読書『自然、文化、そして不平等-国際比較と歴史の視点から』(文藝春秋)トマ・ピケティ著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『自然、文化、そして不平等-国際比較と歴史の視点から』(文藝春秋)トマ・ピケティ著

9月の三連休は読書三昧!というわけでもないのですが、急いで読んで欲しいというご要望が数冊ありましたので、結果として読書三昧となっています。

まずは先月開催された、カメリアステージ図書館の「選書ツアー」で選んできた中からの一冊。選書ツアーでの候補から書籍が実際に図書館に入るのには、2~3カ月かかることが多いのですが、本書はすぐに届いたようです。

さて『自然、文化、そして不平等-国際比較と歴史の視点から』。ご存じ『21世紀の資本』のピケティ最新作です。といいながら、わたしは実は『21世紀の資本』は、何度か手にしたものの、完読できないままになっていました。内容の小難しい感じに加えて700ページ超というボリュームで、途中挫折。それに対して本書は、見た目から薄くて威圧感がありません(笑)。

データを上げながら解説と持論を展開していく方法は、『21世紀の資本』と同様ですが、短めの講演録であるが故のとっつきやすさのおかげか、こちらはサクッと読了。著者はフランス出身なので、フランスをはじめとした欧州の事例を引いての展開が多くありますが、格差社会の問題は日本でも他人ごとではなく、考えさせられながらの読書となりました。

政治も経済も、自分の力ではどうにもならない無力感を突き付けられることの多い昨今にあって、最初の章に書いてあった文章に、一筋の光を感じました。スウェーデンの例を挙げて曰く「決定論は自然や文化的要因を重視し、この社会は永久に平等であるとか、あの社会は永久に不平等であるなどと決めつける。だが社会や政治の構造は変化するものだ」(『自然、文化、そして不平等-国際比較と歴史の視点から』トマ・ピケティより)。

世の中が、良きように変化していくことを願いつつ。

『自然、文化、そして不平等-国際比較と歴史の視点から』(文藝春秋)トマ・ピケティ著

読書『美しき人生』(河出書房新社)蓮見圭一著

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読書『美しき人生』(河出書房新社)蓮見圭一

いつものカメリアステージ図書館新刊棚。タイトルの文字の並びに惹かれて手に取った一冊です。上の写真は、ある雪の日のサザンカの花ですが、こんな読後感でした。

校長先生の、生徒に向ける講話が素晴らしいため、卒業式などの学校行事に校長先生の話を聞きたいがためにやってくる卒業生たちがいる、という、現実的にはあり得ない(!?)エピソードから、物語がはじまります。主人公と思しき構成作家がその先生の話を聞きとる、という形をとりながら、わたしたちが読むのは校長先生のストーリーそのもの。いわば二重構造的なのですが、それがまた物語に深みを与えているのも確かだと思いました。

なぜ校長先生が、生徒たちに向けて「いい話」をすることが出来るのか、その理由が次第にわかってきます。恵まれた環境で育ってきたわけではない少年時代、たくさんの失敗と後悔、周りの人に助けられたありがたさを抱えた青年時代を経てきたからこそ出てくる、これから人生をこぎ出す生徒たちに向ける言葉。単なる「いい人」ではない校長先生の人間味が、ひしひしと迫ってきます。

出版社である河出書房新社のサイトでは「両親の顔を知らずに育った校長・真壁が語る秘められた切ない恋と愛の奇跡」と紹介されていました。たしかに「恋と愛の奇跡」の物語ではあるのですが、そうして文字にしてしまうと、なんだか軽く感じてしまうような、重さのあるストーリーでした。

