読書『おとなのOFF 2023年 絶対見逃せない美術展』(日経トレンディ)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『おとなのOFF 2023年 絶対見逃せない美術展』(日経トレンディ)

年初の恒例となりました、美術展チェック。今年もいくつもの出版社から、2023年の美術展を特集する特集号が出ています。それぞれに特徴があって面白く、昨年は『美術展ぴあ2022』を使いましたが、今年はまた『おとなのOFF』に戻ってきました。上の写真は福岡市美術館。

例年、実際に足を運んでいる展覧会は年間で両手におさまる程度ですから、美術展をチェックしたからと言って、観に行けていないものの方が圧倒的に多いのですが、「こんな展覧会があるんだ」と知るだけでも嬉しいのです。チャンスがあれば観に行こう!という楽しみがあります。

さっそく、掲載されていたもののなかから「これは観たい!」ベスト5。

  1. 没後190年 木米(サントリー美術館)
  2. ルーヴル美術館展 愛を描く(国立新美術館)
  3. 古代エジプト美術館展(福岡アジア美術館)
  4. 幕末土佐の天才絵師 絵金(あべのハルカス美術館)
  5. 特別展「古代メキシコ-マヤ、アステカ、テオティワカン」(九州国立博物館)

木米とルーヴル美術館は、東京出張のタイミングで観に行けるかも、と期待しているところです。また古代エジプトと古代メキシコは、それぞれ福岡アジア美術館、九州国立博物館と、地元福岡での開催になりますので、必ず行きたいですね。あべのハルカス美術館は、オープン後まだ一度も足を運べていませんので、こちらも気になります。

今年も「これを観ることが出来て良かった!」という場面に出会えることを愉しみに、仕事に励みます!

読書『その昔、N市では』(東京創元社)マリー・ルイーゼ・カシュニッツ著/酒寄進一編訳

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読書『その昔、N市では』(東京創元社)マリー・ルイーゼ・カシュニッツ著/酒寄進一編訳

2022年末の読書はドイツ人作家による短編集。サブタイトルに「カシュニッツ短編傑作選」とあります。いつものカメリアステージ図書館新刊棚でゲットしました。海外作家による短編集といえば、少し前に読んだのが英国生まれの著者による短編集、原題『The People in the Castle:Selected Strange Stories』でした。

本書『その昔、N市では』もまた、ホラーではないものの、ちょっとゾッとするところのあるストーリーが多く、出版元のサイトで「日常に忍びこむ奇妙な幻想と背筋を震わせる人間心理の闇」の紹介文を見て、ぴったり!と思ったのでした。かなり短い物語もありましたが、どれを読んでも、とにかく不思議な読後感が続きました。上の写真は目次=短編集のタイトル。なんとなく雰囲気が伝わるでしょうか。

戦後ドイツを代表する作家のひとりということで、戦中(ナチスの時代)を思わせる物語もいくつか。短編集として選び並べたのは、翻訳者である酒寄進一氏であり、編者の思いも感じられる一冊となっていました。現代ものの海外書籍を読むときは、翻訳者の作家への思いを強く感じることが多いのですが、本書も例に洩れずでした。

図書館の新刊棚のおかげで、読むジャンルの幅が広がってきたように思います。タイトルと表紙の雰囲気だけで選ぶと、思いがけない出会いがあっておもろいですね。

『その昔、N市では』(東京創元社)マリー・ルイーゼ・カシュニッツ著/酒寄進一編訳

映画「ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE with SOMEBODY」を観てきました。

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映画「ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE with SOMEBODY」を観てきました。

今年の目標「月に1本は(映画館で)映画を観る!」のラストは、ホイットニー・ヒューストン。

ホイットニーのデビューは1985年。1980年代の洋楽にまみれて中高生時代を過ごしたわたしにとっては、ど真ん中なのです。熱烈なファンだったわけではありませんでしたが、ラジオから彼女の歌声が聞こえてくると、無条件に涙が出てくることがありました。彼女が亡くなったというニュースは、なんだかわけがわからなくてショックでした。映画を通して、そこに至る彼女の苦しみを、ほんの少し知ることが出来たように思いました。

