九州国立博物館特別展「北斎」観に行って参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

九州国立博物館特別展「北斎」観に行って参りました。

前回、九州国立博物館に足を運んだのは、3月春分の頃のこと。

それからふた月も経っていませんので、「九州国立博物館メンバーズプレミアムパス」をゲットしたのは、わたしにとって大成功だったということです。もちろん北斎を観たいのは大前提として、さらにプレミアムパスを無駄にしたくない気持ちが働いて、積極的に足を運ぶ予定が立ちました。

さて北斎展。今回の目玉とされていた「日新除魔図(にっしんじょまず)」が素晴らしかったです。2017年に九州国立博物館に寄贈されていたそうで、ここでしか見れないということでした。こういうスケッチにこそセンスが出るなぁ、としみじみ思える200枚超の連作。今回の北斎展は、この展示に尽きる!という感じがしました。

個人的に思いがけずヒットだったのは、日本の伝統美術である木版の技術保存・技術者育成をなさっているアダチ版画研究所さんによる木版画制作の解説資料が展示されていたこと。職人さんの「刷り」の様子を撮った動画もありました。昨年来アダチ版画さんの資料を集めていたところでしたので、あまりのタイミングの良さに思わず「おお!」と声を上げてしまいました。冷静に考えれば、北斎と版画は切り離せませんので、別に驚くことでは無いかもしれませんが、こんなところで出会えるとは!ラッキーです。

会場を出たすぐの特設ミュージアムグッズエリアには、アダチ版画さんのブースもあり、木版画の説明をきちんとしてくださるスタッフさんがおられました。北斎版画の復刻もあり、もしこの特別展の鑑賞記念としてミュージアムグッズを買うのなら、俄然おススメです。

さてもうひとつ、ラッキー♪がありました。それは、展示最後に漫画家しりあがり寿さんの、北斎パロディ画が展示されていたこと。雑誌などで何回も見たことがあり、そのたびに大笑いしていました。すごいセンスで、こういうの大好きです。ホンモノを観たのは初めてで、ここで観れるとは思っていなかったので、嬉しいサプライズでした。5月21日には、そのしりあがり寿氏のトークショーも九国で開催されるようですので、お好きな方はぜひ。

特別展「北斎」全体の印象としては、実は「あれ?これでおしまい?」でした。どこの美術館でも、たいていの特別展はお腹いっぱい胸いっぱいになって後にすることが多いのですが、なんだか物足りず…というのが正直な感想でした。途中で展示替えを行うということで、展示数を調整しているのかもしれませんが、少しがっかり。

その物足りなさを埋めるのは、いつもの4階常設展示「文化交流展示室」。前回からふた月ほどしか経っていませんでしたが、すでに展示替えされた部屋もあり(展示替えされていなくても、同じものを何度見ても良いものは良く)見どころたっぷりで大満足でした。期間限定展示の「きゅーはく女子考古部」による「かわいい考古学のススメ」も目の付け所が面白かったです。

日本から海外向けの宅配事情を、海外のお客さまに教えていただいた。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

日本から海外向けの宅配事情を、海外のお客さまに教えていただいた。

花祭窯のオンラインショップ蕎麦猪口倶楽部では、ゴールデンウィーク中の特別企画を開催中です。本日がちょうど折り返し。おかげさまで半分以上が売り切れとなりましたが、まだ少し残っておりますので、興味のある方はぜひ覗いてみてくださいね。

2022GWお家で器選び

さてこのイベントページを作ったときに、国内向けECの予定だったのを、設定を誤って海外向けにも販売できるようにしてしまいました。あ!と気がついたときには、オーストラリアからのご注文が。せっかくでしたし嬉しかったので、この1件だけは海外配送対応することに。

個人向けの海外発送はこのところ控えておりましたので、久しぶりでした。まず郵便局のEMSをあたったところ、コロナの影響で配送できない国が大量にあり、オーストラリアもそのひとつ。郵便局系列で現状使えるのは「船便」のみとあって、これは2-3ヵ月を要し現実的ではありません。次にDHL、FedExをあたるも、スムーズに届けてはくれそうですが配送料が高騰中で商品代金を上回るため、これも非現実的。コロナ禍につづきロシアのウクライナ侵攻もあり、懸念要素がたくさんあることをあらためて突き付けられました。

そのような状態であるということをとりあえずメールでお客さまに相談したところ、すぐにお返事がありました。いわく「クロネコヤマトはどう?わたしは東京のギャラリーからもよく買っているけど、最近は皆クロネコヤマト使ってるよ。受け取りもスムーズだし、オーストラリアでは問題なく使えるよ。検討してみて!」と。

