読書『新・リア王(上・下)』(新潮社)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『新・リア王(上・下)』(新潮社)

高村薫さん。『晴子情歌』を読んだあとで、あのボリュームを自分のなかで消化するのに休憩が必要かと思っていましたが、早く読みたい気持ちが勝ちました。これぞ本の力ですね。現在、上巻を読み終わり、下巻に入ったところです。

描かれているのは『晴子情歌』の登場人物のその後です。が、単純に続きということではなく。このようなかたちで続きを書くことを最初から考えていたわけではなかったと、高村さんもおっしゃっていたようです。

そうなると気になるのは「何が、このようなかたちで続きを書くことを後押ししたのか」です。おそらく、ご本人へのインタビューなどで理由が語られていると思うのですが、現時点でわたしはそれが何かを知らないので、その「何」を自分なりに推測してみるのもいいかな、と思いつつの読書でした。

1970年代から80年代の国政を駆けた地方選出代議士たる父と、禅僧となったその外腹の息子の、対話というか語りで綴られる871ページ。わたし自身にとって、自分が生まれてから成人するまでと重なる、その時代の移り変わりを知る機会となりました。政治家の名前も、政治的キーワードも、聞き覚えのあるものが少なからず、当時は聞き流していたそれぞれの持つ重みが今になって感じられました。

小説の中で語られる舞台となる高度成長期70-80年代。高村薫さんの書く小説が変わったとされるのは、1995年以降。『新・リア王』の出版は2005年。多くの日本人の価値観が変わったと言われた、2011年以降。そして今2020年。地方と中央、政治家・官僚・市民。なにか変わったのか、どう変わるべきなのか、ほんとうに変わり得るのか、考えさせられつつ読み進めています。

ハードカバー版の表紙は、上下巻それぞれにレンブラントによる老人を描いた絵が用いられています。人生の黄昏を感じさせる陰影が、小説タイトルに重なります。

海外美術館の教育普及ツール、その6。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

海外美術館の教育普及ツール、その6。

内容が充実しているといわれる、海外美術館サイトのエデュケーションツール。海外美術館サイトから、実際に自分で試してみたものを、その都度ご紹介して参ります。その第6弾。調べるほどに楽しくなってきました。

さて今回は、ヴィクトリアアンドアルバート博物館(以下、V&A)。膨大な資料数を誇るV&AのコレクションをWeb鑑賞して参りましょう。おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさがあります。

From The Collections

↑「SPACES」「PERIODS AND STYLES」「PEOPLE」「FEATURED」「MATERIALS AND TECHNIQUES」「PLACES」 と6つのカテゴリーから、コレクションにアプローチすることができます。

どこから行けばよいか迷う!というときは、V&Aの特色から探す「FEATURED」から見てみましょう。「ウェディングドレス」「衣装」「メガネ」「オペラ」「靴」「家具」「壁紙」「額装」「帽子」などなど…の分類から、所蔵品を観に行くことができます。

カテゴリーを簡単に日本語にすると、「SPACES」は、V&A館内の場所による分類、「PERIODS AND STYLES」は作品の時代や流派による分類、「PEOPLE」は人物による分類、「MATERIALS AND TECHNIQUES」は素材や技法による分類、「PLACES」はその資料のルーツのあるエリアによる分類です。

実際に館を訪問してもそうなのですが、なにしろ芸術・デザイン全般ですので、守備範囲が広く、一日や二日で回れるものではありません。そんな大量の資料を、どう分類すればWeb上で探しやすいか、かなり工夫されていると思います。

海外美術館の教育普及ツール、その5。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

海外美術館の教育普及ツール、その5。

内容が充実しているといわれる、海外美術館サイトのエデュケーションツール。そのなかから、実際に自分で試してみたものを、その都度ご紹介して参ります。その第5弾。

昨日に引き続き、ロンドンのコートールド・ギャラリー(The Courtauld Institute of Art)のサイトからご紹介します。写真は、コートールド・ギャラリーのある建物サマセットハウス。ここから建物をぐるりと回った反対側に、ギャラリーへの入り口があります。

