読書『経営者の条件』(岩波新書)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『経営者の条件』(岩波新書)

わたしにとって古巣である、人事測定研究所(現・リクルートマネジメントソリューションズ)創業者・大沢武志さんの2004年の著書。昨年末2019年に第6刷が「岩波新書新赤版一〇〇〇点」から出ています。新陳代謝の激しいビジネス書のジャンルにあって、15年も前に著された本書が今尚売れ続けていることに、大沢さんの理論の普遍性を感じます。

とはいえ、本書のなかで大沢さんが警鐘を鳴らしている内容が、いまだ古びていないこと(すなわち、企業経営における同様の過ちが繰り返されていること)は、喜べることではなく。

表紙カバー裏にある添え書きに「雪印、三菱自動車などの相次ぐ不祥事で経営陣の責任が問われる一方、日産、ヤマト運輸などのトップが、今名経営者として称賛されている。」(『経営者の条件』岩波新書)とあります。2004年時点での評価ですね。現在の日産やヤマト運輸の評価を思うと、時代の流れを感じます。

現場体験に基づいた『経営者論』です。昭和から平成の時代にかけての企業・経営者の実際をもとに論じられていて、その時代を生きてきた人たちにとっては、生々しく振り返りができます。そのなかには、もちろんリクルート江副さんを取り巻くエピソードも。個人的に、大切にしたい一冊です。

日本で、藤吉憲典のアートを。

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日本で、藤吉憲典のアートを。

ご覧いただき、お買い上げいただける場所ができました!

これまで海外個展用か、特定のお客さま用に作ることがほとんどでしたので、津屋崎の花祭窯にお越しくださっても作品をご覧いただけないこともありました。「国内ではどこに行けば見れるの?」とのお問い合わせに、ようやくお返事できることを嬉しく思います。

「インテリアアート」を提唱する、インポートインテリア・DONO(ドーノ)さん。東京・青山エリアにあるDONOさんのショールームで、ご覧いただくことができます。 数は多くはありませんが、藤吉憲典の作品世界と、アートを自分の生活空間に採り入れたときの豊かなイメージを感じていただける場所です。

オーナーの上田桐子さんのアートに対する考え方は、これまでのわたしたちのスタンスと共通点がとても多く、ぜひ作品をお任せしたいと思いました。藤吉憲典のアート作品は、特別な展示スペースを必要とするアートではなく、ふだんの生活空間・仕事空間を彩るアートが多いです。桐子さんから「インテリアアート」という言葉を聞いたとき、そのコンセプトがぴったりと理解できました。

日本でのアート作品紹介はここがスタート。これからの展開がとっても楽しみです。

「会いに行く」春節。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

「会いに行く」春節。

2020年の旧正月元旦は1月25日。大みそかにあたる1月24日から1月30日までの1週間が春節と言われています。写真は、なんとなくおめでたいイメージで、藤吉憲典の描いた雲龍図。

思いがけず、親しい友人・大切な人たちに「会いに行く」春節となりました。きっかけは勤め人時代の会社の30周年パーティー。せっかく上京するならばと「今、会いたい人」に連絡したところ、それぞれに、久しぶりにゆっくりおしゃべりする時間を持つことができました。

お互いの価値観を尊重できる友人とのおしゃべりは、話題のジャンルに関わらず、くつろいだ至福の時間になりました。仕事で関わっている方とでも、仕事とは無関係の友人とでも、古くからの友人とでも、最近知り合った方とでも、違いはありません。お互いに対する敬意が、その鍵なのだと思います。

SNSはじめコミュニケーションツールが進化し続けている今にあっても、物理的に同じ空間で顔を見て言葉を交わす場に生まれる「言葉を超えた理解をもたらす空気」には代えがたいものがあります。だからこそ、出来るだけ「会って話をする」を大切にしたいと、あらためて思いました。そしてもうひとつ、一人と一人で目の前の相手に集中しておしゃべりする時間の貴重さと嬉しさも、あらためて感じました。

