読書『小説 イタリア・ルネッサンス 2 フィレンツェ』『小説 イタリア・ルネッサンス 3 ローマ』(新潮文庫)塩野七生

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『小説 イタリア・ルネッサンス 2 フィレンツェ』『小説 イタリア・ルネッサンス 3 ローマ』(新潮文庫)塩野七生

塩野七生さんといえば『ローマ人の物語』。過去何度か塩野七生作品にチャレンジしましたが、そのたびに途中で挫折していたわたしが、ついに無理なく読み進めることができたのが、本シリーズです。昨年末に読んだ『小説 イタリア・ルネッサンス 1 ヴェネツィア』に続く舞台は、「2 フィレンツェ」そして「3 ローマ」です。

主人公とストーリーの背景にあるものは「1 ヴェネツィア」からそのまま引き継がれています。いわば「続き」だからでしょう、物語にすぐに入りこんでいました。魅力的な登場人物たちの、興味深い人生が中心にあるからこそ、世界史・地理・宗教・美術といった要素の複雑さも鮮やかな彩りとなって迫ってきました。

一番興味をひかれたのは、ヴェネツィア・フィレンツェ・ローマそれぞれの都市の違いの描かれ方でした。とても丁寧に描かれていると感じました。世界史の知識の足りないわたしにとっては、登場人物の心象やセリフを通して伝わってくる三都市の風景、政治、風俗、気質が、ルネッサンス期のかの地の歴史を読み知るのに大きな手助けとなりました。「3 ローマ」ではミケランジェロが登場してきます。物語を通して、当時の政治や宗教の有力者と芸術家との関係、依頼者と芸術家との関係をうかがい知ることができるのも、興味深かったです。

『小説 イタリア・ルネッサンス 1 ヴェネツィア』を読んだ時には「ヴェネツィアに行かねば!」と思い、「2 フィレンツェ」を読めば「やっぱりフィレンツェよね」と思い、「3 ローマ」を読んで「ともあれまずはローマから!」と思わせられました。著者塩野七生さんの、それぞれの場所に対する愛情の深さを感じました。シリーズ三巻まで読んだ今は、まずローマ、そしてフィレンツェ、最後にヴェネツィアに周るのがいいかな、と。そう思うに至った主人公マルコのセリフがありましたので、以下にご紹介。


「わたしの生まれ育ったヴェネツィアは中世・ルネサンス時代の美しさでは無比の都市だが、古代はどこにもありません。フィレンツェも別の美しさながら、中世・ルネサンスの精神が結晶した花の都です。あそこでも、古代は影は落としてはいても、古代は気にしないで生きていかれる。
 しかし、ローマは違います。(中略)ここローマでは、古代を思わないでは生きていく意味が無いような感じさえするのです」

『小説 イタリア・ルネッサンス 3 ローマ』(新潮文庫)塩野七生より


このあとは「4 再び、ヴェネツィア」になります。ヴェネツィアに戻った主人公がどうなるのか、読むのが楽しみです。