再読書『美術館っておもしろい!』(河出書房新社)モラヴィア美術館

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

再読書『美術館っておもしろい!』(河出書房新社)モラヴィア美術館

フルタイトルは、『美術館っておもしろい! 展覧会のつくり方、働く人たち、美術館の歴史、裏も表もすべてわかる本』(河出書房新社)モラヴィア美術館阿部賢一・須藤輝彦 訳。約1年半前に図書館で発見し、読んで気に入って手に入れた本です。

「読んで(見て)面白い絵本」であるだけでなく、アートエデュケーターとして仕事をするときに、実際に役に立つ内容が多いため、ことあるごとに開いています。今回、思うところあり再読&まとめ。


  • 美術館を開いていく試み=入場料を無料にする、カフェを併設する、本を出すetc…
  • 芸術や教育には大きな力が秘められている=人と人との垣根を取り払い、相互理解をもたらすもの。
  • 来館者が求めているのは、美しさだけではありません。教養を深め、夢中にさせてくれる物語も展示品に求めているのです。
  • ドイツ帝国最後の皇帝ヴィルヘルム2世は、完全武装した軍隊よりも思想の方が力が強いのを知っていました。→教育や文化の支援にも大金を投じました。
  • ムセイオン(芸術の女神ムーセの神殿)→芸術と驚異の部屋→絵画陳列室→スタイル・ルーム→抽象の部屋→ホワイト・キューブ
  • 街に美術館があることは文化的成熟度を表し(中略)とはいえ、それは、巨大な建物の大美術館である必要はありません。
  • 身のまわりの物事に関心がある人、美しいものを求めている人、ふだんとは違う角度から世界を見ようとする人は、皆、美術館の鑑賞者です。
  • 美術館は創造的でユニークな人たちを引きつける磁石そのもの

『美術館っておもしろい! 展覧会のつくり方、働く人たち、美術館の歴史、裏も表もすべてわかる本』(河出書房新社)より


読書『くらべてわかる世界の美しい美術と建築』(エクスナレッジ)五十嵐太郎 編

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読書『くらべてわかる世界の美しい美術と建築』(エクスナレッジ)五十嵐太郎 編

今月初めに読んだ『世界の名建築歴史図鑑』(エクスナレッジ)五十嵐太郎編が面白かったので、図書館で同じ編者のものを遡って探したところ、ありました!タイトルを見てすぐに「この本欲しい」と思いましたが、美術系の大型本は価格がそこそこしますので、まずは中身をじっくり確認してからです。

『くらべてわかる世界の美しい美術と建築』

わたしにとって、このところずっと頭にあった「彫刻(美術)と建築」を思索するのに最適の教科書でした。この内容でこの価格は、むしろお得と言えるでしょう。

美術鑑賞のトレーニングをするときも「くらべる」の技を使うことが良くあります。ひとつの絵画をじっと見るだけでなく、もう一つ別の絵画と並べて、双方のどこがどう異なるかを探すことで見えてくるもの、わかることがたくさんあります。本書のつくりはまさにその手法そのもので、面白いのはそのくらべ方の目の付け所。上の写真は目次の一部で、項目を追うだけでも編者の視点が垣間見えると思います。

嬉しいのは、取り上げている作品がすべてカラー写真で掲載されていること。ビジュアル的に直感的に楽しむことが出来ます。また章末に挟まれているコラムでは「美術館探訪」として、世界の美術館を建築的視点と所蔵作品視点で解説してあります。あちこち行きたいところだらけ。今年あたり海外出張が再開できることを願いつつ、眺めています。

『くらべてわかる世界の美しい美術と建築』

小さくて美しくて精巧で可愛らしいものは、コレクションしたくなる。

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小さくて美しくて精巧で可愛らしいものは、コレクションしたくなる。

