄いことだなぁと思いました。

最初のパビリオンが、入場した東側とは反対側の西側でしたので、すぐに大屋根リングに上り、リング上を西側まで移動しました。ほとんどの皆さんが、目的のパビリオン目指して地上を走って行かれたので、それに巻き込まれないようにした対策です。大屋根リングの上は案内スタッフの方以外はほとんど人がおらず、朝の爽やかな風が海から吹いて、とても気持ち良かったです。おかげで、会場の景色を上から眺めながら、ノンストレスでスムーズに目的地まで歩いていくことができました。

トイレ問題は、万博経験者の方々から「行きたくなる前に、気が付いたら行っておいた方が良い」とアドバイスをいただいていましたので、意識がそのように向いていたと思います。あちらこちらに設置してあって、「トイレが見つからない」ということはまったくありませんでしたし、わたしが使ったところは、幸いなことに、数人待ちはあっても、混んで大行列というところはありませんでした。これは給水スポットも同じで、手持ちのマップと、現地の「現在地図」を見れば、最寄りの給水スポットをすぐに見つけることができました。またちょっと迷うことがあっても、周りをぐるっと見ると、必ず視界に入るところにスタッフがいて、聞くことができました。

この「視界に入るところに、必ずスタッフがいる」というのが、とても素晴らしかったです。「わからない!」と思ったら「あの人に聞こう」とすぐに聞けるのですから、広い会場で不安になったり無駄足で疲れてしまったりということを、ずいぶん防ぐことができました。スタッフと一言に行っても、会場の案内係の人、掃除など環境整備の人、警備の人、各パビリオンの担当者…と、それぞれにいろいろと役割をお持ちです。が、とりあえず近くの人に尋ねると、担当が違っても「それは、あの方に聞くとわかると思います!」とつないでくださる。わたしはかなり何回もあちこちでスタッフさんを捕まえて質問していましたが、皆さんにこやかに気持ちよく対応してくださいました。「デジタル万博」を謳っていますが、結局は人よね、とつくづく感じたグッドポイントでした。

丸一日の滞在では、ピンポイントで目指したところは観ることができて満足でしたが、万博の掲げているテーマや意図を体感できたかというと、厳しいです。というのも、全体から考えれば「見ていないところがほとんど」になってしまうので、仕方のないことかもしれません。残念ながらわたしには、万博の全体像は見えませんでした。今回の万博でリピーターが増えているといわれているのは、そういう理由もあるのかもしれませんね。通期チケットをゲットして何度も足を運び、いろいろな場所を見ることで、万博が目指しているもの、全体像が見えてくるのかもしれません。

ともあれ、チケットやら予約を手配してくれた同行の友人のおかげで、大阪万博を面白く体験することができました。いろいろと考えさせられることもたくさん。現地に足を運んだからこそ見えたことが、てんこ盛りでした。

大阪万博視察・その2

大阪万博視察・その1

大阪万博視察・番外編

大阪万博視察・その2-パビリオン訪問、お食事、予約と待ち時間など。

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大阪万博視察・その2-パビリオン訪問、お食事、予約と待ち時間など。

イタリア館を訪問した後は、腑抜けのようになりましたので、あとは同行してくれたお友だちに一任です(笑)。次はお昼過ぎに「日本館」。移動時間を考慮しても少し時間がありましたので、近くにある「コモンズD」館へ。すでに万博に足を運んだお友だちのレポートで、何人もの方がこの「コモンズ」シリーズがかなり楽しいとおっしゃっていたので、実は楽しみにしていたのです。

コモンズDは、25か国が参加。一つ一つのブースは広くはないけれど、それだけに各国が自国の「イチ推し」をアピールしていて、特色がわかりやすく興味深かったです。なかでもわたしが一番「おおー!」と思ったのが、岩塩のパキスタン。床も壁もオブジェも岩塩で出来ている幻想的な空間でした。入り口で迎えてくださった、その国の方であろうスタッフさんに「運んでくるの、たいへんだったんじゃないですか?」と尋ねると、「潮風に乗って、ここまで来ました」とユーモアを交えたお返事。こういうコミュニケーションの楽しさがまた、良かったです。「コモンズD 岩塩」などのキーワードでググると写真がたくさん出てきますので、興味のある方は探してみてくださいね。

