読書『我が家の問題』(集英社文庫)奥田英朗著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『我が家の問題』(集英社文庫)奥田英朗著

お友だちのおススメを受けて読んだ奥田英朗氏の小説が面白くて、しばらく追っかけとなりそうです。

今回読んだ『我が家の問題』は、先日読んだ『家族のヒミツ』と並ぶ、家族小説短編集。あとがきによると、本書『我が家の問題』の前にもう一冊『家日和』なる家族ものの短編集があり、本書はその対となる短編集だということで、どちらにも登場する家族があるとのこと。これはもう、次は『家日和』も読まねばなりません。

さて『我が家の問題』。面白かったです。奥田氏の家族ものは、その家族が問題を抱えてはいても、ハッピーエンドとまでは言えなくても、ほっとできる結末が用意されている安心感があるので、読んでいてストレスレスなのです。本書では「サラリーマンの夫」が何人も登場しますが、その夫と妻の関係性が、ある種の時代性を感じるものでもあり、ちょっと懐かしく読みました。

もしかして著者はわたしがサラリーマンをしていた会社にいたことがあるのかもしれない、と思えるような描写がいくつも登場し、なんとなく親近感。あらためて著者の略歴を読み直すと、1959年生まれで雑誌編集者でコピーライターを経ている、ということですから、あるいはこの直感「もしかしたら同じ会社を経験しているかもしれない」は、当たっているかもしれません。もし外れていたとしても、そう共感させる筆力に感心するばかりです。

リアリティがあり、ユーモアがあって、ちょっと涙腺も緩む。上質な娯楽小説です。