例えば、藤吉憲典のつくる小皿豆皿。この顔ぶれを見るたびに、この作家は小さいものをつくり出すのが得意だし、なにより好きなのだなぁと、つくづく思います。

小さくて美しくて精巧で可愛らしいもの。やきものの世界になじみ深いところでは、香合(こうごう)もそうですね。上の写真は、錦野薔薇文香合(藤吉憲典 作)。その他思いつくところでは、香水瓶、嗅ぎ煙草を持ち運ぶ鼻煙壷(びえんこ)など。ここに並べたものはいずれも「香り・匂い」にまつわるものであり、「持ち運ぶ」が用途に含まれるものだと気づきました。「蓋付き」なのはその用途故ですね。

香合も香水瓶も鼻煙壷も、コレクター心をくすぐるもので、国内外問わずあちらこちらの美術館・博物館にコレクションがあります。鼻煙壷は日本ではあまりなじみが無いかもしれません。わたしが初めてその存在を知ったのは、大阪市東洋陶磁美術館でのこと。大阪市東洋美術館が所蔵する沖正一郎コレクションに鼻煙壺1,139件があり、常設展示コーナーでその一部を拝見することが出来ます。常設の専用棚に並んだ姿は壮観です。コレクションのなかから100個、入れ替えながら展示している様子。とにかく見ていて飽きません。(大阪市東洋陶磁美術館は、現在改修のため長期休館中です。)

そんな小さくて美しくて精巧で可愛らしいものに「ボンボニエール」がある!と気づいたのが、つい先月のこと。先日のブログ「佐賀鍋島家のお宝を守る徴古館。」で発見した探し物というのは、このボンボニエールのことでした。ボンボニエールもまた、「持ち運ぶ」用途があり「蓋付き」であり、コレクションされています。

ボンボニエールとは、砂糖菓子「ボンボン」を入れる小さな箱。大きさは手のひらにおさまるほどのサイズです。欧州でお祝い事の記念品としてボンボニエールを配る慣習を、明治時代中期以降日本でも倣い、皇族や華族の間で取り入れていました。慶事の宴席への出席者に、金平糖などの砂糖菓子を入れた小箱を引き出物として配るこの伝統は、現代でも皇室で受け継がれているといいます。

なにしろ皇室伝来のものですから、市中に出回り難いものでしょう、その数は決して多くないようです。徴古館にあるボンボニエール146点は、出どころも確かなまとまったコレクションとして、かなり貴重であることが伺えます。興味深かったのは、その材質が、銀か木かの二択であること。このなかに磁器が無かったのは残念なことでした。ただ、皇室に由来している物に限らなければ、ノリタケ、ロイヤルコペンハーゲンなどが、磁器製のボンボニエールをたくさん手掛けています。

ということで、磁器作家・藤吉憲典が次なるコレクションアイテムとして取り組むのは、ボンボニエール。同じようなサイズ・意匠でも、香合というと用途や使う人が限られてしまいがちですが、お菓子入れでしたら誰でもが楽しく使えます。どんなものが出来てくるのか、どうぞお楽しみに。

noteを仕切り直し、再スタート。

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noteを仕切り直し、再スタート。

noteはじめました。と書いたのは、ずいぶん前のことかと思いきや、2020年3月27日となっていますから、約2年前。やっぱり春だったんですね(笑)。その後続かず、いったんアカウント自体を削除しました。続かなかった理由ははっきりしていて、位置づけの定義が甘かったから。今回再びnoteをしようと決めたのは、先日受講した「女性起業塾」内のSNS活用の講義がきっかけです。積極的に生かすべきプラットフォームであるというお話をとくと拝聴し、胎落ちしました。

文章を書く場所としてはこのブログ「ふじゆりスタイル」がありますので、わざわざ別の媒体に「なぜ書くのか」「何を書くのか」の明確な理由と意図が無いと、再スタートの意味がありません。なぜnoteなのかを考えたときに、より人に見られる=誰に向かって書くのかを意識することも肝要。そのうえで「自分が読みたいこと」を書いていけたらいいな、と思っています。

noteでは、アートエデュケーター(教育普及学芸員)の立場で、誰かの役に立つかもしれないものを書いていくことを決めました。一番上の写真は、わたしの博物館学芸員としての方向性を「教育」に導いてくださった齋先生の研修での思い出。わたし一人でできることはたかが知れていますが、ちょっとづつでも足跡を残していくことにいたします。

https://note.com/meetme_atart/

「2022九州産業大学国際シンポジウム」遅ればせながら視聴参加いたしました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

