津屋崎陶片ミュージアム:H290630土ものの高台。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

津屋崎陶片ミュージアム:土ものの高台。

浜辺を歩いていて、どうしても染付赤絵の磁器が目につくので、それを拾ってくることが多いのですが、土ものもたくさん上がります。実際のところ、江戸期の塩田跡の発掘をお手伝いしていた時に出てきたのは、磁器よりも土ものの方が多かったのでした。

本日は、土もの三つ。ロクロで引いた碗です。三つとも高台がきれいに残っていて、面白いなぁ、と思いました。ロクロでひくと、底に向かうにしたがって生地が厚くなるので、高台周りが(後処理で削りすぎない限り)一番丈夫になって割れにくいのかもしれません。

津屋崎陶片ミュージアム土もの高台

↑土ものの生地の上に、白土で化粧してあります。高台の内側にも釉薬がかかっているのが、土ものには珍しいと思いました。側面には波文様のような彫文様。彫に白化粧ということで技法的には三島手のような感じかと思いきや、現川(うつつがわ)焼にこのような技法があるということで、彫に見えたのは刷毛による文様かも知れません。

津屋崎陶片ミュージアム土もの高台

↑黒っぽい釉薬がかかっています。釉薬をかけたあと、高台際をきれいに剝いだようで、きっちりと色が分かれています。写真はやや白っぽく映っていますが、いかにも粘土っぽい赤い土です。高台なかに見えるヒビは、残念ながら器の内側まで入っていますので、使うと水漏れしたでしょう。碗全体が割れるには至らなかったようです。

津屋崎陶片ミュージアム土もの高台

↑土の感じ、釉薬の感じから、萩っぽいですね。キッチリと仕上げられた高台です。上の二つと異なり、釉薬は流れるまま。釉薬のかけ方ひとつとっても、違いが見て取れて面白いのです。

 

土もののうつわ、これまでにも唐津系の燈明皿の類をご紹介しています(^^)

津屋崎陶片ミュージアム:H29041901明かりの道具

津屋崎陶片ミュージアム:H290331001~明りの道具(ひょう燭)。

 

お豆腐屋さん発見!

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。お豆腐は撮る前に食べてしまったため写真は炒り大豆ですが‥

お豆腐屋さん発見!

ごく個人的な話ですが、生まれてから今までに暮らした場所が10市町村になります。暮らす場所が変わるごとの楽しみのひとつに、「その場所でのおいしいお店を見つける」があります。

旅行先でおいしいものを探すのと少し違って、生活のなかで通いたいお店を見つけるのは、ガイド本をめくってガツガツ探すというような感じではなく、ご近所さんとの会話のなかで教えてもらったり、お友達のお宅に招かれた食卓で出会ったり、通りがかりに偶然見つけたりということが多いです。

福岡県の津屋崎に越してきて6年目。つい先日、お友達からの紹介で、とうとう「ここ!」といえるお豆腐屋さんが、隣町に見つかりました。

津屋崎に来る前の佐賀県花祭は、近くに高品質な大豆の収穫を誇る白石町があり、その白石町にあるお豆腐屋さんが、ほんっとうにおいしかったのです。息子が2~3歳のころから、そのお店でお豆腐や厚揚げを買っては、店先でなにもつけずにたいらげていて、お豆腐を作っている親父さんがとても喜んで、揚げたてのがんもどきを息子に「おやつ」とサービスしてくれていました。

そんなにおいしいお豆腐屋さんの記憶があるので、「おいしいお豆腐」はみつけても、白石のお豆腐屋さんに匹敵する味を見つけることができずにいたところが、6年目にして出会えたことに感激です。

おいしいお豆腐屋さんがある幸せです(^^)

 

2017年上半期読書ベスト5。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。早いものでもうすぐ2017年も折り返し地点。ということで今回は、ふじゆり的2017上半期読書ベスト5。

