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読書『異常に非ず』(新潮社)桜木紫乃著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『異常に非ず』(新潮社)桜木紫乃著

いつものカメリアステージ図書館から、図書館が一週間ほど休みなので、多めに借りよう!と手を伸ばしたのは、久しぶりの桜木紫乃さん。約一年ぶりでした。いっとき集中して読んだ時がありましたが、重いものが多いので、たまに手を伸ばすぐらいが、わたしにはちょうど良いのかもしれません。

昭和54年に大阪で実際に起きたという銀行立てこもり事件をもとにした、フィクションです。昭和54年=1979年、わたしは10歳で、子どもではありますが同じ時代に生きていました。そのような事件があったということは、まったく覚えていませんが。巻末に参考文献として『破滅―梅川昭美の三〇年』(毎日新聞大阪社会部編)のタイトルがあり、これが、実際のルポであったことがわかります。

読みながら、なんとも暗澹たる気持ちになりました。心療内科医の海原純子先生が、新潮社の公式サイトで書評を書いています。その文章中に登場する「社会や文化に根差した無意識の心理的束縛、いわばゴースト」「お互いに依存しあう関係から抜け出せずフラストレーションが高まっていく」の記述に、事件を起こした当人の当時の状況だけでなく、現代にも共通するものがあることを思いました。あるいはいつの時代にも、このゴーストは少しづつ姿を変えながら存在しているのでしょう。

本書のタイトルは、「オレは精神異常やない。道徳と善悪をわきまえんだけや」というセリフからついていて、「道徳と善悪をわきまえない」の意図するところを考えさせられました。こうしてひとつのフィクションの形になることで、登場人物がそれぞれの境遇や行動の背後にどのような思いを抱えていたのかを、推し量る足掛かりにもなるのだろうな、と思いました。あくまでも推測の域を出ないのではありますが。

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その独立準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々雑用)担当として作家活動をサポートしています。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)としても、並行して活動しています。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。