読書『クロスボーダーレビュー2009-2013 森村泰昌×平野啓一郎』

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『クロスボーダーレビュー2009-2013 森村泰昌×平野啓一郎』

このところ続いているマイブーム「平野啓一郎を読む」で、手に取った一冊。もとは日本経済新聞での連載です。このところずっと日経新聞のから遠ざかっていたもので、こんなに面白い連載があったことを知りませんでした。

上の写真は、2017年福岡市博物館で開催された「ルドルフ2世の驚異の世界展」で、コラボレーション展示されていた、 現代美術作家フィリップ・ハースさんの作品 。この本とは全く関係ありませんが、森村泰昌氏の名前を見て、わたしのなかで連想された風景です。

森村泰昌氏といえば、セルフポートレイト・自画像的作品ですね。もうずいぶん前(おそらく30年くらい前)、日本の現代アートシーンにまったく興味が無かったわたしが初めて「これ、いい!面白い!」と思った作家さんでした。当時のわたしはそれを「現代アート」とさえとらえていなかったように思いますが。

そのころ南伸坊さんの「顔」シリーズも面白くてはまっていたのですが、森村作品はそれを「美術」的に格調高く(?)したような感じでしょうか。今思い返せば、わたしの考える「現代アートは、くすっと(あるいはニヤッと)笑えるものがいい」という感覚は、森村作品を目にしたことから始まっていたのかもしれません。

その森村氏と平野氏が、それぞれに「映画評」(森村氏)と「美術評」(平野氏)を書いて、それが対になっているという構成の本書。実に面白い実験になっていました。

個人的には、特に森村さんの映画評での映画の選び方が、興味深く感じました。その映画評を読んだうえで、DVDがあったら観たいと思ったものが多々あり、タイトルチェック!

読後につくづくと感じたことは、美術も映画も、「好きか否か」という視点と「評価できるか否か」という視点は、別のものであるということ。そして、その両方の視点をどちらも取り込むことができた方が、美術も映画も深く楽しむことができるのだ、ということでした。

【告知】福岡ACAD.「世界史を建築家の視点で学ぶ!第7回モダンスタイル」

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

【告知】福岡ACAD.「世界史を建築家の視点で学ぶ!第7回モダンスタイル」

全8回で計画をしている「世界史を建築家の視点で学ぶ!」シリーズ。第1回「建築の歴史」第2回「エジプト・ローマ」第3回「初期キリスト教・ビザンチン」第4回「ロマネスク・ゴシック」第5回「ルネサンス・バロック」第6回目「アールヌーボー」と続き、いよいよ終盤の次回は第7回「モダンスタイル」です。


美しい建築をスライドで見ながら、歴史・文化的背景などについて考察を深めます。今回のテーマは「モダンスタイル」。現代につながる建築スタイルを眺めていきましょう。
西洋史に興味のある方、建築・工芸・アート・デザインに興味のある方、お気軽にご参加ください。
世界各地の名建築をその目で見てきた、株式会社藤井設計室・藤井昌宏さんの解説です。

<講師>株式会社藤井設計室・藤井昌宏さん
木原千利建築設計事務所を経て、藤井建築設計室を開く。店舗・住宅・病院などのほか、ハウステンボス、阿蘇ファームランド、ひらかたパークなどエンターテイメント性の高い設計管理を得意としている。2017年全体リニューアルした「かしいかえん」の設計監理は遊園地の大規模リノベーションとして、エンターテイメントビジネス業界で注目を集めている。(https://www.facebook.com/Fujii.Design.Office/

<参加費>大人3000円、学生1500円(当日会場にて現金払い)

<会場>メイトム宗像1階101会議室
福岡県宗像市久原180

<スケジュール>
18:00開場・受付開始
18:30スライドショー講座スタート
20:30質疑応答・意見交換タイム
21:00アンケート記入など
21:30閉場

ご参加希望の方は、フェイスブックの本講座イベントページから参加ボタンを押してください。追ってこちらから確認のメッセージを差し上げます。お問合せもお気軽にどうぞ(^^)

