こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『Ifの総て』(新潮社)島田雅彦著
いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。タイトルを見ての「ん?」と、「島田雅彦」さんの著者名で手に取りました。このタイトルを見てまず思ったのは、たしか『イヴのすべて』って本があったよね?ということ。次に考えたのは、つまりパロディ?ということ。わたしのなかで島田雅彦氏といえば、はるか昔にテレビで見た「詩のボクシング」であって、当時の、容易に近づけないような鋭さと、人を食ったような雰囲気の、魅力的なイメージがいまだに鮮明です。と言いつつ、そういえばわりと最近に新著を読んでいたなぁ、とブログを遡ったら、『大転生時代』を一昨年読んでおりました。
さて『Ifの総て』。まったくパロディなどではありませんでした。そして、小説の形を借りているとはいえ、「ここまで書いたのね」とちょっと驚きました。1985年の日航機墜落事故にはじまり、戦後処理から現代にいたる日米関係、そもそもなぜ日本は戦争を始めたのか…と遡ります。そしてそれらは、過去の歴史批判にとどまらず、だから今日本が突き進んでいる危うい道を、今生きているわたしたちがなんとか止める努力をしなければ、という呼びかけとなっています。森永卓郎さんが亡くなる前に出された本を思い出しました。
新潮社さんの公式サイトでの紹介には、「島田ワールド全開のエンターテインメント超野心作!」とあります。主人公がタイムトリップをする物語、という位置づけは、まさにエンターテインメント。ですが、それ以上に社会小説でした。同サイト内の書評で、思想家の内田樹氏が『「あり得た歴史」についての歴史研究があり得ない以上、それはフィクションとして書かれるしかない。本書はそういうフィクションである。』と書いていらっしゃいます。この書評の文章だけ読むと、なにがなにやらわからない感じですが、本書読了後に読みましたので、ああなるほど、と感じました。
文章を書く人の強さに、頭が下がる今日この頃です。
