福津市歴史資料館企画展『埴輪から見た津屋崎古墳群』見て参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

福津市歴史資料館企画展『埴輪から見た津屋崎古墳群』見て参りました。

福津理歴史資料館、正式名称は「福津市複合文化センター歴史資料館」で、歴史資料館・図書館・ホールの複合施設のひとつです。カメリアステージ図書館の1階が歴史資料館で、2階が図書館なので、ふと歴史資料が見たいと思ったときに「ついでに見る」が可能な、素晴らしい立地。企画展は歴史資料館エリアの一角で展示されます。決して広いスペースではありませんが、だからこそ、ピンポイントで学ぶことができます。

令和3年度の企画展テーマが『埴輪から見た津屋崎古墳群』だと聞いて、まず思ったのは「あれ。新原奴山の古墳群からは、埴輪はあんまり出てなかったと思うんだけどな」でした。とはいえ、発掘調査がずっと続いているのも知っていましたので「もしや、新しい発見があったとか!?」と、ワクワク。

展示ケースに寄ってみると、並んでいるのは「円筒埴輪片」ばかり。うん、やっぱりそうよね、と思いつつ、キャプションパネルの解説を拝読。結論としてはやはり、古墳全体として埴輪の出土はとても少なく、出土しているものも小型の円筒片がほとんど。「いかにも埴輪!」という感じのものは見当たりません。これまでにすでに出土しているなかに「馬形」や「人物形」があり、これらは常設展示してありますが、あらたに大きな発見は無いようでした。

それでも、企画展示コーナーの埴輪のひとつに「形象埴輪」と呼ばれる、竹菅の組み合わせによる刺突文様のついたものがあり、思わず「おお!」とテンションが上がりました。文様、絵画的なものが残っている遺物を見ると、ワクワクします。解説に寄れば、熊本県南部にある大型前方後円墳からの出土例にある形象埴輪に、まったく同じ文様があることから、当時の地域間交流が伺えるということでした。

さて『埴輪から見た津屋崎古墳群』企画展資料の解説の結論としては、「宗像地域では埴輪祭祀が流行しなかった!」というものでした。やっぱりそうかぁ…と思いつつ、その結論がわかっていながら、あえてタイトルに『埴輪から見た』と入れるあたり、学芸員さんの「攻める姿勢」が見えて、思わずニンマリ。

15分ほどの短い鑑賞時間でしたが、なんとも充実した時間でした。身近にある世界遺産である古墳について、ゆっくりじっくり思いを馳せることができる、身近な歴史資料館。このコンパクトさが、とっても良いのです。

2021年度学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」第4回。

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2021年度学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」第4回。

2021年度学芸員研修の連続講座4回目。「博物館リンクワーカー人材養成講座」第1~3回の報告は↓こちら↓。

2021年度学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」第1~3回。

第4回目は「認知症高齢者と社会教育施設をつなぐ」のタイトルで、福岡県大牟田市の取り組みを、大牟田市中央地区地域包括支援センターの竹下一樹さんから学びました。地域での連携を考えるうえで、とても心強い取り組み事例。

毎回、各館での取り組みのボトルネックとして出てくる課題に、「横展開」をいかに広げていくかというものがあります。社会教育施設と福祉。それぞれの強みを組み合わせ、連携していく関係性を築いていくには、とにかくコツコツと粘り強く働きかけていくこと。そして人と人とのつながりこそが、キーポイントとなることを確認する時間となりました。

以下、備忘。


  • ○○のために、ではなく、○○とともに。
  • 当事者ミーティング。
  • 本人は、どうしたいのか?どう感じているのか?
  • 横展開。
  • 一人では足を運び難くても、仲間がいることで足を運ぶことができる。
  • 誰かの役に立ちたい、地域のために役立ちたい。
  • 民間との連携=企業戦略としての「高齢者にやさしい街」。
  • 福祉施設側や行政の福祉担当から、受け入れ施設(社会教育施設)に、必要最低限のマニュアル(認知症に対する基礎知識など)を共有する。あるいは研修を受ける。
  • 横のつながり、情報共有。
  • すでにあるそれぞれの活動を、つなげていく。
  • 予防的活用。
  • 誰もがいつかは通る道=当事者。
  • まずは受け入れる。

この連続講座では、毎回講座後半に設けられる「語り場」での意見交換が、とても効いています。昨年の春からZoomを使い始めて、会議や研修など様々な場面で利用してきていますが、この講座でもあらためてその便利さと恩恵を感じています^^

磁器作家 藤吉憲典の挑戦@福岡アジア美術館、まとめ5

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磁器作家 藤吉憲典の挑戦@福岡アジア美術館、まとめ5

「まとめ4」までで、おおむね完了したつもりでおりましたが、展覧会経費としてなにが必要だったのか、書き留めることを失念していました。今回は「開催する」ありきでしたので、必要経費についてあらかじめ細かい予算を考えるではなく、その都度の対応でしたが、本来は開催検討のスタート時点で把握しておくことが大切な要素のひとつですね。

「磁器作家 藤吉憲典の挑戦@福岡アジア美術館、まとめ1」では、アンケート回収結果などから数字的なまとめ、「まとめ2」ではご来場者様の声を抜粋し、「まとめ3」ではいただいたご来場者様の声からの考察をまとめました。「まとめ4」では、起案から会期終了までの全体の流れと、実務的な反省点。そして、この「まとめ5」では 「何に・幾ら」 を出します。

