読書『1989年』(平凡社新書)竹内修司著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『1989年』(平凡社新書)竹内修司著

訳あって現代史、より具体的には自分が生まれてから社会人になるまであたりの歴史を調べることになり、現代史の本を探していたところ、このタイトルを発見。深く考えずに、手に取りました。読みはじめてすぐ、思いがけない話題展開に少々驚き、あらためてタイトルを見たら

『1989年 現代史最大の転換点を検証する』

とありました。最初手に取ったとき、サブタイトルがまったく目に入っていませんでした。ただ、もし内容がわかっていたら、手に取らなかった本かもしれません。

1989年に起こった出来事といえば、昭和天皇逝去(=平成スタート)、天安門事件、ベルリンの壁崩壊。たしかに、歴史の転換点と言える大きな出来事ですね。当時わたしは大学生でしたが、実感としては自分のことと結びつけて考えていなかったというのが正直なところです。大学の授業でも、これらの事件について授業のなかで私的な見解を述べる先生はほとんどいなかったと記憶しています。今考えると、どうしてそんなに無関心でいられたのか、その方が不思議な気がしますが。

図らずも、少し前に読んだ『グッバイレニングラード』や『オリバー・ストーン オン プーチン』を読んでいたからこそつながった部分も多くありました。

本書では、1989年の出来事を、そこに至る歴史的背景から紐解いて検証しています。この年の事件、この時代の背景に横たわっている大きなテーマは「社会主義」「共産主義」。昭和天皇の逝去そのものは関係がありませんが、生前の昭和天皇が社会主義をどう考えていたか、という点において、著者は見逃せない記述をしています。

著者本人が「あとがき」で言うには、本書の内容はほとんどが引用で成立しているとのこと。とはいえ、それぞれの元資料には論文なども多く含まれており、それらを精読してまとめ直すことによって、新書という形で読みやすくしてくださるのですから、門外漢にとっては大変ありがたいものです。1989年の出来事を説明するために、ルネッサンスまで遡り、産業革命があり、というところからはじまります。

わたしがさがしていた当初の目的(昭和史)とは少々趣の違った内容の本でしたが、今の世界情勢を考えるのに重要なポイントとなる歴史的出来事を紐解くものであり、一気に読みました。1989年を説明するのにルネッサンスまで遡るのは、極端なようであって、まったく極端ではありませんでした。ずっと歴史はつながっていて、ひとつの出来事・事件はある日突然起こるのではないということが、あらためて示されたように思いました。

自分のことでいっぱいいっぱいだった学生時代が、実は世界的に見ればそのような時代であったということ。それぞれのニュースを伝えるテレビの映像を断片的に記憶していますが、なるほどそういうことが起こっていたのかと、今更ながらに思い返すと不思議な感じです。