蓮見圭一さんの著書は、これまた初読みでした。『水曜の朝、午前三時』という大ベストセラーがあるようですので、こちらも遡って拝読したいと思います。

『美しき人生』(河出書房新社)蓮見圭一

読書『口訳 古事記』(講談社)町田康著

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読書『口訳 古事記』(講談社)町田康著

『古事記』の口訳です。口訳すなわち、一般的な口語体=今の時代で読める・わかる言葉に訳すること。古文や漢文に対して使われますね。現代語訳、としていないところがミソ。その訳者が町田康氏ですから、一筋縄では行かないだろうという予想は出来ます。

わたしがちゃんと『古事記』の内容を読んだといえるのは、実は子どもが生まれてから。子ども用に作られた、日本の神様の神話絵本があり、それを息子に読み聞かせながら「古事記って、こんな内容だったのね」とあらためて認識したのでした。もちろん中学高校時代から『古事記』というタイトルは知っていましたが、本というよりは日本史のなかの位置付けでした。

さて『口訳 古事記』、町田康ワールド全開です。講談社のサイトでの紹介に「画期的な口語訳」とある通り、というか、画期的というのはだいぶ抑えめの表現だと思います。本書内で交わされる神々の会話部分が、特に面白かったです。町田康の口訳を通すことによって、神話の「エロ・グロ・ナンセンス」な部分が、よりあきらかになる感じがしました。ただ、『古事記』を名乗っている以上当然ではありますが、物語の筋は変わっていません。古文の言い回しによってなんとなくオブラートに包まれていたものが、そうではなくなった、とでもいいましょうか。

神々の名前のややこしさはどうすることも出来ませんが、古事記のなかで「言っていること」「やっていること」は、この口訳によって、だいぶわかりやすくなったと思います。これまで古文はもちろん各種現代語訳の『古事記』にチャレンジしつつ途中で挫折した、という方々(わたしもその一人でしたが)に、試してみていただきたい一冊です。先に述べましたように「町田康ワールド全開」ですので、好き嫌いはあるかもしれませんが。

475ページ、結構な分量です。ですが、物語のストーリーはある程度知っていたのと、口訳が面白かったのとで、わりと一気に読み切ることが出来ました。それにしても、絵本の読み聞かせをしていたときも「日本の神様、けっこうめちゃくちゃしてるなぁ」と思っていましたが、本書を読み終わってその思いがなお強くなりました。

『口訳 古事記』(講談社)町田康著

ようやく必要な情報誌を発見、その名も『イタリア好き』。

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ようやく必要な情報誌を発見、その名も『イタリア好き』

ダンナ・肥前磁器作家・藤吉憲典が商用と研修でイタリアに向かうことになり、その準備をしています。研修地が決まってから、ずっと目的地の「情報誌」あるいは「マップ」を探しているのですが、見つからず。イタリアの旅行情報誌はたくさん出ていますが、目的地に関する情報は全く載っていないのです。ネット書店で探し、紀伊国屋で探し、丸善で探し、見つかりません。トスカーナ地方の情報が載っていても、そこに目的の地名は出てきません。福岡市内にある「イタリア会館」にたずねても、「今は、みんなネットで情報を集めるから、地図もパンフレットも全然置いてないんですよね~」と…。

その場所とは、カッラーラ。大理石の産地です。歴史は古代ローマ時代にさかのぼり、ルネサンス期にミケランジェロが通い詰めた場所としても有名。あのダヴィデ像をはじめ、多くの大理石像は、ここカッラーラの石から彫り出したものだそうです。ようやくネットで探し当てた情報誌『イタリア好き』のバックナンバーに「白い大理石の山に呼ばれて カッラーラ」の特集号を見つけ、即本誌をゲットしたのでした。上がその写真です。雪山かと見紛う白い山々は、大理石。

「イタリア好き委員会」が発行する季刊誌『イタリア好き』

知りたい情報が満載!というわけには参りませんが、これまで全く探すことが出来なかった情報を1冊のなかにいくつも見つけることが出来、ホッと安堵したのでした。カッラーラ、なかなか魅力的な街のようです。「造形」「彫刻」というキーワードで結ばれた志のある者にとっては、聖地といえるのかもしれません。