ふだんの仕事一辺倒の東京出張から離れて、少し別の視点を持つことができた、とってもいい二日間でした。

アートイベント「買える、若冲」に行って参りました。

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アートイベント「買える、若冲」に行って参りました。

東京青山のB&B Italia Tokyoで開催された、伊藤若冲の水墨画掛け軸特別販売会に足を運んでまいりました。このイベントで販売を担当なさったインポートインテリアDONO(ドーノ)オーナー上田桐子さんからお話を聞き、ぜひ自分の目で見たい!と思っての訪問でした。

アートイベント「買える、若冲」

今回のイベントは、creative design officeの鬼澤孝史さん、DONOの上田桐子さん、場所提供のB&B Italia Tokyoさん、古美術商さんなどの協力により実現したそうです。

「イタリア家具ショールーム」という場所での展示は、「現代の生活空間にアートがどうフィットするか」のイメージを膨らませるのに、とても良かったです。ソファに腰かけ、ふと目線を挙げたときに視界に入る水墨画の高さがちょうどよく、思わずニヤリ。隣の部屋に進む角の踊り場的小スペースに、縦長の掛け軸の存在感を感じ、ニヤリ。

「掛け軸=床の間」の固定観念は、日本人特有のものかもしれません。掛け軸もまたひとつの絵画だと思いだせば、あらゆる壁面が装飾のステージになり得ます。そんな、シンプルで本質的なことを、視覚的・体感的に理解させてくれるアートイベントでした。

桐子さんが提唱する「インテリア・アート」の考え方は、花祭窯創業以来わたしがずっとモヤモヤと思っていたことに重なります。すなわち「必需品ではないけれど、それが側にあることで嬉しくなる(豊かな気持ちになる)もの」の意味。生活のなかにあってこそのアートの意味・価値を楽しむ方々が、どんどん増えたらいいな、と思っています。

今回のイベントを皮切りに「日本文化を日々の暮らしに採り入れる」提案をますます展開して行かれるようです。どんなイベントが飛び出すか、これからもとっても楽しみです。

仕事の考え方の根っこにあるもの。

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仕事の考え方の根っこにあるもの。

週末は、わたしに社会人としての基礎をたたき込んでくれた会社のパーティーに参加してきました。勤務していたのは、新卒からたったの4年余り。けれど、この間にわたしが学び、得たものはとてつもなく大きく、今尚たいせつな宝物です。

わたしが大沢さん率いる人事測定研究所(現・リクルートマネジメントソリューションズ) に入社したのは1992年。オープニングで、今は亡き創業者の、折々でのスピーチを振り返る映像が流れました。その言葉の一つ一つを反芻しながら、自分の「仕事」や「経営」に対する考え方、「人」に対する考え方の根っこに、信念がしっかりと刷り込まれていることを最確認。

130名を超える方々が、全国から集まっていました。人として尊敬を寄せてきた上司、先輩、同僚、後輩たちと顔を合わせるのは、やはり嬉しいものです。公平であり、自由であり、尊重され、任され、だからこそ厳しいなかで、一緒に仕事をしてきた仲間。新卒で入った会社がここでよかったと、あらためて思いました。そういう場所があるというのは、とても幸せなことですね。

写真は、その創業者・大沢さんが著した本。あらためて読み直すことにいたします。

読書『経営者の条件』(岩波新書)大沢武志著

読書『個をあるがままに生かす 心理学的経営』PHP研究所 大沢武志著

美しい英文。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

美しい英文。

何年か前に『英語のお手本 そのままマネしたい「敬語」集』という本を手に入れて、いつも手元に置いています。同じ意味でも、より丁寧で品のある言い回しや表現ができるといいな、という思いです。瞬発力の求められる会話の場面では難しくても、せめて少々時間をかけることのできるメールでは、少しでも丁寧な英語を使えるようになりたいと思いつつ。

ところが実際には、なんとか伝えるので精いっぱい。「より丁寧で品のある言い回し」への道のりははるか遠く。そんなわたしにとって、一番身近なお手本は、ロンドンのギャラリーからくるメールの文面や、彼らが作ってくれる、藤吉憲典の紹介文など。「そっか、こんなふうに言ったらいいんだ!」と発見ばかりです。