ヤマトさんの国際宅急便の存在をすっかり失念しておりました。そういえばわたしが個人向けの海外発送の情報を集めていたのは、かれこれ5-6年前までだったように思います。浦島太郎。ここ数年、海外向けECを取り巻く環境は大きく様変わり(進歩!)しています。さっそくヤマトさんのサイトを確認したところ、発送書類の作成も、料金も、配送条件も、使い勝手良さそうであることがわかりました。

ヤマト運輸国際宅急便【輸出】

お客さまに教えていただいたおかげで、朝から調べて準備し、お昼前には無事に発送完了。なんともありがたいことです。それにしても、ヤマトさんの国際宅急便とても便利で使いやすかったです。あとは、無事の到着確認ができることを待つばかり。これを機会に、そろそろ海外個人向けのECも広げていこうかな、という気持ちになってきました♪

続・小さくて美しくて精巧で可愛らしいもの=ボンボニエール、増殖中。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

続・小さくて美しくて精巧で可愛らしいもの=ボンボニエール、増殖中。

ゴールデンウィークですね。花祭窯は通常営業でお仕事。ダンナは個展に向けて、新シリーズに向けて、制作のアウトプットが続いています。まずは七月に開催される黒田陶苑さんでの個展案内状用の器をお届けするのが最優先。並行していろいろと制作途中のものがあり、いつにも増してダンナの仕事場は混とんとしてきております。

ところで「小さくて美しくて精巧で可愛らしいものは、コレクションしたくなる。」と書いたのは、2週間ほど前のことでした。

磁器作家・藤吉憲典が次なるコレクションアイテムとして取り組む、手のひらサイズの菓子器・ボンボニエール。その第一弾が出来上がってきました。

藤吉憲典 ボンボニエール

上段左から

  • 染付瓔珞文棗型ボンボニエール
  • 染錦蓮華文ボンボニエール
  • 染錦牡丹唐草文ボンボニエール

下段左から

  • 染錦網桜文ボンボニエール
  • 染錦蛸唐草文平香合型ボンボニエール
  • 染錦柿右衛門調平香合型ボンボニエール

いずれも藤吉憲典作。

第一弾としてあがってきたボンボニエールの形は、ベーシックなドーム型、平香合型、棗型の3種類。同じような形でも、絵付によって表情がまったく変わります。これに陽刻・陰刻や彫塑が加わってきたら、どれほどのバリエーションになるでしょう。「カタチ×絵付」の組み合わせをイメージしただけでワクワクします。まさに可能性無限大です。

今年の黄金週間は、各地で陶器市が再開催されそうです。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

今年の黄金週間は、各地で陶器市が再開催されそうです。

花祭窯は陶器市には出しませんが、佐賀にはお世話になっている方々がたくさんいらっしゃいますので、「有田の陶器市開催」のニュースを喜ぶ方々の声を聞くと、やはり嬉しくなります。ここ2年開催できなかった間、ウェブ上での陶器市など工夫なさっていましたが、やはり現地での賑わいこそ陶器市の醍醐味なのだと思います。

ということで、このゴールデンウィークに肥前陶磁が楽しめそうな陶器市3つ。

有田陶器市

波佐見陶器祭り2022

唐津やきもん祭り

ざっとサイトを拝見したところ、各地ともイベントに力が入っています。単なるお買い物以上に「やきものと、やきものをとりまく文化」を楽しむことができそうです。そして、現地開催と並行してオンラインでのサービスを提供するというのも、コロナ禍を経たからこそでしょう。今年は現地に向かうぞ!という方も、人出が多いところは避けておこう!という方も、それぞれの方法で陶器市を満喫出来ますように。

さてそのゴールデンウィーク期間中、花祭窯のオンラインショップ蕎麦猪口倶楽部では、通常はショップに掲載していないものを、期間限定でご紹介してまいります。陶器市ではありませんので、価格は正価ですが、個展などに足を運ぶことが難しい皆さんに、ご覧いただけたら幸いです。

花祭窯蕎麦猪口倶楽部-今年のGWは居ながら器選び

詳細は、フェイスブックページやショップブログで公開いたします。どうぞお楽しみに♪

「藍の家」築120年記念イベント特別記念講演会「私たちはどこからきて、今どこにいて、これからどこへ行くのか」に参加してまいりました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