それにしても、有名な都市や観光地以外の情報を紙媒体で探すことが、こんなに難しいとは。マニアックな雑誌を刊行してくださっている「イタリア好き委員会」の方々に、心より感謝です。

読書『空芯手帳』(筑摩書房)八木詠美 著

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読書『空芯手帳』(筑摩書房)八木詠美 著

先日読んだ『休館日の彼女たち』の突飛な設定が面白くて引き込まれ、気になった作家さんの読書2冊目。

著者紹介に、本作『空芯手帳』が第36回太宰治賞を受賞し、世界13か国での翻訳が進行中とあり、興味が湧いたのでした。世界13か国での翻訳って、すごいですよね。文化的な背景の違いを超えて、共感されているということです。さっそくいつものカメリアステージ図書館で蔵書検索したところ、ありました。本屋さんより図書館の方が近くなので、毎度まずは図書館検索です。

既に読んだ『休館日の彼女たち』の設定が、現実的には「ありえないこと」としての突飛さであったのに対して、本作『空芯手帳』の設定は、じゅうぶん有り得る突飛さであるところが秀逸でした。実際に身近にこんな人がいたら、ちょっと怖いぞ、と。物語としては、コメディ的な要素もあり可笑しい場面も多々あるのですが、腹の底からは笑えない類です。

主人公の、社会(会社での具体的な出来事や人とか、無形の社会通念とかあたりまえとされがちなこと)に対する、静かだけれど根深い反発が、やや狂気的な怖さを感じさせます。狂気的と書きましたが、とても身近で、ちょっとしたきっかけで自分だって似たようなことをやりかねないと確信・共感できるのが、また怖い。しかも小説全体のトーンは、あくまでも穏やかで、淡々としているのです。妊娠もので怖い小説といえば、わたしは真っ先に小川洋子さんの『妊娠カレンダー』を思い出すのですが、また違った怖さです。

タイトルの「空芯手帳」は、読み終わってなるほど、と理解しました。これまた秀逸なタイトルです。「空芯」は、主人公の会社の仕事の生産物であり、彼女のついている「嘘」を表現している物であり、本来「母子手帳」であるべきものが「空芯手帳」であるという。一見ゆるい雰囲気だけれども、よく見るとちょっと怖い表紙の装画がまた完璧にマッチしています。八木詠美さん、かなり気になる作家さんです。

『空芯手帳』(筑摩書房)八木詠美 著

映画『エリザベート1878』観て参りました。

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映画『エリザベート1878』観て参りました。

2023年の映画7本目は『エリザベート1878』。2週間前に『バービー』を観てきたところでしたので、なかなか良いペースです。

やはり「これは観たい!」と思ったら、時間を作る努力をしますね。

さて『エリザベート1878』、オーストリア映画です。原題は『corsage』で、「コルセット」を意味するフランス語だそうです。日本語読みしたら「コサージュ」。ドレスやお洒落なスーツを着たときに胸元を飾ったりする、あれですね。身体を不自然に縛り付けるコルセットであり、「飾りもの」「引き立て役」などの訳をもつコサージュであり。宣伝チラシにある「お飾りなんかじゃない」のセリフの理由がわかりました。

年初は念願のミュージカル『エリザベート』観劇でスタートしたのでしたが、そのときはこのような映画がつくられているとはまったく知りませんでした。

当然ですが、ミュージカルのストーリーやエリザベートのキャラクターとは、まったく異なる映画のエリザベートです。とても現実味のあるエリザベート、というのが、わたしの印象でした。エリザベート40歳の一年間を描いたものですが、映画のなかで「平民女性なら寿命の年齢」というセリフが出てきます。コルセットをぎゅうぎゅうに締め上げるシーンが何度もあるのですが、そんな毎日を送ってきたエリザベートがその年齢になったときに、何を考えたか。生き方を痛烈に問いかける監督さんも女性だったのだと鑑賞後にわかり、妙に納得いたしました。

