読書『恐るべき子供たち』(角川文庫)ジャン・コクトー 著/東郷青児 訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『恐るべき子供たち』(角川文庫)ジャン・コクトー 著/東郷青児 訳

久しぶりに引っ張り出してきた『恐るべき子供たち』。あらためて表紙を見て驚愕しました。なんと翻訳が、東郷青児。洋画家の東郷青児です。思わず出版年を確認したところ、昭和28年初版となっておりました。20代の頃7年間フランスに滞在し、絵画、デザインなどを幅広く学んだといいます。コクトーが生まれたのが1889年、東郷青児が生まれたのは1897年となっていますから、まさに同時代を生きていたのですね。この文庫本はずっと家にありましたが、今回読んで初めて気がつきました。これだから読書は面白い。

さて『恐るべき子供たち』。読んでいる間の、切なく苦しい痛みは、何十年か前(!?)に読んだ時と変わりませんでした。細かい描写はまったく覚えていなかったものの、ぜんぶ隠してしまいたくなるような恥ずかしさと、キリキリするような痛さはそのまんま。ここまで極端ではないにしても、自分の子ども時代を思い返したときに、彼らの言う「(放心によって)出かけた」とか「宝物」とかのイメージは共感できるものが多く、それでも20代になる頃には、そのようなものとも折り合いをつけてきたと思います。本書を書いたのがコクトー40歳の時ですから、いかに生き辛かった人生かと思いました。薬物中毒になりながらの人生。でも巻末にある年譜によれば没年齢は74歳ですから、早逝というほどではないのが、意外といえば意外でした。

先日読んだ中原中也といい、コクトーといい、「生まれながらの詩人」の人生には、思春期がずっと続くような痛みを伴うのだろうと想像しつつの読書でした。中也の人生が1907年から1937年。コクトーが生きている間の半分に、中原中也も存在していたということになります。ここでも時代が重なっていた不思議を感じました。

「津屋崎千軒なごみ」で一人朝活。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。上の写真は津屋崎千軒のなかに数ある路地のひとつ。人一人やっと通れるところに、アジサイがきれいに咲いています。

「津屋崎千軒なごみ」で一人朝活。

2022年4月から指定管理者が変更となった「津屋崎千軒なごみ」。福津市津屋崎エリアの観光案内拠点です。運営者が変わるとこんなに変わるのね、な改革ぶりが目に見えて面白い今日この頃。オーナーは「市」なので、公的施設故の制約はもちろんありながら、そのなかでどこまでできるか!?公的施設だからこその利点をどう生かすか!?の気概を感じます。

さて地元民として「なごみ使い倒し」を企んでいます。花祭窯から徒歩3分にあるせっかくの施設、有効に活用したいもの。そのひとつとして試してみたのが「なごみ de 一人朝活」。なごみのオープンが朝9時なので、朝活と言うほど早朝ではありませんが。

月曜の朝、さほど人の気配がいたしませんでしたので、悠々と使えました。好きな場所に陣取り、スマホ片手に頭のなかのウォーミングアップ。公的な場所でのフリーWi-Fi環境整備が大幅に遅れている福津市内にあって、貴重で快適なWi-Fi空間です。現在のなごみスタッフの方々は、地元観光ビジネスについてのアンテナがとても高いうえ、グローバルな視点をお持ちの逸材揃いでおられます。おしゃべりをしつつ情報交換&意見交換&事務連絡。そうしているうちにカフェサービスがオープン(10-16時)したので、お茶タイム。この日は「桃のハーブティー」をいただきました。メニュー数は多くは無いものの、お茶も珈琲もさりげなくこだわりが感じられます。

席を立つ11時頃まで、人の出入りはさほどありませんでしたので、フリースペースでゆっくり一人ブレストできました。もし密閉空間が欲しいときは、和室を貸切ることも可能です。公的施設ゆえ、1時間当たりの賃料は数百円ととってもお得。平日午前中はそれほど混んでいないようなので、実際に出かけてみてから、気分や状況に応じて借りるのもいいな、と思いました。もちろん、複数人でのミーティングにも良さそうです。和室=畳ですので、ふだん椅子と机で仕事をしている方にとっては、目先が変わる効果もありそうです。

わたしにとって、ちょうどよい距離のところに、ちょうどよいスペースが出来ました。これからちょこちょこお世話になります。

読書『中原中也全詩集』中原中也(角川ソフィア文庫)

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読書『中原中也全詩集』中原中也(角川ソフィア文庫)

