読書『ミザリー』(文藝春秋)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ミザリー』(文藝春秋)スティーブン・キング

スティーブン・キングによる文章指南の本『書くことについて』を読んだのは、2019年10月のことでした。約一年前。そのうえで『ミザリー』を読みなおさねばと思いつつ、読むのにエネルギーが必要なことがわかっているので、時期を選んでいるうちに、時間が経ちました。スティーブン・キングの本はホラーがメイン。そのなかでは本書は、サイコサスペンスに近いと思います。ホラーは苦手なので、わたしは『ミザリー』と『書くことについて』以外は読んでいません。

さて『ミザリー』。わたしのなかで、ミザリーといえば、キャシー・ベイツ。彼女がアニー・ウィルクスを演じた映画『ミザリー』が公開されたのは、検索してみたところ1990年でした。30年前。実は自分が中学生ぐらいのころかと勝手に思い込んでいたのですが、そこまで古くはありませんでした。

その数年後にテレビで見たのが最初だったと思います。テレビの小さい画面にもかかわらず、インパクトの大きさは凄まじく、映画館で観なくてよかった映画のひとつです(笑)。実のところつい最近まで、キャシー・ベイツがどんな映画に出て、どんな役を演じても(とても優しくていい人の役であっても)、『ミザリー』での印象が勝ってしまって、怖かったものです。

『書くことについて』で、スティーブン・キングの創作背景を垣間見ることができたので、少しは客観的に読むことができるかと期待しつつ読書スタート。期待を裏切り、気が付けばすっぽりと小説世界に入り込んでいました。主人公が追いつめられていく心理戦の恐怖は、大まかなストーリーや結末が分かって読んでいても、まったく軽減されず…。

ただ今回、小説を読むことによってアニーの新たな側面を発見し、アニー像を少し上書き修正することができたのは、わたしにとって新鮮なことでした。それは、彼女の小説・創造世界に対する知的な洞察力とでもいいましょうか。ストーリー展開に対して「あんまりリアリスティックじゃないけれど、でもフェアだわ」と評するセリフがあり、この一言でアニーを見る目が約30年ぶりに少し変わりました。

それにしても、読み終えるのに消耗しました。個人的には、他の方に積極的におススメする本ではありません。