2017年上半期読書ベスト5。

第5位 ハムレット

今さらのシェイクスピア。先日読んだばかりですが、まだその余韻が残り、たびたびページを開いています。言葉の面白さ、言葉遊びの知性を見せつけられました。久しぶりに演劇が観たくなってきました。

第4位 最強の読み方

視野の広げ方を考えさせられた本でした。新聞・本・雑誌・インターネット、それぞれの媒体をそれぞれの特色を理解してどのように活用していくか。佐藤優氏と池上彰氏のやり方を、ほんの少しでも自分のやり方に採り入れていくことができれば、世界の見え方が今と変わってくると理解できる本でした。

第3位 会話もメールも英語は3語で伝わります

ロンドン訪問を前に4月に手に入れた本。振り返ってみるとブログには書いていませんでした。テレビなどでも紹介された人気本らしく、英語で「伝える」ための考え方をわかりやすく紐解いてくれています。この本に書かれていることをしっかり押さえれば、もっと気楽で伝わる英語でのコミュニケーションが実現できそうです。

第2位 世界全史「35の鍵」で身につく一生モノの歴史力

世界史を学びなおしたいと思ったときに見つけた、わたしに必要なのはまさにこの本!でした。お話として面白かったので、どんどん読み進めることができたのが第一の魅力。世界史の流れと地理の変遷がこの1冊に納められているので、読後も他の本を読んで歴史的背景を確認したいときなどに、辞書的な使い方もしています。

第1位 楽園のカンヴァス

堂々の2017上半期第1位は、原田マハ『楽園のカンヴァス』。ずいぶん前に読んだような気になっていましたが、原田マハさんの著書を読みはじめたのは今年に入ってからのことだったのでした。下手な指南書よりも、絵画・芸術に対する鑑賞の興味をかきたててくれる本だと思います。


小説、ノウハウ本、教科書、戯曲と、我ながら面白い顔ぶれになりました。下半期もどんな本に出合えるか、楽しみです(^^)

 

藤吉憲典公式サイト更新中。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

藤吉憲典公式サイト更新中。

藤吉憲典公式サイト

磁器作家・藤吉憲典(ふじよしけんすけ)の公式サイトでは、制作した作品を定期的に更新しています。

https://fujiyoshikensuke.com/artwork/

しばらく更新できていなかったのですが、ここ数日でやっと2017年に入ってからの制作分をアップすることができました。既に売れてしまっているものも多いですが、よかったらぜひご覧くださいませ。

 

熊本SUNNYで蕎麦猪口と小皿豆皿展。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

今年もこの季節がやってきました。

熊本SUNNYで蕎麦猪口と小皿豆皿展。

来週末、7月1日(土)から開催です。

熊本にあるビストロ&バーSUNNYの周年記念に合わせて開催されてきた藤吉憲典の蕎麦猪口展。今年2017年は4年目になり、蕎麦猪口に加えて、小皿豆皿もお持ちいたします。

昨年は4月の大きな地震の後、まだ余震が続くなかでしたが、3周年の蕎麦猪口展を開催することができました。だからこそ、今年またこの場所で開催していただけることは、嬉しさもひとしおなのです。

同じ場所で、同じ季節にご覧いただくことで「毎年ひとつづつ気に入ったものを揃えていく」ことを楽しみにしてくださるお客さまがおられることに、感謝しています。

営業時間が18-26時と普段ギャラリーではなかなか見ることのできない時間帯。水・土・日はランチ営業もあるので、お昼からもご覧いただくことができます。いずれにしても、おいしいお料理とお酒を楽しみながらご覧いただけるのが、SUNNYならではの愉しみです(^^)


