続・佐賀県立博物館・美術館。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

続・佐賀県立博物館・美術館。

博物館教育の学芸員技術研修会で訪れた佐賀県立博物館・美術館。お昼休みを利用して、開催中の展覧会「吉岡徳仁ガラスの茶室-光庵」を観てまいりました。

月曜日のお昼時とあって、メインのガラスの茶室にも、たった一人で向きあうことができました。 「観る」というよりは「居る」ことで楽しむ展示かな、と思いつつ。 オルセーに入っているというガラスのベンチに腰かけて、10分ほど「ガラスの茶室のある空間」を眺めてきました。

個人的には、観覧者がこの茶室のなかに入れたら(まず無理だろうとは理解できますが)展示としての面白さがもっともっと増すだろうな、さらに実際ここでお茶を自ら点てることができたら面白いだろうな、でも気が散るだろうな、などと思ったりしながら。会期中にガラス茶室でのお点前のデモンストレーションイベントはあるようです。

それともうひとつ、これが外の自然光のなかであったら、またまったく違って見えるのだろうな、と。創造力の膨らむ展示でありました。

ひとつだけ、展覧会全体を通じて違和感、不自然さを感じることがありました。ありがたいことに、この吉岡徳仁さんの展覧会を担当した学芸員さんと学芸員研修会でご一緒出来たため、疑問を直接おたずねすることができました。失礼とも思える質問でしたが、まっすぐ答えてくださった学芸員さんに感謝です。

わたしの感じた違和感は、まさに担当学芸員さんがこの展覧会を実現するうえでとても苦渋なさった部分でもあったいうことがわかりました。それを知ることができたので、 展覧会「吉岡徳仁ガラスの茶室-光庵」を、いろいろな意味でとらえることができました。

展覧会で生じた疑問をその場で担当学芸員さんに確認することができたというのは、とても贅沢なことでした。

学芸員技術研修会「博物館教育」@佐賀県立博物館・美術館。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

学芸員技術研修会「博物館教育」@佐賀県立博物館・美術館。

新年最初の学芸員研修会は、佐賀県立博物館・美術館での「博物館教育」。もと宮城県立美術館教育担当学芸員・齋正弘先生による講義と演習。 写真は会場となった佐賀県立博物館のエントランスホール。

齋先生の美術館教育の講座を初めて受講したのが2016年度。3年度目の今回は、過去2回に比べてもさらに「哲学的な研修」になっていました。

以下備忘。

  • 美術家は「第一次産業家」である。
  • コンセプトを明確にして、出来るだけ単純化する。
  • 「カンディンスキー後」の発明は?
  • 「開けてはいけないところを開ける」の「美」的インパクト。
  • 美意識はその背景に積み重なったもので決まる。
  • 話を聴いてもらうには、周波数を合わせることが必要。
  • 比較・対比できる(=ものがたくさんある)のが博物館・美術館の良いところ。
  • schooling、teaching で出来ないことを「education」で行う。
  • teacher→instructor→interpreter→facilitator
  • 本来的な「ワークショップ」とは「ゴールを目指さない」で「拡散していくことを肯定」できる活動。
  • 知識を教えるのは学校でやればよいこと。
  • 文化財はいかようにも使える。
  • 地域の文化を活性化して「文化で飯が食える」ができる地域にするには、地域の美術館・博物館の役割が重大。
  • 「個別に相談にのる」の徹底。
  • 「わたし(専門家)はどう見ているか」をオープンにする。
  • 「美術家になる人」「美術を使って何かをする人」「美術を使ってより生活を豊かにする人」
  • 子どもの時どんな体験をしたら、高校生になった時にデートコースに「美術館・博物館」を入れるようになるか。
  • 「無駄なこと・ものをどれだけ見たり知ったりしているか」が肝。
  • 同じ土俵に載らない。此方の土俵を提案する。
  • 美術館・博物館の一番大きな役割は「education」。

(齋正弘先生の講座より)