久しぶりに中原中也。初めて中原中也の詩にふれたのは、小学生低学年の頃だったと思います。おそらく教科書に詩が載っていたのだと思うのですが、今となっては定かではなく。ただただ「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」にノックアウトされたのが、最初の出会いです。

その後、中也に執着していたわけではありませんでしたが、進学した大学が「湯田温泉」にありましたので、どうしたって「中原中也」の影が見え隠れするのです。まあ、それを言ったら「種田山頭火」もそうなのですが。30年ほど遡る当時「金子みすゞ」は実は現在ほどメジャーではなく。これは、金子みすゞについての本を読むとどういうことかすぐにわかりますので、また別の機会に。とにかく湯田温泉の街を歩いていると、中也や山頭火の気配がするというのは、面白いものでした。山口という場所はとても不思議なところで、わたしは大好きです。

さて大学を卒業後はまたしばらく中也のことは忘れていましたが、思い出させてくれたのが、息子の誕生。『にほんごであそぼ』です。NHKのEテレ子ども向け大人気の同番組。そのなかに「サーカス」「よごれちまった悲しみに」など、中也の詩がいくつも出てきて久しぶりに再会したのでした。

と、個人的に十数年周期で中原中也の詩を読んできたところへ「全詩集」があるという話を聞いて、飛びついたのがつい先月のことでした。上の写真は、中也の写真としてはあまりにも有名なもので、本書の表紙です。それにしても、いつ見てもアップに耐える美形ぶり。肝心の「全詩集」は厚さ3センチを超えるずっしりとした文庫で、まあ、読みごたえもばっちりです。

ざっと全編読んでみて思ったのは、わたしにとって響く詩は、昔も今もあまり変わらないということ。「サーカス」「汚れちまった悲しみに…」「生ひ立ちの歌」「早春の風」「湖上」「一つのメルヘン」「また来ん春…」「月夜の浜辺」。

未発表の詩もたくさん載っているのですが、これはどうなのかな、と思いました。この手のモノを読むときにいつも思うのですが、故人には選択権が無く、ただ、まだ出すべきでないから未発表だったのではないかしらと思うと、読んではいけないような気がするのです。と思いつつ、目を通してしまいましたが。

巻末の大岡昇平による「中原中也伝」が読み応えありました。

わたしの読書ベスト30-ひとことコメントその4。

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わたしの読書ベスト30-ひとことコメントその4。

先日張り切ってアップした「わたしの読書ベスト30-小説編。」。3回にわたって各タイトルへの「ひとことコメント」を書いて参りましたが、ついに今回ラスト30位までです。


24.ミザリー(スティーヴン・キング)
25.ハプスブルグの宝剣(藤本ひとみ)
26.イタリア・ルネッサンス(塩野七生)
27.手袋を買いに(新美南吉)
28.おおきなかぶ(ロシア民話)
29.蜘蛛の糸(芥川龍之介)
30.ジキルとハイド(スティーヴンソン)

『ミザリー』といばキャシー・ベイツ。映画が先でした。小説で読み直したのは、ずいぶん後になりましたが、映画で抱いたイメージが変わることはなく、違和感なく読み終わりました。ストーリーがわかっていても、小説は怖かった。小説の方が自分の脳内でイメージが膨らむので、怖さが倍増するということもあるかもしれません。

勝手に「藤本ひとみ祭り」と称して読んだここ数年でした。どれもこれも面白かったのですが、どれか一つと言われたときにパッと浮かんだのが『ハプスブルグの宝剣』。藤本ひとみさんの数ある著書のなかで、「男性が主役で格好良い」的なパターンが少ないなか、やや異彩を放つ一冊。個人的にはぜひ映画化してほしいと思っています。

そして、やっと塩野七生さんの本を読了できた!わたしにとって記念すべき『イタリア・ルネッサンス』シリーズ。シリーズ4冊「1 ヴェネツィア」「2 フィレンツェ」「 3 ローマ」「4 再び、ヴェネツィア」全部通して読んで欲しい本です。とにかく美しく、時間と空間を超えて旅をしたような読後感がたまりません。

続いて『手袋を買いに』『おおきなかぶ』と絵本2冊。絵本は自分が小さいときに読んだもので、息子が生まれたときに読み聞かせたいと思い、実際に再読したものがたくさんあります。『ぐりとぐら』だったり『ミッフィー』だったり、挙げはじめればきりがありません。そんななか、登場人物(と、狐)と一緒になってものすごくハラハラして、ラストにグッとくるのが『手袋を買いに』『おおきなかぶ』なのです。

