『小学館ギャラリー 新編 名宝日本の美術23「光悦・宗達」』より

読書『風神雷神 上・下』(PHP研究所)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『風神雷神 上・下』(PHP研究所)原田マハ著

上の写真は『小学館ギャラリー 新編 名宝日本の美術23「光悦・宗達」』より、俵屋宗達筆『風神雷神図』屏風の一部分。

原田マハさんのアート小説最新刊。『楽園のカンヴァス』にはじまり、毎回わたしが夢中になる理由は、作家・作品とその時代の歴史を重ねてストーリーを追っていくのが、とても楽しいからです。

『風神雷神』。読む前に「無理やり感がある」という書評も目にしましたが、ドキドキするストーリー展開に、上下巻合わせて650ページ一気に引き込まれました。確かに、俵屋宗達やカラヴァッジョを引っ張り出さなくても、天正遣欧使節団の冒険物語だけでもじゅうぶん面白かったかもしれません。ただ、俵屋宗達やカラヴァッジョを登場させたからこそ「絵」や「絵師」に寄せたストーリーになったのでもあり。

彼らの足あとをストーリーで追いつつ、フィレンツェ・ローマ・バチカンにゆっくり行かねば!とあらためて思いました。自分の足でその街を歩き、絵画・彫刻・建築をこの目で見たい!そんな思いが増幅してくる本でした。

エピローグにある一文が、本書に限らず原田マハさんがアート小説を書く際にもっとも言いたいことのひとつなのだろうな、と思うと同時に、とても共感しました。


「美術(アート)は、歴史という大河が過去から現在へと運んでくれたタイムカプセルのようなものだ ― 。」

『風神雷神 下』原田マハ(PHP研究所)より


そうなのです。だからこそ、現代に生きるわたしたちも、数百年後、数千年後も引き継がれ愛されるアートを生み出し、遺していく使命があるのです。

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。