「見た」「聞いた」を考えてみた。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

「アート教育」についての学芸員研修を受講した、その事後アンケートのフィードバックがありました。
事務局の先生の細やかなフォローに感謝です<(_ _)>

学芸員研修に行ってきました。

当日講師をしてくださった、宮城県美術館の教育プログラムに長年取り組んでおられる
齋先生の著書にもあった問題提起

美術の使い方。

「見る」というとき、人は「どこで見ているのか」「何を見ているのか」。

鑑賞する=見るというのは、とても個人的なこと

だということ。
これはわたしにとって、とても大切な確認事項となりました。

普段「見る」というのは、「目」で見ていることを指しますが、
同じものを同じ時に見ていても、同じようには見えていない、ということ。
「その人」というフィルターを通すと、視界に入っているのは同じものであったはずでも
見え方は人それぞれ違い、同じ人でも見るときによって違うということ。

フィルターとなっているのが、脳であるのか、心であるのか、物理的な視野の広さの違いもあるでしょうね・・そのあたりの細かいことは専門家にお任せしますが、
とにかく見えているものは人それぞれ違うということが現実にある
そんなことを「アート教育」の研修では学びました。

そして、それを学んだ研修の事後アンケートへのフィードバックを通して、
同じことが、「聞く」についてもいえることを実感しました。

上の写真は、学芸員技術研修会の参加者に配られた事後アンケートのフィードバックなのですが、同じ質問に対して、受講者のそれぞれがいろんな返事をしています。
そのなかで、
えっ!先生そんなこと言っていたかしら!?
という、わたしにはまったく聞こえていない部分があったことが明らかに。

居眠りをしていたわけではありません(笑)

この研修はわたしにとって刺激的だったので、とても集中して(自分比)、話を聞いていました。
にもかかわらず、約1か月半経って振り返った時に、記憶にほとんど残っていない内容が、他の受講者の方の感想に書かれているという現実。

これはつまり、耳で聞こえていた先生の話は同じ音で聞こえていたはずなのだけれど、
それを「わたし」というフィルターを通したことで、
ある受講者の方とはまったく別の解釈をして内容を受け取った、ということなんですね。

そうすると、聞くということもまた同じ問題提起ができます。
「どこで聞いているのか」「何を聞いているのか」。

鑑賞する=聞くというのは、とても個人的なこと

と言えるのだなぁ、と。

そんなのあたりまえじゃない!という方もあると思います。
それが頭だけの理解でなく実感できた、ここ数日の出来事でした。

12月は東京町田で藤吉憲典展。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

12月は町田のももふくさんで藤吉憲典展。

2016年の藤吉憲典個展の〆は、町田のももふくさんです。

町田ももふく2016藤吉憲典展

毎回スタイリッシュな案内状を作ってくださるももふくさん。

今回の個展の主役はごはん茶碗。と、お湯呑みです。

和食器の超基本アイテム、ごはん茶碗とお湯呑み。

「自分のお茶碗」を持っている人はずいぶん増えてきたように思います。
そこで、ごはん茶碗の次は

「自分のお湯呑み」持ってますか?

煎茶・中国茶・紅茶・ハーブティーなど、いろんなお茶文化がありますが
「お茶の時間」と、あらためて淹れ方に気を配って飲む特別なお茶ではなくて、
「おーい、お茶」的に、仕事の合間や食事の後などに普通にさっと入れて呑むお茶。

そんな、
日常生活のなかにある「なんてことないお茶呑み風景」が
お気に入りの湯呑みを使うだけで、手軽に特別に楽しみなお茶になる!

というシーンを広げたい!というのが今回の個展の企みです。

我が家では、お茶を飲むのに蕎麦猪口もよく使いますが、
温かいお茶にはやっぱり「お湯呑み」が似合ます。

手のひらに気持ちよく収まる形、温かさを守る形。
「お湯呑み」である理由を体験しに、ぜひ個展会場にお越しくださいませ。

個展の詳細は、ももふくさんのブログでもご確認いただくことができます(^^)

 

 

学芸員研修に行ってきました。その2

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

学芸員の専門研修に行ってきました。

佐賀県立美術館にて開催された学芸員の専門研修

に行ってまいりました。
今回のテーマは

文化財、なかでも陶磁器の修復方法のひとつカラーフィル技法の技術研修。

実は最初、「やっぱり陶磁器の修理は漆よね~」という思い込みで
カラーフィル技術の研修に興味を持てずにいたのですが、
今回の学芸員研修の事務局をなさっている先生から直々に
「別の技法もちゃんと知ったうえでこそ、漆の良さも見えるのでは?」と問われ、
己の考えの浅さにハッとしたのでした。