ベスト30の最後に近くなって、『蜘蛛の糸』を思い出しました。これはわたしにとっては小説というよりは、お説教的なものでありました。最初に読んだのは小学低学年の頃だったと思います。「本を読んですごく考えさせられた」体験のかなり初期にあったものでした。芥川龍之介の本は、ほかにももっとあったはずですが、パッと思い出せませんでしたので『蜘蛛の糸』一択です。

最後に『ジキルとハイド』が滑り込み。「ジキルとハイド」的なものは、10代後半から20代前半のころ、個人的にかなり関心の高かった分野でした。ドロドロとして根源的なもの、人の本質を感じさせるテーマであり、当時も今も「あるよなぁ」と思わされるのです。


いやぁ、面白い振り返り。ちょっとした、自分の棚卸になりました。また何年後かに、ベスト30出し直してみたいと思います。

わたしの読書ベスト30-ひとことコメントその3。

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わたしの読書ベスト30-ひとことコメントその3。

先日張り切ってアップした「わたしの読書ベスト30-小説編。」。その後、あれも入ってない、これも入れ忘れたと続々とベスト30候補のタイトルが思い出され、心のなかで謝罪している今日この頃です。一度書き出したことによって、記憶の奥底にあるものがのそのそと出てくる面白さを感じています。

本日はひとことコメント16位から23位まで。


16.サロメ(原田マハ)
17.サロメ(オスカー・ワイルド)
18.恋(小池真理子)
19.バックミラー(星新一)
20.妊娠カレンダー(小川洋子)
21.変身(カフカ)
22.15の夏(佐藤優)
23.蟹工船(小林多喜二)

同じタイトルの『サロメ』、わたしは原田マハさんの『サロメ』を読んでから、続けて本家本元のオスカー・ワイルドを読みました。この順番は、わたしにとっては正解でした。マハさんのストーリーでオスカー・ワイルドその人への興味が高まったところで本人の書いた本を読むことで、行間の深読みが出来たような気がします。

小池真理子さんの本は、実はほとんど読んでいません。最初に(たぶん最初だったと思います)読んだ『恋』のおどろおどろしさに、もういいかな、と思っちゃったのですね。一冊で、小池真理子ワールドお腹いっぱい。ただ、読んでいる最中は本を閉じることが出来ずに、一気に読んだのを覚えています。

星新一さんにハマったのは小学生の時。学校の図書室にあったのだと思います。短編集を読み漁っていました。彼の描くSF的世界観は、ときにコメディチックで面白く読めるものがほとんどであった印象なのですが、ときに振り返って空恐ろしくなるようなものもありました。数あるショートショートのなかで心に残っているのが『バックミラー』。この世界観のイメージは、いまだにカラー版で脳内再生されます。

つづいて小川洋子さん。『博士の愛した数式』ももちろん読みましたし、興味深いお話ではありましたが、わたしのベストは『妊娠カレンダー』。ママレードを大量に作り続けるくだりがなんとも気持ち悪く、それでいてなぜかわかるような気もして、そんな自分をも気持ち悪く思いながら読んだのでした。

カフカの『変身』を初めて読んだのは、10歳ごろだったと思います。「朝起きたら巨大な虫になっていた」という設定は、比喩的なストーリーとしてではなく、奇妙なリアリティをもって迫ってきました。とても他人ごととは思えず、「自分がそうなった時」を想定しながら読んでいました。大人になったあとも何度か読んでいますが、初めて読んだ時のような恐怖は無く。

『15の夏』は、私小説と位置付けて良いのかな、と思いつつランキングに入れました。知の巨人・佐藤優氏の本は何冊も読んでいますが(読んでも読んでも追いつきませんが)、実用書が圧倒的に多いなかにあって、一層この本の輝きを感じます。いろいろな意味で新鮮さを感じた本でした。

そしてなぜかここにランキングした『蟹工船』。「日本のプロレタリア文学の代表作」とされますが、プロレタリア文学のなんたるかは、わたしにとってはよくわかりません。ただただ、蟹工船の吐き気をもよおすような痛み・苦しみだけが印象に残っています。あ、そういう意味では『あゝ野麦峠』も同じです。こう考えると、日本の文学作品からのベスト30入りがもっと出てきそうです。


さあ、次回で30位までのコメントが揃います!

