こんにちは。ふじゆりです。
と語ってまいりましたが、その最終回(の予定)。
蕎麦猪口にすっかり魅入られた理由、それは
蕎麦猪口の文様
江戸時代につくられた蕎麦猪口の文様の種類が数千にも及ぶという話を聞いて、
「ひとつの形状にそんなにたくさんのデザインが実現するなんてすごい!」と感動したのが最初です。
骨董品や、その破片(陶片)、写真で見る資料に残っている文様の豊かさは見ていて楽しく、
なるほど骨董の蕎麦猪口を蒐集する方の気持ちがわかります。
草花、動物、干支、昆虫、爬虫類、幾何学文、文字、人物、山水、気象などなど
文様の題材にならないものは無いと思えるくらいに、デザインの宝庫です。
日本へのやきもの伝来のルーツとなる中国大陸・朝鮮半島の影響はもちろん、
インドペルシャ文化の流れを感じさせるもの、仏教文化に根ざしたものもたくさん。
そのうえに、日本独自の文化や環境が生んだ文様も加わっています。
身近で素朴な草花や四季を感じる風物の描写は、当時の陶工の周りにあった
豊かな自然を思わせます。
またおめでたい吉祥文様は、中国のやきものにも好まれて描かれていますが、
江戸の時代を反映した縁起担ぎ・駄洒落の効いたものもあり、
文様から日本の風俗文化を感じるものです。
蕎麦猪口という限られた形状に広がる文様の世界。
その面白さにすっかり取り込まれています。
こんな蕎麦猪口の文様の楽しさをもっと知りたい方へのおすすめ本は
「年代別蕎麦猪口大事典」です。
監修の大橋康二さんは、佐賀県立九州陶磁文化館名誉顧問。
九州陶磁文化館といえば、肥前磁器の研究・所蔵が素晴らしく、
特に柴田夫妻コレクションはその数も内容も秀逸で
藤吉憲典が最も勉強をさせていただいた場所。
やきものを志す方には、ぜひ通って欲しい美術館です。