とても本質的なお話とワークショップでした。館所属の学芸員さんたちにとっては、成果を現場に落とし込むには、難しさを感じる研修だったかもしれません。わたしは個人でやっているからこそ、すぐに取り入れていきたいと思います。

毎回素晴らしい研修機会をコーディネイトしてくださる九州産業大学の緒方先生に、心より感謝申し上げます。

藤吉憲典の作品集

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

藤吉憲典の作品集

というとなんだか大げさな感じがしますが、いわばポートフォリオとしての冊子。これまでの作品からセレクトしたものに、今年(2018)作ったものをいくつか追加しました。

この手のものを作るようになってから、4冊目。 2013年につくった最初の1冊と比べたら、ずいぶん要領よく作れるようになってきましたが、 相変わらず手作り感ありあり。恥ずかしながら「作品を外に出す前に、ちゃんと全部プロに撮ってもらわなきゃ」と、同じ反省をくりかえしています。

写真がちがうと冊子の完成形が大幅に変わるのは、体験済み。とはいえアート作品が数まとまったときにはプロへの依頼もしやすいのですが、単発的に制作した作品をすぐに発送しなければならないときには、自分で撮ってお終いになってしまうこと多々。

欲を言えば撮影だけでなく編集も、本来すべてプロに任せるべき仕事。毎年少しづつ修正の入るものは手元でぱぱっとやってしまうにしても、ここぞというときにはやはりプロにお任せしなければと、あらためて思いました。作品の良さが十二分に伝わるものをつくらないと、意味がありませんよね。

2019年はアート作品を数まとめてつくる年。来年の今頃はプロの撮影・編集による作品集をニヤニヤと眺めている自分をイメージしています。

学芸員連続講座、最終回。

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学芸員連続講座、最終回。

博物館マネジメント人材育成事業」の一環である連続講座「2025年問題に向けた高齢者の健康と博物館の役割」。第1回目「コラージュ第2回目「園芸療法第4回目「回想法第5回目「音楽療法」そして最終回は、これらを総括した考察の時間となりました。

写真は、会場となった九州産業大学。

この連続講座の大きな目的のひとつは、博物館が地域で果たす役割を来たるべき「高齢化社会」に紐づけしたときに、各館・各学芸員がそれぞれの地域でどのような案を見出し、どうすれば実現できるかを考えていくことにありました。

それをより現実に照らして考察するための最終回は、「高齢者の医療とケア」の実態を千鳥橋病院(福岡市博多区)の有馬泰治先生から、「2025年問題に向けた福岡市の取組み」を福岡市保健福祉局の木本昌宏氏から、教えていただくことからはじまりました。

5回の連続講座を振り返ってのワークショップでは、自治体の博物館・美術館学芸員の方々はもちろん、医療・福祉系の専門家・経営者、大学の先生、芸術を専攻する学生さんなどなど、さまざまな立場からの考えをお聞きすることができました。

この連続講座で得たものを、わたし個人としては、生涯学習のプログラム内容への反映という方法で、地域に還元していくことができそうだと考えています。実地で生かしてこその学び。どのような成果が出せるか、ワクワクしています。

事務局の九州産業大学の緒方泉先生はじめ九産大の先生、準備などで動いていらっしゃった学生さんたち、各講座で講義を担当してくださった先生方、一緒に学びを深めてくださった参加者の皆さんに、心より感謝いたします。ありがとうございました。

藤吉憲典の新しいパンフレット制作中。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

藤吉憲典の新しいパンフレット制作中。

写真は、2018年上海での藤吉憲典展での一幕。

2019年からの動きに合わせて、パンフレット=作品集を編集しなおしています。2019年はアート系の作品が多く生まれてきそうなので、その前に現時点でのアーカイブ整理整頓というところです。

今回のパンフレットに載せる作品も半分以上がすでにお客さまのもとにある状態で、ありがたいことだなぁとつくづく。同時に、手元にある写真データを見繕いながら、作品が嫁いでいく前にもっとちゃんとプロに撮っておいてもらわなければ、という反省も。

