こんにちは。花祭窯の番頭役・ふじゆりです。
7月21日(木)まで開催の銀座黒田陶苑さんでの藤吉憲典(ふじよしけんすけ)個展。
原点回帰=肥前磁器の伝統文化をしっかり感じていただくことがテーマになっています。
より深く楽しんでいただくための一助になれば・・・
ということで
↓肥前磁器についてこれまでに書いた記事はこちら↓
○肥前磁器(ひぜんじき)とは?
○染付(そめつけ)・赤絵(あかえ)・染錦(そめにしき)
○古伊万里(こいまり)のこと
○やきものができるまで(磁器の制作工程)・前半
本日は
磁器の制作工程について(後半)
上の写真は絵付に使う筆。
右手に見えている徳利などは、素焼きから上がった状態です。
この素焼きの状態の生地に、下絵付をします。
下絵付け(染付)
素焼きから上がった生地に、呉須(ごす)というコバルトを含む絵の具で絵付をします。
これが染付(そめつけ)の青色になります。
呉須は構成成分の割合によりさまざまな種類があります。
さらに自分好みの青色を出せるかどうかは、呉須の種類だけでなく、
陶土・釉薬・焼成方法などの条件の組み合せによっても変わってきます。
施釉
下絵をつけ終わった生地に釉薬(ゆうやく)をかけて、本窯焼成をします。
釉薬もまた、たくさんの種類があります。藤吉憲典は柞灰釉(いすばいゆう)を使っています。
柞灰釉は柞の木からつくった木灰を原料とした釉薬です。
性質が不安定で、呉須との相性や窯の焚き方に左右されやすい釉薬ですが、
独特のやわらかい肌合いを出すことができます。
藤吉憲典にとっては、理想とする古伊万里の雰囲気に最も近づけることの出来る釉薬です。
本窯焼成
藤吉憲典は電気窯を用いています。
現在、磁器制作において主に利用されている窯は、ガス窯や電気窯です。
火の色が景色となる土ものと異なり、
磁器では絵付の美しさを楽しんでいただくのも価値のひとつ。
そのためには薪で焚く窯は不安定すぎ、安定した焼成のできる窯が理想です。
おおよそ24~25時間かけて、最高温度1300度近くまで上げていきます。
途中ガスを入れながら還元焼成をかけます。
電気窯では、時間と温度を管理するプログラムが組み込まれていますが、
その日の気象などによる影響があるため、
温度の上がり具合や窯の内部の様子を確認しながらグラフをつけています。
染付の器は、この窯からあがったら、完成です。
赤絵付け
赤絵・染錦と呼ばれるものは、本窯焼成からあがった器に上絵付け(赤絵付)を施します。
色の種類が多く、赤ひとつとっても多様です。藤吉憲典は特に「赤」「緑」の色選びにこだわっています。
粉状の顔料をよく磨り潰し、水で溶いて絵の具にします。
絵を赤絵窯に入れるまでは、描いた部分に手が触れると消えてしまうため、
繊細な気配りが必要になります。
赤絵窯
赤絵窯では6時間から7時間かけて780度まで温度を上げていきます。
絵の具の種類により気化する温度が変わってくるため、温度を上げすぎないよう注意も必要です。
金やプラチナを使用する場合は、より低い温度での焼成となります。
赤絵窯からあがってきたら、底の仕上げをして、検品してできあがりです。