↓1位から5位までのコメントはこちら↓

↓6位から15位までのコメントはこちら↓

わたしの読書ベスト30-ひとことコメントその2。

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わたしの読書ベスト30-ひとことコメントその2。

先日張り切ってアップした「わたしの読書ベスト30-小説編。」。ベスト30をアップしてから、こうして数日たってくると、さらに『注文の多い料理店』が入ってなかった!『雨ニモマケズ』も失念してた!となり、自分に呆れております。実のところ『注文の多い料理店』は、必須でした。

とりあえず、1位から5位までのひとことコメントその1を出しましたが

本日は、6位から一気に15位まで。


6.グレート・ギャッツビー(フィッツジェラルド)
7.神の火(高村薫)
8.黄金を抱いて翔べ(高村薫)
9.照柿(高村薫)
10.人間失格(太宰治)
11.お父さんのバックドロップ(中島らも)
12.優しくって少しばか(原田宗典)
13.ひとまねこざる(H.A.レイ)
14.風にのってきたメアリー・ポピンズ(P.Lトラヴァース)
15.超老伝-カポエラをする人(中島らも)

『グレート・ギャッツビー』も、わたしのなかの「読んでいなかった名作を」シリーズです。この切なさ、狂気、登場人物の「ダメさ加減」への共感は、先述の『アンナ・カレーニナ』に近いものがあります。

7.神の火8.黄金を抱いて翔べ9.照柿高村薫。大阪でサラリーマンをしていたころの上司が「このハードボイルドがおすすめ!」と教えてくれたのをきっかけに、はまりました。このあと『マークスの山』や『レディ・ジョーカー』などが出てくるのですが、わたしのなかでは、特に初期の『神の火』『黄金を抱いて翔べ』の2冊が最高傑作です。ひとつには、当時法人営業職で歩き回っていた大阪のビジネス街のこと細かい描写と、大阪の特定のエリアがもつ陰鬱で怪しい雰囲気が、まさに日々目にしていたそのままで、たまらなかったのですね。

『人間失格』。ほんとうはこの本は1位なのかもしれないのですが、1位に入れるのが癪なので、10位にもってきました。小学校高学年から大学生の頃までほぼ毎年、繰り返し読んでいたと思います。読むたびに自分の受け取り方が変わるのが面白かったのです。太宰=ダメ男のイメージはずっと変わりませんが(笑)。

中島らもは『お父さんのバックドロップ』『超老伝-カポエラをする人』。らもも一時期読みまくりましたが、わたしにとってのベストはこの2冊です。切なくて涙が出てくる前者と、笑い過ぎて涙が出てくる後者。どちらも「らも」そのものです。

30年ほど前によく読んでいた原田宗典が、ここ数年読みまくっている原田マハと兄妹であるという衝撃の事実を知ったのは、つい先日のこと。わたしにとって原田宗典といえば『優しくって少しばか』なのです。

絵本『ひとまねこざる』は、シリーズがたくさん出ていますね。わたしが幼少期読んでいたのは『ひとまねこざる』『ひとまねこざるときいろいぼうし』『じてんしゃにのるひとまねこざる』の三冊。単純に「カワイイ」とだけ言ってはいられないおさるのジョージのキャラクターが好きでした。

実のところ『風にのってきたメアリー・ポピンズ』は、わたしにとってオカルト的な本でした。ちょっと怖い、気持ち悪い、だけど目を離すことが出来ない…という感じ。指をポキポキと折って、飴として子どもたちに与える場面など、とても恐ろしく。挿絵は素敵なのですが、頭のなかでイメージする場面は生々しかったものです。


今回は同じ著者のものが複数含まれましたので、一気に15位までコメントで振り返ることが出来ました。30位まであと2回くらいでできそうかな、と思います♪

わたしの読書ベスト30-ひとことコメントその1。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

わたしの読書ベスト30-ひとことコメントその1。

先日張り切ってアップした「わたしの読書ベスト30-小説編。」

30位までを出したその直後から「あ、柳美里が入ってない」とか「藤本ひとみ1冊だけ?」とか自らに突っ込みを入れております。幼少期から今までの読書にランキングをつけるのは至難の業ですね。今回はまず1位から5位までの顔ぶれについて一言コメント。


  1. くまのプーさん(A.A.ミルン/石井桃子訳)
  2. プー横町にたった家(A.A.ミルン/石井桃子訳)
  3. 楽園のカンヴァス(原田マハ)
  4. 日の名残り(カズオ・イシグロ)
  5. アンナ・カレーニナ(トルストイ)