昨年12月のロンドン個展の際に彼らが作ってくれたカタログが先日手元に届き、あらためて英文表現の妙に嘆息。わたしも英文でも作ってみていたのですが、日本語原文は同じなのに、英文表現がまったく違っていました。

以下、藤吉憲典のアーティストステートメントをご紹介。ロンドンのハイエンドギャラリーが英訳すると、このような表現になる!のです。


Kensuke Fujiyoshi artist statement

For me, making art is about filling in the gap between the world of reality that you see before your eyes and the world of fantasy inside your head.

I create because I want to create. I don’t create anything I don’t desire to. These desires come to me one after another. I think that the reason I exist is to create.

I’m always thinking about how I can make works that I find satisfying. Day by day, I constantly make small improvements; I imagine that I’ll never be able to create something that is perfect to me. This makes me want to keep creating all the more.

My creativity finds its source both in the familiar beauty of nature experienced in everyday life, and in the beauty possessed by traditional objects. To see, and feel, shape and colour. The primary experience of one’s own senses is everything.

For someone simply to tell me that they like my works is my greatest happiness. As for the message I’d like to convey through them. I leave that for each person receiving it to interpret. The message of each work is simply the feelings of the people who experience it.

If however, I do have one particular obsession, it is this; to use traditional techniques to express something new. There is meaning in continuing to create through the work of your own hands. Without excessive concern for originality, I use the techniques I have inherited to build my own form of expression.

Pottery is something fragile. But if handled carefully it can be last hundreds of years. My aim is to make things that will be loved a thousand years from now.


日本語での言い回しの意図を汲んで、このように英文化してくださるギャラリースタッフに、心より感謝です。

読書『アンナ・カレーニナ』(新潮文庫)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『アンナ・カレーニナ』(新潮文庫)

「読んでいなかった名作を」「続・読んでいなかった名作を」に続き、また古典に目が向く周期が来ています。今回は、19世紀ロシア文学の文豪トルストイ。『アンナ・カレーニナ』は新潮文庫上・中・下巻で合計2000ページ越え。でも「途中で飽きないかしら」の心配はまったくの杞憂でした。

舞台は1870年代ロシア、そして貴族社会。現代の自分が生きる環境とはまったく異なるうえ、背景知識も皆無で読みはじめましたが、そのようなものは要りませんでした。

時代も環境も異なる登場人物の置かれている状況など理解しようが無いはずなのに、その心情の在りようや気持ちの移り変わりが手に取るようにわかる!と読み手に感じさせるのは、文章の力なのでしょう。決して退屈させない丁寧な描写に、引き込まれました。

そして同時に、読んでいる自分の年齢が、登場人物の心情に重なるのに役立っていることを感じました。それも登場人物の一人ではなく、すべての人物に対して、自分と似ている部分(多くは、ダメなところ)を見つけることができるのでした。経験値の浅い若いころに読んでも、このような共感は持てなかったかもしれません。

映画、バレエ、ミュージカル、宝塚と様々に演じられてきたのですね。読みながら鮮やかな映像がイメージで湧いてくるストーリーなので、納得です。わたしは映画も見たことがありませんでしたので、機会を見つけて観てみたいと思います。

次は『戦争と平和』。こちらも全四巻ですから、『アンナ・カレーニナ』以上の大作ですね。読破するのが楽しみです。

中国茶のしあわせ。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

中国茶のしあわせ。

上海とのご縁のおかげで、お土産に中国茶をいただき、家で楽しむことが増えてきました。種類の豊富さに驚くとともに、味の違いを楽しみ、自分のお気に入りを見つける面白さにはまりつつあります。

「中国茶ってすごい!」と初めて思ったのは、かれこれ20数年前、ダンナのお友だちで陶芸作家の豊増さんに入れていただいた烏龍茶でした。それまでに知っていた「日本のウーロン茶」とは似ても似つかぬ色合いと香りに、びっくり。何煎も入れて、そのたびに香りや味わいが変わる奥深さにおどろいたものでした。

