こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『青いパステル画の男』(新潮社)アントワーヌ・ローラン著/吉田洋之訳
いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。タイトルのリズムと装丁になんだか親しみを感じて、手に取りました。家についてページをめくり、なるほどその理由が判明、昨年読んだ『赤いモレスキンの女』と同じ作者でした。
出版社も訳者も同じということで、既視感があったのですね。
本書『青いパステル画の男』もまた「大人のおとぎ話」と評されています。骨董収集が趣味の男が巻き込まれる不思議な物語。新潮社の本書紹介サイトで、骨董に造詣の深い青柳龍太氏が書評を書いています。とても興味深いので、ぜひ読んで欲しい書評です。本書内、主人公がパリのオークションハウスで「青いパステル画」を競り落とすシーンは、とても切実に描かれていました。そんな象徴的なシーンを中心に、骨董収集に取りつかれた人が陥る悲喜こもごもがとても人間的で、悲しくも面白いのです。
個人的には、主人公が影響を受けた、骨董蒐集家であった伯父の言葉が、とても響きました。いわく「もし君が本物のコレクターになりたいなら、知っておかなきゃいけないことがある。オブジェ、本物のオブジェは、持っていた人の記憶を抱えているということ」(『青いパステル画の男』より)。このセリフは、現代においてアートオブジェを世に出している作家側の人間として、わたしに重く響きました。「本物のオブジェが、持っていた人の記憶を抱えている」ということは、「持っていた人の記憶を抱える力を持っていないオブジェは、本物とは言えない」ということだからです。それが「オブジェに魂がある」ということならば、まさにその通りだと思いました。
このように、自分自身の仕事とのつながりから考えさせられることもあり、とても面白い読書となりました。