読書『クララとお日さま』(早川書房)カズオ・イシグロ

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『クララとお日さま』(早川書房)カズオ・イシグロ

久しぶりの、カズオ・イシグロ。日本ではこの3月に刊行された最新刊です。ノーベル文学賞受賞後の第一作目。読むのをとっても楽しみにしていました。そしてその大きすぎる期待を裏切らない読み応えでした。

今回も訳は土屋政雄さん。日本でのカズオ・イシグロ作品は、「早川書房×土屋政雄」が定着しているような気がします。今回もストーリーと日本語の感覚がとてもしっくりする訳でした。読みやすくて、優しくて、情景と心象が浮かんでくる日本語です。

書評が発売以前から書評があちらこちらに出ていますので、大まかなストーリーはご存じの方も多いと思います。人工頭脳を搭載したクララ(ロボットという言い方が、本書中でも意図的に避けられているように感じました)と、病弱な少女ジョジーとの、出会いから別れまでの物語。クララは「AF」なのですが、そのAFが何の略であるかの説明は本書内にはありません。「『A』I」を搭載した「『F』riend」ということなのだろうなと思いつつ。

『クララとお日さま』では、時間軸はひとつであり、シンプルです。そのなかに、人工知能活用の問題、貧富・学歴など社会格差の問題、家族の在り方、愛情の在り方などがテーマとして自然に盛り込まれていました。もちろん、説教臭いものでは決して無く、淡々と問いかけられているような感じがしました。それも頭にではなく、心に対する問いかけ。

クララが持つ自分の仕事に対する誇りと使命への忠実さ。そして「お日さま」への信仰心ともいえる敬意と信頼。その純粋さが切なくなります。気が付けば、なんとかその思いが報われて欲しいと、一緒になって願う自分がいました。わたしはこれまでのカズオ・イシグロ作品のなかでは『日の名残り』が一番好きです。『クララとお日さま』はその次に来るかも、という本。何度も読み返したい本です。

11月は福岡アジア美術館で展覧会。

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11月は福岡アジア美術館で展覧会。

気が付けば会期初日までに2か月を切っていて、ちょっと焦っています。というのも、11月の福岡アジア美術館での展覧会は、初めての花祭窯の自主開催なのです。写真は、急ピッチで制作に取り掛かっている、告知ツールのひとつ。

そもそものはじまりは、昨年のこと。コロナ禍でいろいろなことが見通し難くなりました。花祭窯として独立以来これまでも、2011年東日本での地震、2016年熊本での地震など、己の無力を突き付けられるニュースがあるたびに、「わたしたちは、日々自分たちのするべき仕事をコツコツと続けていくしかない」という想いに至っていました。

昨年の春、最初の自粛生活がスタートし「先が見通し難くなった」ときにも、その先に進むために、「今、自分たちのするべき仕事」は何かを突き詰めて考えました。その結果「一度おさらいをする」ことにたどりついたのでした。ちょうど来年は創業から25周年ということもあり、これまでの仕事を並べ直してみることに。

藤吉憲典の仕事を並べ直すことは、そのまま、肥前磁器(古伊万里)の歴史をおさらいし、今度の展開を考えていくことにつながります。そこで「肥前磁器の歴史を、藤吉憲典の『写し』でご覧いただく」という形をとることにしました。公開することで、ずっとお世話になっている「肥前磁器」の歴史や仕事、やきもの(磁器)そのものに、興味を持ってくださる人が増えたら、少しは恩返しになるかもしれない、という想いもあり。

通常、藤吉憲典の展覧会は、ギャラリー(コマーシャルギャラリー)さんが主催してくださる、販売がメインの展覧会です。その機会をいただくおかげで、生業としての陶芸家が成り立っています。それに対して今回は、まったくの非営利での自主開催。開催には少なからぬ金額が掛かります。入場料は無料ですので、売上はありません。これをコストではなく投資として昇華できるものにしなければなりません。

古伊万里の変遷と未来 古典からアートへ
磁器作家 藤吉憲典の挑戦

スタートは昨年の春ですが、その後はふだんの仕事をしながら、どう組み立てたらよいかを隙間で考えてきました。気が付けば会期まで2か月弱。やっとこさ中心に据えて取り組みはじめています。初日は1の並びが縁起の良い11月11日。ここに向かって全力投球です。

