読書『死にふさわしい罪』(講談社)藤本ひとみ著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『死にふさわしい罪』(講談社)藤本ひとみ著

久しぶり、といっても半年ほどぶりですが、の藤本ひとみ本は、現代もの。昨年までの「一人で勝手に藤本ひとみ祭り」では歴史ものがほとんどでしたので、ちょっと変化球です。こちらもいつものカメリアステージ図書館で発見。

主人公は高校生男子。でしたので、中高生読者向けのシリーズだったかな?失敗したかな?と最初は思いました。でも読んでみたら面白い。登場人物のキャラクターや物語のなかに、たくさんの「藤本ひとみ的エッセンス」すなわちフランス近代史や音楽の要素がちりばめられていました。上の写真は、なんとなく、イメージ。

ジャンルとしてはミステリーなのだと思いますが、主人公の高校生を取り巻く大人が、エリート出世街道の窮屈な道と、そうでない自由な道とを体現していて、自分の将来をどう生きるかを考えさせる仕組みになっています。主人公自身には エリート出世街道を進むための環境が用意されていて、エリートの母や叔父、そしてその母方の兄弟のなかでは落ちこぼれの位置づけの叔父の性格や生き方が、さりげなく対比的に描かれています。つい先日読んだ『実力も運のうち 能力主義は正義か?』で語られていることを彷彿とさせました。

それにしても、主人公の高校生男子の教養博識度合いがすごい。彼のセリフ(心の声も含め)に出てくる知識の凄さに、「ほんとうにこんな高校生いるのかなぁ」と思わせられました。が、わたしが知らないだけで、きっと存在するのでしょうね。

ストーリーも登場人物のキャラクターも、ドラマや映画にしたら面白いだろうな、と思えるものでした。個性の強い登場人物ばかりなので、配役を考えるのがかなり楽しそうです。わたしならまず「元少女漫画家の老女」役を白石加代子さんにお願いしたいなぁ、などと思いつつ。