読書:家族と老いを考える2冊、『老後の資金がありません』と『あくてえ』。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書:家族と老いを考える2冊、『老後の資金がありません』と『あくてえ』。

天海祐希さんの主演で映画になった『老後の資金がありません』を観そびれていたところに、図書館の特集コーナーで原作を発見。

『老後の資金がありません』(中央公論新社)垣谷美雨著

主人公・篤子はドンピシャでわたしと同い年。生活環境は異なるものの、老親の介護はじめこの世代に共通する家族の問題の数々に、うなずきながら読みました。映画であればコメディとして笑い飛ばせたのかもしれませんが、本だからこそ迫りくる切実さがあって、気がつけば拳を握りしめて応援していました。

篤子の言うところの「50歳を過ぎた頃から」目につくようになった数々の現象(家族、特に夫の性格や癖)は、子育てがひと段落しそうだという安心感と反比例して現れるものかもしれません。文中にある彼女の「心の叫び」に対し、「わかる!わかるよ!」と心のなかで相槌を打ちました。たぶん彼女とわたしは性格的に似ているところがあるのだな、と思いながら。

なかでも篤子の「だが…それは強者の考え方だ。」のセリフ(心の声)が残りました。「自分は世の中の一部分しか見ないで、弱者のなんたるかを知らないまま一生を終えたのではないかと思うことがある。」というのは、読んでいるわたし自身に向けられた、深い反省でもありました。

これでもかと難儀な状態が降りかかりながらも、ストーリーは少し光が見えてくるところで終わります。安心とは言えないものの、少しはホッとして「ジ・エンド」を迎えることが出来ました。先に原作を読むことになったのは、かえって良かったかもしれません。そのシビアなストーリーを踏まえたうえで、映画(DVD)で大笑いしたいと思います。

対して、最後まで光が見えなかったのが、カメリア図書館の同じ特集コーナーにあったもう一冊。

『あくてえ』(河出書房新社)山下紘加著

著者の山下紘加さんは1994年生まれとありますから、わたしよりも20歳以上も若い方です。読みながら、近年社会問題化している「ヤングケアラー」という言葉が思い浮かびました。家族の問題は今や若者にとっても他人ごとではなく、あらゆる世代において切実になってきていることを、あらためて突き付けられました。

こちらも家族の問題てんこ盛りです。両親の離婚に、出て行った父親のお母さんの介護問題。当然お金の問題も出てきます。若い主人公がイライラしながら、どうしようもなく、現状を受け入れていくしかない様子が、閉塞感一杯に描かれています。

ストーリーの最後で、小説家を志している主人公が「小説は必ず終わりを迎えるし、良くも悪くも決着がつくのに、現実はそうではない。ずっと続いていくのだ。」と心の中で叫ぶセリフは、現代におけるこれらの問題の根深さを突き付けてきました。

『老後の資金がありません』では最後に見えた光が、『あくてえ』では見えず(むしろ悪くなるばかり)、トンネルに迷い込んだような感じでした。それでも読後感が悪くなかったのは、それが特別な人だけに起こる特別な問題ではなく、誰にでも降りかかる可能性のある現実的な問題として、ある意味淡々と描かれていたからかもしれません。

図書館の特集コーナーで偶然見つけた二冊。読んでよかった二冊です。