古伊万里の変遷と未来 古典からアートへ磁器作家藤吉憲典の挑戦

出荷完了!藤吉憲典《古典とアート》展。

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出荷完了!藤吉憲典《古典とアート》展。

岡山・和気のギャラリー栂さんでの展覧会・藤吉憲典《古典とアート》展は9月20日(月祝)が初日です。本日、作品の出荷が完了し、ホッとしたところです。

毎回個展の際は、余裕をもって発送!と思いながらも、ギリギリまで一点でも多く良いものをお届けしたいという作り手の気持ちもよくわかります。どこまででお終いにするかというのは悩みどころですが、今回は文字通り余裕をもって発送ができました。

タイトル《古典とアート》の文字通り、古典の写しを中心とした器の数々と、アート作品の最新作をお送りしています。個展初日は9月20日は敬老の日で祝日、翌21日は中秋の名月、そして23日の秋分の日と、暦的にも秋満載。食欲の秋、芸術の秋のスタートにぜひ足を運んでいただけると嬉しいです。

藤吉憲典の作るぐい呑み、盃、酒器いろいろ。

明日以降、実際に個展会場でご覧いただけるもののなかから、少しづつご紹介いたします。

ギャラリー栂 (とが)
〒709-0431 岡山県和気郡和気町清水288-1
電話0869-92-9817

磁器作家 藤吉憲典《古典とアート》展

会期:2021年9月20日(月祝)-10月3日(日)
※9月27日(月)休み
営業時間:11時~17時

藤吉憲典《古典とアート》展
ギャラリー栂 磁器作家 藤吉憲典《古典とアート》展

花祭窯の九月の庭。

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花祭窯の九月の庭。

9月も中旬になり、花祭窯の露地には彼岸花が咲きはじめました。例年この季節になると、スーッと茎が伸びてきて、つぼみが膨らんできます。ちょうどお彼岸に入る頃に咲き始めるので、偉いなぁ、といつも感心していました。今年は珍しく一週間ほど早いようです。

彼岸花

ヤブランの紫色は、緑のなかで目を引きます。

ヤブラン

ミズヒキソウも紅白で伸びてきました。可憐で可愛らしい雰囲気が、写真ではなかなか上手に撮れません。

ムラサキシキブは、昨年の台風から潮風で葉っぱが痛んでいましたが、復活してくれました。

紫式部

そして今回は番外的にちょうど頂きもののお花がありました。

夏の間は「緑」一辺倒だった花祭窯の露地ですが、九月に入って色数が増えてきた今日この頃です。

「ふつう」ってなんだ?

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

「ふつう」ってなんだ?

経営者のお友だちと話していた時のこと。「わたしたちが『ふつう』とか『一般的』と思っていることって、実はあんまり一般的じゃないかも」という話題になったことがありました。「わたしたち」の想定する範囲がどこからどこまでか、ということまで含め、「ふつう」ってなんだ!?と盛り上がりました。

たとえば我が家の近所を見てみると、パッと思いつく顔ぶれのなかに、いわゆる「会社員」を職業とする人がほとんどいません。窯元(うちですね)、金工作家、革職人、酒蔵、フレンチシェフ、ガーデナー、農家、大工、板金屋、建築士、映写技師、プログラマー、ゲームクリエイター、カメラマン、スポーツの国際審判、市議会議員…こうして並べてみると、実にいろいろな職業がありますね。

皆、経営者だったりフリーランスだったりするので「朝、ほぼ決まった時間にスーツを着て会社に出かける」人をほとんど見ません。ここで暮らしていると、その景色が日常的で「ふつう」という感覚になります。でも、自分自身がサラリーマンだったころを考えてみると、通勤電車内も会社のあるオフィス街も「スーツを着たサラリーマン」が大多数で、それが「ふつう」という感覚でした。

働き方、暮らし方、時間の使い方、ものの考え方、価値の置き方。こういうものが近いと、お互いに話が通じやすいので、仲良くなりやすくなり、結果として、周りにそういう人が増えていく、という循環はありそうですね。