藤吉憲典 蕎麦猪口小皿豆皿展

2017.7/1-7/9
Bistrot & Bar SUNNY
http://sunny-bistrot.com/

熊本市中央区水道町4-39-2F
TEL096-355-4188

<営業時間>
火・木・金18-26時
水・土・日13⁻16時/18-26時
月曜日定休

津屋崎陶片ミュージアム:H290620青磁いろいろ。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

日々増え続ける津屋崎陶片ミュージアムの陶片。本日は青磁です。

津屋崎陶片ミュージアム:青磁いろいろ。

そういえば、このブログで一番最初にご紹介したのも、青磁でした。

津屋崎陶片ミュージアム~宋の青磁~H260614001

中国は宋の時代(12-13世紀)の青磁の数々。宋の貿易商人が持ち込んだ輸入磁器と見られています。

ひとことで青磁といっても、その青の色もいろいろ。彫りこまれた文様もいろいろ。その一端を垣間見ていただけるかなと思い、並べてみました。

津屋崎陶片ミュージアム青磁

青磁というのは青磁釉と呼ばれる釉薬(ゆうやく)をかけて焼成された磁器です。磁器では、ロクロなどで形をつくったのち素焼をし、下絵付(染付)や彫りによって文様を入れ、ガラス質に焼きあがる釉薬をかけて本窯焼成して出来上がります。(赤絵(上絵)のついたものは、このあとにさらに絵付があり、赤絵窯で焼成します。)

津屋崎陶片ミュージアム青磁

同じ釉薬でも、釉薬のかかり方、厚みによって色の出方・文様の出方がかなり変わってきます陶片の良さは、割れているゆえに断面を観ることができること。「けっこうたっぷり釉薬がかかっているね」などと言いながら、このように磁器の生地の表面にガラス質の青磁釉がかかっている様子を見ることができるのも、大きな楽しみのひとつです。

 

企業秘密はありません。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

花祭窯に企業秘密はありません。

佐賀・花祭に工房を構えていた時は、有田の磁器の窯元に勤める後輩などがときどき「つくり方」のヒントを求めて足を運んでくることがありました。福岡・津屋崎に越してきてからは、そういう機会もずいぶん減ってしまいましたが、それでもたまに、やきものを仕事になさっている方がお見えになることがあります。福岡に来てからは、土ものをなさっている方が多いです。

器の触り方を拝見していると、なにも聞かずとも「この方はやきものの仕事をなさっているな」とわかることが多々あります。面白いことに、趣味でなさっている方と、プロとして仕事でなさっている方とでは、触り方が違ってくるのです。不思議ですね。

さてつい先日も、仕事でなさっているらしい方がお見えになったそうで(わたしは不在でした)、いろいろと「作っていて上手くいかないこと」を話していかれたそうです。そこでダンナ・藤吉憲典が経験上わかることを、具体的な技術含めてすべて説明したところ、とてもビックリなさったとか。

「そういうのって、話しちゃっていいんですか?」とおたずねになったそうですが、真剣にやきものに取り組んでいる方、真面目にもっといいものをつくりたいと思っている方に対して技術をお伝えすることに、ダメな理由はありません。

作陶の技術的なことだけでなく、それ以外のことについても同様です。一生懸命学ぶ気持ちを持っている人が「知らなかったからできなかった」ことを、自分たちが説明することで出来るようになるなら、そこで立ち止まる必要はないというのが、ダンナもわたしも共通の考え方です。

そして、わたしたち自身もまた、そういう先人の方々のご厚意でこれまでずいぶん助けられてきています。自分たちが真剣に向上したいと思って取り組んでいることを理解してくださる方は、たいていは親切に教えてくださいます。だから、わたしたちもそうありたいと思っています。

 

津屋崎陶片ミュージアム:H290619唐草の鶴首。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

津屋崎陶片ミュージアム:唐草の鶴首。

「つるくび」と呼ばれる、細首の瓶。その首から口部分の陶片です。用途は徳利のような注器でしょうか、一輪挿しでしょうか。

津屋崎陶片ミュージアム

津屋崎陶片ミュージアム

口の際までしっかり丁寧に蛸唐草が描かれており、おそらく下の部分にもきれいに蛸唐草が描かれていたのだろうな、と思われます。

このように器の外面全体にほとんど余白が無い状態にまで文様を描く描き方を「埋詰(うめつめ)」というのだそうです。(九州陶磁文化館 柴田コレクションⅥより)