The Courtauld Collection

↑コートールド・ギャラリーの所蔵品を見ることができる「コレクション」へのアクセスページです。

「Highlights of The Collection」では、館がおススメする21作品が取り上げられています。何から見ようか迷ったときは、ここから順番に参りましょう。モネ、ゴッホ、ゴーギャン…とお馴染みの名前が並ぶのも、とっつきやすくて嬉しいですね。

「Paintings」「Prints and Drawings」「Sculptures and Decorative Arts」と、分野別のページもあるので、見たいものがはっきりしている人は、こちらから入っていっても好いと思います。紹介されている所蔵品すべてを見ようとすれば膨大な時間がかかりますから、「どこから入って何を見るか」は、サイト上でも悩ましいところです。

コレクションページでは、その作品写真だけでなく、その作品や作者にまつわる文字情報も一緒に載っています。が、文字情報(知識)に頼らず、自分の感性で作品そのものをじっくり眺めるのも、わたし個人的にはおススメです。

海外美術館の教育普及ツール、その4。

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海外美術館の教育普及ツール、その4。

内容が充実しているといわれる、海外美術館サイトのエデュケーションツール。そのなかから、実際に自分で試してみたものを、その都度ご紹介して参ります。その第4弾。

本日取り上げるのは、ロンドンのコートールド・ギャラリー(The Courtauld Institute of Art)のサイト。「コートールド美術館展」は、2019年秋から今年2020年にかけて、東京・愛知・神戸と巡回しているところでしたが、神戸がまだ開幕未定の状態です。

コートールド研究所は、芸術と建築の歴史・保存を研究する専修大学で、ロンドン大学の付属研究機関とされています。その研究所に付属した美術館は、それほど広くはありませんが、特に印象派の作品をじっくり見ることができるとあって人気です。建物もとっても素敵です。

コートールドギャラリー

そもそもコート―ルド研究所が学術機関であり教育機関ですので、ウェブサイトで紹介されているラーニングツールも非常に充実しています。豊富で充実したコンテンツのなかから、より簡単に楽しめそうなものをご紹介。

Explore The Courtauld

↑直訳すると「コート―ルド探検」。鑑賞教育の第一歩は「美術館探検」から始まります。そのままのタイトルで、思わず嬉しくなりました。

このなかでも、バーチャルなビジュアルツアーを体験できる「Explore the Gallery」コーナー、コートールドギャラリー館内の説明や所蔵絵画についての解説など豊富な動画が揃った「Watch our films」(YouTubeチャンネル)が、特におすすめです。Watch our filmsにアップされている動画は、すべて英語解説ではありますが、ほとんどに英語字幕がついていますので、比較的意味を拾いやすいです。

神戸での展覧会の開幕を楽しみにしつつ、ご覧になってはいかがでしょうか。

ご近所さん。

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ご近所さん。

に、支えられています。写真は、昨日ご近所さんからお裾分けいただいた、タケノコ。

「タケノコ要るね?」と言われ、「はい!食べます!欲しいです!」と答えたら、土間にタケノコが。我が家で茹でるタケノコは、これが初もの。「そろそろタケノコ出始めてるよね」と話していた矢先で、感激至極。

そろそろ散りはじめの桜も、我が家の裏手のご近所さんの桜を堪能いたしました。例年愉しみなのですが、今年は咲きはじめてから強風や雨の日が少なかったので、いつにも増して眼福の日々。

ご近所さんの桜

玄関前を掃除しようと出てみれば、葉っぱ一枚落ちていないこともあって、「ああ、うちの方まで掃除してくださったんだ」とありがたくなること多々。家の前にある駐車場では、気がつけばご利用者のお一人がいつも草刈りを済ませてくださっています。

向こう三軒両隣。それ以上のご近所さんたちにさりげなく支えられていることをあらためて実感する今日この頃です。

海外美術館の教育普及ツール、その3。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

海外美術館の教育普及ツール、その3。

内容が充実しているといわれる、海外美術館サイトのエデュケーションツール。そのなかから、実際に自分で試してみたものを、その都度ご紹介して参ります。その第3弾。

海外美術館の教育普及ツールその1その2と、USワシントンのナショナルミュージアムが続いたので、今回はUK、ロンドンのナショナルギャラリーのサイトから収蔵作品のページをご紹介したいと思います。特に「教育普及ツール」と位置付けられているページではありませんが、鑑賞教育に使えるコンテンツです。