【開催報告】ビジネスパーソンに必須の教養、その第一歩を美術鑑賞で@博多阪急

こんにちは。Meet Me at Art アートエデュケーターふじゆりです。

【開催報告】これからのビジネスパーソンに必須の教養、その第一歩を美術鑑賞で!@博多阪急

博多阪急さんからお声掛けいただいて実現した、ビジネスパーソン向けのセミナー。無事終了いたしました。ご来場くださいました皆さま、誠にありがとうございました。

平日昼間の開催とあって、夜なら行けるのに!週末なら行けるのに!というビジネスパーソンの皆さんからご意見をいただいておりました。確かに、多くのビジネスパーソンは仕事中の時間帯。また別の機会に、週末または夕方以降の開催を企もうと思います。

45分という短い時間。「アート×ビジネス」の昨今の流れを知っていただいたうえで、対話型鑑賞(ビジュアルシンキング)も試しに体感していただきたいと欲張った結果、シミュレーションしていた以上に駆け足になってしまいました。伝えたいことがたくさんで、話が多くなってしまったのが反省点です。

百貨店という場所柄、少々気の散りやすい環境でしたが、ご参加の皆さんがワークショップにしっかり取り組んでくださっていた様子が、とても嬉しかったです。

これをきっかけに、ご参加の皆さんが美術や美術鑑賞を「自分にとって大切なもの」として感じていただけるといいな、と思いつつ。

機会をご提供くださった博多阪急さんにも、心より感謝申し上げます。

書道部2019年5月。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

書道部2019年5月。

久しぶりの書道部投稿。5月は「美術鑑賞」。

今日は何を書こうかな?と考えるのも楽しみな毎月の書道部。筆を握る直前まで気の利いた文字を思いつかなかった今回は、ブログネタを思いつかないときと同じように「今日やったこと」を書こう!と決定。

禅語などに比べると、なんとも趣が無いように思える文字列ではありますが、いざ筆で書いてみると「わたしはこれが書きたかったんだ!」と思えてくるから不思議です(笑)

書道の練習をしていて面白いのは、書いているのは文字でありながら、「どんな意味を持った文字列か」というよりは「並び姿が美しいかどうか」のほうが大切に思えてくること。

何枚か練習するうちに、自分の実力なりに文字がぴったりと半紙に収まってくると、じわじわと嬉しくなってきます。

花祭窯書道部

さあ、来月はなんと書きましょうか。

本をきっかけに。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

本をきっかけに。

好きになること・もの、ありませんか?

美術鑑賞の座学講座をするにあたって、最近わたしがよく使うのは、アンリ・ルソーの絵画なのですが、ルソーの絵に興味を持ったのは、実は小説がきっかけだったと、講座の準備をしながら思い出しました。

原田マハさんの『楽園のカンヴァス』です。この本を読んで、まず家にある画集からルソーを引っ張り出してひきこまれ、ロンドンではナショナルギャラリーで虎の絵(タイトル「Surprised!」)に釘付けになり、ルソーの「夢」を見るためだけにでもニューヨーク近代美術館MoMAに行かねば!と思っています。

小説に登場する絵や音楽は、しばしばそのストーリーとの相乗効果で強く心に響いてくると感じます。もちろん大前提として、そのもの(絵や音楽)自身の力があるからこそ、の響きなのですが。

わたしの場合、小説のおかげでルソーの絵に関心が向きました。もちろん同じ画家が描いたものでも、響くもの響かないものあります。ルソーの絵も例外ではないのですが、惹かれるものが多いと感じています。

わたしは絵を見る時に、極力文字情報を排除するのですが、文字情報のかたまりである小説から影響を受けて、好きな絵に出会うこともある。なんだか面白いなぁと思います。

【告知】アート×ビジネス@博多阪急

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)/アートエデュケーターふじゆりです。

【告知】アート×ビジネス@博多阪急

先日対話型鑑賞講座」を開催した朝日カルチャーセンター福岡さんからのご縁で、博多阪急さんのイベントでお話をする機会をいただきました。メンズ売り場の催事でのイベント。これからのビジネスパーソンにもアートの感性が必要だよね、ということで。

これからのビジネスパーソンに必須の教養、
その第一歩を美術鑑賞で!

時間が45分と短めなので、まずは「なぜ今アートなのか」という諸説の紹介と、諸説への理解を深めるための方法(本や講座など)の紹介、すぐにスタートできるアートとの関わり方など「概論」を中心にお話する予定です。時間に余裕がありそうだったら、ビジュアルシンキングのワークもとり入れたいところですが、さて。

博多阪急の担当者さんと「これからは絶対に必要ですよね!」と盛り上がっているこの企画。時間帯が平日昼間ではありますが、参加費無料でお得です。ぜひお気軽にお申込み下さい。

これからのビジネスパーソンに必須の教養、
その第一歩を美術鑑賞で!