「ふつう」というのは、ほんとうは存在しないのだと思います。言葉として便利だからよく使いますが、一人一人、ひとつひとつ違うんだよなぁ、と、あらためて思った出来事でした。

上の写真は、日ごろからよく使う器のひとつ、藤吉憲典のつくる「染錦唐草文楕円皿」。我が家では職業柄「作家もの」の器を毎日の食卓で使うのが「ふつう」ですが、とても贅沢なことかもしれません。

久しぶりにがっつり画像仕事。

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久しぶりにがっつり画像仕事。

花祭窯では、所在地である福津市の「ふるさと納税」の返礼品をいくつか提供しています。毎年秋から年末に向かっては、ふるさと納税へのアクセスが増えてくる季節です。その前に少し返礼品の内容を見直した方がいいかもと思い、市役所の担当者さんにご連絡。

ふるさと納税が始まった当初や制度の大きな変更の際には、市役所の会議室に集まっての説明会が開催されたりしていましたが、昨今は電話とメールのやり取りでサクサクと仕事が進むありがたさです。久しぶりにお話を伺ったところ、いろいろと改善のご提案をいただきました。

まずは、ふるさと納税の返礼品の写真を撮り直し。どのような写真が好まれているのかを、実際に運用している担当者の方に教わり、我が返礼品の画像を確認してみれば、なんともお粗末。この機会にすべて写真も入れ替えねば!ということで、一昨日は一日がかりで撮影。今回はプロにお願いするまでもないので、ギャラリースペースに「写真撮影セット」をつくり、一人黙々と撮りました。

続く昨日は画像処理。画像サイズ加工と文字入れです。Photoshopを開いての画像加工は、サイトやSNSの運営上、必要に応じてちょこちょことはしているものの、今回は30枚以上とあり、久しぶりにがっつり向き合いました。時間を経るほどにPhotoshopの動きが重くなってきて、パソコンのスペックが気になったりしつつ、なんとか完了。

あとは、市役所の担当者さんにチェックしていただいて、修正箇所が少ないといいな、というところ。順調にいけば、10月には新しい写真と品揃えで、花祭窯のふるさと納税の返礼品をご覧いただくことができます。

現在返礼品で提供しているもののうち、蕎麦猪口(3客組、5客組)と市松文の重箱はそのまま残りますが、それ以外のものは入れ替えになります。祥瑞の筒茶碗や、フクロウの置物、赤絵の筒型二段重など、もし気になるものがある方は、お早めにご検討くださいね。

ANAのふるさと納税 花祭窯の返礼品一覧ページ

「リモート授業」なるもので、今どきの高校生活を垣間見る。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

「リモート授業」なるもので、今どきの高校生活を垣間見る。

緊急事態宣言下の福岡県。期限が9月末まで延長となりました。この4月から高校生の息子、夏休み明けは「リモート授業(オンライン授業)」がはじまるということで、授業に使うアプリの設定からスタート。

我が家はデスクトップのパソコンがあるので、授業も受けやすい方だと思いますが、これは極少数派。ほとんどの生徒はスマホの小さい画面を通して授業を受けるということで、たいへんだなぁと思いましたが、スマホを使い慣れている子どもたちにとっては、さほど苦痛ではないようです。「スマホスタンドが必要」ということぐらいでしょうか。

昨年来、Zoomでの双方向ミーティングは親子ともに慣れてきましたが、学校で使うのは「グーグルクラスルーム」という学校向けの仕組みと、グーグルミートの組み合わせ。こちらは初体験です。が、学校から持ち帰った簡単な(超簡単な!)説明書きに従ってアカウントを設定し、開いて進んで行くと、あっという間に設定完了。スムーズなものですね。このような仕組みを提供するグーグルはやっぱりすごいと、単純に関心。

実際に授業が始まると、出欠確認の際だけカメラをオンにするということで、上衣だけは制服着用、下は半ズボンの息子。そういえば昨年来、在宅ワークでそんなファッション(?)をあちこちで見かけました…大人も子どもも考えることは同じですね。画面の向こうから「キンコーン」と懐かしい学校の始業の音が聞こえます。