「2022九州産業大学国際シンポジウム」遅ればせながら視聴参加いたしました。

毎年お世話になっている博物館学芸員技術研修会。その年度締めくくりとなる国際シンポジウムは、昨年に引き続き英国と米国をつなぎ、Zoomと同時通訳アプリを活用しての開催でした。わたしは開催日当日は急用が入ってしまい参加を断念しておりましたが、Zoom開催の録画を共有していただくことが出来ました。ありがたい限りです。

シンポジウムのテーマは、こちらも昨年に引き続き「博物館と医療・福祉のよりよい関係」で、「withコロナにおける高齢者プログラムの取り組みと課題」について、米国からの事例報告を聞きました。

以下、備忘。


  • コロナ禍以前から継続してきた、参加型ワークショップの電話・郵便を使ってのアプローチが、コロナ禍下でも生きた。
  • 特に電話=誰でも使える。
  • +ビデオチャット、メール、Zoom。
  • 図書館プログラムとの連携。
  • Google Arts and Cultureの活用。
  • バーチャルプログラムによるミュージアムツアー。
  • 他の博物館と提携してのミュージアムツアー(バーチャル訪問)。
  • 目が見えない人、見えにくい人に向けての、音声のみでも理解できるプログラムが、目の見える人にも有効であった。
  • オンラインに重点を置くことで、海外を含む「エリア外」からの参加が増えた。
  • バーチャル・対面、それぞれの強みと課題。→両方があって、選択できることの良さ。
  • Artful Conversations and Connections=鑑賞+(感想などの)語り合い。
  • Family Support(本人だけでなく、家族、介護者などを含めた)プログラム。
  • エンリッチプログラム=より、気持ちを豊かに。
  • New Collaborations with ○○
  • ○○=Independent artists、Small museums and Public gardens、Educator…
  • 自宅でできる「アートメイキング」プログラム。郵送での資料・材料送付。
  • 二人一組(例:認知症患者+介護者)での参加を想定したプログラム。
  • 1回参加すると、6割の参加者が2回以上参加する。
  • ミュージアムの教育担当者のコミュニティーでのつながり→サポートプログラム活用の広がり。
  • 「館の外側にある」連携組織。
  • 各種財団等からのサポート資金→プログラムの実施→有効性の認定→さらなる資金サポート→プログラムの充実→有効性の認定→…の循環。
  • プログラムの評価。評価方法とフィードバック。
  • バーチャル参加でも参加者同士がスクリーンで顔なじみになり、一緒に別のプログラムへの参加するようになる。
  • よりシンプルな質問の価値。例「何が見えますか?」
  • 支え手を支えるわたしたち自身が健康であることの大切さ。

以上、2022九州産業大学国際シンポジウム「博物館と医療・福祉のよりよい関係-withコロナにおける高齢者プログラムの取り組みと課題」より。


今回のシンポジウムでは、発表者の発表の後、グループに分かれてのディスカッションタイムが確保されていたのが目玉だったと思います。わたしはリアルタイムで参加できませんでしたので、ディスカッションに参加することはできませんでしたが、指定討論者の皆さんや各グループからの質問による質疑応答を拝聴することが出来ました。こういう時間があると、学びがより深まりますね。毎回さまざまな方法を工夫してくださる事務局の緒方先生に、心よりお礼申し上げます。

来年度もまた学芸員技術研修会に参加できること、とくに対面での講義が開催されることを楽しみにしています。

九州国立博物館の特別展「最澄と天台宗のすべて」に行って参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

九州国立博物館の特別展「最澄と天台宗のすべて」に行って参りました。

コロナ禍を理由に足の遠のいていた九州国立博物館。振り返ってみれば前回観覧は「室町将軍 戦乱と美の足利十五代」で、なんと約3年ぶりでした。今年はもっと足を運びたいとの決意を込めて「九州国立博物館メンバーズプレミアムパス」をゲット。1年間の有効期間中は九国での特別展を4回まで、九州・東京・京都・奈良の国立博物館の平常展を何度でも観ることが出来る優れものです。