さてコモンズDは次の予約時間までに回り切れず、半分以上を見逃したまま日本館へ。予約を入れると、確実に見れるという良さがある反面、時間に縛られるという不自由さもありますね。その日本館は、予約時間に到着してすぐに受付してもらえたものの、そこから館内に入るまでに長蛇の列ができており、30分以上待たされました。予約の上に待たされる…でも日々改善を繰り返しているようで、スタッフの皆さんの心配りが素晴らしかったです。日本館は「循環」をテーマにしたゾーンづくり。「藻のキティちゃん」と「火星の石」が目玉のようでした。キティちゃんはかわいかったけれど、個人的には、意図がよく理解できなかったかな、というところ。訪問前の予習と、訪問後の復習があると、より理解が深まるだろうなと感じました。わたしはといえば、勉強不足でした。

次の予約までに少し時間があるので、その間にお昼ご飯を食べることに。ランチ難民になりたくないと思いつつ、せっかくだから海外のお国柄を感じることができるような食事にありつきたいと思っていたところ、すでに14時近くになっていたからか、比較的すんなりアフリカのレストランに入ることができました。お値段は、もちろん万博価格。イタリアのサンドウィッチ1600円にも驚きましたが、アフリカのランチセットは、お野菜たっぷりの具材がかかったクスクスにハイビスカスのジュースがついて3900円也。美味しかったです&ボリュームたっぷりでお腹いっぱいになりました。わたしたちがレストランに入ったときに、ジャンベを使った太鼓演奏がちょうど始まり、観ることができたのがラッキーでした。飛び入り参加で踊り出す人があり、それがまたとてもかっこよくて、大いに盛り上がりました^^

次に予約で入ったパビリオンは「飯田グループ×大阪公立大学共同出展館」。未来の「ウェルネススマートシティ」をテーマにしていました。が、わたしの興味はといえば、会場中央に据えられた大きなジオラマ。電車も車も動いていて、夜になれば明かりが灯り、楽しかったです。ああいうものは、ずっと観ていて飽きないですね。大好きです。パビリオンが伝えたかったこととはまったく異なる目線だったとは思いますが、楽しみました。そうそう、こちらは予約のおかげで受付がスムーズだったほか、入り口から中に入るのにも、10分も待たされなかったと思います。その10分ほどの間にも、中の様子やパビリオンの概要を説明してくださる方があり、こういうサービスがあると、待ち時間も苦になりませんね。

というわけで、思いのほか長くなってしまいましたので、続きはまた次回。

↓大阪万博視察・その1はこちら↓

大阪万博視察・その1-カラヴァッジョ『キリストの埋葬』を拝んでまいりました!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

大阪万博視察・その1-カラヴァッジョ『キリストの埋葬』を拝んでまいりました!

ここひと月ほどの大阪万博関連のニュースを見ていると、開幕前の酷評はいずこへ、というほどに盛り上がっている感じがします。かくいうわたしも、当初気になっていたのは、大阪万博=「カラヴァッジョの絵が来る!」その一点だけでした。友人から「チケットあるけど、行く?」のお誘いをいただいたのは、3月初めのこと。それまでまったく考えてもいなかった「万博視察」が、急に現実味を帯びてきて、即決で「行く」となったのでした。

すぐに日程を決めて、そのあとはパビリオン予約。チケットを持っている友人がすべて手配してくれて、とっても助かりました。「どこ行きたい?」に対して「イタリア館さえ見れたら、あとはどこでもOK」の希望を出していたところ、イタリア館の予約を取ってくれました。現在、イタリア館は人気が高すぎて予約がなかなか取れないようですが、3月初旬時点ではすんなりと予約が取れたようで、ありがたいことでした。

朝9時半からのイタリア館予約に間に合わせるには、オープンする9時にすぐ万博会場入りしていなければならない、ということで、前日から大阪入り。入場ゲート前には2時間前に到着するも、すでに長蛇の列ができていました。それでも広い入場ゲートのおかげで、オープンしてからはスムーズに入ることができ、朝一の誰もいない大屋根リングをゆっくり歩いてイタリア館に向かうことができました。

さてイタリア館。無事予約時間に入場。インストラクションの映像を数分見た後に本会場へと入ると、最初の空間では、1920年に飛行家アルトゥーロ・フェラーリンがローマから東京への初飛行に使用したという飛行機「アルトゥーロ・フェラーリンの飛行機」と、紀元2世紀の大理石彫刻「ファルネーゼ・アトラス」が出迎えてくれます。飛行機は、オリジナルの技術図面に基づいて忠実に再現したものだそうで、つくづくと天井を見上げてしまいました。天文学の巨神アトラス、人間と宇宙の関係を擬人化したアトラスは、今回のイタリア館のシンボル。1800年前にこのような彫刻が作られていたこと、それがここに運ばれてきて、現代のわたしたちが見ることができるということに驚愕します。ぐるりと一周回ってみることができるように展示されているので、あらゆる角度から拝むことができます。