最近は現代をカタカナ読みさせたまま日本公開時のタイトルにする洋画も多いなか、久しぶりに原題と邦題とでずいぶん違う映画でした。でも『エリザベート1878』というタイトルだったからこそ飛びついたわたしにとっては、わかりやすくて良かったと思いました。

映画『エリザベート1878』

読書『リバー』(集英社)奥田英朗 著

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読書『リバー』(集英社)奥田英朗 著

奥田英朗著の新刊が届きました。前情報をまったく入れずに臨みましたので、読みはじめてまず思ったのは「今回はシリアス系なのね」ということ。「伊良部先生」が登場するようなコメディ系ではなく刑事ものでした。

全648ページの長編です。これまでに読んだ刑事もの(というか犯罪もの)、『罪の轍』『オリンピックの身代金』『最悪』『無理』『邪魔』などに描かれた、これでもかというほどの「社会の底辺」と「救いの無さ」は感じなかったものの、現代的な乾いた雰囲気になってきているのが、逆に空恐ろしさを感じました。そう、まさに現代的な怖さ、です。

奥田英朗著作の刑事ものに共通する点のひとつに、犯罪を犯す側の精神的な病理をにおわせるところがあります。これまでに読んだものにも登場していましたし、今回ははっきりと多重人格者として描かれる登場人物がありました。著者自身の、犯罪を犯すに至る人間心理への強い関心が、登場人物に重なって表れていることを感じます。そういえば、コメディ系の小説に登場する「伊良部先生」は精神科の医学博士ですから、やはり関心の高い分野なのでしょうね。

『リバー』(集英社)奥田英朗 著

2022年9月刊行でしたので最新刊かな、と思ったら、2023年5月に最新刊がありました!こちらも読まねば、です^^

読書『休館日の彼女たち』(筑摩書房)八木詠美 著

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読書『休館日の彼女たち』(筑摩書房)八木詠美 著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚。おかげさまで「初めまして」の著者の方々に、出会うことが出来ます。今回も、おそらく「初めまして」。

タイトルに「館」とつくと、無条件に気になります。図書館、美術館、博物館…と、自分の好きなものを連想させるからですね。本書の「館」は美術館でした。そのうえ表紙の装画は、ルネ・マグリット。マグリットっぽいなぁ、と手に取りましたら、その通りでした。「困難な航海」というタイトルの画だそうです。

最初わたしは、どういうわけか、舞台はどこか海外の美術館…と思い込んで読んでいました。でも読み進めるうちに、いや、これふつうに日本が舞台だわ、と理解。「主人公が、美術館にいる古代ローマ彫刻・ヴィーナス像の、ラテン語でのお喋り相手になる」という設定から、勝手に「海外に留学し、卒業後もその地にとどまっている女性の物語」とイメージしてしまっていました。「ここにいる彫刻の像は、絶対夜中におしゃべりしたり動いたりしている!」というイメージを、海外の美術館・博物館で実際に感じたことがあるからかもしれません。

さて本書の著者もまた、「ここにいる彫刻の像は、絶対夜中におしゃべりしたり動いたりしている!」というイメージを抱いたことがあるからこそ、このストーリーが出来上がったのだろうと思います。そこに、主人公をはじめとした登場人物の「人と関わりながら生きるしんどさ」のようなものが合わさって、ストーリーが進みます。筑摩書房のサイトの紹介文のなかに「コミュニケーション不全」という単語が出てきて、なるほどテーマはそこか、と思いました。

設定はかなり突飛ですが、それに反して、とても静かな筆致で、独特の世界観が広がっています。わたしは個人的には、この世界観は嫌いではありません。八木詠美さんの著作も、ちょっと追っかけてみたいと思います。