2020年度予定の日本国内の特別展でも一番注目を集めていたであろう、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展。現在、国立西洋美術館での展覧会は開幕延期中で、その後予定されている大阪への巡回も含め、詳細不確定な状況です。こんなときは、本物を目の前で見ることを楽しみにしつつ、作品の予習をするというのはいかがでしょうか。

Highlights from the collection

↑ロンドン・ナショナル・ギャラリーの所蔵品の中から「must – see paintings」30点が紹介されています。「must – see」=「絶対見なきゃ!」といったところでしょうか。実際に美術館を訪問する時もそうですが、「どこから見たらいいかしら」と迷うときは、まずはその館のお薦めからスタートするのが一番。

画面で見たい絵をクリックすると、ひとつひとつをじっくり見ることができます。絵に近づいたり離れたりできるので、全体を見たり細かいところを見たり。同じ作者の別の作品も所蔵している場合、その絵が一緒に紹介してあります。また作者紹介のページへのリンクも貼ってあります。

画面上部にはその絵画のタイトルや作者名、サイズや技法、描かれた時代などの要素がわかる「Key facts」、絵画の内容理解を促す解説文の「Description」といったメニューがあり、「知りたい!」と思ったときに便利です。全文英語ではありますが、レッツチャレンジ。

Search the hole collection

↑具体的に、タイトルがわかっていたり、作者名がわかっていたりと、目的の絵がある場合には、こちらから探すことができます。2600点以上の絵画がこのように探せるようになっているのが、嬉しいですね。

今、日本に来ているロンドン・ナショナル・ギャラリー展の出品リスト↓と照らし合わせて、事前チェックしてみるのも面白いと思います。

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展出品リストPDF(国立西洋美術館サイトより)

四月になったので。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

四月になったので。

新年度。本日、近所の小中学校は任意登校での始業式です。そしてまた引き続き約一カ月の臨時休校。式典に参加してもしなくても、進学・進級おめでとう!の季節であることには変わりありません。

三月のあいだ花祭窯の飾り棚を彩ってくれたお雛様香合も、また来年の出番までお仕舞いです。さて四月は何を飾ろうかと考えて、目についたのが、今年の干支の置きもの「子(ね)」。お正月にも飾っておりましたが、新年度スタート!に合わせて再登場してもらうことにいたしました。

少々難ありで我が家用となった二匹を向かい合わせに並べたら、好い感じになりました。藤吉憲典のつくった2020年版の「子(ね)」は、稲穂を抱えています。写真の腕が今ひとつで、ぼんやりした感じに見えますが、実物はもっと可愛いです(笑)

干支では「はじまり」を意味し、五穀豊穣や子孫繁栄の象徴としても、喜ばれるねずみ。世界中の笑顔と安心を願いつつ。

Zoomことはじめ。

※2020年4月8日追記:Zoomのセキュリティ問題について、親しい友人からのアドバイスがあり、現時点で利用を見合わせております。安心して使えるようになるのを楽しみにしているところです。

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Zoomことはじめ。

このご時世で、存在感が増しつつあるクラウドサービスのひとつ「Zoom」。簡単に言えば、Web会議システムというのでしょうか。お友だちとのやりとりでも名前が出てくることが日に日に増え、そろそろ試しておきたいな、と思っていたところでした。

そんなタイミングで、お世話になっている英会話スクールから、通常の通学クラスにZoomでも参加できるようにします!と連絡がありました。昨今の状況に配慮しての素早い対応に感謝です。試してみるチャンスですので、さっそく4月のクラスからZoomでの参加に切り替えることにしました。

つい先日がその最初の日でしたが、思いのほか首尾よくいきました。まずはやってみる、ですね。不備は後から直していくこととして。そういえば、数年前にスカイプを利用した中国語講座を中国の大学生から習ったことがありましたが、そのときもドキドキしながら繋いだのでした。

実際に使ってみて、おお!と思ったのは「バーチャル背景」なる仕組み。カメラに写り込んでしまう背景を目隠しするために、画像を使うことができるのです。わたしは自分の仕事場でZoomを使ったので、ぜひとも室内の乱雑さを隠したいと思い、バーチャル背景の設定にチャレンジしてみました。