「自分のこと」としてアートを考える人が一人でも増えると嬉しいな、と思いつつ。

【開催報告】福岡ACAD.「世界史を建築家の視点で学ぶ!第6回アールヌーボー」

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)/Meet Me at Artふじゆりです。

【開催報告】福岡ACAD.「世界史を建築家の視点で学ぶ!第6回アールヌーボー」

株式会社藤井設計室藤井昌宏氏を講師に迎えての「世界史を建築家の視点で学ぶ!」シリーズ第6回目は「アールヌーボー」テーマでした。前回に引き続き、講師出題による「意見交換テーマ」に沿っての講座の振り返りを採り入れ、今回も白熱した楽しい時間となりました。

個人的には、つい先日見てきた「ラファエル前派展」からつながる時代であり、絵画や家具壁紙などのデザイン製品をはじめとした展示イメージが鮮明に残っていたところでもあり、非常にタイムリーでした。

以下、キーワード備忘。


  • アール・ヌーボー=フランス語で Art nouveau=新しい芸術
  • イギリス産業革命→都市化→近代のはじまり
  • ごついもの固いものから洗練されたものへ
  • 「デザインやってますよ」の意図的アピール
  • 辰野金吾がイギリスに留学した時代
  • 植物的・生物的装飾
  • 工業化・工場主・成金
  • 個人的な感情を表現してよい時代
  • 大量生産=代替可能
  • 鉄筋、コンクリート
  • アーツアンドクラフツ運動・モリス商会・デステイル運動・バウハウス・セセッション

今回の「意見交換テーマ」は「アールヌーボーの時代を経て、20世紀のこの社会になって、わたしたちの暮らしは変わりましたか?何が変わったのでしょうか?何によって変わったのでしょうか?」というものでした。このテーマによって、これまで見てきた歴史が自分事に置き換わりました。

次回は「歴史シリーズ」の最後、「モダンスタイル」です。現代の直前ですね。これまたとっても楽しみです。

ギャラリートーク「アート×スタートアップ」聴いてきました。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)/Meet Me at Artふじゆりです。

アートフェアアジア福岡2019プレイベント連続ギャラリートーク「アート×スタートアップ」(第一夜)聴いてきました。

場所は福岡市赤坂にあるギャラリーモリタさん。

寺田倉庫(TERRADA ART ASSIST)さんの話が聞けるとあって、興味津々、参加してまいりました。写真は当日いただいたTERRADA ART ASSIST さんのパンフレット。

文化芸術分野での活動を評価されて第27回モンブラン国際文化賞を受賞なさったということで、少し前にテレビでも大きく取り上げられていたそうです。実はわたしはそういうことはまったく知らなかったのですが、アートの物流において革新的なお仕事をしているというイメージを持っていて、お話を聞いてみたいな、と思っていたのでした。

TERRADA ART ASSIST代表取締役の是川泰之氏と、ギャラリーモリタ代表でアートフェアアジア福岡2019実行委員長の森田俊一郎さんによる対談形式のギャラリートーク。

是川氏の淡々としたトークが素晴らしかったです。約1時間と短い時間でしたが、アートを取り巻く仕事へのプロフェッショナルなスタンスがビシビシと伝わってきました。芸術を特別なものと位置付けるニュアンスを無意識に期待する参加者に対して、あくまでもビジネスライクな視点の結果としてのTERRADA ART ASSIST さんの在り方が、清々しく感じました。だからこそ、お客さまの要望にこたえ、さらにその期待を先取りするサービスを提供することができるのですね。

トーク終了後の交流タイムでは、是川さんと直接お話もできました。海外へのアート作品発送において、どのような問題がよく相談されているか、どのように解決しているか。わたし自身の持っている課題に対しても、解決を期待できるお話を伺うことができました。

今年は年末にかけて海外発送の事案が待ち構えているので、いざというときにご相談できる場ができて、心強い限りです。企画してくださったアートフェアアジア福岡2019実行委員の皆さま、ありがとうございました!