平日とはいえ会期終了まであと3日という時期でしたので、人が多いかもと少し心配しましたが、杞憂でした。入場者が極端に少なかったというわけではなく、会場内のいたるところに「空いているところから見てください」的な表示があり、うまい具合に人が分散。来場者がそれぞれ周りに目を配り気を配る結果ですね。運営側の意図がきちんと機能していると感じました。おかげさまで快適に観覧することが出来ました。順路に沿うように促す制約は、一見合理的なようでも、特定の場所に人が集まってしまったり流れが滞ってしまったりして、逆効果なことも多いのです。

展示内容のなかで特に目に止まったのは、最澄の筆による「天台法華宗年分縁起」(滋賀・延暦寺)をはじめ、般若心境などの書の数々。一文字一文字丁寧に書かれた気持ちの良い字が並んでいるのを観ると、そのまま読んで理解することは出来なくても、なんだか嬉しくなるから不思議です。なかでも金と銀で一行づつお経を書いた「紺紙金銀交書法華経」(滋賀・延暦寺)は目を引きました。

その他には、サイの角で作った工芸仏具の「犀角如意」(滋賀・聖衆来迎寺)の美しさ、見事な頭の形に立派な福耳を持った「性空上人座像」(兵庫・圓教寺)の強烈なインパクト、遊び心満載の「空也上人像」(愛媛・浄土寺)の面白さ、きらびやかな箱に繊細な彫りが仕込まれた「金銀鍍宝相華文経箱」(滋賀・延暦寺)が特に気に入りました。不動明王好きとしては、重文レベルの不動明王にたくさん会うことが出来たのも、大きな収穫。ぐるりと裏側まで、あるいは左右を空けて側面を観ることが出来るように配置している展示も多かったので、側面や裏側に入り込み、立体を大いに楽しみました。

特別展を堪能したあとは、4階の平常展「文化交流展」が毎回の楽しみです。3年ぶりとあって、前回訪問時から展示替えされている展示室も多く、見どころ満載でした。いつものことながら「田中丸コレクション」「坂本コレクション」で肥前磁器の名品をたくさん見ることが出来たのが嬉しかったです。やっぱり古い柿右衛門は良いのがあるなぁ…などと思いつつ。最後はお気に入りの第6室で仏像や彫像を拝見して、大満足で帰路につきました。

次は4月スタートの特別展「北斎」に合わせて行こうと思います。

続・『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)で、彫刻の歴史をざっと学び直し(その4)。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

続・『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)で、彫刻の歴史をざっと学び直し(その4)。

「その1」では、エジプト・メソポタミア文明からエーゲ・ギリシャ文明まで、「その2」では、エトルリア・ローマから初期キリスト教・ビザンティン、続くロマネスク・ゴシックまで「その3」ではプロト・ルネサンスからルネサンス、マニエリスムまでをまとめました。

「その4」ではバロック(17世紀)、ロココ(18世紀)、新古典主義・ロマン主義(18世紀後半~19世紀前半)まで。


バロック(17世紀)

  • 宗教のメディアとしての美術。
  • ドラマチックな演出で感情移入を促す:劇的な動き・凝った装飾・過剰な壮大さ。
  • バロック建築:楕円・曲線・派手な内部装飾。
  • ベルニーニ(イタリア・バロックの体現者):彫刻と建築が一体化した空間をプロデュース。サン・ピエトロ広場(ヴァチカン)、「アポロンとダフネ」、「聖テレサの法悦」。
  • 神秘体験を可視化。劇場舞台のような作り。

ロココ(18世紀)

  • サロン(官展)の誕生。貴族趣味。
  • 建築・家具・食器・ファッションなどの工芸・服飾にもロココの影響(流行)。

新古典主義・ロマン主義(18世紀後半~19世紀前半)