授業を担当する先生方のアプローチも、それぞれに面白く。課題問題を投げかけ、授業時間のほとんどを考える時間(自習)にして、時間が来たら解説してお終いの先生。リモート用にパワーポイント的な資料をつくって画面共有して、講義をする先生。最初に課題の目的を説明し、関連するYoutube動画のアドレスを添付し、見た後の感想提出を宿題とする先生。黒板を使って説明し、手を上げての発言を促しと、ふつうに授業をする先生…。

実にさまざまで、面白いなぁと思いました。一方で生徒たちはと言えば、グーグルミートとLINEの画面を行ったり来たり(笑)。なにしろ初のリモート授業とあって、「今回は初めてなのでうまく行くかわかりませんが…」とおっしゃる先生が少なくないなか、ちょっとしたわからないことは、LINE上で生徒たち同士でその場でアドバイスし合って解決しながら、授業を受けています。これはこれで、すごい。今どきの高校生たちのユーモア感覚と柔軟性が垣間見えました。

コロナ禍で、スタートは「苦し紛れのリモート授業」ですが、この体験を通して得るものも、かなりたくさんありますね。息子は「スマホ入力」から「パソコン入力」への練習になると喜んでいました。ここ二日ほどで「ローマ字入力のブラインドタッチ」ができるようになってきたようです。音声入力が主流になってきたら、これも不要になるかもしれませんが、とにかく「いろいろなことをやってみる」きっかけにはなっているようです。

毎日のブログのモトは、どこから拾ってくるのか。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

毎日のブログのモトはどこから拾ってくるのか。

おかげさまで、土日祝日を除いてほぼ毎日「ふじゆりスタイル」の記事を書くことが出来ています。ときには日曜日以外毎日書いている月もあり、「よくそんなに書けるね」と声をかけていただくことが増えてきました。

とはいえ「ブログ」との付き合いは「書き始めては頓挫し」の繰り返しでした。淡々と書けるようになってきたのは、ほんのここ数年です。

わたしの場合、「ブログを書き続ける」という点で、お手本となる存在がありました。「展活Times」を平日毎日更新し続ける、展示会活用アドバイザー大島節子さん。東大阪にある、什器レンタル会社さんの社長さんです。わたしよりかなりお若いのですが、家業を継いで社長になられてから、事業存続を探るなかでご自身の天職を作り上げて来られた、すごい方です。これからの時代、自分にとっての天職は作り上げていくべきものなのだと、彼女の活躍を拝見するたびに思います。

この方が書くブログは、徹底して「お客様に役立つ情報」を意識しておられるのがすごいです。それでいて、とても自然体。わたしは彼女をお手本にしていると言いながら、「どなたかの役に立つ情報」を意識して書き続けようとすると頓挫する、を繰り返してきました。実際にやろうとして、さらに彼女のすごさがわかります。どうやらそのスタンスはわたしには無理なので、「自然体」だけでも倣おうと開き直り(笑)、徹底して「自分が読みたいこと」を「自分のために」書くことにしました。

「自分が読みたいこと」を「自分のために」書く となると、自由で気軽です。ノンジャンルな文書の集まりになって、まとまらなさそうですが、そこには「わたし自身の興味関心」という一定の方向性が生まれます。自分のための備忘録ですから、一番の読者は、わたし自身。実際のところ、何か思い出したいことがあったり、調べたいことがあるときに「ふじゆりブログ」内でキーワード検索をかけると、答えやヒントが出てくることが多々。かなり役に立っています。

「何を書こうか」がパッと浮かばないときには、スマホで撮った写真を振り返ってみます。わたしは、仕事に使う以外ではあまりスマホで写真を撮らない方ですが、それでも自分がそのとき「あ!」と思ったものを撮っているものです。その写真からブログテーマを引っ張ってきて、文章化する。これが案外便利な「ブログネタ」になっています。そしてもうひとつ、わたしには強い味方「読書記録」があります。常日頃から本はなにかと読んでいるので、そのなかからピックアップしてブログを書けばよいというわけです。

書くことが見つからないときはこれ!という頼り先(わたしの場合、スマホで撮った写真と、読書)を一つ二つ持っているだけで、ブログを毎日書くのに、それほど困らないようになりました。あとは「自分のために書く」という気軽さ、そしてももと文章を書くのが好きな方だということですね。