もともとイギリスには日本の陶磁器の「修理」とは全く異なる「修復」の技法があることを、
日本で修理修復の実際をオープンにした第一人者
ユスタ・ルフィナの甲斐美都里さんの著書やお話で知っていましたので、

これは修復の技術を自分の目で実際に見ることのできる素晴らしいチャンスでした。

今回ご指導くださったのは、陶磁器修復家の佐野智恵子さん
英国流の陶磁修復法カラーフィルをイギリスにある専門の大学で学び、
大英博物館や師匠の修復工房で修業ののち帰国。
現在は名古屋と東京に工房をお持ちです。
代表的なところで、東京都庭園美術館の誇るアール・デコの名品「香水塔」の修復をなさっています。

午前中は座学の講義、午後は修復の実習を行いました。

講義と実習を経てわかったことは、
カラーフィルの修復技術の考え方と、日本の金継の考え方の根本的な違い。
頭で知っていたつもりでしたが、しっかりと腑に落ちました。

そして、美術館・博物館での展示を前提とした名品には
このカラーフィル的な修復の基本的なスタンスが重要であるとわかりました。

具体的には、
まず第一に修復は鑑賞のジャマをしないほうが良い、という考え方に基づくこと。
日本の金継は、継いだ部分さえも景色としてトータルで眺めるという考え方が基本にあります。
ですが、もともとの芸術品の美しさをそのまま伝えるためには、修復の箇所が主張してはいけないのです。

そして「可逆性」が大切であること。
カラーフィルの技法は合成樹脂と顔料を混ぜて作ったパテを使います。
接着材料は、割れをくっつける接着剤と、欠損を埋めるパテ。
そして接着剤やパテはどんどん技術の進歩で改良されていくので、
「その美術品にとって、もっと良い修復方法」が現れたときに、
きれいに修復し直すことができることが、
そこから先の未来にも名品を遺していくために大切なのです。

というわけで、自分のなかでの結論がしっかり出ました。

飲食に使う陶磁器には本漆を使った日本の継ぎの技法、
飲食に用いず鑑賞用として重視する場合はカラーフィル

※カラーフィルの技法は、飲食に用いる物には使わないほうが良いこと、
耐熱温度が80度のため、高温になるケースには適さないこと、などの特徴があります。

それぞれ目的に応じて使い分けたらよいのですね。

たいへん勉強になった一日でした。
機会をご提供くださった先生方に心より感謝。ありがとうございました!

国際学芸員サミット2016@九州陶磁文化館-その2

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

国際学芸員サミット2016@九州陶磁文化館 の続きです(^^)

九州陶磁文化館で開催された国際学芸員サミット2016

11月13日(日)行われたシンポジウムの聴講に行ってまいりました。
有田焼400周年を記念して佐賀県が開催。

「世界の学芸員が語る有田焼・佐賀の魅力」

ご参加の学芸員の方々は、オランダ・イギリス・トルコから
日本やアジアの陶磁器を専門とされる学芸員の方々7名。
九州陶磁文化館の鈴田由紀夫館長がコーディネーターをおつとめでした。

お一人あたり10分と予定されていたトークはとても短く感じましたが、
それでも15時から始まったシンポジウムは終了予定の17時を大きくオーバー。
欲を言えば、あらかじめ用意された発表だけでなく、もっと踏み込んだご意見も伺えたら‥と。
もともとはディスカッションも予定されていたようでしたが、時間切れでした。

とはいえ、海外で日本の陶磁器を専門に研究なさっている方々の視点を垣間見るという、
滅多にないチャンスに参加することができ、ワクワクしました。

皆さんの発表を聴くなかで、今回わたしが一番心に留まったのが
どの国の学芸員さんの口からも出てきた「出島」というキーワード。
各国の美術館に収蔵されている有田焼はじめとした日本の陶磁器から見える、
海外交易における歴史上の「出島」の役割の大きさ。

普段「伊万里港(佐賀)から輸出したから古伊万里と呼ばれる」説が頭にありますが、
長崎出島の果たした役割は、有田のやきものにおいても重要であった!
そんな当たり前のことを、あらためて認識したシンポジウムでした。