「藍の家」築120年記念イベント特別記念講演会「私たちはどこからきて、今どこにいて、これからどこへ行くのか」に参加してまいりました。

めちゃめちゃ長いタイトルになりましたが(笑)。講師は九州大学名誉教授であり竹田市文化振興財団理事長であり文化審議会世界文化遺産部会委員である藤原惠洋さん。その藤原先生が花祭窯に遊びにいらしたのは、3月の頭のことでした。

そのときに「建築・都市・デザイン」視点で津屋崎千軒の街並み・建築物を再評価する、との話していらっしゃったので、大きな期待をもって講演会に参加いたしました。

以下、備忘。


  • 芸術の持つ包容力に委ねる。
  • 建築と美術が「まち並み」を作る。
  • 「保存」が目的になってしまった日本の文化財行政の弊害。
  • (古い建築物の)「保存」はあくまでも手段であり目的ではない。
  • 保存の先に、どんな目的があるのか?
  • 文脈=context。礎。歴史のなかでの位置づけ。大きな文脈のなかでの立ち位置。
  • 矜持=プライド。「わたし」の前後200年を語ることが出来るか。海外に出ることで、日本の根幹を相対化して見る(理解する)ことが出来る。
  • 紐帯=絆が弱い故の、強いコミュニティ。社会的な仕組み。
  • なぜ私有財産を公のものにしようと思ったのか(思うのか)?
  • 「景観」は誰のものか。
  • 最も重要なステイクホルダーは、現にそこに住んでいる人。
  • 「地の人」と「風の人」の両輪。
  • 30年後は「今」の積み重ね(突然やってくるわけではない)。
  • 全体を俯瞰する。
  • 大人が遊ばない限り、子どもは遊ぶことが出来ない(遊びを知ることはできない)。
  • ブリューゲル、ゴーギャンの絵画に見る「まち」と「人」(「子供の遊戯」ピーター・ブリューゲル/「我々はどこから来たか?我々とは何か?我々はどこへ行くのか?」ポール・ゴーギャン)。
  • 地域固有資源=文化資源。
  • ◇=悪霊封じ。
  • 聖地(=変化や揺らぎのない不動の場所)が多いほど、良い。小さな祠、神社etc…。
  • 町全体が遊びの場=安全な空間。
  • 保護+生かす=保全。
  • 保存と活用。国の施策として、今後は活用に軸足。
  • 「市民の社会的合意」をどのように導くか。

※藤原惠洋先生の講演「私たちはどこからきて、今どこにいて、これからどこへ行くのか」から。先生の言葉とわたしが考えたこと。


非常に面白く、考えさせられるお話でした。図らずも、ここ最近ずっと手元で開いては眺めている本『くらべてわかる世界の美しい美術と建築』で提起されているものと重なりました。講演を聞いて「あの話をどう受け取るか、『踏み絵』だと感じた」とわたしにおっしゃった方がありましたが、たしかにそのような示唆的な部分も多々。この120年記念講演が大きなきっかけになるか、ただのお飾りイベントになるか、今後にかかっています。

ともあれ家から歩いて3分のところで、このような深いお話を無料で拝聴する機会があったのは、わたしにとって贅沢なことでした。ありがとうございました&企画から運営まで手掛けられた「藍の家保存会」の皆さまに心より感謝申し上げます。

お花を生けるタイミング。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

お花を生けるタイミング。

花祭窯にお越しになった方が「お花がいいですね」とおっしゃってくださると、お花に気づいてくださったことに感謝の気持ちがこみあげます。ご来訪を歓迎している気持がお花を通して伝わったかなと思うと、嬉しくなるのです。

佐賀にいたころに、先生について3年間だけお花を習いました。先生の流派は池坊で、京都にもよく研修にお出かけでしたが、とても大らかな先生で、流派のしきたりにとらわれず大切なことを教えてくださいました。たった3年でしたから技術はほぼ身に付いていませんが、先生が教えてくださった理念と花・植物に向かう姿勢は、わたしがお花を扱うときのベースになっています。

さてタイミング。料亭の女将さんのように毎日新しいものを生けるわけではありません。花鋏(はさみ)を持つのは、「お客さまがいらっしゃる時」と「お花をいただいた時」の二つのタイミングがほとんどです。そして追加で「生けたお花を生け直す時」です。お客様がいらっしゃるときは、まずは花祭窯の小さな露地のなかで、生けれそうな花材(あるいは葉材)があるか眺めます。たいていは一つ二つ見つけることが出来ます。どうしても無いときは、近所のお魚センターへ。名前はお魚センターですが、福津市内の花農家さんから届く切り花を探すことが出来ます。実は福津市は、お花の産地でもあり。