そんなわけで、執筆の仕事も募集中ですので、お気軽にご相談くださいませ^^

ふすまの貼り換えをしたら、白い面が美しく。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ふすまの貼り換えをしたら、白い面が美しく。

夏の終わりに思い立って、ふすまの貼り換えをいたしました。もちろん、実際にやってくださったのは、ふすまやさんです。頼るべきはその道のプロですね。4枚のふすまを両面、二日で美しく仕上げてくださいました。

花祭窯の建物は、昭和元年に建てられたものを使わせていただいており、設えはできるだけ当時のままにと心がけています。建具も当時のものをできるだけ使っています。ふすまのサイズが部屋により様々だったり、現在の標準サイズとは異なっていたりします。今回請け負ってくださった職人さんによると、ふすま自体の内側のつくりも、昔ながらのつくりだったということでした。

今回、襖紙は無地に近いものを選びました。設置していただくと、淡いクリーム色に控えめな地文はありながら、ほぼ白い面が広々とした感じになりました。すっきりとなり、何も描かれていない、無の状態の美しさを楽しんでいたものの、しばらくすると、何か絵画的なものをプラスしたくなってきています。

季節的に、今はまだほとんど襖を開け放っていますが、これから先、襖をきっちりと占めたときに何か楽しい絵が現れると面白いだろうな、と。4枚のふすま両面で8面…どんどんイメージが膨らみます。襖絵を描かせた古の人々も、こんな気持ちだったのかしら、と思いつつ。

今すぐにどう、ということではありませんが、そのうちに「襖がこんな風になりました」とブログをしたためる日が来るかもしれません。

「プリン、どうやって食べていますか?」と問われ。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

「プリン、どうやって食べていますか?」と問われ。

いつものお気に入りのケーキ屋さんにて。そういえばいつもケーキばかりで、プリン買ったことが無かった!と気づき、プリンをオーダーしたところ、オーナーパティシエから投げかけられたのが、このセリフ。

不意打ちに「えっ!?」となり、「正しい食べ方があるんですか!?」と質問返し。すると厨房からコイコイと手招きされ、その場でプリンの食べ方レクチャーがはじまりました。下の写真は、そのレクチャーに従って、家で食べたときの写真。

染付網文中鉢 藤吉憲典
プリン & 染付網文中鉢(段付5寸鉢) 藤吉憲典

教えてくださったのは、「プリンを器に返して盛り付ける」のひと手間。たしかに、ケーキはお皿に盛っていただくのに、プリンは買ってきたケースのままいただくことがほとんどでした。こうして逆さに返せば、カラメルソースがきれいに全体にかかり、パティシエが作るときにイメージしている「おいしいハーモニー」の状態で食べることができるということ。

「だから、プッチンプリンは、ある意味正しいんですよ」とパティシエ。「こうして食べたらソースがまんべんなくかかって美味しいってことを、お客さまに伝えるのも、わたしたちがするべき仕事なんですけどね。これまでちゃんとできていなくって」と。「せっかくカラメルソースがおいしいのに、容れ物のまま上から食べたら、底に残っちゃうでしょ?」と。

確かにその通りで、器に返していただくと、ソースも残さずきれいにいただくことができました。きれいに形を崩さずに器に返すコツ=返す前にプリンと容器の接点をぐるりとスプーンで押しておく!を教わったので、不器用なわたしでもうまく行きました。

我が家では、出来合いのお惣菜でもなんでも、お皿や鉢に盛り付けなおします。そうすることで尚美味しく感じます(自己満足でも良いのです)。そのプリン版ですね。カラメルソースがあるので、ちょっと深さのある鉢を使うと見た目にもいい感じで、なんといっても食べやすくなります。

ということで、写真の段付5寸鉢を使ってみました。縁が段(リム)になっているので、実際には径が4寸(12cm)ほど。リムがあることで、スプーンが使いやすくなり、ソースも掬いやすくなりました。

そういえば、以前にはケーキの包装を待っている間にミントクッキーをいただき、ハーブの「ミント」の種類と選び方についてのレクチャーを受けたりもしました。今回はプリンをオーダーしたら、プリンの食べ方のレクチャー。小さなお店で、物理的にもお客さんとの距離が近いからこそできる接客だなぁ、と思いました。次回は何を教えてもらえるのか、楽しみです。