映画は冒頭からホイットニーの美しい歌声がたっぷりで、歌声を聴くたびに涙が出てきました。ストーリーが悲しいとか切ないとか、そういうこととは関係なく、です。陳腐な言い方ですが、音楽の力を体感する約2時間半でした。そして、いつまでも、もっと彼女の歌声を聴いていたいと感じた2時間半でした。80年代から90年代、歌詞の意味などまったく考えずに、ただメロディーと声の美しさに惹かれていましたが、今回映画の中であらためて歌詞の内容を知ることになり、それも新鮮でした。彼女の歌・歌声に救われた人はたくさんいただろうな、と思うと同時に、歌っている本人が救われなかったことが切なく迫ってきました。

実は上映前に、音響設備の不具合で、映写の際の機械音が通常より大きく聞こえてしまうということで、上映開始時間ギリギリまで映画館の方が調整をなさっていました。席に入るときも、スタッフの方が入り口でその旨を一人一人に説明してくださり、機械音が気になった方にはチケットの払い戻しに応じるとおっしゃっていました。映画の予告編を見ているときは、「あ、この音のことだな」とわかりましたが、本編の上映がはじまったら、まったく気にならず。映画に没入していたようです。

「月に1本は(映画館で)映画を観る!」、2022年ラスト「ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE with SOMEBODY」大満足でした!

読書『やっかいな食卓』(小学館)御木本あかり著

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読書『やっかいな食卓』(小学館)御木本あかり著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚より、タイトルの斜に構えた感じにつられて中身はチェックせず借りて参りました。

なんてことの無い日常。その日常に、どんな家庭にも起こり得そうな「家族の問題」が次々に降りかかるお話。嫁姑問題、同居問題、介護問題、相続問題、子どもの引きこもり、家事と仕事の両立…。自分のこととして、あるいは身近な人のこととして考えさせられつつも、面白く読みました。次々と難題が起こるものの、なんとなく問題を抱えながらもハッピーエンドになるのだろうな、と予感できるストーリー展開は、読んでいて心落ち着くものでした。

ストーリーは嫁と姑の二つの視点から語られます。てっきり著者は「嫁」側=若い人なのかと思いきや、読み終わってから出版元の小学館のサイトを見たら「69歳大型新人」とあって、ビックリ。通算23年を外交官の妻として世界9カ国で生活してきたという著者の体験と知恵は、本書の「姑」に反映されていたのでした。今は「姑」である人も、かつて「嫁」であった時代を経てきているからこそ、どちらも当事者視点で描けるのだろうな、と感じました。

小説家としては本作がデビュー作であったという著者ですが、別の名前(本名)でエッセイは何冊か出ているそうです。道理で、いい感じに肩の力が抜けているのでした。このリラックス感が行間にあるからこそ、の心地よい読後感。映画にしても面白そうです。

『やっかいな食卓』(小学館)御木本あかり著

2022の目標「月に1本は(映画館で)映画を観る!」進捗状況。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2022の目標「月に1本は(映画館で)映画を観る!」進捗状況。

今年も残すところあと10日。年内最後の映画は、今週末からはじまるホイットニーヒューストンを観に行こうと、最寄り映画館のスケジュールを確認したところでした。

年初に「月に1本は(映画館で)映画を観る!」を掲げました。これ、とても良かったです。おかげで毎月1本とはいかないまでも、これまでで一番多く映画館に足を運んだ1年となっています。

1月『HOUSE OF GUCCI』

2月『フレンチ・ディスパッチ』

3月『ナイル殺人事件』

4月『ベルファスト』

5月は観に行きそびれて、6月『エリザベス 女王陛下の微笑み』

7月また観に行きそびれて、8月『レインマン』

9月またまた観に行きそびれて、10月『ダウントン・アビー』

11月は『アムステルダム』

11月2本目は『恋におちたシェイクスピア』

ということで、あとは12月のホイットニーヒューストンを観たら、合計10本。12分の10ですから、なかなかの達成度合いです。

こうしてタイトルを振り返ると、どの映画も「観て良かった!」と思えるものばかりで、満足度100%。ひとつも外れが無かったのは、ラッキーでした。うち2本は「午前10時の映画祭」からのラインナップであり、これがとても良かったです。最寄りの映画館で「午前10時…」を上映してくれるありがたさ。

口に出して目標にしたことで、結果として豊かな時間を過ごすことが出来ました。来年も引き続き「月に1本は(映画館で)映画を観る!」を掲げて行こうと思います^^

読書『竜と流木』(講談社文庫)篠田節子 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『竜と流木』(講談社)篠田節子 著