読書『ドーン』『マチネの終わりに』『透明な迷宮』

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

読書『ドーン』『マチネの終わりに』『透明な迷宮』平野啓一郎 著

遅まきながらわたしが平野啓一郎著作品デビューをしたのが、ついひと月ほど前。10連休も味方して、3冊読了。

まずは「そういえば、文学作品には『文体』という概念があるのだった!」と思い出させられました。それぞれの小説における「独特の言い回し」に慣れるところから読書がスタートするという実感を伴ったのは、久しぶりだったような気がします。

次に、物語の背景を支える教養的知識が自分に不足しているのを痛感させられました。例えば『ドーン』(講談社文庫)なら宇宙開発競争の実態や、アメリカ大統領選に見られる社会病理、科学技術の進歩(実態と近未来に起こりうること)など。『マチネの終わりに』(毎日新聞出版)なら、なんといってもクラシックギターで演奏される曲の数々。本の中に登場する曲を知っているだけでも、読み応えが変わってくるだろうと思いました。

もちろんそうした知識がなくても大丈夫で、物語の魅力に引っ張られて一気に読みました。壮大な背景を用いながらも、ストーリーはあくまでも「人」の心の機微にあてられていたからだろうと思います。だからこそ、道具立ての意図を阿吽で理解できるだけの教養があれば、もっと登場人物の心情に近づくことができたのではないかとも。

3冊読んで、ようやく平野啓一郎著作のスタート地点に立ったような気がします。まだまだ読んでいない本がたくさんあるので、これからが楽しみです。

ところでカズオイシグロ作品の追っかけをしたときも、文体の妙に感嘆したものですが、わたしの読むそれはあくまでも翻訳者の方の文体であったので「この方が日本語訳しているからこそ、この読みごたえ」という感動でした。わたしの今の英語力では原文を読んで文体にまで思いを寄せることはできず、それはやはり残念なことなのかもしれないと、あらためて思ったのでした。

実は、一番最初に手に取ったのは、平野啓一郎さんの芥川賞受賞作である『日蝕』(新潮文庫)でした。ところがまず文体に慣れるのに時間がかかり、時代背景に思いを寄せるのに時間がかかり、と、ゆっくりゆっくり読んでいるため、いまだ読み終わっていません。さていつ読み終えることやら。

あらためて、読書『美 「見えないものをみる」ということ』(PHP新書)

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

あらためて、読書『美 「見えないものをみる」ということ』(PHP新書)

先日銀座の資生堂ギャラリーで「福原信三の美意識」を意味する言葉・表現にたくさん出会いました。福原信三氏は、資生堂創業者の三男で資生堂の初代社長。資生堂文化の礎を築いたといわれる方です。わたしがその美意識に触れ影響を受けたのは、現資生堂名誉会長福原義春氏のこの著書からでしたので、あらためて本書を読み直してみました。

以下、備忘。


  • 今の世の中では、(中略)本当に美しいものが、美しいというふうに評価されているだろうか。
  • 自由に使える一日。好きな本を読む時間。美しいものに触れるひと時。
  • 文明は文化を駆逐する
  • 自然への畏敬の念
  • 文化の本質の要素には、もともと「ムダ」や「遊び」がある
  • いまの作品は、百年後、二百年後に生き残れるか
  • 寒さを寒さとして引き受けるような感性
  • 本歌取りと模倣の違い
  • 「人の型を踏むな」「芸術は無窮を追え」という(岡倉)天心の言葉
  • 五感のすべてで対象を感じる
  • 自然を魂に入れて生きる。
  • 「原典を尋ねる」
  • 複線人生
  • 自然に触れること、美に触れること、そして本物に触れること
  • 作品を買うことで、自分と作家との関係性が変わってくる
  • 自分の趣味に合うものを、その時々に使えるお金の範囲で手に入れる
  • 過去の知的資産に触れることの目的は、(中略)何よりも、未来を考えるためだ。
  • 「ものごとの真贋を見分ける目」「美しいものを美しいと感じ取る感性」を復活させる
  • 実際に見なければわからないこと
  • 芸術とは、時代ごとの文化を背景にした成果物のこと。
  • 知識イコール教養ではない
  • 一〇〇メートルをいかに速く走るかよりも、いかに美しく走るか

『美 「見えないものをみる」ということ』(PHP新書)より


このところ「アート×ビジネス」関連の書籍がたくさん出ていますが、そのいちばん最初に読んで欲しい本です。わたしにとっては、何度読んでも勇気づけられる本です。