以下は、現在の花祭窯の活花の様子です。お客さまがあったので露地から拝借したこと、ご近所さんからお花をいただいたことから、このような顔ぶれになっています。

染付唐草文一輪挿し 藤吉憲典

染付市松文一輪挿し 藤吉憲典

染付花器 藤吉憲典

染付市松文一輪挿し 藤吉憲典

それにしても一輪挿しはとっても便利。食器同様、花生けでも器に助けられております。

続・書画陶芸-書画と陶芸の大きな違い。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

続・書画陶芸-書画と陶芸の大きな違い。

「書画陶芸。」タイトルでブログを上げたのは2週間ほど前のこと。磁器作家・藤吉憲典、銀座黒田陶苑さんでの次回個展に向けて、書も画も陶芸も、鋭意創作制作を進めております。

書画の作品制作の様子を見ていてすぐに、「陶芸」との大きな違いを実感。頭ではわかっていたものの、実際にその進行状況を目の当たりにすると、違いの大きさに驚きます。それは、

書画は、書いたら(描いたら)それがそのまま結果となる。

ということ。あまりにもあたりまえのことではありますが。

磁器の絵付と異なり、墨も岩絵具も、書いたまま(描いたまま)の色がそのまま残ります。「焼成」工程がありませんので、変容する要素が無いということですね。描き終わったらそのままで出来上がり=作品完成となりますから、なんともシンプルです。窯が焚き上がるまでのもやもやとした時間が無い。シンプルということでいえば、材料も紙と絵具(墨)だけですし、「書く/描く」のみですから、これもまさにシンプルそのものです。

出来上がった書画作品をみて、作家の制作作業と成果物としての作品とが、まっすぐにつながっている感じがしました。それはそのまま、磁器制作の工程の複雑さと、窯での焼成という他力をコントロールする難しさと面白さを再確認することにつながりました。いくつもの制作工程を経た最後の最後に窯に委ねるのですから、陶芸・磁器制作における不確実要素の大きさをあらためて感じます。

書画陶芸。作家本人に聞いてみても、それぞれに異なった面白さがあるようです。食器からアート作品へとフィールドを広げたときに感じた、一方の仕事がもう一方の仕事を伸ばす刺激的存在になる感覚が、今回もあります。銀座黒田陶苑さんでの個展まで約3ヵ月。ここからどういうものが出来上がってくるか、とっても楽しみです。

三年ぶりの南坊忌献茶会でした。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

三年ぶりの南坊忌献茶会でした。

三年ぶりとなりました「南方流遠祖南坊宗啓禅師献茶会」。三年前の南坊忌は、わたしにとって初伝免状を授かった記念の日でした。

上の写真は三年前の南坊忌の際の写真。今年も床の間には筍を用いた花器に花が生けられていました(今年は写真撮り忘れ…)。ああ、筍の季節の行事だったなぁと、あらためて思いました。茶会前日のお掃除・準備も、当日も、青空の広がる気持ちの良いお天気に恵まれ、着物姿で暑すぎず寒すぎず。

南方流の祖にあらためて感謝する機会であり、献茶のお点前を拝見できる貴重な機会であり、和尚さんから直々に『南方録』の一節をご教授いただく嬉しい機会でもあります。南方録を原文で読み進めるのは、チャレンジしてはいるものの忍耐を要し、時間がかかります。ですので、口述で教えていただけるのは、とてもありがたいこと。下記は岩波版、現代文の『南方録』。こちらはコンパクトで比較的読みやすいです。

南方録

南方録(岩波文庫)

献茶式・法要・南方録のお勉強の後、広間で薄茶をいただきました。今年お免状を取得なさった方の美しいお点前をうっとり拝見し、筍を模したお干菓子にニンマリし、お茶会の嬉しさがじわじわとこみあげて参りました。次のお茶会は秋の野点の予定。これを楽しみに、お稽古に精進いたします。

小さくて美しくて精巧で可愛らしいものは、コレクションしたくなる。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