  • ポンペイ遺跡の発掘。古代美術ブーム。
  • 古代遺跡・ルネサンス作品への文化的尊敬。
  • 政治のプロパガンダとしての芸術。
  • ギルド社会における徒弟制度による実践重視から、アカデミズムによる美術理論重視へ。

『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)より


「彫刻」視点でまとめているため、上には入れていないものの、わたしの好きな画家カラヴァッジオはこの時代(バロック)の寵児。ヴィジョン(幻視)による感情移入はまさに「ドラマチックな演出」そのものです。こうして振り返ると、サロン(アカデミー)誕生による、実践重視から美術理論重視への変化こそが、美術における絵画(平面)偏重を招いたとあらためて感じます。

次回「その5」は、印象派から近現代まで。ついに完結できそうです。

読書『博物館の世界』(誠文堂新光社)栗原祐司著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『博物館の世界』(誠文堂新光社)栗原祐司著

正式なタイトルは『教養として知っておきたい 博物館の世界』です。でも「教養として知っておきたい」は要らないかなぁ…と思いつつ。「教養」はこのところ出版の流行り文句のひとつですね。個人的には、一般的に教養知識として知っておくべき内容だとは思いませんでしたが、博物館業務に関連したところにいる人たち、そういう仕事につきたいと思っている人たち、博物館や美術館が大好きな人たちに、おススメしたい本です。

さておき、わたしにとっては面白い本でした。著者は京都国立博物館の副館長でいらして、文化庁出身者。そのうえ「博物館オタク」を自任しておられますから、それはもう、高度に専門的な視点をお持ちですし、いわば現場を知るプロ中のプロ。国内外1万館以上に実際に足を運んでおられるというのですから、フィールドワークの量も半端ではありません。そんな方の書くものですから、面白くないはずがありません。

学芸業務の末端では知りえない政治的な動きも含め、日本の文化行政がどのように動いてきたのかを垣間見ることもできました。政府の方針ひとつで文化芸術の先進国にも後進国にもなりうることがわかります。特にあらためて考えさせられたのが、文化財の所有と課税制度と保護とのいろいろ。わたしが学芸員資格を取得してから10年近くが経ちますが、当時京都で実習を受けていたときに、指導してくださる先生方がことごとくその問題点・難しさを語っておられたことを思い出しました。

巻末の第6章には「厳選!ニッポンの行くべき博物館20」が紹介されていますが、その視点もまたユニークです。巷にある博物館ガイドや美術館を紹介するムック本などではなかなかお目にかかれない顔ぶれがずらり。わたしが訪ねたいと思ったのは、角川武蔵野ミュージアム、福井県年縞博物館、ボーダレス・アート・ミュージアムNO-MA、河井寛次郎記念館、南阿蘇ルナ天文台。ルナ天文台は同じ九州内ですので、さっそく旅行計画を立てたいと思います。

『博物館の世界』(誠文堂新光社)栗原祐司著

続・『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)で、彫刻の歴史をざっと学び直し(その2)。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

続・『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)で、彫刻の歴史をざっと学び直し(その2)。

「その1」では、エジプト・メソポタミア文明からエーゲ・ギリシャ文明までをまとめました。

「その2」では、エトルリア・ローマから初期キリスト教・ビザンティン、続くロマネスク・ゴシックまで。上の写真はゴシック建築。


エトルリア美術・ローマ美術(紀元前10世紀頃~紀元後4世紀頃)

  • エトルリア=墳墓美術:墳墓の建築、彫刻、絵画。
  • ローマ美術=ギリシャ美術+神話体系に基づく独自美術への発展。
  • 彫刻群:騎馬像・皇帝像などが増える。より高度な写実性。
  • ネクロポリス(死の街)=死後の世界を彩る壁画・彫刻の発展。
  • エトルリアでは大理石が採れない→テラコッタ(粘土の素焼き)による彫刻作品。
  • 巨大建築とアーチ。
  • ギリシャ彫刻ブーム→ブロンズ(戦争時に溶かして失われた)、大理石によるコピー作品。
  • ポンペイの壁画群:フレスコ画。

