読書『写楽女(しゃらくめ)』(角川春樹事務所)森明日香 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『写楽女(しゃらくめ)』(角川春樹事務所)森明日香 著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚で見つけた本。このところ時代ものを手に取る頻度が増しています。意図して探しているわけではないので、わたしのなかでそのようなタイミングなのでしょう。本書もまた江戸時代の江戸を舞台とした物語。

ご存じ江戸の浮世絵師・東洲斎写楽。正体不明だということは、知識としてぼんやり頭にありましたが、もともと絵を見るときに「誰が描いたか」を気にしない性質なので、さして深く考えたことはありませんでした。本書では諸説ある「写楽は誰か?」のなかのひとつを物語に仕立てています。

面白かったです。もちろんフィクションですが、物語の中に出てくる名前を並べてみると、写楽・歌麿・北斎・豊国・広重と、なんとも豪華ラインナップ。なるほど、こんな時代があって、そのなかからこれらの絵師が生まれてきたのだなぁ、と思いながら読みました。時代の雰囲気を知るという意味では、史実を学術的に学ぶよりも、小説のなかで読んでいく方がやはりわかりやすいな、と思います。

シビアさを含んだストーリーでもありながら、全体に流れる温かさがあって、安心して読み進めることが出来ました。主人公が老後に幼馴染と再会するシーンが、とても良かったです。天才ではない(と自認する)人、世渡りを上手くできない人が作品を世に認められるには、とにかく長生きして努力し続け、自分を信じて作品を生み続けることしかないということが、嬉しく伝わってきました。江戸時代だろうと現代だろうと、やっぱり、そうなんだな、と。

読了後、さっそく我が家にある「写楽」の画集を引っ張り出しておさらい。上の写真はその1ページです。この画集は1985年に平凡社から発刊されたものですが、作品の写真がたくさん載っているのはもちろん、合計50ページ以上にわたる論評や対談がついていて、『写楽女』の物語の背景にあるものを理解するのに、役立ちました。このように、書画に関する資料をたくさん遺してくれたお義父さんに感謝。ほんとうに助かります。

『写楽女』登場人物のなかで、わたしが個人的に一番気になったのは、主人公でもなく写楽でもなく、「蔦屋重三郎」でした。地本問屋の「耕書堂」を一代で築いた、いわば絵師や作家(小説家)たちのパトロンでありキュレーター的な存在。彼についての本もいくつか出ているようですので、ちょっと探してみたいと思いました。

『写楽女(しゃらくめ)』(角川春樹事務所)森明日香 著