そしてなによりも、海外で日本の陶磁器を研究する方々の熱い想いが
とてもありがたく、嬉しくなるシンポジウムでした。

この「国際学芸員サミット」は佐賀県が企画した今回が第一回目、ということでしたが
来年以降も続くのかな?ぜひ継続していただけたら嬉しいな、と思います。

国際学芸員サミット2016@九州陶磁文化館

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

九州陶磁文化館で開催された国際学芸員サミット2016

11月13日(日)行われたシンポジウムの聴講に行ってまいりました。

国際学芸員サミット‥すごいネーミングですね。
有田焼400周年を記念して、佐賀県が開催。

「世界の学芸員が語る有田焼・佐賀の魅力」

これは是非聴いておきたいと思い、有田まで行ってまいりました。

先日のブログ2016年11月、見に行きたいやきものの展覧会でもご紹介した
特別企画展「日本磁器誕生」の観覧もかねて。

さてまず、期待していた「日本磁器誕生」の展示。
わたしの期待が大きすぎたのでしょうか。
「日本磁器400年の歩みと美を実感できる展示」というには
正直なところ、ちょっとがっかりな展示内容でした。

「歩み」はともかく「美」が実感しにくかったというのが率直な感想です。

有田焼の美しさを語る名品はもっといろいろあるはずなのに…。
400年を一気に語ろうとしたから難しかったのかしら、と。
展示方法も、このところ大きな地震が多いので安全対策上仕方がないとも思いつつ、
もう少し鑑賞をジャマしない展示方法だったら、もっとよかったなぁと。

でも!

九州陶磁文化館には「柴田コレクション」の常設展示室があります。

がっかりしたあとは、こちらで眼福。
ほかの美術館でも思うことなのですが、
やはり個人のコレクションにはその方の審美眼・美意識が反映されるので、
一貫した意図や信念と、それに基づく美しさを味わうことができることが多いですね。

さて気を取り直して、シンポジウムへ。

国際学芸員サミット2016@九州陶磁文化館-その2 に続きます(^^)

2016年11月、見に行きたいやきものの展覧会。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ) ふじゆりです。

今日から11月。文化の秋ですね。

この11月、特に見に行きたいやきもの関連の展覧会が3つ。

まずは

大阪市立東洋陶磁美術館
朝鮮時代の水滴 文人の世界に遊ぶ

水滴。書道具のひとつです。

企画展の案内に
『愛らしく 美しい、その小さき 粋の宇宙。』
とあります。

硯(すずり)に水を注ぐ水滴は、小さいながらも(小さいからこそ!?)
手の込んだつくり、絵付を施された名品がたくさん。
その姿かたち・文様銘文には、文人の理想や願望が込められています。

ちょうど最近、ダンナが龍の硯と水滴をつくったところで
文人の道具の面白さをあらためて想っていたところにこの企画展。

↓下の写真は磁器作家・藤吉憲典作の青磁の龍の硯(左)と水滴(右)。

青磁龍硯青磁龍水滴

大阪に足を運べたらいいな~と思いつつ。
大阪市立東洋陶磁美術館の水滴展は11月27日(日)まで。

ふたつめは

佐賀県九州陶磁文化館の特別企画展
日本磁器誕生

九州陶磁文化館は、今年有田焼創業400年事業の一環で
特別企画展を実施しています。

現在開催中の「日本磁器誕生」(11月27日まで)では
日本磁器400年の歩みと美を実感できる展示が行われているといいます。
その後は「日本磁器の源流」(12月9日より)として
中国磁器との相互の影響にスポットを当てての展覧会。

いずれも肥前磁器の仕事にかかわるものとしては、
有田焼の歴史の流れを学びなおす良い機会になるはずです。

佐賀は近いので、行かねば!と思いつつ。

みっつめは、この有田焼創業400年事業の一環でもある

九州国立博物館・文化交流展示室でのトピック展示
古伊万里 旧家の暮らしを彩った器

ホームページでの紹介には
「公家、大名家、豪商ゆかりの作品と、欧州の城館や宮殿を彩った名品を紹介し、
国内と海外それぞれの暮らしを彩った古伊万里の特徴や魅力の違いに注目します。」と。

花祭窯では今まさに、海外のお客さまと、国内のお客さま
それぞれがお持ちの、やきもの(磁器)への期待の違いを感じているので、
先人たちの通ってきた道は、とても興味深いものです。

が、会期は残り少なく11月6日(日)まで。

興味のある方、お時間のある方は、ぜひ足を運んでみてくださいね!