『休館日の彼女たち』(筑摩書房)八木詠美 著

郷育カレッジ2023「福津の仕事人 建築のひみつ」を受講してまいりました。

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郷育カレッジ2023「福津の仕事人 建築のひみつ」を受講してまいりました。

本日の郷育カレッジは、福津市商工会青年部が担当してくださる「福津の仕事人」シリーズから、大工さんと建築士さんによる「建築のひみつ」の講座でした。人気シリーズで受講希望者が多く、抽選でした。わたしは昨年は抽選に外れていたので、今年は受講出来てラッキーでした。

さて「建築のひみつ」。前半は、株式会社住幸房(すまいこうぼう)の代表であり大工さんである池尾拓さんによる、大工さんの仕事の説明と、家が出来るまでのお話でした。日本の伝統的工法を守り受け継ぐことを使命にしておられる池尾さん。木を中心とした家づくりのお話は、わたし個人的にとても興味深い分野でしたので、ありがたかったです。実際に家を建てる様子を撮った動画映像は非常に面白く、どれほどの「手間」がかかっているのかを、ビジュアル的に感じることが出来ました。

後半は、建築設計を手掛ける相良友也建築工房の1級建築士である相良友也さんによる、建築模型作りのワークショップ。これがまた、とても面白かったです。実際に相良さんが設計した家の模型を、ペーパークラフトで作りました。実際に立っている家の模型を作るという経験は、なかなかできるものではないと思います。現地の写真で外観や中の様子を見ることが出来、そのイメージをもって手を動かすという作業。用意していただいたペーパークラフトは、カッターと糊を使った作業で作りましたが、不器用なわたしでも時間内に作り上げることが出来るよう、工夫されていました。

夏休み期間中とあって、受講生のほとんどは小学生。皆とても嬉しそうに話を聞き、ワークショップに取り組んでいました。今回の受講生の顔ぶれは子ども中心でしたが、これは大人の皆さんにとってもかなり興味深い内容なはずなので、ぜひ大人向けにも開催できたらいいな、と感じました。大満足の講座でした♪

読書『クワトロ・フォルマッジ』(光文社)青柳碧人著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『クワトロ・フォルマッジ』(光文社)青柳碧人著

お盆休みはとっくに終わっておりますが、いつものカメリアステージ図書館から借りてきた「お盆読書」記録4冊目です。

美味しそうなタイトルと表紙です。そしてたしかに「クワトロフォルマッジ」は関係があるというか、そこにかこつけてはあるのですが、ストーリーの重要な位置を占めるものというよりは、アクセサリー的な要素に思えます。ジャンルは、ミステリーなのかもしれませんが、ミステリーっぽくありません。個人経営の小さなピッツエリアを舞台として、殺人事件が起こるのですが、殺人事件が起こっているという緊迫感はほとんどありません。

それぞれにちょっとクセがある登場人物の描写が面白く、そこが読みどころと感じました。ふつうに「ありそう」な設定と、「その辺にいそう」な人物たちでストーリーはスタートしますが、読み進めるうちに状況のおかしさというかズレが大きくなっていき、「いやいや、そんなわけないやん!」と、心のなかで突っ込む回数が増えていきます。

登場人物それぞれのセリフや行動を読んでいるうちに、わたしのなかで勝手に脳内キャスティングがはじまりました。この役は誰がやったらハマるだろうな、と、俳優さんの顔がすんなりと浮かんでくる面白さがありました。あの役は西島秀樹さん、この役は田口浩正さん、あの子は永野芽衣ちゃん…など、勝手にイメージが膨らみました。

サクッと読み終えることのできる娯楽小説でした。いろいろ考えずに読めます。青柳碧人さんの著書を読むのはたぶん初めてだったと思うのですが、この軽さは嫌いではありません。

『クワトロ・フォルマッジ』(光文社)青柳碧人著

ちなみに2023お盆読書記録、他の3冊は以下の通り。いずれも「あたり!」でした。