そして次の間に進むと、目指すカラヴァッジョの絵画に会うことができました。バチカンが万博に参加したのは初めてのことだとか。小さく暗い空間に、絵だけがバン!とスポットライトを浴びていて、その圧倒的な存在感に、思わずこみあげてくるものがありました。皆さん遠慮してか、絵からかなり離れていたので前の方ががら空きで、絵の正面真ん前に陣取って至近距離でじっくりと拝見することができました。絵とわたしと、一対一(実際には周りにたくさん人がいましたが)で対峙することができた、素晴らしい時間でした。わたし的にはこの時間だけで充分、大阪万博に足を運んだ意味がありました。

大阪万博カラヴァッジョ

イタリア館、ほかにももちろん見どころの展示やお庭があり、素晴らしかったですが、わたしはもう大満足で、館内を回りつつひたすら絵の余韻に浸っていました。もうひとつ目玉作品とされていた、レオナルド・ダ・ヴィンチの「アトランティック手稿」の素描は、立ち止まらないように流れるよう促されていて、そこはちょっと残念でしたが、仕方がないのでしょうね。胸いっぱいになって館の外に出ると、ピッツァやジェラートのキッチンカー。ジェラートのところには大行列ができていたので、トマトとモッツァレラとバジルソースのサンドウィッチ(1600円也)を購入して、ベンチでかじりながら一休み。

イタリア館のテーマは「芸術は生命を再生する」。ご興味のある方、これから足を運ぶ方は、イタリア館のサイトにある展示内容の解説を読んでから行くと、見え方が一層深まるかもしれません。ちなみにわたしは、まっさらな状態で観に行って、帰ってきてから復習しております^^

イタリア館 – L’ITALIA A EXPO 2025 OSAKA

読書『六条御息所 源氏がたり』(小学館)林真理子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『六条御息所 源氏がたり』(小学館)林真理子著

実はこれまでに、ちゃんと『源氏物語』を読んだことがありません。わたしの世代だと、大和和紀さんの漫画『あさきゆめみし』で読んだ!という人が大勢だと思います。ちゃんと読んだことがないわたしでも、そのストーリーのところどころをなぜか聞き知っているというのが『源氏物語』のすごいところ。古典から小説、漫画、ドラマ、映画と、あらゆるメディアになっているが故、ですよね。

さて林真理子版・源氏物語。正直なところ、林真理子版が出なければ、『源氏物語』を読まずにいたかもしれませんので、ありがたいことでした。福津市の図書館にあったのはハードカバーの単行本版で、一章・二章・三章の各章が一冊になった三巻。文庫版は上下二巻にまとまっているようですね。ハードカバー三巻まとめて借りてまいりました。現在その「上」を読み終わったところです。

いやぁ、面白い。毎回同じような感想でなんですが、やっぱり林真理子さんはすごいなぁと思いました。長編を、本の厚さをものともせず、実に読ませます。そして、古典の原書では一登場人物である「六条の御息所」の「一人語り」形式で物語が進むのは、異例のことだそうですね。わたしは『源氏物語』のお話を通して読むこと自体が初めてでしたので、まったく違和感なく没入して読みました。そういえば林真理子版『風と共に去りぬ』の『私はスカーレット』は、主人公スカーレットの一人語りだったなぁ、などと思いつつ。

ストーリー自体は、皆さまご存じの『源氏物語』。それを、誰の視点から描くか、誰にどんなセリフを言わせるか、で、きっと印象が大きく変わるのだろうな、と思いました。古典を読むのはたいへんですが、このように現代語で意訳されたものが出ることで、気軽に楽しむことができるのは、とてもありがたいことです。そういえばカメリアステージ図書館では、NHK大河ドラマで『光る君へ』を放映していたときに(2024年なので昨年ですね)、『源氏物語』の読み比べイベントを開催していました。イベント参加者は、それぞれに自分が推す『源氏物語』関連本を一冊持って参加する、というもの。そんなイベントが企画出来るほど、『源氏物語』を底本とした本が出ているということですね。

さてわたしはこれから、二章・三章と二冊を読み進めることにいたします。ここからの展開も楽しみです。

『六条御息所 源氏がたり』(小学館)林真理子著