今までは漠然と感覚的に見ていた藤吉憲典作品も、生み出された作品の数が増えるにしたがって「箱シリーズ」「動物シリーズ」「半人シリーズ」「社会シリーズ」と色分けできることが見えてきました。同じ作品写真でも、カテゴリーによって色分けしたら、観る方にとって、より受け取りやすいものになるかもしれないな、などと考えつつ。

藤吉憲典の新しい作品パンフレット。年明け早々の完成を予定しています。

福岡県立美術館

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

福岡県立美術館。

先日、学芸員の研修でお世話になった福岡県立美術館。気がつけば何年振り?の久しぶりの訪問でした。

特別展が開催されることの多い3階展示室と、館収蔵品のコレクション展などが開催されることの多い4階展示室。今回は4階展示室でスタートした『コレクション展3 特集:おしゃべりな絵画と寡黙な絵画』を観てきました。

今回の展覧会を担当した福岡県立美術館学芸員さんによるギャラリートークに参加。わたしはふだん展覧会を見る際、できるだけ言語情報を入れたくないので、めったにギャラリートークに参加しません。が、久しぶりの「解説を聞きながらの鑑賞」は、学芸員さんの熱意が伝わってくる、あたたかい時間となりました。

近年はどの館でも特別展には「イヤホンガイド」が用意されていることが多いですが、せっかく解説を聞くのならば、有名人によるアナウンス的解説音声よりも、実際に関わった学芸員さんの生の声で聞いた方が、伝わってくる熱量が違うよね、と感じました。

福岡県立美術館でお薦めしたいのは4階にある『美術図書室』。3万冊以上の美術図書を自由に閲覧できるということですが、個人的には、近所の図書館や書店では見つけにくいアート系の月刊誌・季刊誌などが並んでいるのが嬉しいです。また、これも書店ではなかなか見つけることのできない全国の展覧会図録を探すことができるというのも嬉しいですね。

 

連続講座第5回「美術館de音楽療法」

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

連続講座第5回「美術館de音楽療法」

博物館マネジメント人材育成事業」の一環である連続講座「2025年問題に向けた高齢者の健康と博物館の役割」。第1回目「コラージュ」、第2回目「園芸療法」、第4回目「回想法」に続いて、第5回目「音楽療法」に参加してまいりました。

写真は、今回の会場となった福岡県立美術館。開催中の「バレルコレクション」、足を運びたいなと思いつつ、当日はガッツリ音楽療法を学びました。これまで3回受講した連続講座のなかでも、最も実験的な試みの講座でした。

指導してくださったのは、福岡女子短期大学音楽科の井上幸一先生。ほとんどの参加者が日頃は音楽は聴くだけの素人状態から、「即興的アンサンブル」を完成させるところまでしっかりと導いてくださいました。

以下、備忘。


  • 社会的・文化的関わりから音楽療法を捉える「コミュニティ・ミュージックセラピー」の考え方
  • (単にリラックスする、というようなレベルではなく)意図的、計画的に音楽を使用する
  • 音楽は時間芸術である
  • 音楽による非言語的コミュニケーション
  • ソーシャルアートとしての音楽
  • 触媒としての音楽
  • 音楽の構造のなかで「リズム」は本能的・情動的レベルで、人間が最初に取得し最後まで残るもの。
  • 理論的背景にあるのは「医学モデル」「精神分析モデル」「行動療法モデル」「人間主義的心理学」「同質の原理」
  • 精神分析モデル→音楽は無意識のレベルに働きかける
  • 同質の原理→浄化作用(カタルシス)をもつ

(「美術館 de 音楽療法」福岡女子短期大学音楽科 井上幸一先生 より)


座学ののち実験的に挑んだのは「絵画のイメージを音(即興的アンサンブル)で表現する」という、冷静に思い返せばかなり「無茶ぶり」な内容でした(笑)

この活動を通して最も大きく感じたのは「ふだん自分が何かを表現し伝えようとするときに、いかに『言語』という手段に頼っているか」ということ。そして、言語という手段に安易に頼るがゆえに、「きちんと伝える」ためにすべきことがないがしろになっていたかもしれないという反省。