美術の使い方。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

先日「学芸員研修に行ってきました」をアップしたばかりですが、
その続きです。

宮城県立美術館の教育担当学芸員・齋正弘先生の著書

『大きな羊のみつけ方- 「使える」美術の話』

が、手元に届きました。

本の帯にある

「美術を使おう。美術館を使おう。」

これこそが、わたしが学芸員研修に参加した、いちばん大きな理由でした。

美術はもっと普通に、いろんな人に開かれているはずのもの。
美術館も博物館も敷居の高いものではなく、
もっと当たり前にみんなの生活のなかに登場してしかるべき、という気持ち。

そして、そのきっかけにもなる美術館や博物館で行われる「ワークショップ」と呼ばれる参加型の催し。
この大半が「トーク」か「なにかを作ってみる作業」であることにずっと疑問がありました。

その根っこにあったのは、
まずは『見る=鑑賞する』ことが先なのでは?」という思い。
「じゃあ、鑑賞ってどういうこと?」への自分自身の理解の曖昧さ。
「使える」美術の話は、その思いに答えてくれるものでした。

いわく

  • 「描く、分かる、知る」だけが美術じゃない。
  • 自己表現としての「鑑賞」。
  • 美術は、すべての人間が、全部一人一人違うということを基盤に、
    人間全体の世界観を拡大してゆくということが存在の意義(=仕事)。

などなどなど。

美術館での長年の美術教育の実践に裏付けられた齋先生の言葉は、
たいへん説得力に満ちていて、しかも哲学的で面白い!
読めば読むほど理解が深まり、ただいま3周目を読んでいます(笑)

美術教育を考える小学校や中学校の先生方にも、
ぜひ読んでほしい本です。

 

 

 

村上隆スーパーフラットコレクション展の図録

こんにちは。花祭窯 内儀(おかみ)ふじゆりです。

思いがけず刺激的な贈りもの。

村上隆さんのSUPER FLAT COLLECTION展の図録が届きました。

その数日前にカイカイキキさんから電話がありました。
今年2016年1月~4月に横浜美術館で開催した村上隆のコレクション展
藤吉憲典の作品も展示され、図録で紹介してくださったとのこと。

もうずいぶん前に、長年お世話になっている西麻布の桃居さんから
村上隆さんが藤吉の器もお買い上げくださっているという話は伺っていたので
そのこと自体はまったく驚かなかったのですが、

まあ、なんとも分厚く立派な展覧会図録が届きました。

開いてびっくり。
コレクターとしても一流というお話を聞いたことがありましたが
「あ、これどこかで見たぞ」がいくつも(笑)
すごいコレクションです。質・量ともに。

そういえばたしかにカイカイキキの方も
「とても膨大な量の展示で、作家さんも175名いらっしゃるため
図録での紹介文掲載自体は小さなものになりますが・・」
とおっしゃっていたのでした。

その紹介文、簡潔ながらわかりやすく的確で「さすがだなぁ」と嬉しくなるものでした。
さらにその紹介文を見ながら気づいたのが
「SUPER FLATって、こういうことか!」ということ。

いえ、正確にはわたしが勝手にそう解釈しただけのことなのですが、
つまり、その作家紹介のあり方というのが
古今東西老若男女、いかにもスーパー・フラットな紹介の仕方だったわけです。

「すべて、村上隆がいいと思って手に入れたもの」という意味で、
国宝級であろうと物故者であろうと若手であろうと無名であろうと…
気持ち良いほどにフラット=平等に扱われている感じがしました。

展示内容の写真だけでなく、読み応えのある文章の数々。
桃居オーナー広瀬さんとの対談、熊倉功先生の千利休についての話などなど
この図録はしばらくわたしの教科書のひとつになりそうです。

素敵な贈りもの、ありがとうございました(^^)

 

学芸員研修に行ってきました。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ) ふじゆりです。

10月3日、熊本県立美術館で行われた学芸員の専門研修に参加してまいりました。

熊本駅から熊本城周遊バス「しろめぐりん」で美術館へ。
「しろめぐり」の愛称通り、熊本城の周りをぐるりと回るバスで
地震後の城内の様子を目と心に刻みながらの美術館入りでした。

研修テーマは「アート教育」。

宮城県立美術館の教育担当学芸員・齋正弘先生による講義と演習でした。

 

九州はもとより、全国の公私の美術館で学芸員として活躍なさっている方々に向けた研修。
普段は観る側として訪問している美術館。
そこで活躍している学芸員さんに、何人もお会いすることができました。
わたしは珍しい立ち位置での参加でしたが、たいへん貴重な経験となりました。

あまりにも内容が濃かったので、わかりやすくまとめるのは至難の業なのですが・・
いくつかピックアップしてみると

  • ミュージアムは誰のもの!?