まず『くまのプーさん』『プー横町にたった家』(A.A.ミルン/石井桃子訳)。上の写真は、くまのプーさんの表紙です。これはもう間違いなく、わたしのワン・ツートップです。「石井桃子さん訳」版、限定です。初めて読んだのは小学校低学年の頃だったと思いますが、そのストーリーや、キャラクターの魅力、挿絵の素晴らしさはもちろん、言葉選び・言葉遊びのセンス・楽しさに夢中になりました。わたしの「日本語」に大きな影響を与えた本です。

原田マハさんの本はたくさん読みましたが、わたしにとっては『楽園のカンヴァス』がダントツのベスト本です。この本を読んで、アンリ・ルソーの画に初めて意識が向き、アンリ・ルソーの描いた絵の数々と彼の生き様の存在感が、わたしのなかで大きくなりました。そういう存在を持つと、人生は豊かになりますね。それを体感させてくれた本です。

続く『日の名残り』は、これまた数あるカズオ・イシグロ作品のなかで、わたしにとってのダントツベスト。いつでもすぐに、この世界観のイメージを思い浮かべることが出来ます。モノクロームというか、セピア色というか。そんな雰囲気がどうやらわたしは好きなようです。

そして『アンナ・カレーニナ』。わたしの「読んでいなかった名作を」シリーズのひとつです。アンナはじめ登場人物のそれぞれの「弱さ・ダメダメさ」が、ひしひしと自分事に思われてくる本でした。国も時代背景も、今の自分の人生とはまったく縁の無いものでありながら、激しく共感する不思議。圧巻の物語力を感じた本です。


1位から10位まで書こうかと思っていたのですが、「ひとこと」が長くなりました。今回は5位までということで。後日に続きます♪

わたしの読書ベスト30-小説編。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

わたしの読書ベスト30-小説編。

お友だちが「好きな小説BEST100」をSNSにアップしていました。100冊選ぶのはともかく、順位つけるのって、とってもたいへんそう…と思ったら、その通りたいへんだったとのこと(笑)。でも、自分の志向(嗜好)を再確認することが出来て楽しかったということで、わたしもやってみることにしました。ただし、30冊までで。

「好きな小説」としなかったのは、影響を受けたことは間違いないけれど、ではそのストーリーが好きかと問われると、そうとも言えないものもなかにあるから。一応幼少期からの読書を対象にしていますが、どういう手順にすると良いのか、まったく見当がつきませんでしたので、まずは頭に浮かぶところから羅列。ずいぶん昔に読んでタイトルが不確かだったものも少なからず、検索して確認しつつ、です。


  1. くまのプーさん(A.A.ミルン/石井桃子訳)
  2. プー横町にたった家(A.A.ミルン/石井桃子訳)
  3. 楽園のカンヴァス(原田マハ)
  4. 日の名残り(カズオ・イシグロ)
  5. アンナ・カレーニナ(トルストイ)
  6. グレート・ギャッツビー(フィッツジェラルド)
  7. 神の火(高村薫)
  8. 黄金を抱いて翔べ(高村薫)
  9. 照柿(高村薫)
  10. 人間失格(太宰治)
  11. お父さんのバックドロップ(中島らも)
  12. 優しくって少しばか(原田宗典)
  13. ひとまねこざる(H.A.レイ)
  14. 風にのってきたメアリー・ポピンズ(P.Lトラヴァース)
  15. 超老伝-カポエラをする人(中島らも)
  16. サロメ(原田マハ)
  17. サロメ(オスカー・ワイルド)
  18. 恋(小池真理子)
  19. バックミラー(星新一)
  20. 妊娠カレンダー(小川洋子)
  21. 変身(カフカ)
  22. 15の夏(佐藤優)
  23. 蟹工船(小林多喜二)
  24. ミザリー(スティーヴン・キング)
  25. ハプスブルグの宝剣(藤本ひとみ)
  26. イタリア・ルネッサンス(塩野七生)
  27. 手袋を買いに(新美南吉)
  28. おおきなかぶ(ロシア民話)
  29. 蜘蛛の糸(芥川龍之介)
  30. ジキルとハイド(スティーヴンソン)

昔読んだものは、中身をわりと鮮明に覚えているものもあれば、ワンシーンだけが強烈に残っているものもあり、はたまた内容はほとんど覚えていないのに当時の読後感だけがはっきりと思い出せるものもあり、あるいはひとつのセリフだけを覚えているものもあり。