広義での「鑑賞=見ること」について、あらためて考える機会となりました。

 

 

やっぱり人気の波兎。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

やっぱり人気の波兎。

肥前磁器の文様のなかには動物がたくさん登場するのですが、なかでもウサギは人気が高い動物です。干支のひとつであるのももちろんですが、干支に関わらずファンが多い。そしてウサギをモチーフにした肥前磁器の定番文様といえば、波兎文。

波兎(なみうさぎ)文。波とウサギの組み合わせは、神話の「因幡の白うさぎ」に題材を得たとも言われますが、真偽のほどはさておき、江戸時代からこちら「波に乗るウサギ」として縁起の良い意味づけをされています。

伸びやかなウサギの躍動感が感じられる、藤吉憲典の描く波兎。上の写真ではマグカップに入っていますが、定番の蕎麦猪口、飯碗など。今回の町田ももふくさんの個展でも、波兎文をいくつかみつけていただくことができます。


藤吉憲典展

2018.12.1(土)-12.7(金)
会期中無休

12:00-19:00(最終日は17:00まで)

ももふく
町田市原町田2-10-14#101
TEL042-727-7607

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出荷完了!町田ももふくさんで藤吉憲典展。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

出荷完了!町田ももふくさんで藤吉憲典展。

写真は藤吉憲典作、染付牡丹唐草文中鉢。月の満ち欠けに見立てたデザインになりました。

午前中に、個展会場に並ぶ器の出荷が完了。あとは作品リストを作成してお送りするのが、ひとまず会期前のわたしの任務。ここまでくるとひとまずホッとします。

個展の前は毎回ぎりぎりまで窯を焚いている藤吉憲典。今回も赤絵窯から朝上がったばかり。楽しみに足を運んでくださるお客さまに、ひとつでも多くご覧いただきたいという気持ちのあらわれです。

ぜひご来場くださいませ。


藤吉憲典展

2018.12.1(土)-12.7(金)
会期中無休

12:00-19:00(最終日は17:00まで)

ももふく
町田市原町田2-10-14#101
TEL042-727-7607

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連続講座第4回「博物館 de 回想法」

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

連続講座第4回「博物館 de 回想法」

博物館マネジメント人材育成事業」の一環である連続講座「2025年問題に向けた高齢者の健康と博物館の役割」。第1回目「コラージュ」、第2回目「園芸療法」につづく第3回目が「アニマルセラピー」だったのですが上海出張と重なり参加できず。第4回目の「回想法」に参加してまいりました。

写真は会場となった福岡市博物館。常設展示で、地域の歴史を世代ごとの目線で追える仕組みが面白い博物館です。当日はとっても良いお天気でした。

美術館・博物館が地域に貢献できること、地域と博物館資源を考えたときに、もっとも具体的・有効的に歴史民俗的資料が生かされる方法のひとつが回想法といえるのではないかと確信した一日でした。

以下、備忘。


  • 「博物館」と「教育」「福祉」の連携をいかに実現するか。
  • 市民が博物館を自分たちの「道具」としていかに使うか。
  • ライフレビュー(個人回想法)とグループ回想法。
  • グループ回想法で地域回想法。地域ケアとしての取り組み。
  • テーマ・内容・道具
  • 場の提供とサポート。
  • アート回想法ワークショップ。
  • お出かけ回想法。
  • 記憶の展示。
  • 持続性=行政の手を離れても持続可能か。
  • 「体に良い博物館」「脳に良い博物館」の効能。
  • 語る材料を得るための「地域の博物館」。
  • 私的刺激としての博物館資料。
  • 傾聴力。
  • 共有する時間の濃さ→チーム力→関わりから生まれる積極性。

今回の研修では、グループワークの際に学芸員、医療関係者、福祉関係者がそれぞれの現場から語る時間がしっかり確保されており、理想と現状を話し合うなかでいろいろと考えさせられました。