    本来ミュージアムはもっと開かれたもの。
    本来ミュージアムは皆が使うためのもの。

  • 「すごい」の意味は!?

    自分の立ち位置(歴史的なもの、バックボーン、リソースetc)を確認すると、
    鑑賞対象に対して感じる「すごい」の意味がもっと「自分のこと」として迫ってくる。

  • 鑑賞(アートワーク)とは!?

    「それを見たときに、どこまでイメージを広げることができるか」がアートワーク。
    学芸員は鑑賞者のイメージを広げるお手伝いをいかにできるか、が腕の見せ所。

  • MUSE(ミュゼ)の役割とは!?

    「わたしがここに居る」(繋がり)をバックアップしてくれるもの。
    ※かなり説明が必要ですね。またあらためてブログに書きます(^^)

  • 美術館・博物館での学びとは!?

    皆が同じになるために学ぶ(現在の学校教育)のではなく、
    個人が個人として存在するための思考を促すための学び。

などなどなど

「美術」や「鑑賞」について、日ごろからモヤモヤしていたものを
すっきりと言葉として明らかにすることができた研修となりました。

数年前に受けた学芸員資格課程の実習のなかで学んだことをあらためて思い返す研修にもなり、
自分自身のこれからにとって、たいへん貴重な一日でした。
花祭窯は美術館ではありませんが、ギャラリーとしての機能を持っているので
今回の学びはすぐに現場で生かすことができそうです(^^)

素晴らしい機会とご縁に恵まれた学芸員研修。
取り計らってくださった皆さまに、心より感謝申し上げます<(_ _)>

津屋崎陶片ミュージアム~青磁の陶片

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

久しぶりの陶片ミュージアム。
本日は、津屋崎浜に上がってくる青磁(せいじ)の陶片について。

津屋崎浜で拾う陶片のなかには、古伊万里だけではなく青磁や白磁もあります。
上の写真も、津屋崎浜でゲットした青磁のカケラ。
これらの陶片のルーツについての手がかりが見つかる場所が、すぐ近くにありました。

小学校のなかの唐人坊遺跡。

玄界灘に面した津屋崎浜から約700m入った津屋崎小学校の敷地内に、
在自西ノ後遺跡(あらじにしのあといせき)があります。

(※以下、在自遺跡のパネル解説を参考にしています。)

在自西ノ後遺跡からは、たいへん多数の中国製陶磁器が出土しています。
遺跡近くに唐坊地(とうぼうち)という地名があること、多数の中国陶磁器が出土していることなどから、
中国・宋(北宋960年~1126年、南宋1127~1270年)との貿易に関係する遺跡だと考えられています。

同じ在自遺跡群にある在自下ノ原遺跡(あらじしものはるいせき)からは、
越州窯系青磁碗(えっしゅうようけいせいじわん)が出土しています。
越州窯系青磁碗は8世紀に中国の越州地方で焼かれた磁器です。

陶磁器は日宋貿易におけるもっとも重要な貿易品のひとつでした。
当時の交易は福岡市の鴻臚館(こうろかん)において国の管理下で行われており、
磁器は一般市民には広まっていませんでした。
ごく少数の身分の高い人だけが、越州窯系青磁碗を所有することができました。

菅原道真の建議により遣唐使は894年中止され、大陸との正式国交は途絶えました。
しかしながら民間商船による交易は途絶えることなく続いており、
これらの交易船には、当時の陶磁器の生産増大により、多量の青磁や白磁が積まれていました。

これらの陶磁器の高台裏には墨書が記されています。
墨書で人名や数字が記されているもので、貿易船に積み込む際に誰の荷物か区別がつくように、
商品の一部につけられた目印と考えられています。
記されている文字は、宋の貿易商人や商社に関係のあるものが多数あり、
多くの宋商人が流通にかかわっていたことがうかがえます。

墨書された陶磁器は商品として使えないため、各地に流通することはなく、
墨書陶磁器が出土している場所は、貿易品の荷揚げ地の近くであったことを示します。

在自西ノ後遺跡で出土している墨書陶磁器は、同安窯系青磁碗4点、小皿1点、龍泉窯系青磁碗1点の6点。
碗・皿のほかにも壺、合子、水差し、甕などいろいろな種類の陶磁器が出土していて、
この地が中国からの貿易品である陶磁器を手に入れやすい環境であったことが予測されています。

 

津屋崎小学校のなかの遺跡。
問い合わせて見学することができます。興味のある方はぜひ(^^)