読書『オリバー・ツイスト 上・下』(角川文庫)チャールズ・ディケンズ著/北川悌二訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『オリバー・ツイスト 上・下』(角川文庫)チャールズ・ディケンズ著/北川悌二訳

東京FMに『メロディアスライブラリー』という、本を紹介するラジオ番組があります。全国のFM局をネットワークして日曜午前10時から放送。佐賀に住んでいた時はほぼ毎週聴いていましたが、津屋崎に越してきてから日曜日にラジオをつけていなかったので、しばらく聞いていませんでした。先日、車を運転していてちょうどそのタイミングでラジオをつけ、まだ放送が続いていたんだなぁ、と嬉しくなりました。

Tokyo FM パナソニックメロディアスライブラリー ディケンズ『オリバー・ツイスト』

番組パーソナリティは、作家の小川洋子さん。独特の切り口・語り口で、新旧洋邦いろいろな本を紹介してくれます。わたしがたまたま車中で聴いた回が、『オリバー・ツイスト』の紹介で、そういえばディケンズは『大いなる遺産』『クリスマス・キャロル』と読んだ後、ご無沙汰してしまったなぁ、と思い出したのでした。

『オリバー・ツイスト』さっそく図書館で借りて参りました。19世紀イギリスを舞台とし、その暗部を社会風刺した物語。オリバー・ツイスト少年を取り巻く悲惨な状況が、これでもかと語られてゆきます。現代には「親ガチャ」なる言葉があります。子どもは親を選んで生まれることは出来ず、それは運任せであり、家庭環境によって人生が大きく左右されることを表す日本語スラング。もちろん同じ家庭環境にあっても、まったく異なる未来を手に入れる人もいますから、親=最初の環境がすべてではありません。それでもやはり、「親ガチャ」と言いたくなるような差違があるのは、古今東西共通するものがあると思います。

それにしても、物心つく前から苦難に満ちた生活を送ってきたにもかかわらず、素朴な心や良心を失わずにいることが、ほんとうにできるのだろうかという疑問が残りました。環境を理由に人間性が荒んでしまう人がいる一方で、そうではなく踏みとどまる人も居る。その違いはどこから来るのでしょう。同じ環境でも進む道が異なるのだとしたら、天性のものということでしょうか。「自分の力ではどうにもならないこと」を、どのように受け入れていけば救われるのでしょう。そんなことをあらためて考えさせられる読書となりました。

『オリバー・ツイスト』はロマン・ポランスキー監督で映画にもなっていたのですね。映像で観てみたい気持ち半分、観たくない気持ち半分。ともあれディケンズの代表作と言われるもの、これで三作を読み終わることが出来ました。せっかくですので、『二都物語』『デヴィット・コッパーフィールド』も制覇を目指します。

『オリバー・ツイスト 上・下』(角川文庫)チャールズ・ディケンズ著/北川悌二訳