公の美術館の貸し館を利用して展覧会をする場合に、どのような費用が必要になってくるのか。ざっくりとですが、今後開催を検討している方々にも参考になるかもしれません。もっとも「会場費」は開催する地方・場所により大きく異なりますね。他所でやったことがありませんので比較はできませんが、福岡アジア美術館の貸し館の価格設定は、その場所・空間の価値に対して、良心的だと思います。


  • 会場費(福岡アジア美術館8F交流ギャラリー6日間) 74200円
  • フライヤー1印刷 カラー×モノクロ200枚 4092円
  • フライヤー2印刷 カラー×モノクロ200枚 4092円
  • ポスター印刷 A3 3枚、B2 1枚 10054円
  • パンフレット印刷 全ページカラー A4 24頁 60部34045円
  • 受付事務外注(3時間×2日)4000円×2日=8000円
  • コピー代 
  • 事務用品 アンケート用クリップペンシル
  • コロナ対策費 手指消毒液、物品用消毒液、除菌シート、不織布マスク
  • 交通費 駐車場代、高速代、電車&バス代、
  • お礼状(ハガキ、切手)

今回は使わなかったけれど、発生可能性のある費用としては

  • 印刷物のデザイン:見積段階では、チラシ・ポスター・パンフレットすべて込みで8~10万円。
  • キャプションボード等製作:
  • 搬入運搬:

こんな感じでしょうか。上記以外に、通常業務上の経費と切り離し難いものもありますので、厳密なものではありませんが。大きかったのは、会場費と印刷費。いずれも必須のものです。こうして項目を羅列してみると、準備物のチェックリストや、To Doリストとしても使えそうです^^

読書『人間の絆』(新潮文庫)サマセット・モーム

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『人間の絆』(新潮文庫)サマセット・モーム

カメリアステージ図書館の新刊棚に文庫を発見。令和3年11月1日発行となっていました。今更ながらではありますが、名作は何度も文庫で新刊として蘇るのですね。写真は、小説の舞台のひとつであるロンドン、テムズ川。

サマセット・モームの本は『月と6ペンス』を読んで以来です。『月と6ペンス』は、画家ゴーギャンがモデルとされるストーリー。個人的な読後感としては、たしかに衝撃は大きかったものの、「ゴーギャンだから」という前提(わたし自身の思い込み)が、プラスにもマイナスにも働いてしまった感じがしていました。

『人間の絆』は1915年に発表された長編で、自伝的小説とされています。『月と6ペンス』より後に出たのかと思っていましたが、『人間の絆』の方が先でした。分厚い上下巻に引き込まれて、どんどん読みました。ただ、ワクワクしてページをめくるのが楽しいという感じではありません。主人公の劣等感や、それと表裏一体となった自意識過剰、プライドの高さが生む滑稽さ無様さが自分自身と重なり、目を逸らしたいのにできない、という感じ。

モーム=月と6ペンス、という印象でしたが(というか、それしか読んでいませんでしたが)、どうやらモームの代表作と言えば、本書『人間の絆』なのだろうな、と思った読書でした。

読書『ロンドン・ナショナル・ギャラリー・アートコレクション』(COSMIC MOOK)冨田章監修

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

『ロンドン・ナショナル・ギャラリー・アートコレクション』(COSMIC MOOK)冨田章監修

2021年カメリアステージ図書館選書ツアーの選書本から、第一読者としての一冊目は、大好きなロンドンナショナルギャラリーコレクションを紹介・解説したMOOK本。展覧会図録ではありませんが、出版のタイミング的には、2020年から2021年にかけて日本国内で開催された「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」の関連かと。

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」 は、コロナ禍でなんとも難しいなかでの開催でした。行こうと思っていたけれど行けなかった、自粛した、という方々も少なくなかったのではないかと思います。この本を通して、次回の国内展覧会(あるかはわかりませんが)や、現地への訪問に思いを馳せる時間を楽しむのもおすすめです。そういえば、わたしが前回ロンドン・ナショナル・ギャラリーに行ったのは、2年前の今頃でした。美術館前の広場で高所作業車がクリスマスツリーを設置していたのを思い出します。

さて本書。巻頭で「必見」マークを付けた名作を紹介し、そのあと年代別に5章に分けて、各年代ごとの必見コレクションを並べています。絵画の写真に添えられたそれぞれの作品解説が、長すぎず短すぎず、読みやすいです。一枚の絵のなかでも特に注目すべきポイントは、「クローズアップ」としてアップ写真で解説しています。巻末には掲載されている絵画タイトルのインデックスが載っているので、見たいものから逆引きで見ることもできます。

わたしはふだん美術館で絵を見るときは、キャプションをほとんど読みませんので、この本であらかじめ予習していると、また見え方が異なってきそうです。来年あたりはロンドンに行きたいなぁ、と思いつつ。

本書の監修の冨田章さんは、東京ステーションギャラリーの館長さん。そういえば、東京ステーションギャラリーにはまだ一度も足を運んでおりません。東京駅といえば辰野金吾。次回状況の際には必ず訪問したいと思いました。