埋詰の技法は比較的初期の古伊万里から続いているということで、その文様のつけ方で時代を見極めるのは難しいのですが、「柴田コレクションⅥ」に1700~1740年代の同様の「染付唐草詰文細首瓶」が載っていました。

唐草の描き方、線の太さがよく似ていて、もしかしたら同時代のものかしら、と。ところがこの図録に載っているものは、鶴首の途中で唐草が終わっています。

こんなふうに共通点・相違点を探しながら陶片の由来をイメージするのも、つくり手ではないわたしの陶片の楽しみ方のひとつです。

 

津屋崎陶片ミュージアム:H290616なまやけ。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

津屋崎陶片ミュージアム:なまやけ。

漢字で書くと「生焼け」。つまり、ちゃんと焼成できていなかったもの、ですね。

津屋崎陶片ミュージアム

見込に山水文を描いた皿でしょうか。あるいは浅めの小鉢。絵がずいぶんと簡略化されています。素朴と言えば素朴ですが。裏には文様がまったくなく、銘もついていません。量産品だったのかしらと思われます。

最初、土ものかな、と思いました。色合いとニュウ(ヒビ)の入り方が、萩っぽいなぁ、と。でも、絵付は伊万里っぽい。で、どうやら磁器の生焼けかな?と。

磁器を窯で焚くときに、酸化焼成と高温での還元焼成という方法があります。「生焼け」は酸化焼成で焼いた場合にでやすいのだそうです。他にも呉須の青色が鮮やかに明るい色に上がる、生地がやや黄味がかった色合いになる、などが酸化焼成した場合の特徴としてありますが、いずれも焼成温度が低かったり、時間が短かったりと、しっかり焼けていないときにあらわれやすい特徴なのだそうです。

ちなみに還元焼成をすると、より硬質な磁器に焼きあがります。花祭窯では、本窯焼成は必ず還元をかけています(^^)

 

津屋崎陶片ミュージアム:H290615蓋ものいろいろ。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

津屋崎陶片ミュージアム:蓋ものいろいろ。

江戸中期~後期の蓋ものの、蓋。

家庭の料理で「蓋もの」を使って出す機会がどんどん減ってきている昨今です。が、こういうものを見ると、やっぱり蓋ものいいな、かわいいな、と思うわけです。

津屋崎陶片ミュージアム

写真向かって右側は、瓢箪(ひょうたん)の実と蔓(つる)、葉っぱがいい感じに描かれています。蓋ものに限らず古伊万里によく見る文様の題材です。ひっくり返して内側を見ると、口縁部は墨弾きで○×。見込は瓢箪の蔓を描いているようです。全体にやわらかい筆遣いで、なんとなくユーモアも感じる文様の組み合わせが魅力的ですね。文様がきちんと丁寧に描かれていることから、江戸中期のものではないかと推測。

津屋崎陶片ミュージアム

一方左側は、間取に獣面の組み合わせでしょうか。間取の窓のなかに描かれているのは山水(さんすい)文が簡略化されたもののようにもみえます。つくり手・藤吉憲典の解釈は、龍の文様にいろいろと装飾がついたものではないかと。年代別文様事典を見ていると「唐花」とされている文様にも似ているようです。

こちらはひっくり返すと口縁部の縁地文に雷文様と呼ばれる卍の変形のような地文、見込には松竹梅。地文も松竹梅もかなり崩れてしまっていますが(^^;)外側の文様と内側の文様とで、ずいぶんと雰囲気が異なる器です。

表も裏も、職人さんによって、文様から文様へと意味を考えずに描き継がれているうちに、原形をとどめず訳が分からなくなっている状態、というのが一番正しい解釈かも知れません。たくさん描きこんであって面白くはありますが、雑な絵付だとやっぱり少し残念です。こちらは「雷文様」と粗雑な絵付から、江戸後期かなぁ、と推測。

津屋崎陶片ミュージアム

こういう、仕事ぶりまでもイメージできる楽しさがまた、陶片の面白さです。