読書『チャップリン自伝 栄光と波瀾の日々』(新潮文庫)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『チャップリン自伝 栄光と波瀾の日々』(新潮文庫)チャールズ・チャップリン著

チャップリン自伝の後半。前半の読書『チャップリン自伝 若き日々』はこちら。写真はロンドントラファルガー広場。

成功を手に入れてからのチャップリンです。本書の最初の方で、「わたしはあまりにも急に成功を掴んだので、いまだに追いつけないでいるのです。」と話す場面があり、自分自身の「栄光と波瀾の日々」を遠くから眺めているチャップリンの姿を感じました。

前半は、やや冗長です。ハリウッドでの成功=アメリカン・ドリームの体現者としての日々が綴られているのですが、セレブやスキャンダル話には興味のない読者としては、少々退屈を感じました。ただ、業界も国も超えた、その時代の寵児たちとの交流が垣間見られたのは、興味深く。

ともあれ、中盤からラストにかけてが「栄光と波瀾の日々」の読みどころでした。政治に巻き込まれつつ、政治の問題ではなく人間の問題として、口を閉ざさず、正面から向き合った態度に、強さと美しさを感じました。映画『独裁者』での結びの演説の書き起こし文が引用されて載っているのが、必見です。

さいごに、一番心に残った文章をひとつ。

「最近起きた出来事でさえ大幅に歪められてしまうことを考えると、わたしは、歴史そのものに懐疑的になる。その反面、詩的な解釈なら、その時代の全体的な雰囲気を伝えることができる。何といっても芸術作品には、歴史書などよりずっと多くの貴重な事実や詳細が含まれているのだ。」『チャップリン自伝 栄光と波瀾の日々』より。

小説を読んだり、絵画を見たりすることは、その時代を知るための貴重な手がかり。まずはチャップリン作品を腰を据えて見なければと強く思いました。