その後、ダンナが中国茶器の制作を頼まれたり、「中国茶」の文化に触れる機会はあったものの、習慣的に飲むには至らずでした。が、今回またとても美味しい中国茶をいただき、『中国茶の基本』(枻出版社)を引っ張り出してまいりました。こういう本が一冊手元にあると、ちょっと気になった時に便利ですね。

「今いただいているお茶は、どんなものなのかな」と、本を紐解きつつ、思わず笑顔になるお茶タイム。ここ数日でいただいたものは、次のような感じです。

黄山毛峰(こうざんもうほう)=緑茶。大紅袍(だいこうほう)=青茶。鉄観音(てっかんのん)=青茶。普洱圓茶(プーアールエンチャ)=黒茶。

このほかに、白茶、黄茶、紅茶と全部で六種の茶葉の分類があって、さらに産地や焙煎などの要素によっていろいろな種類があるのですから、とても覚えきれる気がいたしません(笑)

ともあれ、まだ封を開けていないお茶もいくつか。ゆっくりじっくり味わって、贅沢なティータイムです。

お茶と着物。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

お茶と着物。

昨日はお茶のお稽古日でした。朝からバタバタと着物を着てお出かけ。今でこそ30分ほどでなんとか着ることができるようになりましたが、最初のころは1時間半かかっておりました。

それまでの人生で着物を着たのは、大学の卒業式で袴をはいたぐらい。茶道を習いはじめなければ、着物にさほど興味もわかず、着る機会なんてほとんどなかったはずですから、不思議なものです。

着付け教室には何回か通ったものの、家で一人で着るとなると、お教室でのようには行かないものですね。わたしにとっては一番の練習は「自分で実際に着て出かける」ことで、恥をかきながら、少しづつ覚えていっています。一人で着るときの強い味方は、YouTubeの着付け動画。帯の締め方動画もいろいろとあって、ありがたい限りです。

わたしが恵まれているのは、お茶会やお稽古に来て行けば、おかしいところを直してくださる先生や仲間が居てくれること。ささっとその場で直してくれたり、次着るときはどこに気を付けたらよいかをアドバイスしてくれて、いつも助けられています。

それでも、習っても習っても亀の歩みです。何回も同じところを直してもらい、汗をかきながら、ちょっとづつはマシになっているはずと自らを励ましつつ…これって、お茶のお点前と一緒です。お茶も着物も、こんなわたしでも呆れずに教えてくださる皆さんに、心より感謝です。

絵描きになりたい!の夢。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

絵描きになりたい!の夢。

昨日のブログでお伝えした、上海での「日本現代陶芸の逸品鑑賞体験会」の続き。現地スタッフさんが、藤吉憲典在廊当日の様子を伝えてくださいました。

作家来場ということで、急遽開催されたアーティストトークや描画のデモンストレーション。事前告知をしていなかったにも関わらず、たくさんのお客さまが集まってくださいました。

アーティストトークでの作品解説。景徳鎮の勉強をしているという学生さんから、熱心な質問があり、大いに盛り上がったとか。

会場の大パネルの前で、記念撮影タイム。「この歳にしてモテ期が来た!」と大笑いしていたそうです。

そして、この写真を見たとき「作家が行った甲斐があったなぁ!」とつくづく思いました。聞けばこの男の子は将来画家になりたいそうで、毎日絵ばかり描いているとか。描画のデモンストレーションのあいだ、ずっと隣に張り付いて見ていたそうです。スタッフの方が「触らないようにね」「もう少し離れてね」と何度言っても、かぶりつき。

現在は陶芸術家の藤吉憲典、幼少期のころから「自分は絵描きになる」と決めていたそうです。そして今、やきものの上に絵を描いているわけですから、そういう大人の姿をこの男の子に見せることができたのは、とても良かったなぁ、と。機会をくださった銀座黒田陶苑さんに感謝です!