書き出して分かったことは、どうしても最近読んだものが順位に入りやすいということ。今は忘れてしまっているけれど、ほかにももっとあったはず、ということ。ちなみに今回は、タイトルが浮かんだ順に書いていて、あらためて順位を付け直してはおりません。なので別の日にベスト30を上げ直したら、順位も顔ぶれもその都度変わる可能性大です。そう考えると、何の手掛かりも無しにタイトルが思い浮かんだ「昔読んだ本」は、余程インパクトが大きかったのだと言えるでしょう。

ともあれこうして書き出したことで、自分にとって大切なものが見えてきました。それにしても、30位まで書き出すだけでもけっこうな労力がかかり、有意義な週末仕事(ではなく趣味ですが)となりました。それぞれの作品への一言コメントはまた次回。

祝・開校20周年!令和4年度「郷育(ごういく)カレッジ」パンフレットが出来上がりました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

祝・開校20周年!令和4年度「郷育(ごういく)カレッジ」パンフレットが出来上がりました。

今年度2022年の郷育カレッジ講座一覧のパンフレットが出来上がりました!今年はなんと「カレッジ」が開校して20周年という記念年です。今年も引き続き感染症対策を最優先にするため、派手にお祝いすることは残念ながらできませんが、講座の中身はとっても充実しています!毎年外せない人気の定番講座に加え、時代に沿った新規講座、リニューアル講座が目白押しです。

7月16日(土)の開講式からスタートする今年度の特集テーマは、「わがまち福津再発見」。数ある講座のなかで、わたしの個人的なイチオシは、福津市の8つの「郷(さと)」を歩く「ふくつ散歩」です。ふくつ散歩講座がスタートしたのは、数年前にさかのぼりますが、今年度ようやく8地域すべてのエリアが揃いました。福間、南福間、神興、神興東、上西郷、宮司、津屋崎、勝浦の8エリアを、地域の「郷(さと)づくり」の方々のご案内でお散歩します。

わたし個人を振り返ってみると、郷育カレッジの運営委員に入ったのは、2016年。その前2014年~2015年の二年間は、社会教育推進を検討する郷育推進委員を務めましたので、福津市の社会教育に関わるようになってから9年目に入ります。この9年間、時代の変化のスピードはとても早く、特にこの2年コロナ禍下での変化は、社会教育を取り巻く環境をも大きく変えました。そんななかで、市職員の方々と運営委員の諸先輩方とご一緒に、社会教育に関わることが出来ているのは、とても学びが多く幸せなことだと感じています。

市と市民が一緒になって作り上げる、福津市ならではのスタイルの社会教育講座。福津市民の方、福津市に通学通勤なさっている方ならどなたでも受講できます。福津市内にお住まいの方は、6月の市報と一緒にパンフレットが入ってくるので、是非チェックしてみてくださいね。パンフレットが入らなかった方は、福津市の郷育課にお問い合せ下さいね。

令和4年度郷育カレッジ講座一覧

読書『総理の夫』(実業之日本社)原田マハ著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『総理の夫』(実業之日本社)原田マハ著

久しぶりの、原田マハさん。ブログをさかのぼってみると、2017年頃から「原田マハさんの追っかけ読書」をしています。『キネマの神様』『楽園のカンヴァス』からはじまり、彼女が書いた著書は、エッセイ以外たいがい読んだつもりでおりましたが、抜けているようです。これもその一冊。

『総理の夫』(実業之日本社)原田マハ著

田中圭さんと中谷美紀さんで映画化されています。映画を観に行った息子が「面白かったから」と買って持っていた文庫本を借りました。息子曰く「本の方が断然面白い!」。上の写真は、主人公が鳥類学者ということで、鳥。

主人公『総理の夫』の日記形式でのストーリー展開は、心の声ならではの面白さがあり、テンポよく進みます。総理大臣を描くとあって、いろいろとリサーチもたいへんだっただろうな、と思えました。わたしたちがふだん窺い知ることのできない政治家の生態の、細かい描写の面白さ。「スピーチライター」を主役にしたマハさんの著書、『本日は、お日柄も良く』(徳間文庫)を思い出させました。

文庫ですが、446ページと分厚いです。が、軽妙な口語体にのせられ、さらに「日本初の最年少・女性総理誕生」への野次馬的な興味も重なり、サクサクと読みました。主人公が「今これを読んでいるあなた!」と呼びかけ、読み手を登場人物として巻き込むスタイルが奏功しています。ストーリーを覗き見しているような読み手としての立ち位置が、絶妙でした。

久しぶりの原田マハさんの小説、やっぱり面白かったです。読みおとしがまだあるかもしれませんので、ちょっと調べ直してみようと思います。