先日読んだ久しぶりの篠田節子さんがとても良かったので、図書館で「篠田節子」の棚からピックアップ。文庫で並んでいたのが本書だけでしたので、中身はチェックせずに借りて参りました。ここは、作家への信頼感とでも言いましょうか。

さて『竜と流木』、最初に注意すべき点として、少々グロテスクな描写がありますので、苦手な方は気をつけてくださいね。文芸評論家・牧眞司氏のあとがきの文章を借りれば、「サスペンス、SF、ミステリ、神話伝承の要素・趣向」などの要素が複層的に響き合い、重層的に立ち上がっているストーリー、ということになりますが、これにプラス「ホラー」的な要素もありました。

生態系保護、外来種、海洋ゴミ、異常気象、貧富格差、水問題…次々に社会課題的な要素が小説のお話に現れてきます。というよりも、それらの社会課題がストーリーを引っ張っている、という感じです。ホラー的なバイオミステリーの核となっているのは、今まさにわたしたちの住んでいる世界で起こっている問題の数々なので、否が応でも考えさせられます。

正直なところ、わたしは「教訓めいた説教臭い小説」が好きではなく、物語のなかにあからさまな形で「問題提起」な気配が現れると、読むのが嫌になります。本書は、ストレートに言って説教臭い小説です。それでも最後まで、それも一気に読んでしまったのは、説教臭さ以上に目を離せない、物語としての興味深さ故でしょう。

先日読んだ『セカンドチャンス』とは、まったく異なるテイストで、おそらく本書の方が「篠田節子さんっぽい」のかもしれませんが、著者の守備範囲の広さに脱帽した週末読書でした。まだまだ読んだことのない著書がたくさんありますので、少しづつ図書館で借りてこようと思います^^

宿題に向けて要点整理:JETRO「中小企業海外ビジネス人材育成塾」

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

宿題に向けて要点整理:JETRO「中小企業海外ビジネス人材育成塾」

年内のカリキュラムが終了し、年明け以降のブラッシュアップに向かって、海外向けの戦略を整理整頓しています。先日も書きましたが、一緒に取り組む仲間の顔が見えるのが、なにより励みになります。

以下、これまでの学びのなかで特に残ったこと、備忘。


  • あなたにおススメする理由。あなたのギャラリーは○○だから、これをおススメしようと思いました。の、綿密な調査に基づく「あなただけ」への理由付け。
  • 先方のことをより知るための資料作り、質問作り。
  • こちらが伝えたいことを、先方に質問してもらえるような資料提供。いい意味での余白。
  • 曖昧さの排除。
  • なぜ?その背景は?を常に意識。
  • 「定番の言い回し」を持ち、身に付ける。メールも、会話も。
  • 事実→解釈→行動。解釈の方向が、お互いに同じ方を向いているか?(目的意識と固有事情により、解釈は変わる)

特に「曖昧さの排除」「定番の言い回し」は、商談を進めるうえで自分を楽にするためにも常に意識するべきポイントだと思いました。海外商談=英語での商談を前提としてのレクチャーではありましたが、日本国内でもまったく同じことですね。

今日はこれから英語でのプレゼンテーション資料作成。ブログ書いて要点整理もできましたので、頑張ります!

読書『ルビーが詰まった脚』(東京創元社)ジョーン・エイキン著/三辺律子訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ルビーが詰まった脚』(東京創元社)ジョーン・エイキン著/三辺律子訳

これもいつものカメリアステージ図書館新刊棚から。シュールなタイトルと、表紙の絵の独特の雰囲気に惹かれて手に取りました。英国生まれの著者による短編集で、『ルビーが詰まった脚』はそのなかの一編のタイトルです。本書の原題は『The People in the Castle:Selected Strange Stories』で、読後感としては、この「Selected Strange Stories」のタイトルがぴったりです。

なんとも不思議なストーリーの数々です。巻末の著者紹介で、大人向けのホラーストーリーやファンタジーで有名であるというくだりを読んで納得。本書内の短編には、あからさまにホラーという感じのものはありませんが、全体に異世界の雰囲気が漂っています。すべてがやわらかくオブラートにくるまれている感じで、警戒することなく読み進めていたら、うっかりおどろおどろしい世界に連れて行かれそうになっていた…という感じ。

ちなみに短編のタイトルを並べてみると

  • 葉っぱでいっぱいの部屋
  • ハンブルパピー
  • フィリキンじいさん
  • ルビーが詰まった脚
  • ロープの手品を見た男
  • 希望
  • 聴くこと
  • 上の階が怖い女の子
  • 変身の夜
  • キンバルス・グリーン