これも実際やってみると、チャレンジというほど難しくもなかったです。背景画像を設定できるとなると、ちょっと遊び心もわいてきます。旅行に行ったときの風景写真や、近所の海など、気分で使い分けるといっそう楽しくなりそうです。上の写真は、バーチャル背景に使った、津屋崎の海の画像。

ともあれ、わたしはスタートしたばかり。これからいろいろな可能性を見出していけるといいな、と思います。

※2020年4月8日追記:Zoomのセキュリティ問題について、親しい友人からのアドバイスがあり、現時点で利用を見合わせております。安心して使えるようになるのを楽しみにしているところです。

海外美術館の教育普及ツール、その2。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

海外美術館の教育普及ツール、その2。

写真は、今が満開のご近所の桜。今日のブログの内容とは関係ありません^^

内容が充実しているといわれる、海外美術館サイトのエデュケーションツール。そのなかから、実際に自分で試してみたものを、その都度ご紹介していきたいと思います。その第2弾。

今回試してみたのは、引き続きNational Gallery of Art, Washingtonのビデオプログラムから、Exhibitionコーナーのビデオ前回ご紹介したKid’sプログラムでウォーミングアップしたあとは、少し長めの美術鑑賞にチャレンジです。

このコーナーにも約50のビデオが紹介されています。わたしもまだ全部に目を通したわけではありませんが、「見るだけでも楽しい」という意味では、National Gallery of Art, Washingtonのビデオプログラムのなかでは、Kid’sプログラムに次ぐとっつきやすさだと思います。

こちらは一般向けのプログラムになりますので、話される英語のスピードも内容も、一般向けのレベルになってきます。それでも、映像に合わせて比較的短いセンテンスが多いのに加え、すべてに英語字幕が入っているので、助かります。わたしは音声と文字とで意味を拾っていくことで、なんとなく理解できるかなぁ、という感じ。ただ「英語」に引っ張られてしまうと「鑑賞」への集中は削がれてしまいますね(笑)。逆に、美術鑑賞を利用して英語を学ぶ、というスタンスの方には最適だと思います。

Exhibitionコーナーというだけあって、展覧会での鑑賞をサポートするような映像のつくり方だと感じました。わたし個人的には、英語の意味を考えず映像だけで楽しめるものも少なくありませんでした。また、内容は展覧会のテーマによるので、絵画や彫刻といった美術作品だけではなく、取り上げられているテーマが様々なのも興味深く。なかにはアポロ11号のミッションをテーマとしたものなどもあります。

National Gallery of Art, Washingtonのビデオプログラムから、Exhibitionコーナーのビデオ

興味が湧いたら、のぞいてみてくださいね!

海外美術館の教育普及ツール、その1。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

海外美術館の教育普及ツール、その1。

前々からチェックしたいと思っていた、海外美術館のエデュケーションツール。これまでにもこのブログで何回かご紹介している『英語でアート』の宮本由紀先生が、その著書内でエデュケーションにお薦めの美術館サイトをご紹介くださっています。

そのなかから、実際に自分で試してみたものを、少しづつご紹介していきたいと思います。その一発目。

その1:National Gallery of Art, Washingtonの、Kid’s用ビデオ

所蔵品のなかから、50点の絵画がピックアップされていて、子ども向けに音声解説がついています。解説はすべて英語なのですが、わたしが最初に子ども向けを選んだ理由は、自分自身の英語レベルでも比較的聞き取りやすいから。

絵画なのでもちろん絵自体は動きません(部分的にCGで動かしているものもありましたが)。でも、カメラ=視線・視点を動かしながら解説することで、絵画鑑賞の要である「絵をよく見る」への集中が促されます。1本=1作のビデオの時間は、ほぼ3分以内。長いものでも3分半ぐらいですので、集中力を持続できます。

作者名を見れば、ドガ、ラファエロ、マネ、モネ、レオナルドダヴィンチ、ゴッホ、ルーベンス、セザンヌなどなど、よく聞く名前も多く並んでいます。なんか聞いたことある名前だな、という絵から見てみてもいいし、メニューの絵を観て惹かれるものから見てみてもいいし。

興味が湧いたら、ぜひ試してみてくださいね♪

National Gallery of Art, Washingtonの、Kid’s用ビデオ