初期キリスト教・ビザンティン(3世紀~15世紀半ば)

  • 偶像崇拝禁止時代のキリスト教美術=イコンによる板絵形式の聖像やモザイク壁画。
  • ビザンティン美術=ローマ(政治)、ギリシャ(地理)、ヘレニズム美術(文化)の影響+イスラム文化。
  • ケルト美術=鉄器文明の初期普及段階を担ったケルト民族。古来の自然崇拝を土壌とする動植物文様や一筆書き状の組紐や無限に続くかのような渦巻き文様による高い装飾性:写本装飾、金属工芸。
  • 聖堂建築のはじまり。
  • ラヴェンナのモザイク画:表面の凹凸と色彩による表現。

ロマネスク・ゴシック(10世紀~14世紀)

  • ロマネスク・ゴシック=教会建築、祭壇画、ステンドグラス、装飾写本。
  • 聖遺物容器:それ自体が崇敬の対象となる特殊な工芸品。
  • ロマネスク教会:柱頭、半円形壁面(ティンパヌム、タンパン)が、説話的場面を彫り込むレリーフ(浮彫)の表現場に。
  • ロマネスク彫刻=教会彫刻の隆盛:柱頭彫刻とタンパンがレリーフ(浮彫)用の大画面(壁面)。
  • ゴシック教会=尖頭アーチと交差ヴォールト、ステンドグラス。
  • 装飾写本美術とタペストリー:一般的な絵画(壁画とタブロー)以外の絵画表現。

『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)より


こうして文字に書き出すと、頭の中の整理になりますね。続き「その3」では、ルネッサンスに入ります。

続・『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)で、彫刻の歴史をざっと学び直し(その1)。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

続・『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)で、彫刻の歴史をざっと学び直し(その1)。

↓うっかり前置きが長くなってしまいました↓

以下、『いちばん親切な西洋美術史』より、彫刻部分を抜粋&まとめ。「その1」では、エジプト・メソポタミア文明からエーゲ・ギリシャ文明まで。


エジプト・メソポタミア文明(紀元前40世紀~紀元前4世紀)

  • エジプト=来世思考。副葬品。
  • メソポタミア=シュメール文明。楔(くさび)形文字。人類最古の文字文明。
  • 有翼人面牝牛像:新アッシリア時代。首都カルフの城門を守る石像。
  • ネフェルティティ(人間=肖像=写実性)とツタンカーメン(神像=定型的神々しさ)。

エーゲ文明・ギリシャ(紀元前30世紀~紀元前1世紀)

  • エーゲ美術=キクラデス美術(初期青銅器時代)、クレタ美術(中期青銅器時代)、ミュケナイ美術(後期青銅器美術)。
  • キクラデス美術:極端に抽象化された石偶(大理石)。
  • ギリシャ美術=西洋美術の基礎。巨大神殿建築。西洋建築の基準となる建築様式・装飾・構成。
  • 彫刻文化:直立不動(アルカイック期)→自然な立ち姿をとる「コントラポスト」(クラシック期)へ。
  • 絵画:陶器製の食器の表面が主要な画面となる。
  • 陶画家(陶芸家であり絵付師)の活躍:陶器画=黒像式→赤像色。
  • アルカイック:アルカイック期。アテナ神に捧げることを目的に制作。アルカイック・スマイルは生命感の表現。
  • コントラポスト:クラシック期。「対置」の意味。より開放的に。まだ一定の方向からのみ見られることを想定。
  • ヘレニズム美術=古代ギリシャ彫刻の完成形。
  • 「神々」だけでなく「王や個人」のための美術が生まれる。美術が大衆化された時代。
  • 激しい動きが特徴で。多方向から見られることを意識した表現。空間的な広がり。
  • ミロのヴィーナス、ラオコーン、サモトラケのニケ。

『いちばん親切な西洋美術史』(新星出版社)より


書き出しはじめたら、思いのほか分量が多くなりそうなことがわかりました。「その2」へ続きます。