あらためて並べてみると、表題となっているものだけでなく不穏な気配を感じるタイトルがいくつかありますね(笑)

お父さんがピューリッツァー賞受賞の詩人で、著者も詩や戯曲も手掛け、生涯に百冊以上の本を出版したといいます。独特の世界観にみちているであろう詩を、怖いもの見たさで読んでみたい気がしています。

『ルビーが詰まった脚』(東京創元社)ジョーン・エイキン著/三辺律子訳

博物館リンクワーカー人材養成講座『第5回高齢者が美術館を楽しむために~シニアプログラムの実践を通して~』に参加いたしました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

博物館リンクワーカー人材養成講座『第5回高齢者が美術館を楽しむために~シニアプログラムの実践を通して~』に参加いたしました。

11月上旬からスタートした学芸員研修の連続講座「博物館リンクワーカー人材養成講座」。今年度は日程の合わない日もあり、飛び飛びで参加しています。

第5回目は、福岡市美術館の教育普及担当学芸員さんによる実践報告。今年度、福津市の「郷育カレッジ」では、わたしが担当する美術鑑賞講座で、福岡市美術館の「どこでも美術館」というアウトリーチ(出前)にご協力いただきましたので、特に思い入れを持って拝聴いたしました。

以下、備忘。


  • 制作物を1年度に届ける→未来への目線。
  • どこでも美術館(アウトリーチ)=地域公民館、学校との連携。美術館に行けない人のところへ、こちらから届ける。
  • シニアプログラム「回想法」:施設職員の方(専門家)のフォローが必要。
  • 「美術」という共通言語。
  • アフターコロナのGOODな傾向:「男性お一人様」の参加が増えている。
  • 実物・実物大の美術作品=「空間を支配するもの」の存在の大きさ。
  • 美術館に行きたいけれども行けない←YouTube、Facebook等でのライブ配信。
  • 何が見えますか、何が描いてありますか?からはじまる回想法。
  • 学問・専門は、専門家だけのものではない。

博物館リンクワーカー人材養成講座『第5回高齢者が美術館を楽しむために~シニアプログラムの実践を通して~』より


特に、実践報告のなかで演者の学芸員さんがおっしゃった「『空間を支配するもの』の存在の大きさ」というキーワードに、美術・美術館の役割をあらためて思いました。また、グループワークのなかで出てきた「学問・専門は、専門家のものだけではない」という言葉に、奢ることなく取り組む姿勢を貫く現場の方々の思いが見え、ハッとしました。

2022年度の博物館リンクワーカー人材養成講座も残すところあと1回となりました。肩の力を抜いて楽しみながら学べる貴重な機会、しっかり自分のものにしていきたいと思います。

読書『サバカン SABAKAN』(文藝春秋)金沢知樹著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『サバカン SABAKAN』(文藝春秋)金沢知樹著

映画館で『サバカン』の予告編を見たのは、わりと最近だったような…と思いながら手に取りました。映画は今年8月公開。本書はその映画監督による書下ろしの原作小説でした。舞台は長崎県の長与町、しかも1980年代とあって、1980年代の8年間を長崎県で育った者としては、見たさ半分、見たくなさ半分で、結局映画は観なかったのでした。

そんな本書をいつものカメリアステージ図書館で発見。本ならば読めるだろうと思い、借りて参りました。著者の金沢知樹監督は1974年生まれとなっていましたので、わたしより5年ほど後生まれ。ほぼ同世代(!?)なので、その時代の長崎あたりの田舎の雰囲気、学校や子どもたちがどんな風であったかというのは、良きにつけ悪しきにつけ容易にイメージが湧きました。

今の世の中ならすぐに問題とされるであろう、学校の先生の(暴)力による生徒支配、貧しい家の子をバカにし揶揄う子どもの残酷さ、生徒の家でその親と一緒に酒を呑む先生など、「ああ、そういえば」という当時の日常が、苦く思い出されました。そんな時代を「古き良き」と言えるかどうかは、人それぞれでしょうね。

とはいえ、本書のお終いには光が遺されていました。映画のレビューも比較的高評価が多く、そのうち見てみてもいいかも、という気持ちになりました。

『サバカン SABAKAN』(文藝春秋)金沢知樹著