小さくて美しくて精巧で可愛らしいものは、コレクションしたくなる。

例えば、藤吉憲典のつくる小皿豆皿。この顔ぶれを見るたびに、この作家は小さいものをつくり出すのが得意だし、なにより好きなのだなぁと、つくづく思います。

小さくて美しくて精巧で可愛らしいもの。やきものの世界になじみ深いところでは、香合(こうごう)もそうですね。上の写真は、錦野薔薇文香合(藤吉憲典 作)。その他思いつくところでは、香水瓶、嗅ぎ煙草を持ち運ぶ鼻煙壷(びえんこ)など。ここに並べたものはいずれも「香り・匂い」にまつわるものであり、「持ち運ぶ」が用途に含まれるものだと気づきました。「蓋付き」なのはその用途故ですね。

香合も香水瓶も鼻煙壷も、コレクター心をくすぐるもので、国内外問わずあちらこちらの美術館・博物館にコレクションがあります。鼻煙壷は日本ではあまりなじみが無いかもしれません。わたしが初めてその存在を知ったのは、大阪市東洋陶磁美術館でのこと。大阪市東洋美術館が所蔵する沖正一郎コレクションに鼻煙壺1,139件があり、常設展示コーナーでその一部を拝見することが出来ます。常設の専用棚に並んだ姿は壮観です。コレクションのなかから100個、入れ替えながら展示している様子。とにかく見ていて飽きません。(大阪市東洋陶磁美術館は、現在改修のため長期休館中です。)

そんな小さくて美しくて精巧で可愛らしいものに「ボンボニエール」がある!と気づいたのが、つい先月のこと。先日のブログ「佐賀鍋島家のお宝を守る徴古館。」で発見した探し物というのは、このボンボニエールのことでした。ボンボニエールもまた、「持ち運ぶ」用途があり「蓋付き」であり、コレクションされています。

ボンボニエールとは、砂糖菓子「ボンボン」を入れる小さな箱。大きさは手のひらにおさまるほどのサイズです。欧州でお祝い事の記念品としてボンボニエールを配る慣習を、明治時代中期以降日本でも倣い、皇族や華族の間で取り入れていました。慶事の宴席への出席者に、金平糖などの砂糖菓子を入れた小箱を引き出物として配るこの伝統は、現代でも皇室で受け継がれているといいます。

なにしろ皇室伝来のものですから、市中に出回り難いものでしょう、その数は決して多くないようです。徴古館にあるボンボニエール146点は、出どころも確かなまとまったコレクションとして、かなり貴重であることが伺えます。興味深かったのは、その材質が、銀か木かの二択であること。このなかに磁器が無かったのは残念なことでした。ただ、皇室に由来している物に限らなければ、ノリタケ、ロイヤルコペンハーゲンなどが、磁器製のボンボニエールをたくさん手掛けています。

ということで、磁器作家・藤吉憲典が次なるコレクションアイテムとして取り組むのは、ボンボニエール。同じようなサイズ・意匠でも、香合というと用途や使う人が限られてしまいがちですが、お菓子入れでしたら誰でもが楽しく使えます。どんなものが出来てくるのか、どうぞお楽しみに。

佐賀鍋島家のお宝を守る徴古館。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

佐賀鍋島家のお宝を守る徴古館。

「文化遺産オンライン」が面白い。と書いていたのはつい一昨日のこと。ある調べ物をしていて辿り着いたのが文化遺産オンラインだったのですが、わたしの調べ物のお目当てが、佐賀鍋島家の伝来品を所蔵する「徴古館(ちょうこかん)」にたくさんあるとわかり、軽く驚いたところでした。徴古館なら、佐賀に住んでいたころに何度か足を運んだことがあります。灯台下暗しとはまさにこのこと。

鍋島報公会徴古館 https://www.nabeshima.or.jp/main/

佐賀県内で初めての博物館と謳われる雰囲気の良い洋風建築は、国の登録有形文化財です。徴古館を含む佐賀城内エリアには大きな神社もあり、お散歩がてらウロウロするのに程好い環境です。徴古館の展示スペースはそれほど広くはないものの、鍋島家のお宝の数々は目を楽しませてくれるものでありました。

さて今回の調べ物、佐賀にあるのならば、すぐに直接観に行ける!と喜んだのも束の間、現在展示替え休館中で、6月中旬まで開館を待たねばということで、とりあえずは断念です。でも、その資料の載った図録を手配していただけることになりました。昨日お電話でお話をしたところが、翌日の本日には手元に届きました。職員の方に心より感謝です。上の写真はその図録表紙。

やきものの資料探しなら、佐賀県を最初にあたりますが、今回はそうではなかったのに、実は佐賀県にあったというめぐり合わせ。やっぱりご縁があるのね♪やっぱりわたしたちがやるべき仕事なのね♪と、勝手に喜んでおります。