読書『告白』(双葉文庫)湊かなえ著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『告白』(双葉文庫)湊かなえ著

湊かなえさんのお名前は知っていましたし、『告白』は松たか子さんの主演で映画になっていたことも知っていましたが、湊かなえさんの著書を読むのは今回が初めてでした。なんとデビュー作だったのですね。そして、本屋大賞受賞作。

最初からぐいぐいと引き込まれました。語り手(告白する人)が章替わりで登場し、終章でまた最初の人物に戻ります。最初の人物がおそらく主人公ということになるのかもしれませんが、各章で告白するそれぞれもまた主人公のようでした。それぞれの言葉を読みながら、事件の全体像がだんだんと明らかになってゆく仕組みです。

わたしが読んだ文庫版では、本書を映画化した中島哲也監督が「あとがき」を書いています。それを読みながら、なるほどと思ったのが、「それぞれが、告白内容のどこかで嘘をついている」という指摘でした。だから「告白内容をそのまま鵜呑みにしてはいけない」と。自分のしたことを美化したり正当化したりする気持ちが意識的にあるいは無意識的に働いて、「嘘」とまで言わずとも表現方法が変わることは、自分自身心あたることです。カズオ・イシグロの著書でしばしば登場する、「信用できない語り手」を使ったストーリー展開を思い出しました。

先に読み終えていた息子から「これって、結局誰が悪かったんだと思う?」と問われ、考えました。たしかに本書の中では、皆が「○○が悪い=だから自分は悪くない」という思いを抱えながら言葉を発していることが感じられました。でも実際は、そんなに単純なものではない。悪いか悪くないか、はっきりと線が引けるということでは無いのだということを、強く感じさせられた読書でした。読書のあとに映画も観てみる、という選択肢もありますが、今回は自分の頭のなかで鮮明にイメージができあがりましたので、映画は観ないことといたします。湊かなえさんの本、少しづつ読んでみたいと思います。

『告白』(双葉文庫)湊かなえ著