読書『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』(文春文庫)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ディック・ブルーナ ミッフィーと歩いた60年』(文春文庫)森本俊司 著

ご存知ミッフィー。その生みの親ディック・ブルーナの生涯や制作の背景を、著者が見て、聞いて、調べてまとめたものです。著者は「僕は(ディック・ブルーナの)研究者ではない」と書いておられますが、実際にブルーナ本人やその周りの人たちに何度も会ってインタビューしており、ブルーナが生み出す世界をとっても愛しておられることがわかります。

この本のなかでミッフィーのことを「うさこちゃん」という言い方をすることの理由が書かれていますが、たしかにわたしにとっても、ミッフィーはもともと「小さなうさこちゃん」だったことを思い出しました。

わたし自身がブルーナの絵本に出会ったのは、もう40年以上前、幼少期を過ごした町田の市立図書館でした。子どもの絵本コーナーでブルーナの絵本を開いていた思い出は、今でも鮮明です。そして子どもが生まれたとき、あちらこちらからブルーナの絵本をいただき、再会したのでした。

ブルーナの生涯のどんな出来事や環境が、この世界観をつくりだしたのか。そこには、子ども時代の母親からの大きな愛情だけでなく、戦争やナチスの影、父親との葛藤などもありました。すべての子どもの「子ども時代」を守ってあげたいという気持ちが根底に感じられました。

芸術家としてのブルーナが、どんな時代に生き、どんな人たちの影響を受けたのか、また受けなかったのか。これもまた興味深いものがありました。「現実から出発」することを好み「理論やコンセプトから始まる」ことを好まなかったことや、「見る側の自由な態度に任せ」るというブルーナのスタンスは、わたしにとっては「我が意を得たり」で、ますます好きになりました。

そのブルーナが亡くなったのは、つい2年前。これからますます「ディック・ブルーナ」研究が進むのかな、と感じさせる本書でした。